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読まないほうがいい話 読むなら「自己責任」

2019-10-03 15:00:21 | 日記
「てんとうデンデン虫症候群」をめぐる経緯について

 デンデン虫の抜け殻がひっくり返った状態のまま発見される事態の頻発を受けて、NASAの自然観察部門が非公式に調査した結果、カルフォルニア州のみで前年比56.8%増とという驚くべき数値に至っていることが判明。しかもそれらの現象は、ヨーロッパからアジアの広い範囲にわたって発生していることが確認された。なお、オセアニア大陸については、それに関する権威ある数値が今のところないため、そうした現象が起きているかどうかについては未確認としている。

 こうした結果を受けて、各国の諸研究機関がその原因などの解明に動き始めているが、そのうちのひとつ、日本の東動大(東京動物大学)の動物形態学研究室の根中幹札(ねなか・みきふだ)教授のチームが、この度、以下のような仮説をまとめるに至った。

         
 それによれば、こうした現象の始まりは、紫陽花の葉や木の幹を這っていたデンデン虫が、その独自のセンサーによる感受性により、太陽の黒点の増減などに過剰反応し、衝撃を受けた結果、まずはそこから「転倒」し地上へと落ちる(1)、その結果、地上にうまく着地した場合は上下に移動したということでそのままその場を去ることができるが(2)、そうではなく、不幸にしてひっくり返った状態になった場合には空間自体の上下逆転現象が生じることになり(3)、当該固体はその本能において正常への復帰を試みるが、一定の割合において、それを果たし得ない場合がある(4)、その場合当該固体は殻を捨てて本体のみの脱出を図るのだがそれも当初はうまくゆかない(この現象を「デンデン」という。日本では「出ん出ん」と表記されるようだ)。
 
 しかし、やがてその努力は結実し、本体のみの脱出を完遂するに至る(5)。その結果残されたのがひっくり返った状態での殻で、要するにそれらは、上記の(1)ー(5)の継起によって生じた現象である。したがって、それら一連の状況を「てんとうデンデン虫症候群」と名付けるべきだろうということである。

         
 では、脱出した殻のない本体はどこへ行ったのか。それについて根中教授は、「それらは各家庭の台所などに潜伏し、ナメクジになった可能性が高い」としている。
 なお、この仮設を揺るぎなきものにするため、同教授のチームは、今後の課題として、太陽の黒点などの自然現象とひっくり返った殻の増大との相関関係、デンデン虫においてのそれらの現象を感知するセンサーの有無の検証、さらには、脱出した本体の追跡捜査などの裏付けなどなどを必要としていて、とりあえず、ひっくり返ったデンデン虫のその本体への小型電波発信器などの装着を検討しているという。
 
 これに関連して根中教授は、ひっくり返ったままで地上でもがいているデンデン虫を見かけたら、現状を維持したまま、直ちに同研究室に連絡してほしいと呼びかけている。
 なお、この研究に対し教授は、「デンデン虫の歩みは遅々としているが、この研究成果はわれわれ人類にとっては大きな一歩となるであろう」と語り、さらに、私の名前(根中幹札)を音読すると「コンチュウカンサツ」になるのもなにかの縁と、この研究に寄せる並々ならぬ情熱を吐露してる。

この根中教授、デンデン虫を昆虫だと思っているようだが、その研究者魂に免じて、この際、大目に見ることとする。

これに対して、さまざまな反論もでているようだが、そのひとつに動物心理学専攻の蒸野白勢(むしのしらせ)教授のものがある。蒸野教授によれば、根中教授の説は、その過程を物理的な現象に還元するのみで、その動物の心的な状況に応じて生じる現象、つまり、その心理学的側面を虫、いや無視しているというもの。

         
 蒸野教授によれば、デンデン虫が転倒をしたという、まさにその事実にこそ真相解明の鍵があるとする。その転倒という事実は、デンデン虫に大きなトラウマとなって作用し、その心的抑制からの脱出が課題となる。その際、デンデン虫がとるのは、「転倒」という事実を逆手にとって、自らをそれに同化させることによって、つまり、自らをテントウ虫に変身させることによって、「テントウしたデンデン虫」という分裂状態を止揚し、新たなアイディンティティを構築するのだという。

 この説に対しても、事実確認の検証が求められているのに加え、動物の心理が、変身という具体的物理現象に昇華するとするにはいささか無理があり、唯心理論的偏向があるのではないかという批判も散見できる。

 話がテントウ虫とデンデン虫だけに、どうも、テンデンばらばらといった感が強いのが実情である。

 なおこれらの研究に対し、助成金を支給するかどうかについて、表むきは文科省、文化庁において検討中であるが、実際の決定は 萩生田大臣と官邸筋の協議において決せられるものと思われる。




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