「漂泊 譚」
しょせん漂泊する身であれば
自分が何処にいるのかも定かではない
四囲を見渡し
山があれば山を巡り
川があれがそれに従う
しかしやがて道は失われ
行方は暗く閉ざされる
そして悟る
それが漂白なのだと
しょせん漂泊する身であれば
いまがいつなのかもさだかではない
天空を覗い
星辰の運行を数え
月齢の示すを読む
しかし一陣の嵐が来たり
時は不可視の彼方へ去る
そして悟る
それが漂白なのだと
かくて漂白は大いなる空疎
あるいは絶対の自由
この身を繋ぐ根拠ももたず
点滅するいくつかの記憶を抱いて
荒野の真っ只中をゆく
われはエル・トポ 砂漠の土竜
ツァラトゥストラの子にして
デュオニソスの末裔