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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

「パンドラの匣」が開くとき私は・・・。

2009-12-08 03:51:23 | よしなしごと
 名古屋に何か用件があって出かける折には岐阜では観られない映画をやっていればそれを観る。
 今回は用件前に、太宰治原作の『パンドラの匣』(監督・富永昌敬)を観た。
 少年期後半の頃、太宰をむさぼるように読んだ時期があったが、この小説についての印象はなぜか薄い。
 だから、太宰のその作品の映画化ということにも興味があったのだが、同時に、08年、「乳と卵」で第138回芥川龍之介賞を受賞した川上未映子さんが俳優として出演していることにも大いに惹かれるものがあった。

            

 映画は、昭和レトロ的な雰囲気の中にも、なおかつそれを越えた幻想的なシーンを見せてくれた。
 雨の未明に、蓑傘をつけて草むしりをする3人の映像は、「あ、これってアンゲロプロス的だなぁ」と思わせるものがあった。
 川上さんに関しては、彼女が本来もっているきわめて理知的な面が、やや役柄の邪魔をしているのではと思える節がないではなかったが、おそらくそれは私の彼女への先入観の為せる業であろう。

  
            中央が川上未映子さん

 太宰の原作、川上さんの出演といった要因を除いても、映画として結構面白かったし、それを観ている間、太宰を思い起こすこともあまりなかった。

 映画のあと、久々に「cafaロジウラのマタハリ春光乍洩」に寄った。
 ここの「りりこ」さんは私がネットで知り合った女性であるが、映画に詳しく、とりわけ川上未映子さんの大ファンなのだ。しかも、芥川賞云々以前から彼女と親交があり、この店で川上さんのライブが行われたこともある。
 だから、この映画を観終わってからの話し相手としてはベストな人なのだ。

 
       上から監視されている感じがして視線を上げると
          レプリカの犬が私を凝視していた


 映画での時々飛躍するような不思議な演出について話していたとき、りりこさんがこの富永監督は『パビリオン山椒魚』で長編デビューした監督であることを教えてくれた。
 それで、私の中でもある一つの輪が繋がった。私もまた、『パビリオン山椒魚』を観ていて、面白い演出をする監督だなぁ大いに興味を引かれた思いがあるからだ。

     
           黄昏のツインタワーと名古屋駅西口

 この店では、もうひとつの出会いがあった。
 たまたま隣に私の前科を知っている女性が陣取っていて、往年の今池や、そこを去来した人たちの話に花が咲いたのだ。中にはン十年前の胸キュンものの話題もあった。

  
       弁髪の割には衣装のリポビタンDのロゴが気にかかる

 この日、もうひとつの用件はM協会の年次総会と忘年会のパーティであった。
 パーティの席は抽選なのだが、たまたま隣に、気さくに話してくれる女性がいて、シャイな私は大いに助かったし楽しい話を交わすことが出来た。
 パーティには、弁髪の男性が一人混じっていたが、多分、旧満州族の末裔なのであろう。
 ひょっとすると清王朝一族の末裔、天城山心中のかの愛新覚羅慧生に縁のある人かも知れない。

 様々なものが飛び出てくる私の「パンドラの匣」には、最後に希望を託すべき煌めきが残されているのだろうか。



コメント (2)
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