イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

好かれて実って

2011-04-28 20:43:23 | ニュース

田中好子さん55歳没、田中実さん44歳没。早過ぎ若すぎる訃報が続きました。

スーちゃんのほうは、中年過ぎた既婚の女優さんががつがつ露出しないのは家庭生活が満ち足り不自由してない証拠…と月河などむしろ、好ましい方向にとらえていたのですが、やはり仕事をセーブしたり、逆にやりたい仕事をあきらめたりの近年だったのでしょうか。日差しが初夏っぽくなりお中元の準備を考え始める季節恒例の“揖保の糸”のCMオンエアをみないうちに、壮絶な最期が報じられることになってしまいました。

キャンディーズ時代からピチピチ健康的なイメージの人だったので、10数年にわたる乳がんとの闘病とは意外も意外。前述の揖保の糸CMも含めて、月河がご出演を認識している、1990年代中葉以降のお仕事は大半がん闘病との併走だったことになります。ご家族やごく親しい筋にしか、発症自体を知らせていなかったというところに、“女優=夢を売る仕事”に徹した潔さ、外柔内剛ぶりが窺える(芸能人として現実的には、病名が知れるとイメージが暗くなりオファーが減るかも…の危惧だったかもしれませんが)。

出棺前の肉声テープの公開は、つらい癌治療に長年月耐えた好子さんに、せめてもの自己アピール、思いのたけ吐露の機会を与えてあげたいとの、ご家族の気持ちのほうを強く感じました。ご自身映画監督でも、制作関係者でもないのに「スタート!」「カット!」とカチンコ使ってのパフォーマンスで亡妻の執念に添おうとするご主人・小達さんが痛々しかった。実姉・夏目雅子さんをも血液のがん=白血病で早くに失っている身としては、衆目の前でクサいパフォでもしてないと心が折れそうだったかも。

結果的には自分がセンターから退き、ランちゃん=伊藤蘭さんに譲ったことで重石が取れたように売れたキャンディーズを、最後まで「大好きでした」「(蘭さん藤村美樹さんと)一緒にいられて幸せでした」と愛しみ続けてくれたところには、女優魂というよりアイドル魂を感じます。アイドルがアイドルだった自分を愛していてくれないと、若い日々声援を送ったファンの立場がない。

楚々としたミキちゃん、プチ色っぽいお姉さんランちゃんに混じると比較の問題でぽっちゃりキャラに見えたけど、顔の小作りさのわりに腰回りに安定感のある、実はいちばん昭和の女の子アイドルらしいヴィジュアルの持ち主でした。思うにキャンディーズがスーちゃんセンターで売れあぐねていた1970年代前半は、スーちゃんっぽい“うぶな妹”系のアイドルがピンでいっぱいいたから、かぶっちゃって突き抜けきれなかったのでしょう。出棺時流れたデビュー曲『あなたに夢中』を筆頭に、アイドル歌謡としての良曲はスーちゃんメインヴォーカル時代のほうが多かったような気も。異論は認めます。

苦しい闘病の末の歿年55歳に、「早過ぎる」なんて言うのは酷かもしれない。ゆっくり休んでください。

田中実さんのほうの死去には、びっくりというよりあっけに取られています。いろんなTVドラマで、ほぼ切れ目なくお顔を見ていたような気もしますが、よく考えれば数年前、あるいは10年以上前のドラマの再放送だったりもして、本当のところご活躍だったのか、ご活躍のピークを過ぎて下り坂だったのか、伸び悩んでいたと言ったほうが当たっているのかわかりません。

仲代達矢さんの無名塾出身と聞けば、2サスなんかよりもっとメジャーな大作で主役を張っているべきだと思う向きもあるかもしれませんが、卒業した俳優さんがみんな主役級になっているわけではなく、脇で渋く輝いている人が数人からせいぜい10人前後か。実際問題、名実ともに“無名”になった人のほうが圧倒的に多いのではないでしょうか。田中実さんは堂々、成功した部類だと思います。

ただ、ドラマでも映画でも、主役だとそれなりのギャラだけれど、脇となると歴然と安くなり、なおかついったん脇に下がると、危険なアクションなども必要な重要な役と、ちょっと出てそれだけの文字通りのチョイ役とで、それほどの差がなかったりすると聞いたことはあります。だから、『○○の事件簿』の様な主演のシリーズを持てればしめたものだが、脇役専門で中堅かその下クラスの、“単価の低い”俳優さんは、本数をこなさないことにはやっていけないのだと。

田中さん44歳、長身で童顔で、この10年近くほとんど変わらず若々しく見えていましたが、それゆえ設定年齢の若い役を、若い後輩俳優に回されることもあったかもしれない。“本数をこなす”重圧がつねに念頭にあったとすると、先月より、昨年のいま頃より、オファーが少ないのでは…と、不安にかられることもあったかもしれません。

8年ほど前、同じような形で訃報を聞いた古尾谷雅人さんのことも思い出しました。やはり体型や顔つきが30歳前後からあまり変わらない人で、切れ目なくドラマの刑事役やクールな役、渋い役でお見かけしているような気がしていたけれど、2002年の秋に『太陽と雪のかけら』という伊藤裕子さん主演の昼帯ドラマに、得意の“ちょっとクセ者”役でレギュラー出演されていたのを見たとき「やっぱりそれなりに、再放送で見るよりは老けた顔になってるなぁ」とちらっと思った記憶があります。仰天の悲報がつたえられたのはその半年後でした。

“切れ目なく見かけるけれど再放送のことも多い”という状況自体、現在を走る役者さんには肯定し難いことなのかもしれない。新作ドラマの枠は時間的にも予算的にも縮小されてきています。再放送の枠さえも、気がつけば韓国製ドラマにとって代わられている。当然、役のオファーも、顔と名前を認知してもらえる機会も減る一方でしょう。

没した時点で古尾谷さん満45歳、田中さん44歳。役者でなくても、男四十を過ぎれば見えていなかったものが見えてきて、見たくなかったもののほうが多かったりもする。生きている者の一方的な視点で、生きないほうを選んだ人の選んだ理由を詮索するのもむなしいけれど、ともに妻子を置いての自裁というのが、俳優さんという属性をはずして痛ましい。

贔屓のチャンネルとは違ったけれど、昼帯の定番『温泉へ行こう』シリーズを惜しむファンも多いでしょう。月河としては、できれば天国で『刑事貴族2』の話に、団優太さんと花を咲かせててほしい。ご冥福をお祈りします。

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