イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

ヨシがムネムネ

2013-06-18 21:20:58 | 夜ドラマ

 15日(土)にBSプレミアム時代劇『大岡越前』を出合いがしら視聴したら、将軍徳川吉宗公(平岳大さん)が完全に、完膚なきまでに、混じりっ気なしのネタキャラになっていた(爆倒)。

 有名な大岡裁きのひとつ“三方一両損”のエピソードです。正直な大工が財布を拾うと、中に三両の大金が。落とし主の正直な左官のもとに届けるが、「落とした物はもう俺のもんじゃねぇから受け取れない」「俺だって人の物をただ貰いするわけにはいかない」とヘンな意地の張り合いになりこじれまくる。左官には近々結婚を約束した彼女がいますが、彼女の唯一の肉親である兄がほかならぬこじれ相手の大工とわかり、その頃にはこじれがいろんな人を巻き込んでいて引くに引けず、当然結婚の話も先へ進められず、困った彼女と夜半、河畔で愚痴り合いながら川面に石を投げていると釣り人に当たってしまう。「痛い!危ないではないか!」と立ち上がった身なりの良いお侍は、なんと将軍吉宗さまだったのでありました。

 まぁなんとどうでもいい、別にかの人である必要のない登場なことよ。

 「こんな時分にこんなところで何をしておる」って、アンタこそ何してるんだと。「まさか心中ではあるまいな」って、どんだけ浮世草紙とか大衆演劇に入り込んでるんだと。

 しかも将軍様、なんと出番はここだけ。

 しかもしかも、話の途中でも結末ででも、左官(岡田義徳さん)と彼女が「あのとき釣りをしていた間の悪いお侍様が将軍様だったとは、うっかりとは言え石なんかぶつけて打ち首かしらひえええええ」と震え上がったりする、浅見光彦的な正体バレフォローもいっさいなし。出ただけ。出てボケただけ。

 こういうの“出落ち”と言うか“出引っ込み”と言うのか。

 SPドラマ『犬神家の一族』(2004年)で初めて顔と名前と出生情報が一致した頃の平岳大さんは、あのご両親からよくもまぁこんなに怖い顔の息子さんが・・と思ったものですが、いつからこういう、すがすがしいまでに意味のない役をサラッと演ってハケられる人になったのでしょう。月河の見るところ、2008年の朝ドラ『だんだん』のフラワースノーアイランド辺りからオカシクなり始めたような気がするのですが。

 岳大さんの中では、“顔が怖いことが何の意味も持たない、むしろ相反する(=このキャラでこんなに怖い顔っておかしいだろ、という)役を演る”というのが最大の役者的チャレンジなのかもしれない。そういえば月河が見る機会のあった『外事警察』でも『江 ~姫たちの戦国』でも『梅ちゃん先生』でも、決まって“どっか情けない”役でした。

 『塚原卜伝』の新右衛門(堺雅人さん)お付きの山崎左門様がいちばん、腕も立つし頼もしい人物だったかな。二世俳優・二世有名人の、親に似てる/似てない話が大好物なうちの高齢家族なんかは、同じく二世オーラ濃厚な松田優作さんご子息2兄弟と並んで岳大さんも贔屓で、「お父さんより男前で、お父さんの若い頃より可愛げがある」(確かに『三匹の侍』等の頃の、三十代の平幹二朗さんは岳大さんの現在と遜色ない長身男前だったけど、結構エグい、粘液的な色気の人でした)とかなり好意的です。

 「お父さんと同じ“両刀”のタチなのか。だから結婚しないのか」とか心配してるけど。そういうの遺伝するのか知らないし。大きなお世話だ(と思う)し。

 『大岡越前』の将軍吉宗公役と言えば、民放で長寿シリーズだった加藤剛さん版での山口崇さんがワンアンドオンリーで、平岳大さんが頑張ってもいささか分が悪いように思うのです。

 社会科で習った八代将軍吉宗公は、紀州徳川の冷や飯食いの三男坊で、自分が将軍後継に目されるとは夢にも思わず野性的に育ち、体躯も江戸時代の男子としては大柄で、質実剛健、庶民的なるを好み、政策も奢侈をいましめ勤倹を勧めたことになっていたと思いますが、山口さんの上様はむしろ都会的でボンボンぽくて、頭の回転はいいんだけどせっかちでわがままで、国のこと民のことを考えていないじゃない結構いいアイディアも思いつくものの、空気読まないもんでたいがいダダすべり。

 言わば“才人のバカ殿”。まぁお殿様ってのは、学問や教養があって性格も良かったとしても、基本、世間知らずですからバカなくらいのがおさまりがいい。山口さんの吉宗公も加藤剛さん扮する大岡越前守忠相が最終的に意をくんでうまいことまとめてくれるので、よく「でかしたぞ越前」って言ってたような。「でかしたぞ忠相」だったかな。

 でもま、この上様のキャラも、加藤さんの忠相の一点の曇りもない清廉さと、信じがたいくらい揺るぎのない沈着ぶりがあったればこその好一対。

 今般の忠相は東山紀之さんで、妙にこなれて遊び慣れもしていて、ノリでムーンウォークぐらいしかねない勢いなので、平岳大さんが上様を演るなら“融通きかない四角四面系のバカ殿”路線を目指したほうがいいのかもしれません。

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