以前、“萌え(る)”という言葉がどうも自分の中で消化不良だ、という意味のことをここで書いた記憶があります。
“純粋鑑賞”で硬ければ、“カワイイ”“カッコいい”に“個人的”“普遍性が希薄、もしくは、普遍性を持つかどうかに自信が持てない”“他人に知られると恥ずかしい”といったニュアンスを付加して、
“密(ひそ)可愛い”
“密カッコいい”
という形容詞を捻り出してみたんですがどうでしょうか?月河としては、“普遍性の希薄さ”や“他人に説得→納得性が乏しく気恥ずかしいこと”より何より、“学術・芸術性や精神身体医学的なヒーリング、あるいはセクシュアルな欲求の充足など、現実的な実用に何ひとつ貢献しないにも関わらず、それでも感性を刺戟し震わせ揺さぶってやまないこと”こそが“萌え”の必要十分条件ではないかといまだに思っているのですが、それならばコレだよという、“萌え(る)”に代わる語彙が見つけだせずにいるのです。
最近で言えば、『安宅家の人々』で雅子(小田茜さん)が劇中で夫・譲二(小林高鹿さん)を呼ぶときの「じょおじ!」。
コレ、小田さんの端麗なままテンパった表情で発されると、めちゃめちゃ“萌え”ますね。て言うか、普通にコソバユい。
結婚して3~4年たった奥さんが、旦那さんをファーストネーム呼び捨てって、ちょっと「欧米か!」っぽくもあるけど、むしろヤンキーっぽいじゃないですか。夫婦間の名前呼びが、「パパママ」「お父さんお母さん」呼びになる唯一最大のきっかけは子供の誕生で、譲二雅子夫妻には子供がまだない(雅子妊娠中も、今日30話のアクシデントで流産フラグ)とは言え、いかにもお嬢さま育ち風情な雅子にはむしろ譲二「さん」付けが似合うのにあえて「じょおじ!」。
親しい男性をファスネ呼び捨てなんていう無作法さに慣れていない、オンバ日傘の男性免疫なし良家子女さんが、「夫婦なんだから親密にしなくちゃ」と懸命にくだけてガンバっている…という匂いがして、非常に“催萌性”があるんだな。
実はNHKBS-2で『眺めのいい部屋』(86年ジェームズ・アイヴォリー監督)を録画視聴したあと『安宅家』を観たので、なおさら「ジョージ!」に引っかかったのかも。ジュリアン・サンズ、ダニエル・デイ=ルイス、そしてヘレナ・ボナム=カーター、みんな“あの頃きみは若かった”。
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