イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

Lunatic

2017-11-26 20:16:08 | 海外ドラマ

 ・・・・・ま、それはさておき『ルビーの指輪』(BS12、月~金16:00~)次回が待ち遠しい事に変わりはない。これ、韓ドラの王道“全てを奪われた者が奪った者から奪い返して地に落とす”復讐譚の形を借りて、“外見”“アイデンティティ”との乖離←→統合という問題も切り取っている、ひそかに野心作です。

 ルビーの“外見”とともにキャリア、地位、婚約者も奪ったルナですが、ルビー本人が内蔵している能力や経験は奪えませんから、周囲の人々にルビーとして遇され、ルビーならできて当たり前の仕事を期待されることに耐えられず、「人が変わったようだ」とみるみる評価が下がって、ピンチになると気絶したフリで乗り切るしかありません。一方、昏睡状態から覚醒するとルナにされていた本物のルビーのほうは、或るきっかけで自分は本当はルビーなのに・・とここに至るまでの記憶を取り戻し、すべてを仕組んだルナに復讐心を燃やしていますが、持ち前の知性教養や仕事能力、愛される性格は内蔵したままですから、「ルナさんにこんな適性があったとは」「(本物ルナ時代の)悪い噂で先入観を持っていてごめんなさい」「人を引きつける魅力があってTV映えがする」と、本物ルナが死ぬほど羨んでいた評価を、今度はルナとして勝ち取って行く。

 結局、外見がいくら変わっても、人は持てる人間性の本質というか、性根(しょうね)の通りに、他人から値踏みされていくしかないのかなと思えてきます。この辺り、ドラマ的にはルビーとルナを演じる女優さんのルックスに、天と地ほどには美醜差がないのでわかりにくくなっている(ルビー役イ・ソヨンさんは前のエントリでも書いた通りお目目ぱっちりの典型的華やか美人ですが、ナチュラルなイム・ジョンウンさんのほうが好み、特に太腿が・・とかいう人も少なからずいるでしょう)けれども、ズルして自分のグレードを上げ、人も羨む境遇を得たはずのルナがひとつも安穏とできず、本来のルナ時代にもましてガツガツ、ピリピリしていて、逆にルナのレベルに突き落とされたほうのルビーが順風を受け多くのチャンスをつかみ取ろうとしているのが面白い。

 パートナーとの心理関係も複雑になります。ルビーはかねて財閥御曹司で会社の上司でもあるギョンミンと、留学帰り交際ラブラブ復活中でした。事故後、顔面形成手術で容貌ごとルビーになりすましたルナと、ギョンミンはそれと知らずに結婚してしまいましたが(←ボンクラ)、欲深で虚栄的で猜疑心や僻み根性の強いルナの本性が、当然ながら徐々に透けて見え始め、ついには彼女が会社のマーケティング予算を横領していた事実も判明して家族からも責められて「僕が愛したルビーはどこに行ってしまったんだ」と悩んで酒に逃げる日々です。一方では、ルナとして裏方の仕事についた義妹が、昔の悪評(遊び人、狡い、ケチ、性格が悪い・・)とは裏腹に有能で気立ても良く、意外な企画力や調査力(ルビーですから)も発揮して社内コンペで優勝したりもするので、二人で打ち合せしながら、義兄の域を超えて妙な気分になったり迷い道くねくね。

 ルナのほうは、客観的に見る限り、ギョンミンに切実に片思いして片思いしてルビーから略奪したかったという感じには見えません。ルビーの外観になって、シルクのガウンでギョンミンをベッドに誘う姿に、どうも色気が匂い立たないのです(この辺り、事故前はギョンミンとお似合い光線キラキラのルビーを演じていたイ・ソヨンさんのツンケンギスギス偽物演技が巧い)。ルナにとってはギョンミンも“ルビーが所有して幸せそうにしているモノ”のひとつ、だから奪わなきゃ、という対象らしい。ギョンミンが自分を愛しがり大切にしてくれるのは、もともとの恋人ルビーの外観をして、家族からも部下からもルビーとして扱われているからにすぎず、“自分”を愛してくれているわけではないのですが、ルナはそこには疑問を抱いていない様子。

 一方、ルナになったルビーには、もともとのルナの恋人インスPDが距離を縮めてきます。インスはギョンミンとは違って、ルナの嘘を当初から知っています。かつての恋人ルナがルビーの姿になってギョンミンと結婚し、大企業の室長兼財閥後継者の嫁として権勢を誇りつつ、嘘の綻びにおびえて苛立つ姿を苦々しくも悲しく見つめる傍ら、妹の嘘に嵌まってルナとして生きることを余儀なくされたルビーに愛しさを感じていきます。ルビーが事故前の記憶を取り戻してルナに復讐心を燃やすと、「君がまた傷つくのを見ていられない」と必死に止めたりしますが、ルビーは「あなたが私を愛するのは、私がルナの顔をしているからでしょう」と言い放ちます。

 ルビーは事故までの人生で、自分の持てる才能(容姿も含めて)と努力で、ルビーとして評価され道を切り開いてきた自信があるので、逆に“呪われたルナの仮面”を被らされている限り、愛されても褒められても、本当の私としてではないという虚無感がぬぐえない。この点、自己評価が低くて、姉の物を何でも羨み妬んで奪ったり掠め取ったりを平気でする、“ルビーになりさえすれば何でもうまく行く、日の当たる人生を歩める”と思い込んでいるルナとは違う気位(きぐらい)の確かさが、ルビーを苦しめています。

 いま全62話の40話まで来ていますが、コレ、どうやったらハッピーエンドっちゅうか、腑に落ちる結末になるんだろう?といまから気がもめます。韓ドラの50話以上の長尺ものだと、ラスト4話くらいの間に、2回は余裕でドンデン返しがありますから、20話以上残ってる段階で心配してもしょうがないのですが、まずは整形入れ替わりの事実を、関係各所に知ってもらわない事には。

 んで、あ、そうだ、忘れてました。ルナがここまで根性曲がりになった原因として、中学生ぐらいのとき、母親と叔母さんの会話を立ち聞きして、“お母さんがいつもルビー姉さんより私に厳しく冷たい(気がする)のは、お母さんの本当の子でなく、別の女性から引き取られた子だから”と知ってしまったから、という伏線もあるのです。ちょっとだけ少女子役さんを使っての回想シーンもあり、同じ事をしても叱られるのは姉じゃなく自分、私にはくれないお小遣いを、姉さんにはあげてる・・と、思春期に入ったルナが不満をつのらせていたところへこの立ち聞きで、ルナにしてみれば「これでわかった」と思った事でしょうが、見ようによってはお母さんがルビーに甘いというより“気を遣ってる”ようにも見える。どっちがお母さんの実子なのか、そうでないほうは誰の子なのか、ここに韓ドラ得意の“出生の秘密”でもうひとひねり必至。整形で顔を変えるより、出生のほうがはるかに決定的な、ラスボス級の“アイデンティティの危機”ですから、絡むべくして絡んでくるはず。

 どっちにしても、いまはルナへの復讐に気を取られて平常心を失っていますが、ルビーには罪はないので、ルビーとして幸せになる”エンドにしてあげたいけれど、最愛のギョンミンに「見た目がどうでもキミはルビーだよ」と抱きしめられる・・のは、ルビーにとって、いまとなっては本意かどうか。

 すべてが露見すればルナは当然、ギョンミンの家族からは放逐され、なんなら横領詐欺で警察に引っ張られるしかないでしょうが、出生の真相も含めていま一度、ルビーとお母さんと和解する機会が持てれば少しすっきりするかなと思います。

 ただ、こういうドロい系の韓ドラって、いままでの視聴経験上、“すっきり”とはいかない終わり方が多いんですよねぇ。どうなるか・・そうだ、もうひとつ忘れてた。ルナがね、40話で、妊娠しちゃったんですよ。ひぇー。ギョンミンは財閥跡取りだしご両親からも、「昔、廃品を売って今の会社の資本金を作った」と武勇伝していたお祖母ちゃんからも、子作り圧力、確かに強かったんだけど、いつの間に作ってたんだ。この子の運命や如何に。ギョンミンの種なことは間違いないので、財閥家の孫として相続権は発生するでしょうけど、ルナにとっては今でさえいっぱいいっぱいな嘘の上に、さらに守らなければいけないものが増えることになるし、ルビーとしては最愛の人が“私の顔をした妹を、私と思って抱いた”結果、妹が身ごもったわけですから、もう何処に怒りをぶつけていいんだかわからない気持ちでしょう。ますます“すっきり”の難度が高まってきちゃいましたよ。


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