イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

感感ホール

2011-11-13 01:25:52 | 朝ドラマ

最後に春太郎(小泉孝太郎さん)がおいしいところをぜんぶ持ってった今週(117日~12日)の『カーネーション』

小泉さんは、気がつけば10年余の俳優人生で、ひょっとするといちばん美味しい役をもらっているのではないでしょうか。糸子(尾野真千子さん)の剛直な意地に、まずは中堅芸妓・駒子(宮嶋麻衣さん)のひそやかでいたいけな意地が触れて蕾がほころび、次いでダンスホール踊り子・サエ(黒谷友香さん)の華やかでせつない意地がガッシャン衝突、火花を散らした後さわやかにほどけて着地した、濃くて熱い週を締めくくるのがコイツって。

“何としても一週まるごとシリアス重厚系の感動には塗り込めまいぞ”という、作家さんの含羞というか、いっそそれこそ意地のようなものを感じました。ふざけたくだりほどクソまじめに書く、みたいな、こういう作風、好きですねぇ。

オサレ端整なたたずまいで出てきただけで地合いが可笑しくなる、こういう“二の線出オチ要員”って、ちょっと前なら谷原章介さんが一手に引き受けていた。その前なら沢村一樹さんか。沢村さんはいまや、別にオサレで登場しなくても可笑しくできる級に出世(なのか?)しましたが。いつもまじめで好青年然として、いっぱいいっぱいな感じを濃厚に残したまま十年選手になった小泉さんも、この春太郎役が大きな転機になるやもしれません。

古くさい着物エプロンをごっつ上物のイブニングドレスに着替えたからと言って、中身が速攻変わるわけはない。サエの、鄙にはまれなスタイルとダンスセンスに目をつけていた春太郎は、遊び慣れた男だからそのサエに、天賦の資質に見合った気張りがないのに失望して指名しなくなったのです。見返してやりたいと糸子に注文したドレスが、愛嬌を売るだけの明け暮れに埋もれていたサエのプライドを覚醒させ、男たちの視線を集め、かつてない匂い立つ色香で春太郎をふたたび惹きつけたのです。

女心をもてあそぶ、見てくれだけのにやけプレイボーイなようで、春太郎、結構、違いのわかる男だった。オペラとともに歌舞伎も愛好される父上が「感動したっ」と言ってくれるかどうか。

「それなりの道で大成している立派な玄人」とサエに言わせ、黒塗り外車からステッキ持ち白麻スーツで降り立った足元のアップ。どっちかというと髪に白いものが混じるくらいの年代の紳士を想像させ、でもカンカンホールのタラップを上る背中は、ちょっと若いかも?と見るうちに、サエのドレスデビューを見届けに来店していた糸子の脇を素通り。サエを囲む男たちをスターのオーラで追い払って、差しのべた手もわざわざ血管が浮く手の甲のほうをアップで撮り“年配感”でミスリード。これは最後まで顔を映さずに、象徴的な“運命の人”で終わらせる演出かなと思ったその最後の最後に、ニヤケッ面(つら)全開。演出もクソまじめに、汗かいて遊んでます。

もちろんサエさんは、春太郎を振り向かせたことを自信に、ダンス修業を積んで糸子のドレスに釣り合う一流の踊り手になって、もっといい男をつかまえ幸せの階段を昇るのでしょうな。次はどこへ行く、どこに現われる、春太郎。

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