イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

あなたは、私なんだ

2007-03-05 20:21:12 | テレビ番組

NHK土曜ドラマ『ハゲタカ』第3話(全6話)、いよいよ経済戦略サスペンスの色彩を強めてきました。

このドラマの心憎いところは、1話のストップウォッチon!コピー機搬入ダァーー!2話の「ゴールデンパラシュートです」見せ金バーン!などのように、“経済用語よくワカンネ素人だけど、見てるだけでなんか血が騒ぐ”絵的つかみを1話に一箇所、もれなく用意してあること。

第3話では、芝野(柴田恭兵さん)が全権代表する三葉銀行vs.鷲津(大森南朋さん)率いるホライズンインベストメント・ジャパン、廊下を挟んだ2室に分かれての、魂を切り刻むような入札合戦がそれ。

これに先立って、再建先のサンデートイズ全資産、買って再生して利益出せると仮定して、さてどれだけの値段つけられる?をそれぞれの陣営ではじき出す場面がありました。ホライズン「入札で出せる上限は」(→カットバック→)三葉「ある程度採算度外視で考えていいのなら」…チーン!190億円。読みは期せずして一致。どちらも190億までしか出せない。特に外資たるホライズンは、本国投資委員会を動かさないとこれ以上1円も出せない。三葉も出せないが、腐ってもメインバンクのメンツがある。

この縛りを前提に、息詰まる入札合戦が幕を開けるのです。

最低入札価額の120億から、ホライズンは1億ずつ上積み。190まで行けるとわかっていて、三葉も5億単位で刻みます。その都度「承りました。先方にお伝えします」と、いっさい合いの手入れず難癖もつけずに淡々と受ける管財人(『風林火山』の勘助兄役・光石研さん、ポーカーフェイスがナイス)。

持ち時間20分、両者ギリギリまで使う神経戦。ホライズン鷲津は前社長から副社長&経理担当役員(=三葉OB)の共謀横領の証拠を託されて、TV局(かつて三葉の貸し渋りで自殺に追い込まれた町工場長の娘・由香)にリークしてあり、残り時間不明の時限爆弾を仕掛けた状態。天井の190億を舐める前に爆発してくれるかどうかは賭けです。彼にとって芝野はかつて三葉行員時代、資本主義社会で金融を業とすることの厳しさを教えてくれた先輩。背中に深い疲労と焦燥、苦渋が滲みます。セリフは極限まで少ない、大森さんの演技が神業です。ほとんど寺島しのぶさんになって「付き合って!」とか言いたくなる(爆)。

三葉グループ投資会社アイアンオックス代表・日下部役矢島健一さん、いかにもNYヤンエグかぶれなストライプのシャツにサスペンダーで終始三葉側提示額をリードしつつ、運命の190億を跨ぐ決定的な局面では芝野に「これ以上行くと採算割れが出ますが、突っ込みます、いいですね?」とゲタ預けてくるクレバーさが最高。“頭いい系のちょっとヤなヤツ”を得意とするこの俳優さん、『華麗なる一族』では何かっつったら原料銑鉄供給を渋ってくる意地悪な国策系製鉄所長を演じていますが、こちらのほうが断然存在感がありました。

ワンマンな母社長(冨士眞奈美さん)に逆らってトップを狙う野心無いではないが、とにかく苦労せず汗かかずにいきたいものぐさ根性に付け込まれて三葉に担ぎ出されたアホ三代目役・小林正寛さん(『白い巨塔』財前子飼いの安西医局員、『仮面ライダーカブト』ではラスボス格)の醸し出すもったりしたひ弱さ、“こんなヤツ見込んだ時点でそのプランだめだよ”感も最高。やっぱり役者を活かすのは作品なのだなぁ。

1話段階ではちょっと物足りないなと思えた、芝野・鷲津の男vs.男の色気も、入札開始前二手に分かれて各控室に入る、物言いたげな場面、横領報道を潰せず三葉に辞表を出し銀行をあとにする芝野の前に、車から降りて鷲津が立ちはだかり「うちに来ませんか」と誘う場面などに、いよいよ濃厚に匂ってきました。

減点だなと思うのは三島由香(『キル・ビル』ゴーゴー夕張・栗山千明さん)のキャラ。町工場が多忙でも元気だった頃、父(日本一のブルーカラー役・渡辺哲さん)にも可愛がられ、葬儀では土下座して泣いてくれた、優しくフレンドリーな若手銀行マン時代の鷲津に、いまだ幾許の想いを残している演技、そこはいいんですが、回想シーンの「人殺し!」も、横領疑惑を否定する芝野への「何をやってるんですか!それでいーんですか!」も同じトーンの金切り声。これじゃ、父の自殺を恨みに思う私情まる出し。男たちがこんだけ白熱のタイトロープを繰り広げてるんだから、体当たり取材しかスキルのない新人記者という設定ではあっても、このドラマで唯一の女性軍、もう少しスマートに見せられないものか。

鷲津「銀行を辞めたそうですね」に恭兵芝野「カンケーないだろ」とか、由香の上司である経済デスク野上(小市慢太郎さん)の妙にウェービーで空気感あるロマンスグレーはC紫T也さんを意識したのかなとか、NHKには珍しく小ネタもさりげなく挿入されています。NHKマンもTVマン。こういうの、やってみたいんだよね。

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