イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

わだうかだー

2012-05-20 14:42:26 | 朝ドラマ

『梅ちゃん先生』でいちばん見ものとして見ごたえがあるのは、OPの町内ジオラマとクレイドールアニメーションで決まりでしょうな。これはおおかた異論ありますまい。

木造2階建て住居兼の商店が並ぶ街、手づくり感あふれる看板の並び、中小路に手汲みポンプ、灯ともし頃にぎわう街頭テレビ、屋台に寄って来る野良猫ならぬ“町猫”。魚すくいやチャンバラごっこ、フラフープに興じる子供たち。白衣に黒い診察鞄をさげた、ちょっと面長に成長したワンテール黒髪の大人梅ちゃんが小路を歩き、町の人と立ち話をしたり、ほころび始めた梅の木を見上げたり。

以前の記事で『梅ちゃん』について「漫画にしたら人物がみんな3等身ぐらいになりそう」と書きましたが、このドラマの空気感や色合いを、どの役者さんよりも、どの場面のどのセリフよりも、このOPアニメが的確に表現している。“計算されたプリミティヴさ”とでも言いましょうか。

逆にドラマ“本体”を、このOPアニメの“実写長編化”と考えればハラも立たない。いや、ハラ立てながら毎度視聴してるわけじゃありませんが、なんかいろんなことが許せて、解決がつく気がしてくる。人物が記号的にプンスカ怒ったり、あっさり和解キャッキャしたりするのも、すべてはアニメだから。

このジオラマ、週6回、映る場面の並びが、クレジット人数に応じてか少しずつ違うのもポイント高いですよ。毎月曜はキャストのほかにスタッフクレジットも出るので、もともと15秒ぐらい全体の尺も長いのですが、月曜以外の曜日でも、アレ?昨日物干し台で布団を干していた奥さんが今日は出てこない?ネコはどこへ行った?と引っかかると、確かめたくなって翌日つい待ち構え目をこらしてしまう。なんならいままで映った全場面、捜査本部会議室のホワイトボードみたいにマグネットピンで留めて並べて、町全体のナビ地図作ってみたいくらい。“次回もぜひ見たいと思わせる”というのは連続ドラマ作りのはずせない要諦ですが、『梅ちゃん』においては本編ストーリーよりも、このジオラマアニメが大半その役割を果たしています。♪…しあっわせが~てれっくさそうにキミと目が合って~わだうかだ~ とOP曲が終わって本編に入ると、安心して画面から目を離し洗い物や野菜刻みに戻れる、ってぐらい、OPの牽引力が突出している。

“本体”への残念感はそんなこんなでだいぶ埋め合わせがつくのですが、埋め合わせつかない級の残念項目もあり、そのひとつが“音楽”です。音楽に、このドラマ驚くほど無神経です。

BGM単体では、たとえば梅子(堀北真希さん)が医薬品山道運搬で泥まみれになった制服を洗濯して干す場面や、典子さん(西原亜希さん)がさばさばと子持ちカミングアウトした場面などに流れた曲は朝ドラらしくさわやかアゲアゲ系の佳曲だと思うのですが、このドラマ往々にして、“さぁここから見せ場ですよ”“大変なことになりますよ”というアテンションどころでまるっとアニメ音楽全開になってしまう傾向があります。作曲の川井憲次さんが実写ドラマよりもアニメ音楽でより実績のある人だということを、選曲担当さんが意識しすぎて悪乗りしてやしないでしょうか。同じ川井さん音楽でも昨年のBS時代劇『塚原卜伝』や、土曜ドラマ『鉄の骨』などは音が出しゃばらず物語の地合いにちゃんと馴染んでいましたから、川井さん個人の責任ではないと思います。

OP曲も、SMAP歌唱を採用したことにはいまさら文句はありません。ちょっと年はくったけど依然老若に人気者だし、ソロではなくユニットアーティスト、それも結成20年選手であることで“チームワーク”“絆”のイメージもある。作品に張りと輝き、メジャー感を添える意味でも有効だと思うけれど、楽曲が微妙すぎませんか。

♪わかってるんだキミはくつ~ひも~を と木村拓哉さんソロの、ヌケのよさはないけれどこんもりあまーいヴォイスでしずしずと始まるのはいいけれど、上に向かう振幅があまりない、と言うか、ぶわぁ~~と歌い上げるフレーズが来そうで来ないまま終わるので、カタルシスがないんですよ。

まぁ、木村さんをカシラに、稲・草・香…あともうひとり問題のホレ…と思い出していくと、“澄明な声質で朗々”というタイプが見当たらない顔触れなので、どうしてもデートのような、近距離で会話する風な楽曲になりがちなのはわかりますが、もうちょっと前はもっとぶわぁ~~とした曲も歌ってたような気がするんですが。

……なんだか服士紳ルヤイロ店主みたいになってるな

劇中、オーディション挑戦してクラブ歌手に転身したあかね役=宇野実彩子さんの歌もかなり脱力もの。進駐軍時代に台頭した若き日の江利チエミさんや雪村いづみさん並みの洋楽ソウルをAAAの宇野さんに期待するのは無理かもしれませんが、劇中歌唱なんだから、“非凡な才能に聞こえるような聞かせ方”ってもっとあると思うのです。エコーきかせるとか、絵はクチパクで別録音の歌唱をミキシングして厚みを出してかぶせるとか、観客のノリやバンド奏者とのアイコンタクトを入れたカメラワークで見せるとか、何かしらありそうなもんじゃないですか。どう考えても歌える女優のイメージなかった尾野真千子さんでも、『ふたりの糸子のうた』で子役の二宮星さんとちゃんとデュエっていたのだから。

ニューオリンズでのあかねちゃんの歌って、贔屓目に聴いても“歌って踊れるアイドルにかぶれた平成の女の子”にしか聞こえない。このキャストで、このセンスのスタッフで“終戦直後の東京蒲田”を実写ドラマにしようという企ての“無理”が、あかねの歌に集中して表われてるようですらある。『瞳』で里子(さとご)OG・恵子役で、洗濯機回しながら歌ってるときのほうが上手く聞こえたんだから、宇野さんも今回は損な役回りでした。気の毒。

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