イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

空幕たる自他バタ

2008-11-10 00:12:44 | ニュース

田母神空自前幕僚長(←こう表記するとどこまでが人名でどこからが職制名なのか、航空自衛隊だけに雲海の中を行くようですな)(“たもがみ・くうじ・ぜん・ばくりょうちょう”。自分のために仮名書きにしてみました)の懸賞論文問題、ご本人の国会参考人招致を待たずしてジタバタバタッと幕引かれムードですね。

メジャーなオピニオン誌ではなく、こんな会社が何故?という主催の単発懸賞イベントで、しかも応募者の4分の1が現職空自隊員、募集要項は異例の空幕教育課から全国部隊にファックス紹介されていたりと、何やら“お手盛り”“出来レース”の気配もするなど、背後関係が論文の内容以上に輪をかけて香ばしい事案ですが、ハマコー二世防衛大臣が「懲戒免職にすると、正式決定までに10ヶ月かかる。いますぐ職を退いてもらうためには定年退職扱いにし、(懲戒免職なら支給されない)退職金は返上を勧告するのが、処分としていちばん迅速な方法と判断した」とコメント。

何ゆえそれほどに“迅速”にこだわるか。ジタバタバタッと幕引きもみ消ししたいムードになる理由、月河は近年の国防事情や自衛隊の内情にはまったく明るくありませんが、一般論としてなんとなくわかる気がするのです。

憲法に謳われ、誰もがア・プリオリに正しいことと信じて疑わない“言論の自由”“思想・信条の自由”が、実は大変怖いものであることにみんな気がつきはじめているのではないか。

「言っていいことと悪いことがある」とは、国防幹部や官僚・政治家でなくても一般市民の我々が普通に日常言うことですし考えていることです。如何に言論の自由・表現の自由が憲法ででかでかと保証されていても、「その立場、その肩書き背負ってるオマエが、その場面で言っちゃ、その媒体を使って書いちゃ、やっぱりいかんだろ」「ハラの中で思ってるだけなら自由だけど」「百歩譲っても、窓戸閉めて外に漏れないようにした自宅で、晩酌傍らにカミさん相手に一席ぶつ、そこまでだろ」ということは厳然と存在する。

今回の田母神さんも、休暇中の自宅でステテコ腹巻きビール片手に「まあなー、政府見解なんてあんな自虐史観クソだよなー、日本だってやればできる子なんだよ、空爆バリバリドッカーンよ、がはは」って言ってるだけならこんな問題にならずに済んだ。

しかし、問題にならなければいいかといったらそうではない「言わなくても、いけないこと」も厳然と、本当は存在するのです。

「思うだけ、考えるだけで、クチや行動に出さなければ憲法に抵触しない」としてしまったら、たとえば「なんぼ教えても成績上がんないガキなんて進学指導なんか打ち切って放校して肉体労働させりゃいいんだよ」「あー2年○組の△子スッパにしてパイオツ揉みてぇな」と“思うだけでクチに出さない”教員もいていいし、「こんな貧乏高齢クズ患者みんな死ねばいいのに」と“思うだけでクチに出さない”医師・看護師もいていいことになる。

 「行動に移さず、言葉で表現しなければ何を考えても法に触れない」=“目に見えない思想や思考までは外から干渉も、規制もできない”というのは、実はこの上なく怖いことなのです。

そこらで愛想笑いしているセールスマン、愛嬌たっぷりのメイド喫茶ウェートレス、キャバクラ嬢から、上は公人たる政治家・官僚まで、“どんなにクチで綺麗事、奉仕精神な発言していても、本当はテメエの利益と快楽しか考えていない”“どうにかして他人を騙して出し抜いて傷つけて、自分だけが甘い汁吸う気満々”という可能性だらけになり、しかもそれを咎める根拠はどこにもない。

“思想・信条の自由”とはパンドラの箱です。ひとたびフタを開けると、輝かしき夢や創造力、発想力も飛翔する代わり、あらゆる災厄、悪意、猜疑も同時に噴出してしまう。自由主義、個人主義、平等主義の大前提には抵触しても、「本当は、ひと言もクチに出さなくても、書き記して人に披露しなくても、思う、考えるだけで罪悪なことがある」「立場や職責、TPOによって、“この人は考えてもいいけど、あの人は考えてはいけない”ことがある」ということを、フタを開ける前に箱の前にいる人間全員にとことん教育しなければいけない。教育し終えてから、初めてフタを開けなければいけないのです。

しかし止んぬるかな、フタはすでに開けられている。開ける前の時代には二度と帰れないのです。

いまの日本は、“思想・信条の自由”という怪物を制御し管理する力がない。どんな立場の誰が何を考えていても、考えているというそのことを咎め、改めさせる任には誰もない。せいぜい、その思考が媒体を通じて“表現”されたとき限定で「きみのいまの職責では不適切だよ」と職から追う程度の拘束力しかない。

そのことが自他ともに明らかとなり、自他ともに認めさせられるのがあまりにも怖ろしいので、当局は幕引きを急ぐのだと思います。

………ところで、田母神さん60歳、若い頃はやっぱり「タモちゃん」「タモさん」って呼ばれたのかな。自衛隊の宴会で片目黒メガネに前歯ワンポイントお歯黒でイグアナのマネとかしなかったのかしら。

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