2月末、ここから一気に春に向かうかと思いきや何やらグズグズ。カラッ、ジリッと夏らしい季節感を求めて、最近再び岩本正樹さんの『白と黒』サウンドトラック(←←左柱←にタイムレス・マイベストとして載せています)も聴き直していますが、やはりいいですね。
ドラマや映画のサントラCDは、1曲めに主題とも言うべき“劇中いちばん頻繁に流れて、耳馴染みができた曲”をもってきて、締めには最終話のクレジットに流れたテーマをいきなり荘重なアレンジで…というラインナップが多いように思いますが、この盤はすっと忍び足のように始まって、二つから三つのピークをきちんと上り下りし、過剰にテンション上げずにラストの『ひかり』(原曲はプッチーニ作の歌劇『トゥーランドット』より)インストにつなげる。
アタマから順に通して聴いたり、ランダムで聴いたりしていると、本当に部屋の中に夏のひかりが、高原の緑の匂いを連れて差し込んでくるよう。
ドラマ本編は、先日もここで触れたように、放送終了後地点から再展望すると、少なからず残念な点が散見されるのですが、この音楽だけで取り返して二往復分ぐらいお釣りが来る。唯一不満は、劇中かなり印象的、効果的に使われていた記憶のある曲が、いくつか未収録という点のみです。
放送中公開されていた番組公式サイトで、岩本さんはこのドラマ音楽のテーマを“まなざし”と“情熱”においてみた…と語っておられました。TVドラマの劇伴のつね、放送開始までには全曲完成済み、放送中どの場面にどの曲を使うかは選曲、音効担当さんのお仕事の範疇になり、曲から場面や台詞が派生してくることはまず無いのでしょうが、この曲たちが先に完成していて、曲のイメージから脚本が書かれていたとしたら、いま少し“理屈の小骨”の抜けた、情緒的にふっくら肉付きのいい作品になったかもしれないなとふと思いました。
ドラマを視聴していて、若干気持ちが置き去りにされてしまう局面も、このサントラによって湧いてくる感興で橋を架ければ、かなり解釈が助けられるし、人物をより好きにもなれる。音楽が想像力に働きかけるパワーのすごさを改めて感じます。
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