イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

先生と呼ばれるほどの豚でなし ~木に登る学術会議にも上る~

2020-10-07 12:27:51 | ニュース

 狙って突いたのか、ズレてヘンなとこ踏んじゃったのか、良くも悪しくも菅新総理のキャラが現れたなあと思います。日本学術会議会員候補の一部非任命問題。

 菅さんにしてみれば、「毎回前例踏襲で推薦まるのみじゃアレだから、辛めに行こうと思っただけなのに、なんでこんな国民生活に縁遠いとこでゴツゴツ引っかかるんだ」と、内心怪訝かつ焦れったく思ってるかもしれない。

 先の総裁選で何度も強調された通り、菅さんは東北の農家から上京、工場で働きながら法政大の二部を卒業して、同郷議員の門を叩き末席秘書から政界に入った経歴ですから、およそ“学問”“学歴”というものについては非常に突き放した、ドライな捉え方だと思います。何かの職で世に打って出て、渡って行くための、幾つもある“方便”のひとつぐらいにしか思っておられないと思う。学は身に着けるべきだし有るに越したことはないが、無きゃ無いで他にも方便、策はある。

 或る意味きわめて合理的に“学問”というものを見、ついこの前までは官房長官、いまは総理大臣として我が国の“高等教育”“学術研究”のあり方をもその延長線で考えている。コスト、リスク、メリットとデメリット。幾らぐらいの予算を投入すればどれくらいの果実が、どの程度の確率で期待できるか。他にもっとローリスクローコストでハイリターンな策は無いのか。リターンがふわふわしているわりにはコストが高すぎると思えばばっさり行けばいい。

 ・・ところがどっこい、菅さんがあずかり知らない“学者”の世界というのは、合理的とは対極に、実にドロドロとした、嫉妬、羨望、やっかみ、恨みつらみ、派閥争いや足の引っ張り合いが渦巻く世界なわけです。

 彼らは言葉には出さないがつねに自分と、同年代で同分野で同じくらいのポジションにいる他の学者とを脳内で比べていて、何々賞に誰が選ばれた彼が落選した、ドコソコの要職に誰と誰が昇進した、誰が降格した、何々に招聘されるのが誰某は自分より一年早かった彼は遅かった、同時に昇進したのに誰が上席になった誰が次席だ・・等、およそ“当落”“順位”“席次”の付く話に、信じられないほどナーバスで執念深いのです。

 「出世がしたくて学問研究してるわけじゃないさ」「出身関係なく研究者が協力して、学界全体のレベルが上がって行けばいいのさハハハ」等と日頃小綺麗な事を宣っておられる先生ほど、内心は地獄の釜の様に煮えくり返っていて、“同時に推薦されたアイツ、コイツは任命されたのに、オレだけ拒否られた”なんて事態が出来したら、もう何日も眠れないわメシはノドとおらないわ、藁人形に五寸釘そこらじゅうの柱にグサグサやらなきゃ済まない勢いです。

 学者先生というのは、小学校中学校高校大学を通じて、「この子は他の子よりアタマがいい」「同年代の誰より優秀だ」なんなら「わが校開校以来の神童だ」等と言われつけて、言われることをレーゾンデートルにして大人になってきた人たちですから、“選にもれた”“同輩の誰彼と比べられて任に足りないと判定された”“後塵を拝した”となることをダカツの様に嫌います。もう理屈じゃありません。“合理的”なんてイヌにでも食わせろです。コストとリターンのバランスも、リスクとメリットの勘定もヘッタクレもあったもんじゃない。日本でいちばん頭脳明晰、各専門分野の俊秀とされる学者先生たちとは、こと“選考”“合否”“順位序列付け”の問題となると、実は最も非合理的な、感情、怨念、妄執で動いたり動かなくなったり、ヘンな方向に動き出したりする人種の集まりなのです。

 こういう先生たちに気持ちよく、持てる知性を爽快に全開して働いてもらおうと思ったら、こう言っちゃなんですがおだてて乗せなきゃダメです。「この分野ではアナタが第一人者だから」「専門家と名がつく先生は幾らもいるがアナタは別格だから」とマクラを振れば、もうネコまっしぐらに協力的になります。

 日本学術会議会員になると出張るたびに1万8千円のお手当が出る(年度末になると予算が足りなくなって出なくなることもあるとか)なんて話もありますが、月河が思うに千円でも、二千円でも、なんならコーヒー一杯分でもいい、要は「他の先生にはさしあげられませんが、アナタにだけは」と差をつけてあげることが大事。“他に比べて、あなたが図抜けて優れている”と言われるのが、この人たちの何よりの生きがいであり目標であり至福なんですから。

 逆に、今回みたいに、“候補リストに挙げておいて、選んで落とす”ってのがいちばんやっちゃいけないことです。一生恨まれます。藁人形にされて五寸釘です。

 “学問”を方便の一つとしか見ていない叩き上げ現実主義者の菅総理、ここがわかっておられなかった。自分よりはるかに高学歴、高学校歴の役人や先輩議員たちを才覚と度胸と運動量でのしてきた自信があるから、学識、お勉強の出来(だけ)が取り柄の“学者先生”にさしたる尊崇感も、そういう先生たちをご機嫌よくさせる特段の気遣いの必要も感じていないのだろうと思います。

 菅さんになって急に決まった任命見送りじゃなくだいぶ前の年度から伏線はあったらしいですが、前任者安倍さんならどうだったかなと思います。安倍さんも金持ち坊っちゃんのエスカレーター校出身であんまり高学校歴じゃありませんが、父上もお祖父ちゃんも大叔父さんも、あと、定規でひっぱたいたとかいう元・家庭教師のアノ先生(現・復興相)も東京大学卒です。周りにアカデミズムに親しい人が多かった分、いま少し“学者ワールド”“学者先生のトリセツ”を心得た斬り方をしたかもしれない。

 今回任命を見送られた6人の先生方は、前の政権時に安保法制や共謀罪で反対の論を張ったから忌避されたんじゃないか、だったら政治が思想信条の自由、学問の自由に枷かける戦前思想じゃないかと、レフト寄りな媒体が騒いで今回長引いていますが、むしろそっちのほうが後付けではあるまいかと月河は睨んでいます。

 任命されなかった先生方だけじゃなく、学術会議会員・準会員全体、それどころか会員にかすりもしないレベルの学者研究者さんでも、「学問の自由を守れ」は建前であって、クチに出して言わない本音の総意は「私大の夜間部しか出てない総理に手を突っ込まれる筋合い無いわ」というところでしょう。

 頑張れ菅さん。間違っても「そうですかそこまで仰るなら任命しましょう、ハイ任命」なんて折れたらダメだよ。

 任命されなかった先生方も、「説明しろ、任命しろ」と押して押して、渋々任命されるんじゃアリガタクもないでしょうよ。この際、「オレは切れ者すぎたから時の政府に拒否られた男なのさフッフッフ」をセールスポイントに、在野で堂々論陣を張って行かれては。そのほうがカッコよくないですか。都度1万8千円ぐらい、クラウドファンディングでどうにかなりますよ。優秀なアタマを使いましょう。そうしましょう。

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