イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

高齢ドライバー考 ~歯に令和の令と書いて~

2019-04-25 16:06:06 | ニュース

 “平成”も残り〇日!のカウントダウンに入って、ここんとこニュースの主役にover 80が多い。

 訃報は仕方ありませんねコレ。季節の変わり目、芽吹き時・花ほころび時は、高齢者、特に持病アリ既往症アリにはこたえますから。

 『ルパンⅢ世』のモンキーパンチさん、陸上の小出義雄監督、セニョールセニョリータグラッチェグラッチェのケーシー高峰さん、歌謡曲作詞の有馬三恵子さん(一作挙げるなら小川知子さん歌唱『初恋のひと』)、このへんの方々は「もうそんなお年だったんだ」と改めて驚きます。全盛期のイメージ、作品がいまだ印象鮮明で、あの頃からもう〇十年以上たってるんだから、あの頃三十代四十代の働き盛りだったとしたら・・「確かに八十過ぎててもおかしくないな」「自分だってこの年齢だもんな」とようやく納得する。

 しかしこちらはどうでしょう。先週19日金曜日午後2時過ぎ、出先の待合スペースのテレビはこの速報とレポートばかりでした。東京・東池袋の暴走プリウス運転87歳元・通産官僚氏。

 死亡したのが若いママさんと、チャリ同乗の就学前の幼い女の子だったことと、加害者が中央官庁幹部天下りOBで、同年代の夫人同乗だったせいでいろいろ色がつきまくり、物の本質が見えにくくなっていますが、高齢ドライバー問題、運転免許自主返納の問題って、昨日今日俄かにじゃない。もう十年以上前から問題になっていたのではないでしょうか。

 テレビよりも、ラジオのほうがリアルタイム受信者のドライバー率が高いですから、話題にのぼせるのが早かったと思います。「免許更新の会場、車で来て、駐めたとこまではいいけど、降りたら“つかまり歩き”してるお年寄りドライバーがぞろぞろ」という、笑えない笑い話を聴いたのは確か平成10年~12年頃、西暦「2000年問題」なんて言葉がホットだった頃です。

 現在から逆算すれば、暴走通産省OB氏と同年代の人たちはこの時期、まだ70歳を超えたか超えないかです。ぽつぽつ現場から聞こえてきていた情報を“我が事”とはとらえていなかったのでしょう。

 これ、テレビ番組特に民放では、長年大手スポンサーである自動車メーカーに遠慮があるから、「いまの最新モデルは事故回避のためのいろんな機能を搭載していて・・」なんて逃げ道紹介に終始し本質を衝けないのかもしれませんが、普通に考えて、高齢者の“自主”返納を待ってたって進むわきゃありません。

 現に手にしている権利を自分から手放すことは、人間、しないものです。したらバカです。選挙で選ばれた政治家、議員、それこそ官僚のありようを見ていても一目瞭然です。まして一般高齢庶民においてをやです。

 結局若い層、現役世代層がだらしないのです。七十も超え八十も超えて、杖がないと自分の二本脚で歩けないどころか、ブレーキとアクセルの踏み間違えも自覚できないレベルまで老耄した人に「クルマが運転できないと不便だ」「生活できない」と言わしめる様な社会のシステムが間違っているのです。間違ったまま無為無策で続いているから、高齢者に返納を渋られたとき反論できない。

 高齢者は車のハンドルなんか握らなくても、なんの不自由もなく何処へでも好きな時に行けるような仕組みを、現役世代が率先して作ってあげなきゃいけない。そのうえで「返納してください」だと思う。

 「返納させるにはご家族からの説得が・・」なんて聞き飽きた。要するに、家族も免許なし老人が何処へ行くでもなく家の中でゴロゴロされてたらうんざりなわけです。病院だ、歯医者だ、老人会の集まりだ、パークゴルフだのたびに車出して送迎して、乗せて帰ってきてやらなきゃならないのがウザくてしょうがないわけです。そのへんで白昼、見ず知らずの通行人を二~三人轢き殺してくるリスクが多少あっても、年寄りに免許持たせて野放しにしておくほうが、自分たちの時間もカネもカラダもラクだと思っている現役世代が多数派だから、いつまでたっても免許返納が進まないのです。

 高齢ドライバー問題は、詰まるところ“非高齢者による高齢者放置問題”であり、児童虐待問題の中における“ネグレクト”と相似です。

 「家族ゆえ、おじいちゃんのプライドを傷つけてはまずい、気の毒、という遠慮がある」「同居だし言い合いになって家の空気が暗くなっても・・という危惧があるから、強く返納を求められない」・・ざっとこんな当事者の声も飽きるほど紹介されましたが、なに、傷つける暗くなるのリスクを取りたくない、平穏無事に、ラクしてこの何年かをやり過ごしたいだけです。

 成長する児童と違って、高齢者なら、そう遠くないうち、マスコミに騒がれる級の大事故を起こさないうちに死ぬだろう、寝たきりになるだろうと思うから、誰も真剣にリスクを取りに行かない、マスコミもネットも含めて。

 ことが“高齢者”になると、みるみるうちに論調から熱さ、尖鋭さが鈍って、遠巻きに半笑い苦笑いのうすらぬるいムードになる。たぶん、いま現在の高齢者を想定してビシッとした厳格ルールを作ったら、ものの10年かそこらで自分たちがその規制対象になるとみんなわかっているから、本気で緊張感あるルールを作れないのでしょう。 

 この件に限らず、「先が無い日本」「右肩下がり必至の日本」という、口にはしないが皆が共有している諦めの眺望を、はしなくも切り取って見せているのが、この、いつまでたっても抜本策の示されない高齢ドライバー問題だと思います。

コメント
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