たかが2週間ほど前なだけなのに、えらく旧聞な話を、忘れないうちに。昨年の12月24日、クリスマスイヴが土曜に当たった夕方17:00過ぎ、偶然『てっぱん番外編 イブ・ラブ・ライブ』を出会いがしら視聴できました。
「『てっぱん』が、帰ってきましたでぇ~~!」という中村玉緒さんの、パチンコ好きヴォイス(何だそれ)のナレーションがえらく懐かしい。ほんの9ヶ月前まで、ほぼ毎日聞いていた声なのですけれどね。
“前の前”の朝ドラの、新撮SP番外編って恒例なのでしょうかね。いくら設定が“イブ・ライブ”でも、本物のイヴの、しかも土曜の夜の夕食前どきの放送では在宅率も低そうだし、番宣もついぞ見かけなかった気がする。
内容も、やってくれて嬉しかったかというと微妙でした。かつお武士浜勝社長(趙珉和さん)と根本コーチ(松田悟志さん)に岩崎先生(柏原収史さん)の“残念イケメンシングルズ”メインの、大阪での後日談エピソードで、大半が安上がりなセット内(“おのみっちゃん”のセットすらもう存在しない)で終始し、ドラマの大きな魅力だった尾道ロケシーンは皆無。初音さん(富司純子さん)のほか、田中荘店子卒業組も、田中荘・おのみっちゃんを囲む人々の顔も見えず、最後のほうで紹介された寄せ書きメッセージのみ。
現行放送中の『カーネーション』と比べては分が悪いですが、『てっぱん』もそんなにクォリティの劣るドラマでもありませんでした。要所要所、結構、見るべきところはあった。いささか話が“家族”“親子”に拘泥し過ぎて、もう一方の主題である“食”“音楽”の扱いが雑なきらいはありましたが、昼ドラ同様、朝ドラもおおむね、特殊技芸やビジネスお仕事部分の描写はおそろしく浅いのがつねで、致命傷になるものではありません。
ただ、この番外編、脇役さんの中でも、初音おばあちゃんの富司さんと、金ヘンに定めると書く尾道のお父ちゃん遠藤憲一さんと、バイク住職尾美としのりさんが一度も顔を見せないとなると、驚くほど“『てっぱん』感”が薄くなってしまいました。改めて、『てっぱん』は、この年長組3人でもっていた世界だったことがわかる。趙さんたちヤング(???)3人組も、9ヶ月前に解散した世界を、どうにか連続させるべく頑張ってはいたのですけれど、話を接ぎ合わせようとする台詞を重ねれば重ねるほど気が抜けてしまう。
髪を切ってしまったあかりの瀧本美織さんは、民放のドラマヒロインも経験してスラッとボーイッシュに垢抜け、尾道訛り演技を取り戻すのに明らかに難儀していた。お好み焼きに供しどき、食べごろ熱々適温があるように、本編終了した連続ドラマの“おまけ”SPは、“出しどき”であらかた成否が決まってしまうものです。
加えて、“家族”“家族をつくる”テーマにまたしても足をとられて、浜勝社長の見合い結婚話という、どう考えても本編視聴者の大勢が興味持ちそうもない話題を取っ掛かりにしたためにますます気抜け化した。浜勝さんのあかりへの恋愛感情って、完結の9ヶ月後にまた蒸し返すほど視聴者に注目され、応援されていたとは到底思えないのですが。家族ネタでどうしても押したいなら、根本コーチの、一度は逃げた奥さんカムバックまで篇でも作ってもらったほうが嬉しかった。
あるいは、趙珉和さんの、新年からの大河ドラマ『平清盛』レギュラー出演への、距離遠めのエール、アシストを兼ねていたのか。
このSPでいちばん儲け役だったのは岩崎先生でしょうね。バレンタインデー前には地元からチョコレートがなくなるそうです。ガーナにでも住めって話。「岩崎バレンタイン潤」。「クルム伊達公子」みたいだが。“この人が画面に出たら笑っていい”担当を存分に演りきってくれました。