『電王』のアバンタイトルに、「部屋を明るくして、画面からお下がりください。」ってテロップが出ます。
もちろん97年12月のアニメ・ポケモンショック以来、お子さま向けアニメ、CG多用の特撮ドラマには漏れなくついてくる告知で、特別目新しいもんじゃありません。
それにしても「…お下がりください。」ってずいぶん偉そうじゃない?前からこんなんだったっけ?と思ってライダー前作『カブト』の録画を見たら、「部屋を明るくして、画面から離れてご覧ください。」…「ご覧ください。」な分、いくらか下手(したて)に出てる感じ。
昨日、平成ライダー歴代主題歌のおさらいをしたついでに、録画の残ってる分ぜんぶこの告知テロップを洗ってみました。
2000年の『クウガ』は録画がなくて確かめようがないんですが、01年『アギト』、02年『龍騎』は「テレビを見るときは、部屋を明るくして、/画面に近づきすぎないよう注意して下さい」と2行の分かち書き。
03年『555(ファイズ)』は「部屋を明るくして、画面から離れて見てください。」と1行で簡潔に、字体もひと回り小さくなり、大人番組としてもおかしくない絵づら。
04年『剣(ブレイド)』は、文言は『555』と同じですが、漢字にぜんぶルビ。ちょっとお子さま向けに原点回帰。
いちばん凝っていたのは05年『響鬼』で、黒地に白抜き○囲みの毛筆体で“告”とタイトリングされた告知画面をわざわざ作り、「テレビをご覧になる時は/部屋を明るくして/出来るだけ遠くからご覧ください」と記して、アバンタイトル前に太鼓の効果音とともに挿入。「出来るだけ遠くから…」と、平成子育て世代の住居事情を世論に訴えるかの様な文言構成といい、“こうゆう告知が義務付けられている児童番組の現状”そのものを逆手に取って、軽く自嘲しているともとれる、ブラックな遊び心も垣間見えました。
さすがにやり過ぎ、凝りすぎたかなと思って、06年『カブト』では普通の1行テロップに戻したのかもしれません。
まぁ、そんなことはどうでもいいのです。
『龍騎』を初めて観た時は、正義のヒーローが悪と戦うという従来の仮面ライダーのイメージをはるかに超えて、いろんな境遇いろんな思想の闘士たちが己の信じるもののために鎬を削る、一種の英雄ファンタジーとも言える物語のスケールの大きさに魅了されたのですが、その後の『555』以降の作品は、残念ながら物語の磁力がダウンしてきているように思えてなりません。
『龍騎』でカードバトル、『555』でお子さまたちの憧れ=携帯電話を変身ツールにして、『剣』でアレ?またカード?いや今度はトランプか、と思った辺りからこちらも読めてきたのですが、やはりまず玩具会社の“今年はこういうおもちゃ、グッズを売っていきたい”という企画がまずあって、それに沿ってキャラクター造形し、人物設定を組み、グッズリリースの時期に合わせてドラマ内でキャラ紹介・技見せを展開していかなければならないという作劇上の縛りが、物語を痩せ細らせているようです。
誰だったか忘れましたが(忘れたのかい!)、往年のプロ野球の名投手が「球威さえあれば、球種なんてストレートとカーブだけで十分、完投勝利できる」と豪語していたことがあります。
物語が面白く、主人公に魅力があれば、ツールなし生身の「変身!」ポーズ一発、変身体一種、必殺技もひとつでたくさんだと思うんですがね。
夏休みめがけて強化フォーム披露したり、第二・第三以下のライダーと共闘したり仲間割れしたりしなくても1年間完走できる、骨太なヒーロー物語を作ってもらえないものでしょうか。