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イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

白薄荷 黒薄荷

2017-05-27 23:59:55 | 海外ドラマ

 『CSI:科学捜査班』=ベガスCSI終了後をうけて、同じ制作チームで放送開始された『CSI:サイバー』、こちらも早くもDVDが出ています。本国では、ベガスCSIの、ラス前第14シーズン終盤に『サイバー』のメインキャラクター=エイヴリー・ライアン捜査官がゲストインしているので、後継シリーズとして育てることは一年以上前から既定路線だった模様。

 こちらはベガスやマイアミといった所謂”所轄”ではなくFBI=”連邦”捜査局のサイバー犯罪部門が舞台なので、全米各地の同種犯罪捜査に携わりますが、中枢はあくまで首都ワシントン。OPにオベリスクが映るだけでワシントン感が高まりますなあ。リンカーン記念堂でリンカーン像の足元に腰かけるエイヴリー。スケール感はたっぷりです。が、一方では”快楽と欲望の都”=ラスベガス、”エンドレスサマーのビーチリゾート”=マイアミ、“ファッションとビジネスと人種の坩堝”=NY、といったローカルカラーが事件にも、人物にも稀薄なのが痛し痒しか。

 主任のエイヴリーがもともと臨床心理士で、診療データファイルに侵入され患者を殺害された過去があり、その件がきっかけでFBI捜査チームに加わったというところが設定のキモらしい。ネットやオンライン・システムを捜査する要所要所で、犯人像のプロファイリングや、事情聴取時の表情リーディングが効いてくる。やはりデジタルだけじゃ机上過ぎて、ドラマとして躍動感がないですもんね。

 エイヴリー率いるSEでプログラマーでもあるメガネヒゲ巨漢のダニエル、元ブラックハッカーのベビーフェイスなアフリカ系ブロディ、同じくギャル風金髪のレイヴン。現場でコラボするのは元・海軍で格闘逮捕術にも長けた良きパパ、でもバツイチのムンド捜査官。みんなそれぞれひとネタ過去に持つ顔ぶれと見える。

 そしてサポートする上司のシフター副長官役で、おや『NUMB3RS:天才数学者の事件ファイル』の自由人な物理学者役で出たり入ったりしていたピーター・マクニコルさんの顔も見えました。この人、幾つになるのかなぁ。『ソフィーの選択』でオスカー女優メリル・ストリープさんのアナザー相手役をつとめていた頃から、なんとなーく額が広くなりそうな予感はただよわせていましたが、気がつけばさほどの”伸展”はないような。アメリカ人にしては小柄だから若く見えるのかな。

 ベガスCSIの最終エピで、「オファーがあって東部へ」と去って行ったDB主任がこの『CSI:サイバー』にレギュラー参入すると聞いていたので、どんな形での活躍になるのか、ベガスへのリスペクトのつもりで見とどけようと思っていましたが、その前に、「DBのレギュラーは第2シーズンから」「第2シーズン限り」で、それどころかシリーズごと第2シーズンをもって打ち切りになってしまったという情報が。

 嗚呼。やはり、デジタル主軸のお話では視聴率が取れなかったのかしら。はたまた出演者と制作サイドの不協和音か。なんか、”DBの無駄遣い”に終わった・・というより、ベガスCSIでも働きのわりにはラストエピの見せ場をグリッソムの一時帰還にあらかた譲らされてしまったし、DBってつくづく不遇なキャラですねぇ。

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Who are you?

2017-05-26 01:00:47 | 海外ドラマ

 『CSI:科学捜査班』、同シリーズの親シリーズ=ラスベガスCSI。本国USAでは一昨年9月に第15シーズンをもって放送終了していますが、月河も先日、最終エピソード『終わらない街ラスベガス』をDVD視聴終了しました。ふぅーーー。

 本国での1stシーズン放送スタートが2000年10月だそうですから、まる15年、"CSIの新シリーズが秋になると始まる"年が続いたことになります。これはもう”放送期間”というより、ひとつの”時代”を作り上げたといってもいいのではないでしょうか。

 視聴率的には第5~6シーズン(2004~5年放送)辺りがピークで、以降は右肩下がりだったようですが、所謂警察捜査ドラマにおける”科学捜査”や”物証主義”を、脇役ではなく主役にもってきて、昔ながらの聞き込みや過去ファイル再読などのアナログ捜査と、ときに対立させつつも乖離はさせず一体化してフィクションドラマに織り上げるというやり方を確立させた点、まさにエポックメイキングなシリーズだったと思います。

 ちなみに、我が日本製の『科捜研の女』は『CSI』より一年早く、1999年10月から放送を開始して2017年の今日まで17シリーズ継続していますが、あえて言えば先輩シリーズのこちらの長持ちも『CSI』が長く続いたことの、ある意味お蔭ではないかという気がします。一度でもこちらのレギュラーエピソードかSPを見た事のある人ならすぐにわかると思いますが、同じ科学捜査を主軸に据えたドラマでも、こちらはある時期から「USA製の『CSI』ではやらない事」を選んで選んで作っているうちにアラ不思議、長寿シリーズになりましたという感じ。科学捜査の衣はまとっていても、基本はやはり昭和から続く”日本の刑事ドラマ”なんですよね。

 主役=榊マリコ役の沢口靖子さんが、夜8:00台に使える主演級女優さんの中でも稀に見る”私生活・所属芸能事務所との関係ともに無風”女優なのも非常に大きい。ロングランTVシリーズの存続を危うくする”大人の事情”をいっさい発生させない主演。しかもヴィジュアルも(異論はあるかもしれませんが)すでにover50にして劣化最小限。理想的です。

 さて、月河が『CSI』とTVではじめて出会ったのは2008年初めぐらいだったでしょうか。日曜の午後1:00~という、超・敷居の低い、というかチカラの抜けた時間帯で、いま振り返れば第4シーズン終盤辺りからの途中乗車でした。ちょうど月河家に地デジの大画面液晶テレビとDVDレコーダーがやって来た頃でもあり、それこそまさに「アメリカの”科学捜査”はさすがに『科捜研のオンナ』とかとはだいぶ違うね~」というノリで嵌まって行き、そのうち「コレそもそものスタートから見たいね」「DVDなら出てんじゃない?もうウチでもDVD見られるし」とレンタル店にかよって、1stシーズンから探し出し、1年あまりかけて、放送に追いつくまで見ました。

 そのうちいつの間にか放送のほうが平日昼の時間帯に引っ越してしまい、何回か録画を逃すと、しまいにはじれったくなって全部DVDレンタルに出てからまとめてぶっ続けに見る様になりました。一時期は、昼間に2エピ見て夜に3エピ見て・・と、リアルタイムのニュースも天気予報も見ずに”『CSI』DVD漬け”だった頃もありました。

 月河の特撮好き、(往年の)昼ドラ好きにはまったくノータッチ無関心の高齢家族も、不思議と『CSI』にはガン嵌まりなんですよね。彼らの言うには、「一件終結(←”解決”ではなかったりすることも)後に、被害者家族や刑事たちの後日談的な描写がなくボン!ブツン!と終わるのがいい」「アメリカらしくドライだし合理主義だし、プロ!って感じ」だそうです。

 月河も、これでもう『CSI』の未見新作エピは見られなくなるのか・・と思うといささかしみじみしてしまいます。最終エピはやはり”創立メンバー”であるギル・グリッソム主任とキャサリンがしばしのカムバックをしてくれないと格好がつかなかったか。FBIに転身したキャサリンは相変わらずキリッとして、コンマ一秒を争う爆弾解除現場でもしっかりグレッグとモーガンを指揮していましたが、昆虫博士だったはずのグリッソム主任が海洋生物保護のほうに行ってすっかり加山雄三さんみたいなボートマンになっていたのは意外でした。 

 1st~第5シーズンぐらいまで、警察組織ドラマにもれなく一人は居る”出世亡者のイヤな管理職”の典型だったエクリーが、娘モーガンの捜査官としての成長と歩を合わせる様に、いつの間にか”いちばんのCSI理解者”になってきたのも不思議といえば不思議。最終エピでレディ・ヘザーの関与が浮上すると「それなら彼女を最もよく知るグリッソムを呼ぼう」と即、サラに連絡を取らせる。グリッソムとそれこそいろいろあったサラの気持ちを斟酌しないやり方が彼らしいと言えばらしいけれども、序盤でのグリッソムとの”現場vs官僚”そのものな先鋭対立を思うと、シリーズの継続とともにキャラも深化してきたんだなー・・とひときわしみじみです。

 ただ、最終エピのラストシーンが、”ベガスを離れて行く船出”で終わるのは如何なものでしょう。ざっくり言ってシリーズ全体がサラの成長と葛藤→進化の物語に集約され、時に殺されかけもしたCSIの仕事を通じてグリッソムと”最高の友”となり生涯のパートナーに・・というまとめ方は嫌いではないし否定はしません。しかし最後はやはりベガスのシーンで、ベガスに残る、あるいはベガスに戻ってきたメンバーをフィーチャーして、15年間のグランドフィナーレにしてほしかった。あの美しい船出がラストカットなら、なんだか”欲望と犯罪の街=ベガスを出て行ける者勝ち”に見えてしまうのです。

 グリッソム退任後ともすればぐらつきがちだったチームを、第12シーズン以降ほとんど孤軍奮闘でまとめたDB(ディービー=ディーベンコーン)の、最後の扱いもいささか冷たかった。フィナーレのためにグリッソムが召喚されたにしても、現チーフはあくまでDBなのですから、もっと見せ場あって、グリッソムと両雄並び立つぐらいの活躍をして終わらせてあげないと気の毒ですよ。ラストシーズンで例の”双子=ギグハーバーキラー事件”というクライマックスを用意してくれたのはいいのですが、長い付き合いだったジュールス(フィン)が双子の(邪悪なほうの)生き残りに襲われボコボコに殴られた挙句「意識不明の重体」のまま、最終エピでいきなり”殉職=絶命していた”と判明する辺りも含めて、DBってなんだかロングシリーズ終盤のそそくさとした空気の犠牲になったキャラのような気がして仕方がありません。

 まぁ、チェックを入れて行けばまだまだ限りなくあるけれども、「とりあえず”リ・スタート=ハッピーエンド”感のある幕切れにしよう」という意志だけはじゅうぶん伝わってきたので、こちらもそこのところは汲んで「お疲れ様でした」と言って送り出したいと思います。

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李氏挑戦

2012-02-13 00:33:52 | 海外ドラマ

『カーネーション』も着陸態勢が見えてきたことだし、そろそろ視聴エネルギーを他の連続モノに割く余裕も出てきました。

んで、NHK総合で日曜2300~放送中の『イ・サン』DVDで、先取り一気見してしまった(疲)

だってじれったいんだもの。全77話、先週38話放送でやっと全体の半分きましたが、世孫さま=サンvs.老論(のろん)派の構図、一進一退でまーーーー決着つかないのなんの。世孫さまったら、読んで字の如く皇太孫=お世継ぎなのに、多勢に無勢にもほどがある。完全な、ウラオモテないお味方って、宮廷中に五本の指で足りるほどしかいないじゃん。一気逆転の痛快な手って無いもんなのかなあ。まだらボケ英祖さま死にそうでなかなか死なないしさ。

『トンイ(同伊)』のトンイが産んだ子だから、カラダ丈夫なんだろうな英祖さま。やはり庶民の、雑草のたくましい血が入っていますからね。

まぁ韓国の連続ドラマの場合、週2話ずつの放送だそうで、付き合って同じペースで見てりゃそうでもないのでしょうが、DVD全話リリース完了してからアタマから一気見なんてやりますと、ある局面では「完全に話数もたせ態勢に入ったな」、最終話ふたつ前ぐらいでは「急ぎ撤収モードだな」とまるわかりになります。この『イ・サン』は、月河のにらんだところ、かなり、人工的に引き延ばしましたな。逆に言えば好評で、もっと長く見たいという声が多かったのでしょうけど。進展がね、あからさまに出し惜しみ、進ませ惜しみ、解決惜しみでじりじりしか行かないのね。陰謀一掃しようとすれば頓挫、処刑し倒すかと思えば手加減、そんじゃ市場改革、機構改革いってみるかと鉾先かえればまたまた邪魔。

じりじりはさせられましたが、ソンヨンのサンへの思いが、まぁ、かなってよかった。最後は悲しかったけれど。子供の頃から思い続けてきた男性の子を産むというのは女性にとって何ものにも代え難い幸せではありますが、相手が王さまですから、互いに思いを遂げるには宮中に入って側室にならねばならないというのが荷が重かったか。せめて子供が元気に育ってくれれば報われたでしょうに。元気に育っても、お世継ぎ=世子(せじゃ)になれないと、これまた宮中では居場所が無く、つねに邪魔者扱いされるわけです。万難排して世子に指名されたとしても、何かっつったら謀反人呼ばわりや、ヘタすりゃ毒殺暗殺、もっとヘタすりゃ米櫃に閉じ込められたりなんかする恐怖におびえて暮らさなければならないので、実にもう気の休まらない話。

とりあえず、宮中入り儀式(←正室=王妃ではないので、婚儀ではないと思います)での、ビスケットみたいなまんまる頬紅さしたソンヨンに、ウィンクする王さまのシーンが差最高でした。あれアドリブかしら。地上波放送はだいぶ先になりますが録ったら永久保存版にしときましょう。『チェオクの剣』ではいまいち、いま二、いま三…(中略)…いま八十六ぐらいだったイ・ソジン(李瑞鎮)さんが超ベリーキュート。晩年(と言っても正祖イ・サン、没年でも48歳ぐらいだったらしいですが)の紐ツル老眼鏡も、“メガネ男子クラシック版”って感じでイケてましたぞ。

賢臣ホン・グギョンの栄光と転落のくだりは、サブストーリーとしてかなり長い話数かけたわりには生煮えの感。もうひとりの野心家チョン・フギョムとの対照、抜きつ抜かれつをもう少し引っ張ってもよかった気もしますが、あちらが早めに、敵陣の中でもわりと潔く刑に服してしまいましたからね。

実妹・元嬪(うぉんびん)が王さまの側室となり自分は外戚に…という構図が見えてきてから、このグギョンという人物はどうとらえていいのかぼやけてしまった。“頭脳明晰、先見力あるがゆえに、権力と言う名の魔力に取り込まれて道を誤って行く”悲劇を描きたかったのかもしれませんが。色白でヌボーッと長身で、いい人顔のハン・サンジン(韓尚進)さんが、“悲劇を招くほどに切れ者”には見えなかったってこともある。終盤登場のおっちょこアイディアマン、チョン・ヤギョンとボケつっこみのコンビにしたらもっとおもしろかったのに。でも両人とも実在人物で、ヤギョンが側近に取りたてられたのは実際、グギョン亡き後のことらしいですしね。史実を変えるわけにもいかなかったのか。

初期は画員志望のソンヨンを生意気出しゃばり視してちょっと意地悪だった図画署のタク・チスさんが、春画上等のイ・チョンさんとともに、元・御真画師のウムダム様に師事してからというもの、地すべり的にキャラ変わってやわらかーくなってきたのも見ものでした。なんだ、ソンヨンのこと好きだったんじゃん。早く言えよ。勝ち目ないけど。ライバルが王さまだけど。

老論派=貞純大妃派との最後の一戦で、護衛隊一の腕利きソ・ジャンボさんが、えッ?昇進逸したのを恨んで王さまを裏切りミン・ジュシクに転んだ?と見せかけて実は?のくだりは短い時間だったけど結構ドキドキしました。韓国時代劇、出てない作品を探すほうが難しいんじゃないかってぐらい顔を出しては抜群の演武を披露してくれるソ・ボムシク(徐範植)さんはやっぱり長編のどこかで必ず見せ場がありますね。いつも“武道に長けた重鎮”という渋いムードで登場しますがイ・ソジンさんより3歳上なだけなのね。

イさんとソさんは昨年同国で放送された、百済時代舞台のドラマ『階伯(ケベク)』でも共演されています。3月から順にDVDリリースされるようなので、一度はいってみませんと。

何だか韓国連続ドラマって登山のようで、一作完走してひとしきり感動の波が去るとドッと疲れて、もー山なんか登るもんか!と思うんだけど、しばらく遠ざかると、またむらむらと挑戦してみたくなる。それも、高いほど、険しいほどそそられるという。困った境地になってきました。

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子供は10時になったらネロ

2011-10-07 01:09:01 | 海外ドラマ

7日(金)から日本語吹き替え版が週1話ペースで放送開始とあって、『赤と黒』のカウントダウン番宣がBSプレミアムで放送されているようです。『仮面ライダーOOO(オーズ)』の天才真木所長=神尾佑さんのシム・ゴヌク声も聞きたい(むしろ、声入れ中の神尾さんを見たい)し、全体的に台詞が日本人声の日本語になると違った色合いで味読できるドラマかもしれないので、再度録画する予定ですが、どんなもんかな。

名古屋や下呂(ゲロ)温泉など日本ロケ風景も多少入り、外国人監督による日本での撮影作が例外なくそうであるように、日本人視点からは独特に見えるエキゾティシズムはありました。

9月集中放送の字幕版を視聴した限りでは、総じて不思議な感触のドラマでした。観ていて、掴んだかなと思ったらあらぬ方向にすり抜けて行くような“かわされ感”が随所にあった。

“幼時に自分を捨てたセレブ一族への、持たざるハングリー青年の知性とフェロモンを駆使した復讐劇”と聞いていたし、捨てられた彼にとって代わりセレブ息子におさまった庶子と、別方向から玉の輿狙いで接近するハングリー女子との擬似三角関係もありと、月河“大好物の気配”を嗅いでもいたのですが、主人公の気持ちに沿って、よろしくないこと、自滅を招きかねないこととわかっていて復讐果たせよと応援したり、逆に敵側=ホン一族側に肩入れして「全面対決で滅ぼされる前に改心して和解してくれたら…」と望みたくなったりという、復讐劇鑑賞の定石には一度もはまらなかった。

ゴヌクが、そもそもホン一族をどうしたいのか、もうひとつはっきりしないまま何話も経過してしまうのです。大企業グループのスキャンダル崩壊か、それを自分が乗っ取って最高経営者の権勢をほしいままにしたいのか。はたまた一族女性たちを誘惑し弄び堕落させたいのか、逆に夫の座におさまりたいのか。

むしろ、“復讐に名を借りた、復讐なんだと自分に言い聞かせながらの、実は迂回した自分探し”のように見えた。自分が接近し、接触し、彼らの感情を刺激するような言動を投下することで、彼らが怒ったり動揺したり、破顔したり、仮面家族の仮面を外して本音でいがみ合ったりするかどうか目撃し確認したい。「あなたたちも僕と同じ人間でしょう?これこれこんなことをされると、ほら、こんな気持ちになるでしょう?ならない?なるって言ってよ?」とゴヌクは問いかけているようでした。

彼らを憎み、本気で貶め踏みにじってやりたいというよりは、かつて「オマエはウチの子だよ」と天から降ってきたように連れて来られ、掴めたと思ったら「偽者だったのか出て行け」と奪われた“愛ある家族の絆”をもう一度取り戻したく、「あなたたちだって、本当は血のかよった、欲や憎しみもあるけど愛も情もある、普通の人間なんですよね、ね」と迫って行くための、方便としての“復讐”に見えました。

蔑まれ悔しい思いをさせられた相手に、本気でリベンジしようと思うなら、自分が相手を追い抜き乗り越えて偉くなり強くなればいい。1話でわがまま女優の付き人少女に諭したように、ゴヌクも復讐など徒労であり意味がないと理性ではとっくにわかっている。それでもホン一族を計算ずくで刺激し揺さぶらずにいられないのは、財産や出世欲や肉欲のためなどではない。彼らを知り、彼らの泣き笑いを自分の手で着火させてみなければ、ゴヌクは自分の拠って立つところ、自分はどこから来た何者で、どこへ行こうとしているのかを確認できないのです。

現代が舞台の韓国ドラマは初視聴でしたが、同国の皆さんにとって“家族”というものが別格に重要欠くべからざる存在だということが改めてわかった本作でもありました。家族をどうにかしなければ何も始まらないし決着もつかない。1話からからんでくる貧乏育ちの叩き上げキャリアガール・ジェインが、あわよくばの玉の輿願望を捨ててゴヌクに本気を見せてくるにつれ、「復讐なんか虚しいと知って、ひとりの男としてジェインと幸せになったらいいのに」「もう少しでなれるのに、くぅぅ~」という気持ちで見守れればいちばんおさまりが良かったのでしょうが、残念ながらそうは一度もなれずに終わりました。ゴヌクも、“もうひとりのゴヌク”であるテソン(←ゴヌクが“もうひとりのテソン”であるのと相似)も、あまりに母恋い、家族恋いキャラ過ぎるのです。ジェインであれ誰であれ、女を愛し欲すれば、それはもれなく“失われた母の代用”であることが目に見えている。こういう男性人物に恋愛劇は無理です。“家族”と“恋愛”とは利害が対立する。どっちかに命を賭けるなら、もう一方とは訣別する必要がある。血を分けた親きょうだい=家族が好きで好きで、大事で大事でたまらず、家族のためなら何でもなげうって惜しまない人に、恋愛上手も恋愛体質もいません。

終盤、事故で精神が壊れてしまったゴヌクをジェインが探しあて抱きしめる場面は感動的ですが、悲しき恋愛劇のせつなさとは本質的に違う。最後まで“かわされ、そらされ、はぐらかされ”感がつきまとった全17話ではありました。

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振り返るな朗々

2011-09-28 00:34:52 | 海外ドラマ

前の記事では韓国製ドラマのプチ総論みたいなことを書いたので、『赤と黒』のドラマ本編をもう少し各論で掘り下げようと思いますが、その前に、サウンドトラックCDがなかなか愉快です。

まずジャケ写=歌詞ブックレットの表紙が、まあ型通りなんだろうけど、ドラマ完走したあとで見ると、えらく楽しいことになってますよ(←←←左柱←)。ゴヌクは下のほうでがっちりジェインの手をとっているし、テラさんは反対側からゴヌクの腿に掌を載せている。ぬほー。フトモモ。脚の付け根に近いフトモモ。何テンション上がってるんだ。テソンがゴヌクと反対側でジェインと向き合い背後から腰に手を回している。テソンの背中には、モネちゃんがもたれて軽く腕を組みにっこりグラビアスマイル。こらこら、微笑んでる場合かと。最終話のアレはどうしてくれると。

んで、全員カメラ目線でキメ。ぬぉぉぉー、ドラマであんなにさんざんくんずほぐれつしたのは何だったんだ。なぜここにホン家夫人、テソン継母にしてテラモネママのシン女史がいないのか。いてほしかったなあ。存在がでかすぎて背景が埋まってしまうか。

主要人物勢揃いでキメ顔決めポーズ、というこの構図は、韓国ドラマのサントラCDDVDBOXのパッケージでよく見かけます。この国製ソフトらしい、根性の入った作りモノくささで、上等上等。

日本のドラマサントラだと主役ひとり映りや、主役カップルの2ショットはよく見かけますが、勢揃いカメラ目線決めってあまり見ないような。スーパー戦隊のなら、結構あるか。変身前素顔ヴァージョンの勢揃いも、ジャケ写裏あたりでは結構見ますな。仮面ライダーシリーズのそれだと、勢揃いしても、わりとてんでんばらばらな方を見ていたりする。

日本でも『白い巨塔』なんかこれ式にすればおもしろかったのでは。オベリスク背景に浪速大医学部勢揃い。くれない会も。ジャケ面積が狭すぎるか。西田敏行さんの陰に何人か隠れるな。財前が身長を気にして「安西くんは離れて」とか言うかも。出来上がり写真より、撮ってる最中のほうがおもしろそう。

話がそれた。いままで視聴した韓国製ドラマの劇伴音楽と言えば、大半ヴォーカル曲、しかも歌手のヴォイスが前に出まくった楽曲ばかりで「ここぞというところで朗々」という印象だけしかなく、視聴中も音楽が入ると音を絞っていました。ここは人物の気持ちになって余韻を…といきたい抱擁シーンや、忍び泣く後ろ姿のロングなどで、勝ち誇ったように♪サランへ~だの♪宮根よ~だの来ると、正直、引くし、醒めますもんね。

でも今作『赤と黒』は12話の段階で、初めて視聴する現代ものだからそう聞こえたというだけでもなさそうな新鮮な才気を感じたし、上半期〆の時期とあって、ささやかな地元商店街の買い支えとばかり贔屓にしていた本屋さんから、スタンプ満杯の感謝券壱千円ナリもいただいたところなので、だまされたと思ってとにかく購入。

上述の、見てるとニヤニヤしてくるおもしろジャケのフタをあけると、盤面が真っ赤。それもツヤありの、クリスマスツリーの飾りつけに使うカラーアルミホイルのような、浮かれた真っ赤。真っ赤に黒のアルバムタイトルロゴ。いいですねえ。『赤と黒』は日本放送時用のタイトルで、母国での原タイトルは『悪い男』だそうですが、このロゴもそっちなのかな。光り赤地に黒ロゴの「悪い男」。劇中のゴヌクよりも、テソンよりも、この盤面のほうがエロくて軽薄でワルそう。

23曲中、半分の13曲が歌もの。感動系・切なさ押しのバラードが多いのは、やっぱりね…という感じですが、歌っている歌手の皆さんの顔触れ…はわからないけれど“声触れ”がなかなか多彩で、意外と飽きません。

異色作もあって、男声のM2『オニバスの花』は80年代前半の、マーティ・バリンなんかがホウフツとなる、AORそのもの。AOR、エーオーアール、なんと懐かしい響きよ。ギターソロバックに、サビでするするっとファルセットになる辺り、なんかカフェバーで飲んでるような気にもなれますぞ。ひゃー、カフェバー。どこまで懐かしくしてくれるんだ。

また、女声のM10『馬鹿』は、思いもよらぬ恋のときめきに自分を叱咤したり、相手にすねたり甘えたり、ダメダメ…と逡巡したりする、ういういしくもこっ恥ずかしい少女の気持ちを、かわいいメジャーコードにのせた、たぶんモネちゃんをイメージしたのであろう曲で、日本でも、歌唱力あるほうの女の子アイドルの、シングルCWに入っていそうな好作です。たとえば、そうですねぇ、往年の山口百恵さんがB面で歌っていたら、25年後ぐらいに半田健人さんが「こんな可愛い声だったんですよ!」と昭和歌謡番組で力説しそう(伝わってるのか)。

月河はやはり後半のインスト曲のほうのヘビロテ率が高いです。さあこっから韓流ターイム!というくすぐり感とともに空気の湿度、粘度、甘味度を上げ、お話世界にぐぐっと前のめりにさせるM13main title』、M14sub title』は繰り返し聞いてもイメージ喚起力が褪せないし、M19『郷愁』のタイトル通りノスタルジックな三拍子はモノクロのヨーロッパ映画のよう。刺激的なパーカッションが背後で煽るM21『スタントマン』や、ストリングスの闇の中をホーンの息づかいが切りひらいていくようなM20Tatoo』は、これまた80年代の井上鑑さん編曲のJPOP群をしばし思い出させます。

『スタントマン』と来れば70年代末期アイドルの渋谷哲平さんも思い出すな。末期は失礼か。80年代に入ってもサンデーズで活躍してたか。

……書いているとつい喩えに“80年代”という言葉を出したくなってしまうのですが、「いつか聴いたことがあり、好きだったことも確実にある音色、声質、音並び節まわし」、これがこのサントラの魅力の本質らしい。

ドラマ本編の持ち味ともシンクロしている。親の恨みの仇討ちモノ、階級違いの恋愛モノは言うに及ばず、生き別れ親子の再会を目指す放浪モノ、連れ子再婚や妾腹庶子が作る“ビッグファミリーの光と影モノ”も、ある時期はさかんに制作されて、大勢の日本人が前のめりで観たり読んだりしたのでしょう。でもいつからか、「もうみんな飽きただろう」「いまさらこんなんやったら、観てたら、時代遅れと笑われる」と、誰も手をつけなくなった。

でもやっぱり、どこかで耳目に触れると、やはり、ある程度確実に、心の琴線に来るのですね。取り返せない幼少時代、家族との平和で温かな日々、奪って行った者たちへの憎しみ。あるいは欲しても、渇しても手の届かない、眩い世界、憧れの人。

「いつか観てた、好きだった、嵌まってた」という懐かしさ、帰郷感、タイムスリップ感が、韓国製ドラマを日本の視聴風土に馴染ませている要因だと思います。おかしな言い方だけど、真っさらさらの、いま生まれて初めて目にし耳にするような新鮮さや独創性があまりないからこそ、韓国製ドラマは心地よいのです。

…なんだかリスペクトしてるんだかディスってるんだかわからなくなってしまったな。とにかく『赤と黒』サウンドトラックは好盤です。「どうせ“ここぞ朗々”だから」と毛嫌いしないで聴いてみてよかった。107日(金)からBSプレミアムで日本語吹き替え版も放送されるそうで、韓国製劇伴にもこの際、スポットが集まってくれるとおもしろいことになりそうです。

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