イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

子供は10時になったらネロ

2011-10-07 01:09:01 | 海外ドラマ

7日(金)から日本語吹き替え版が週1話ペースで放送開始とあって、『赤と黒』のカウントダウン番宣がBSプレミアムで放送されているようです。『仮面ライダーOOO(オーズ)』の天才真木所長=神尾佑さんのシム・ゴヌク声も聞きたい(むしろ、声入れ中の神尾さんを見たい)し、全体的に台詞が日本人声の日本語になると違った色合いで味読できるドラマかもしれないので、再度録画する予定ですが、どんなもんかな。

名古屋や下呂(ゲロ)温泉など日本ロケ風景も多少入り、外国人監督による日本での撮影作が例外なくそうであるように、日本人視点からは独特に見えるエキゾティシズムはありました。

9月集中放送の字幕版を視聴した限りでは、総じて不思議な感触のドラマでした。観ていて、掴んだかなと思ったらあらぬ方向にすり抜けて行くような“かわされ感”が随所にあった。

“幼時に自分を捨てたセレブ一族への、持たざるハングリー青年の知性とフェロモンを駆使した復讐劇”と聞いていたし、捨てられた彼にとって代わりセレブ息子におさまった庶子と、別方向から玉の輿狙いで接近するハングリー女子との擬似三角関係もありと、月河“大好物の気配”を嗅いでもいたのですが、主人公の気持ちに沿って、よろしくないこと、自滅を招きかねないこととわかっていて復讐果たせよと応援したり、逆に敵側=ホン一族側に肩入れして「全面対決で滅ぼされる前に改心して和解してくれたら…」と望みたくなったりという、復讐劇鑑賞の定石には一度もはまらなかった。

ゴヌクが、そもそもホン一族をどうしたいのか、もうひとつはっきりしないまま何話も経過してしまうのです。大企業グループのスキャンダル崩壊か、それを自分が乗っ取って最高経営者の権勢をほしいままにしたいのか。はたまた一族女性たちを誘惑し弄び堕落させたいのか、逆に夫の座におさまりたいのか。

むしろ、“復讐に名を借りた、復讐なんだと自分に言い聞かせながらの、実は迂回した自分探し”のように見えた。自分が接近し、接触し、彼らの感情を刺激するような言動を投下することで、彼らが怒ったり動揺したり、破顔したり、仮面家族の仮面を外して本音でいがみ合ったりするかどうか目撃し確認したい。「あなたたちも僕と同じ人間でしょう?これこれこんなことをされると、ほら、こんな気持ちになるでしょう?ならない?なるって言ってよ?」とゴヌクは問いかけているようでした。

彼らを憎み、本気で貶め踏みにじってやりたいというよりは、かつて「オマエはウチの子だよ」と天から降ってきたように連れて来られ、掴めたと思ったら「偽者だったのか出て行け」と奪われた“愛ある家族の絆”をもう一度取り戻したく、「あなたたちだって、本当は血のかよった、欲や憎しみもあるけど愛も情もある、普通の人間なんですよね、ね」と迫って行くための、方便としての“復讐”に見えました。

蔑まれ悔しい思いをさせられた相手に、本気でリベンジしようと思うなら、自分が相手を追い抜き乗り越えて偉くなり強くなればいい。1話でわがまま女優の付き人少女に諭したように、ゴヌクも復讐など徒労であり意味がないと理性ではとっくにわかっている。それでもホン一族を計算ずくで刺激し揺さぶらずにいられないのは、財産や出世欲や肉欲のためなどではない。彼らを知り、彼らの泣き笑いを自分の手で着火させてみなければ、ゴヌクは自分の拠って立つところ、自分はどこから来た何者で、どこへ行こうとしているのかを確認できないのです。

現代が舞台の韓国ドラマは初視聴でしたが、同国の皆さんにとって“家族”というものが別格に重要欠くべからざる存在だということが改めてわかった本作でもありました。家族をどうにかしなければ何も始まらないし決着もつかない。1話からからんでくる貧乏育ちの叩き上げキャリアガール・ジェインが、あわよくばの玉の輿願望を捨ててゴヌクに本気を見せてくるにつれ、「復讐なんか虚しいと知って、ひとりの男としてジェインと幸せになったらいいのに」「もう少しでなれるのに、くぅぅ~」という気持ちで見守れればいちばんおさまりが良かったのでしょうが、残念ながらそうは一度もなれずに終わりました。ゴヌクも、“もうひとりのゴヌク”であるテソン(←ゴヌクが“もうひとりのテソン”であるのと相似)も、あまりに母恋い、家族恋いキャラ過ぎるのです。ジェインであれ誰であれ、女を愛し欲すれば、それはもれなく“失われた母の代用”であることが目に見えている。こういう男性人物に恋愛劇は無理です。“家族”と“恋愛”とは利害が対立する。どっちかに命を賭けるなら、もう一方とは訣別する必要がある。血を分けた親きょうだい=家族が好きで好きで、大事で大事でたまらず、家族のためなら何でもなげうって惜しまない人に、恋愛上手も恋愛体質もいません。

終盤、事故で精神が壊れてしまったゴヌクをジェインが探しあて抱きしめる場面は感動的ですが、悲しき恋愛劇のせつなさとは本質的に違う。最後まで“かわされ、そらされ、はぐらかされ”感がつきまとった全17話ではありました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ⑧枠:00番アズミノテイオー | トップ | ドレム 変身 地を駆けろ »

コメントを投稿

海外ドラマ」カテゴリの最新記事