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イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

こんなカッコウで失礼します

2018-02-24 21:19:51 | 海外ドラマ

 「韓国ドラマ“復讐系”が好きなら」と、ベテラン韓ドラウォッチャーの知人に聞いて昨年暮れから視聴始めたDlife『カッコウの巣』も2月26日で終了です。

 全74話。ふぅ~。ほぼ録画後追い視聴でしたが、2週に1回ぐらいリアルタイムで自宅視聴できるときがあって、月~金曜PM1:30~という放送時間は、東海テレビ制作昼帯ドラマにはまっていた頃を思い出して、なんだか懐かしい自分に再会したような気がしました。いやはや。TVドラマが懐かしい、出演している誰某が懐かしいのではなく、TVでドラマをリアタイで見ている自分が懐かしく思える時代になったわけです。

 それはともかく、知人が言っていたセールスポイント「復讐が単線でなく複線だから(面白い)」が、結論を言えば残念ながらそのままこのドラマの欠点になりました。

 女復讐鬼イ・ファヨンは強烈で威勢がいいのですけれども、本当のところ誰の、何に復讐したいのか、話数を重ねるごとにぼやけてしまうのです。

①    家族の希望の星だった最愛の兄を死なせた社長令嬢イ・ヨニとその家族を不幸に落としてやりたい。

②    学生時代、合コンで自分を引っかけ、遊んで捨てた財閥御曹司チョン・ビョングクを本気にさせ仕返ししたい。

③    母の放蕩で路頭に迷った自分を札束で頬桁叩いて代理母にし、腹を痛めて産んだ息子に会わせも抱かせもせず奪い去った財閥一族を崩壊させたい。

④    全体的に負け組人生だったのを逆転して、勝ち組気取っていた金持ち連中をへいこらさせてブイブイ言わせたい。 

 ②と④はともかく、①の兄の死は事故でありヨニを恨むのはほぼ逆恨み、③はもともと本人が金欲しさに引き受けたことで契約書も取り交わし報酬も受け取っているので、産んだから自分の子だと後から言い張るのは屁理屈にすぎません。

 ちなみに復讐の動機に理がない事は復讐ドラマの瑕疵にはなりません。復讐される側に立つと、理がないほうが恐ろしいしどうしていいかわからない。通常は、復讐されるほう、このドラマではヨニ側のほうが真っ当な市民的倫理観や遵法精神をそなえていますから、最初は「あなたのは逆恨み、私には悪意はないし責任もない、証拠もある、法律でもそうなっている」と何とかして説得して納得させようと試みるのですが、理なき復讐者にはそれが通用せず、どうすれば矛先を収めてくれるのか見当がつかないという怖さがある。

 しかしこうも目標が拡散してしまうと、見ていて「ファヨンって結局何がしたいんだろう」と思ってしまう。いろいろあるけどこれだけは絶対奪取したい、コイツだけは亡きものにしたいという焦点が鮮明に絞れないために、話が散漫になりました。紛争地点を増やし過ぎて、戦線が延びきってしまったのです。

 “代理母”という“つゆだく”なモチーフを敢えて持ってきたのだから、最終的に「金も、財閥御曹司夫人の地位も本当は要らない、兄の死もどうせ取り返しがつかない、ただただお腹を痛めた息子をこの手に欲しい、母になりたいママと呼ばれたい」に収斂したほうが、いっそ(エグイなりに)綺麗にまとまったのではないかと思うのですがね。

 ファヨンが一世一代仕掛けていた卵子すり替えという地雷がまさかの不発とわかり、息子の親権がめでたくヨニさんに戻ったところで一巻の終わりでよかったのに、ファヨンが実は代理母の前に行きずりの男との間に子をもうけてひそかに養子に出していた・・なんて伏線が俄かに出てきて、そこから先は息子から離れて別の話になってしまい、えらい蛇足感がありました。

 代理母は、自然分娩を一度も経験しない女性が引き受けることは通常認められないはず(ついでに、自分の実子を持っていない女性にも認められないはず)なので、特に驚く伏線ではありませんが、代理で産んだ息子に執着するファヨンの情熱が、このせいで薄まってしまいました。「やっぱり“財閥継孫の母”になりたかっただけかよ」「お腹痛めても血筋のない子は要らないって言う女なんだ」と、女の風上にも置けないクズ感が強まっただけでした。

 こうも話が希薄になってしまった原因はと言えば、ようするに102話(Dlife放送では74話)の長尺をもたせるため、これに尽きるでしょう。何がやりたいのかわからないくらいファヨンにいろいろやらせ、あっちにもこっちにも攻めさせていかなければ、ファヨン叔父チャンシクとビョングク叔母ジンスクの出会いがしらラブコメなど織り交ぜてもこの話数は回せない。脚本家さんも大変だったと思います。

 どうにかもたせ切れたのは、脚本のチカラワザよりもむしろヨニ役チャン・ソヒさんを筆頭に俳優さんたちの健闘のおかげに他ならない。最初じれったくて頼りないんだけど不思議に壊れない強靭さを持ったヨニという女性は、ソヒさんが演じたから絵空事にならずにすんだ。最初っから最後まで鬼みたいな表情で通したファヨン役イ・チェヨンさんも、女優としてこれほど“ビタ一文可愛げのない役”に挑戦する勇気はあっぱれだし、ブチ切れてるかヤケ酒で酔っ払ってるかしか見せ場のないアホ御曹司ビョングク役ファン・ドンジュさんもお疲れ様でしたと言いたい。終盤急にキイパーソンとして出番の増えたファヨン妹ソラ役チョン・ミンソさんは、7年ほど前にNHKで放送された『赤と黒』の子役さんでもありました。2014年制作の今作ではずいぶん身長が伸びていますが、涙芝居が多すぎて、水分補給が大変だったのではないかな。

 欠点はありましたが、こういうチカラワザ拡張系・役者さんの力量展示会系の連ドラ、かつての昼帯ウォッチャー月河としては嫌いではないです。26日放送が最終話となりますが、人物たちを惜しんで後日譚に妄想膨らませたいドラマではなかった代わり、別の全然違うテイストの作品で、違うキャラでこの俳優さんたちを見たいという気になるドラマではありました。 

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私の心は花の雨上がり

2018-02-04 21:23:30 | 海外ドラマ

 昨年の10月下旬ぐらいから個人的にいまさら(本当にいまさら)盛り上がった韓国ドラマMyブームで、『ルビーの指輪』(BSトゥエルビ)と並んでレギュラー視聴していた『私の心は花の雨』(BS朝日)も先月24日に放送終了。

 第3話からの中途参入でしたが全64話、いやー我ながらよく継続視聴したもんです。

 BS朝日のこの枠“韓流モーニング”、朝8:30~10:00の一時間半枠で月~金のオビなので見ごたえあるある。枠としてはBS各局の韓国ドラマ放送枠でいちばんヴォリューミーだと思います。さすがは二時間ドラマの元祖“土ワイ”を生んだ局だけある。

 韓国での本放送時は1話35分前後で全128話だったのを、BS朝日では2話ずつを1話にして1時間半枠で放送していますから全64話、録画してCMを編集すると1話正味65分少々で、1話につき2~3分カットされている計算ですが、65分のドラマを週一じゃなく月~金となると、本当に見ごたえ・・て言うか視聴時間を捻出するのが毎日普通にたいへん。考えてもみてくださいよ、NHK大河でも、民放のフジ月9とかTBS日曜劇場でも正味45分そこらで週一ですよ。それでも結構たいへんなのに、65分が月~金、週五日続くんですから。

 自然と録画を貯め気味な追走となり、いつ脱落してもおかしくなかったわりには一度も飽きずあきらめず完走できたのは、要するに、かなり面白かったんですよ『私の心は花の雨』。

 時は1950年、朝鮮戦争の混乱の中、生きるために他人の人生を奪った女と、奪われた女、それぞれが娘を生んで母親となり、二十年後、成長した娘たちと二人の若者たちの出会い、人生の交錯を主軸にしたラブ&サクセスストーリー・・といったイントロダクションがBS朝日の公式にあったので、日本の昭和の、山口百恵さん時代の大映テレビ“赤いシリーズ”や、東海テレビ制作昼帯ドラマ『冬の輪舞』や『偽りの花園』などの系譜にある“出生の秘密モノ”“身分差入れ替わり・替えられモノ”を想像して視聴始めたのですが、いやいや、それもあるけどそれだけですむなまやさしい話じゃなかった。

 一か月ほど先に放送終了した『ルビーの指輪』とは似て非なる角度から“アイデンティティの揺れ”に切り込むと同時に、最初は心ならずも“成りすまし”の袋小路に足を踏み入れた女と、その娘の父親で悪縁で再会した男との、“いつバレるかバレないか、一か八か一蓮托生のドキドキハラハラ詐欺の道行き”物語になっていました。

 こういう構造のドラマで、幸せになってほしい主人公よりもむしろ“主人公に敵対するサイド”のほうに熱く目が行ってしまうのは珍しいことではなく、悪役に魅力のあるドラマはそれだけで成功と言っても差し支えないくらいなのですが、長尺の連続ドラマでこれくらいくっきりあざやかに「気がつけば、そう来てたか」となった例は久しぶりです。流すのはもったいないので、この項はまた続きます。

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月と紅玉

2017-12-28 17:42:46 | 海外ドラマ

 一昨日(1226日)に『ルビーの指輪』(BSトゥエルビ)が終わって、軽くルビーロス状態です。軽い気持ちで「大好物の入れ替わり&成りすまし話っぽい」「イ・ソヨンさんとか知ってる人出てるし」と中途参入したら、思いのほか重い話で、録画再生して見入っている時間以外にも、気がつけばふとこのドラマの事を考えている自分がいました。

 こういうのはロスが来るのよ。もう十何年前になりますが、東海テレビ昼帯の荻野目慶子さん主演『女優・杏子』の時期なんかがそうだった。『仮面ライダー龍騎』や『特捜戦隊デカレンジャー』のラスト2~3話の間などは、仕事中も移動中もちょっと間ができるともう次回はどんなんなる?前回、前々回ああだったからこうだったから・・と頭の中に侵入してきて、振り払って集中するのが難儀なくらいでした。

 ロスにさせるぐらいの磁力の原因はやはり、ルナの“ルビーになりたい、ルビーでいたい”という歪んだ情熱の熱さ濃さゆえか。当初、ナメてかかって想像したように“不細工で僻んだ妹が、美しく人気者の姉をねたんで、成りすましでイケメン王子の婚約者を奪おうと・・”という、昭和の少女漫画にもよくあった単純な動機じゃなかった。もっと根深く“自分のなりたい自分”“いまここに居る自分ではない自分”を渇望し、足搔いて足搔いてどんどん不可能なほうにオーバードライブしていくルナが形成されたのは、実は女手一つで姉妹を育てた母親ギルジャの秘密に遠い原因がありました。

 ギルジャの夫は、身重の妻をよそに愛人をつくり出産時も帰ってこない男でした。そのためギルジャは産後鬱状態になり、せっかく元気に生まれた女の赤ちゃんを抱く気にもならずにいた矢先、夫の急死の報が。赤子を抱え未亡人になったギルジャのもとには、あろうことか夫が愛人に産ませたもうひとりの赤子が押しつけられました。

 何なのこれは!なぜ私に!?誰も育てたくない!パニックになったギルジャは二人の赤子を抱き、何度も施設の玄関前を往復しては一人置き去りにし、引き返してはもう一人のほうを・・でもその都度泣き声に連れ戻されて、「ごめんなさい」と赤子たちに謝って、結局二人とも双子の自分の子として受け入れ、タッカルビ店を切り盛りしながら育ててきたのです。

 この間のギルジャの心思うべし。“愛人の子なんか育てたくない、居なくなればいい”と首をもたげる自分の中の黒さと、常に闘う二十数年だったに違いない。ドラマの終盤で、「(愛人の子より)優秀になってほしいと願って、実子のアンタには厳しくした」とルナに告白する場面が出てきますが、それ以上に妾腹のルビーには“憎んではいけない、この子に罪はない、実子と差別せず愛してあげなきゃ・・”と、自分の内面の黒さから脅迫される様な思いで接してきたことでしょう。成長するにつれ母親の違う姉妹の資質や能力の差は明らかになってきます。己を抑えて抑えて、努力して優しく接してきたギルジャの思いを掬い取るように、ルビーは心優しく賢い子に育ち、秀でてほしいという願いゆえに厳しく当たられたルナには、ギルジャが「私に似たのよ」と寂しげに述懐する負けん気、反抗心以外、秀でたものは何もそなわりませんでした。

 しかも自分と姉との差が身にしみてきた年頃になって、ルナは母と叔母との会話から、自分が母の子ではなく、亡き父と他の女性との子・・との疑いを強く抱くようになってしまいました。これはギルジャが多くを語らないが故の叔母の勘違いから発生した会話なのですが、自分がそういう出生だから、母さんはルビー姉さんばかり可愛がって、私にはつらく当たるんだ・・とルナは答えを見つけた気持ちになってしまった。思春期には目に入るもの耳に入るものすべてが不合理に感じられますから、合理と思える答えには飛びついてしまう。

 受験、恋愛、人間関係、何をやっても思い通りにならない自分に比べて、願わしいもの何でも苦も無く手に入れられる姉ルビー。もう容姿が、才能が、恋人がという問題ではなくなりました。ルビーになれば、自分がルビーでさえあればすべてはうまくいく。やりたくてできなかったことが、何でもできるようになる。ルビーになりたい、皆からルビーと呼ばれ、ルビーとして処遇されたい、褒められもてはやされたい。あらかじめ負属性を抱いて生まれついたルナという存在でなくなりたいルナの不可能な願いは、ルビーのドレスと婚約指輪を奪い身に着けての、ルビーを巻き込んだ交通事故と顔面大損傷、そしてルビー昏睡中に自分が先に蘇生という、千載一遇の機会を得て、針の穴を通すように可能になってしまった。事故時のドレスと指輪を見て、分厚く顔に包帯をされた自分に「ルビー、ルビー」と話しかけるギルジャに気がついたとき、これからは私が可愛がられっ子ルビーだ!と、ルナは底知れない喜びと高揚感に息も止まる思いだったでしょう。

 TVのドラマですから、最初にルビー役で登場したイ・ソヨンさんが事故後のルナを、ルナ役だったイム・ジョンウンさんが同じくルビーを演じ分けているので、見ているほうとしては映画『転校生』やNHKドラマ『さよなら私』のように、“(=性格、才能、技能など)Aの身体からBの身体へ、Bの身体からAの身体へと入れ替わった”と錯覚しがちですが、実はこれは根本的な勘違いで、実はルビーの内面はルビーの身体の中に、ルナの内面はルナの身体にそのままあって、整形手術で外観だけ”を造り替えたという話なんですね。

 外観が変われば、ルビーの容姿にさえなれば、私はルビーとして愛される、ルビーとして大切にされる。ルビーが得ていた評判や名声も、セレブな婚約者も、結婚して得られる財閥御曹司夫人の座も私のものになる。私はルビーなんだから、ルナじゃないんだから・・

 ルナが切望し期待していた通りに、果たして世の中回ったのかどうか。願った幸せは手に入ったのか。やりたくてできなくて思い焦がれていた欲望はかなえられたのか。ドラマ内の交通事故後、第8話以降はそれを実地検証していく物語になります。

 ・・62話まで続いた(日本放送用のカット版です。本国での放送は93話)ことだけからもわかるように、すんなり満ち足りて終わりませんでした。ルナが通した一世一代の無理は道理を引っ込ませるだけでなく周りの人々を惑乱させ、思いもよらなかった方向に突き動かし、疑いや不信や恨みの連鎖を引き出して複雑にしてしまいました。

 ルナは“外観”に期待を持ちすぎたのです。外観が変われば、愛され好かれて幸せに生きている姉の外観を自分がまとえば、まるごと自分が愛され幸せになれる。しかし世界はそんなに甘いもんじゃなかった。ルビーならルビー、或る一人の人格として認識され受け入れられることに占める“外観”の割合は、ルナが夢見たほど大きくなかった。ルナはルビーの顔かたちになっても、ルナだったときと同様に嫌われ、高い地位を得た分腫れ物扱いされ、事故前のルビーとあまりに異なる言動から不信と疑いの目で見られ、そして何より自分が成りすましだという秘密の露見に怯えなければならず、少しも満ち足りた幸せを得られませんでした。

 (この項続きます)

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どうして胸が痛いんだ

2017-12-11 21:52:04 | 海外ドラマ

 月河が『ルビーの指輪』(BSトゥエルビ月~金16:00~)が面白い、と言ったら、韓国ドラマ歴の長い知人が「“復讐系”好きだったんだー、だったら『カッコウの巣』ってDlifeでいまやってる(月~金13:30~)の見てみたら。長い(=話数多い)けど、復讐が単線でなく何本縒りもになってる複線だから退屈しないよ」と情報をくれました。

 イヤWヒロインが二人とも知ってる女優さんだったんで『ルビー~』見始めたのであって、復讐モノが特に好きってわけじゃないんだけど・・と言い訳しましたが、その昔高齢家族が楽しみにしていた『宮廷女官 チャングムの誓い』から入って行って、同じ監督の『ホジュン ~宮廷医官への道~』、NHKで放送中だった『イ・サン』『トンイ』『王女の男』など、どっちかというと歴史劇のほうを多く見てきた気はします。

 でも『赤と黒』とか『ジャイアント』『オールイン』なんかは這い上がり巻き返し劇なので広い意味でのリベンジモノだったし、まぁ韓国ドラマと名がついたら“報復感情”をどっかに入れないと話が成立しないくらいです。これが生理的に受け付けない、人を羨みも妬みも蔑みも生まれてこのかたしたことのない善良で高潔一辺倒の心情の人は、たぶんはなから韓ドラに興味持たないと思われます。

 で、見てみましたよ『カッコウの巣』。ただし、いま『ルビー~』のほかに韓国版朝ドラ『私の心は花の雨』(BS朝日 月~金8:30~)も継続視聴中なので、『カッコウ』を見始めるとまさに朝も昼も夕方もTVに拘束されることになりますから、帯で録画して、落ち着いたときに編集してブルーレイに入れ込んで一気に見ることにしました。Dlifeは自社放送番組のスポットがコマコマと入るのでものすごく編集に手間がかかるんですけど。

 そんなわけでまだ通して見てないのですが、編集しているだけでワクワクしますな、これ。まず、復讐される(ほぼ逆恨み)側のヒロイン=ヨニ役のチャン・ソヒさんの顔がいい。輪郭も目鼻のパーツもぜんぶ小づくりで、薄幸顔。怯えたり戸惑ったり涙をこらえたりする表情が途方もなく似合う。アメリカ映画でも、アワアワキャーッが似合う“ホラー映画御用達女優”っていますよね。ドラマ放送当時は42歳だったはずですが、公称身長163センチ以上に華奢で初々しく見え、ちょっと首から上のメイクが白浮きっぽいのが気にならないこともないですが、劇中でよく着る白珊瑚ピンク基調の衣装もお似合い。

 一方、貧しいフリーター娘がお金欲しさに財閥家の代理母を請け負う、復讐のダークヒロイン=ファヨン役のイ・チェヨンさんもいいですよ。いい具合にソヒさんと対照的。黒のアイラインが似合うアジアントロピカルな顔立ち、浅黒肌にダイナマイトボディ。編集してる中でホテルのプールで黒ワンピ水着のシーンが一か所出てきたんですが、見せつけられてる財閥御曹司ならずとも「おぉ~~」と息をのんじゃう爆乳。調べたら『千秋太后』の女真族のくノ一・サイルラ役でもう拝見済みでした。あの頃は堀ちえみさんを目パチにお直ししたような妖精風のお顔・・と思いましたが当時23歳、『カッコウ』放送時点で28歳。いつの間にこんなに全体的に熟れ倒したんだ。そういえば『千秋』でサイルラが護衛していた新羅族のキム・チヤン行首(へんす)が『ルビー~』の夫役ギョンミンさんだったな・・・・と、“この人あのドラマであの人の〇〇に当たる役やってた”って連想にはまると身動き取れなくなるので、とにかくこちらは編集終わってから一気に行こうと思っています。

 女優さん二人の復讐バトルもいいのですが、それを超えるくらい精彩を放っているのが、法学部卒のくせに司法試験に二度落ちてプータローしているファヨンの叔父役のチョン・ノミンさんです。この人にこんな引き出しがあったのかと、編集の手が思わず止まってしまう、目いっぱいのコメディリリーフっぷり。

 時代劇、近・現代もの問わず幅広く出演されていますが、初見は『善徳女王』のソルォン将軍役でした。「百戦錬磨の軍人つうよりマダムキラーの宝石商みたいだよねえ」と高齢家族と評していましたが、物語終盤になるとちゃんと生粋の武人っぽく見えてきたし、『馬医』の主人公の実父で、両班(やんばん)という貴族階級に属しながら人命を救いたいという志を抱いて、当時は身分の低かった医師を敢えて目指す役も良かった。

 王様とか君主役、大将役より、側近や参謀や官僚などナンバー2クラスの役がお得意と見受けましたが、『カッコウ』では「実は法官の次に料理人になりたかった」と突然レストランシェフに転身、本店長(=財閥家御曹司の叔母)とマネージャー(=『ルビー~』でギョンミン家の家政婦役の人)、二人のハイミスに惚れられて右往左往する、言わば罪悪感のない色悪で、カネにはセコい小市民でもあります。

 就職しても姉(=ファヨンの毒母。花札とカラオケと酒三昧で借家から追い出されかけたが財閥ビルの清掃員に就職)の家に寄食、末の姪(=ファヨンと年の離れた末妹ということになっているが?)を自分の子の様に可愛がり、ファヨンと財閥家(=代理母依頼主)との接触を心配しつつ、姉とは夫婦漫才の様にド突き合いを繰り広げる、“この人のターンの間は安心して笑ってよし”な安定感。編集するたびに、ノミンさんのシーンになるとつい休んで見入ってしまいます。

 本店長にベタ惚れの勘違い常連客(柄シャツに柄ジャケ、ファッションセンスのおかしい心理学教授)というライバル?も参戦、こちらはきいたふうな欧米流心理分析を披歴したり、ノミンさん扮するシェフも負けじと意味なく法律用語連射で反撃したり(「こう見えても司法試験の一次は二度も突破したんだ」が口癖)、リリーフし過ぎなくらいの惜しげのないコメディリリーフを展開してくれています。ひょっとしたら、メインの黒白ヒロイン二人のドロドロしい復讐バトルより、ドラマ監督はこちらのほうがノッて撮っているんじゃないかと思うくらい。

 韓国俳優さんの個人的演技力に引き込まれるのは『ホジュン ~宮廷医官への道~』主演、『朱蒙(チュモン)』助演でのチョン・グァンリョルさん以来か。グァンリョルさん1960年生まれ、ノミンさん66年生まれ、ともに30代後半からの遅咲きブレイクというところが共通しています。・・あぁ、韓国ドラマ個々タイトルには、視聴中は嵌まっても、俳優さん単体には面倒くさいので距離置いてきたんですが、だいぶ危険水域に入ってきたかな。

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Lunatic

2017-11-26 20:16:08 | 海外ドラマ

 ・・・・・ま、それはさておき『ルビーの指輪』(BS12、月~金16:00~)次回が待ち遠しい事に変わりはない。これ、韓ドラの王道“全てを奪われた者が奪った者から奪い返して地に落とす”復讐譚の形を借りて、“外見”“アイデンティティ”との乖離←→統合という問題も切り取っている、ひそかに野心作です。

 ルビーの“外見”とともにキャリア、地位、婚約者も奪ったルナですが、ルビー本人が内蔵している能力や経験は奪えませんから、周囲の人々にルビーとして遇され、ルビーならできて当たり前の仕事を期待されることに耐えられず、「人が変わったようだ」とみるみる評価が下がって、ピンチになると気絶したフリで乗り切るしかありません。一方、昏睡状態から覚醒するとルナにされていた本物のルビーのほうは、或るきっかけで自分は本当はルビーなのに・・とここに至るまでの記憶を取り戻し、すべてを仕組んだルナに復讐心を燃やしていますが、持ち前の知性教養や仕事能力、愛される性格は内蔵したままですから、「ルナさんにこんな適性があったとは」「(本物ルナ時代の)悪い噂で先入観を持っていてごめんなさい」「人を引きつける魅力があってTV映えがする」と、本物ルナが死ぬほど羨んでいた評価を、今度はルナとして勝ち取って行く。

 結局、外見がいくら変わっても、人は持てる人間性の本質というか、性根(しょうね)の通りに、他人から値踏みされていくしかないのかなと思えてきます。この辺り、ドラマ的にはルビーとルナを演じる女優さんのルックスに、天と地ほどには美醜差がないのでわかりにくくなっている(ルビー役イ・ソヨンさんは前のエントリでも書いた通りお目目ぱっちりの典型的華やか美人ですが、ナチュラルなイム・ジョンウンさんのほうが好み、特に太腿が・・とかいう人も少なからずいるでしょう)けれども、ズルして自分のグレードを上げ、人も羨む境遇を得たはずのルナがひとつも安穏とできず、本来のルナ時代にもましてガツガツ、ピリピリしていて、逆にルナのレベルに突き落とされたほうのルビーが順風を受け多くのチャンスをつかみ取ろうとしているのが面白い。

 パートナーとの心理関係も複雑になります。ルビーはかねて財閥御曹司で会社の上司でもあるギョンミンと、留学帰り交際ラブラブ復活中でした。事故後、顔面形成手術で容貌ごとルビーになりすましたルナと、ギョンミンはそれと知らずに結婚してしまいましたが(←ボンクラ)、欲深で虚栄的で猜疑心や僻み根性の強いルナの本性が、当然ながら徐々に透けて見え始め、ついには彼女が会社のマーケティング予算を横領していた事実も判明して家族からも責められて「僕が愛したルビーはどこに行ってしまったんだ」と悩んで酒に逃げる日々です。一方では、ルナとして裏方の仕事についた義妹が、昔の悪評(遊び人、狡い、ケチ、性格が悪い・・)とは裏腹に有能で気立ても良く、意外な企画力や調査力(ルビーですから)も発揮して社内コンペで優勝したりもするので、二人で打ち合せしながら、義兄の域を超えて妙な気分になったり迷い道くねくね。

 ルナのほうは、客観的に見る限り、ギョンミンに切実に片思いして片思いしてルビーから略奪したかったという感じには見えません。ルビーの外観になって、シルクのガウンでギョンミンをベッドに誘う姿に、どうも色気が匂い立たないのです(この辺り、事故前はギョンミンとお似合い光線キラキラのルビーを演じていたイ・ソヨンさんのツンケンギスギス偽物演技が巧い)。ルナにとってはギョンミンも“ルビーが所有して幸せそうにしているモノ”のひとつ、だから奪わなきゃ、という対象らしい。ギョンミンが自分を愛しがり大切にしてくれるのは、もともとの恋人ルビーの外観をして、家族からも部下からもルビーとして扱われているからにすぎず、“自分”を愛してくれているわけではないのですが、ルナはそこには疑問を抱いていない様子。

 一方、ルナになったルビーには、もともとのルナの恋人インスPDが距離を縮めてきます。インスはギョンミンとは違って、ルナの嘘を当初から知っています。かつての恋人ルナがルビーの姿になってギョンミンと結婚し、大企業の室長兼財閥後継者の嫁として権勢を誇りつつ、嘘の綻びにおびえて苛立つ姿を苦々しくも悲しく見つめる傍ら、妹の嘘に嵌まってルナとして生きることを余儀なくされたルビーに愛しさを感じていきます。ルビーが事故前の記憶を取り戻してルナに復讐心を燃やすと、「君がまた傷つくのを見ていられない」と必死に止めたりしますが、ルビーは「あなたが私を愛するのは、私がルナの顔をしているからでしょう」と言い放ちます。

 ルビーは事故までの人生で、自分の持てる才能(容姿も含めて)と努力で、ルビーとして評価され道を切り開いてきた自信があるので、逆に“呪われたルナの仮面”を被らされている限り、愛されても褒められても、本当の私としてではないという虚無感がぬぐえない。この点、自己評価が低くて、姉の物を何でも羨み妬んで奪ったり掠め取ったりを平気でする、“ルビーになりさえすれば何でもうまく行く、日の当たる人生を歩める”と思い込んでいるルナとは違う気位(きぐらい)の確かさが、ルビーを苦しめています。

 いま全62話の40話まで来ていますが、コレ、どうやったらハッピーエンドっちゅうか、腑に落ちる結末になるんだろう?といまから気がもめます。韓ドラの50話以上の長尺ものだと、ラスト4話くらいの間に、2回は余裕でドンデン返しがありますから、20話以上残ってる段階で心配してもしょうがないのですが、まずは整形入れ替わりの事実を、関係各所に知ってもらわない事には。

 んで、あ、そうだ、忘れてました。ルナがここまで根性曲がりになった原因として、中学生ぐらいのとき、母親と叔母さんの会話を立ち聞きして、“お母さんがいつもルビー姉さんより私に厳しく冷たい(気がする)のは、お母さんの本当の子でなく、別の女性から引き取られた子だから”と知ってしまったから、という伏線もあるのです。ちょっとだけ少女子役さんを使っての回想シーンもあり、同じ事をしても叱られるのは姉じゃなく自分、私にはくれないお小遣いを、姉さんにはあげてる・・と、思春期に入ったルナが不満をつのらせていたところへこの立ち聞きで、ルナにしてみれば「これでわかった」と思った事でしょうが、見ようによってはお母さんがルビーに甘いというより“気を遣ってる”ようにも見える。どっちがお母さんの実子なのか、そうでないほうは誰の子なのか、ここに韓ドラ得意の“出生の秘密”でもうひとひねり必至。整形で顔を変えるより、出生のほうがはるかに決定的な、ラスボス級の“アイデンティティの危機”ですから、絡むべくして絡んでくるはず。

 どっちにしても、いまはルナへの復讐に気を取られて平常心を失っていますが、ルビーには罪はないので、ルビーとして幸せになる”エンドにしてあげたいけれど、最愛のギョンミンに「見た目がどうでもキミはルビーだよ」と抱きしめられる・・のは、ルビーにとって、いまとなっては本意かどうか。

 すべてが露見すればルナは当然、ギョンミンの家族からは放逐され、なんなら横領詐欺で警察に引っ張られるしかないでしょうが、出生の真相も含めていま一度、ルビーとお母さんと和解する機会が持てれば少しすっきりするかなと思います。

 ただ、こういうドロい系の韓ドラって、いままでの視聴経験上、“すっきり”とはいかない終わり方が多いんですよねぇ。どうなるか・・そうだ、もうひとつ忘れてた。ルナがね、40話で、妊娠しちゃったんですよ。ひぇー。ギョンミンは財閥跡取りだしご両親からも、「昔、廃品を売って今の会社の資本金を作った」と武勇伝していたお祖母ちゃんからも、子作り圧力、確かに強かったんだけど、いつの間に作ってたんだ。この子の運命や如何に。ギョンミンの種なことは間違いないので、財閥家の孫として相続権は発生するでしょうけど、ルナにとっては今でさえいっぱいいっぱいな嘘の上に、さらに守らなければいけないものが増えることになるし、ルビーとしては最愛の人が“私の顔をした妹を、私と思って抱いた”結果、妹が身ごもったわけですから、もう何処に怒りをぶつけていいんだかわからない気持ちでしょう。ますます“すっきり”の難度が高まってきちゃいましたよ。

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