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イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

シーン10

2011-02-03 16:11:20 | 昼ドラマ

『さくら心中』で、懐かしい顔を見つけました。桜子(笛木優子さん)と比呂人(徳山秀典さん)とのただ一度の逢瀬が授けた子・さくら3歳役、篠川桃音ちゃん。『ゲゲゲの女房』での、通算何代めかの長女藍子ちゃん役でした。

劇中の誕生以降、藍子役は赤ちゃん子役さんを含めて何人もの子役さんがリレーで演じたのですが、桃音ちゃんは、水木しげるさん(向井理さん)が貧乏を脱出して大手からのオファー獲得、自宅電話設置、アシ採用してプロダクション旗揚げ、自宅兼仕事場の増築に次ぐ増築、多忙になったお父ちゃんの代わりにスガちゃん(柄本佑さん)に遊んでもらったり、めでたくTV化なった『悪魔くん』をお母ちゃん(松下奈緒さん)の膝で見たりと、劇中いちばん多事多端、急勾配な時期を担当した藍子ちゃんでしたよね。

お人形さんのように色白で、文句なく愛くるしい美幼女な一方、どことなく大人たちの哀歓、喜怒を興深く微量心揺らせながら見守ってもいるような大きな瞳が印象的でした。

藍子ちゃんは、貧乏でも信頼し合う昭和の良きご夫婦の待望の第一子で、物質的精神的に危機なときにも支えになってくれる存在だったけれど、今作のさくらちゃんは出生からしておっもーい枷を科されているし、ドブに捨てる勢いでいきなり養子に出されるし、可愛い可愛いで済まなそうな役どころ。20話でもすでに「髪が汚れているわ、お風呂にちゃんと入れてもらっているかしら」「洋服ももっと可愛いのを着せてあげたい」と生母の桜子に気づかわれていましたが、アンタが言うなよ、ぜんぶアンタのせいじゃん、という気もしないでもない。幼女がつらい目に遭うシーンはあまり見たくないですけどね。

徳山秀典さんも、今作は影がうすいなあ。比呂人ってばへなへなして、知略も肝っ玉もないし、桜の精霊と言うよりコンニャク幽霊みたい。桜子のようなシャラっ太い心臓剛毛女が、こんな実戦力にならない、カスミ食ってるような軟弱男に恋するとは到底思えない。

毛量少なく削いだ、昭和っぽくない髪型のまま黒髪に戻したのと、大衆演劇の人みたいな眉のかたちにも問題があるか。昭和の二の線は、もっと、もわっと重っぽたい分厚さ感のある毛髪じゃないとね。横分けにしろボブにしろ。ショバショバした空気感は要らない。

『仮面ライダーカブト』での汁気たっぷりケレン味キャラ、『炎神戦隊ゴーオンジャー』での“おもしろカッコいい”ヒーローっぷりが嘘のよう。後半の巻き返しに期待したいところだけれど、今作は、“心中してナンボ”のお話のようなのでどうなるかな。

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エビーナ

2011-01-23 14:23:17 | 昼ドラマ

『さくら心中』3週めの先週(第9話~)から、ストーリー・演出ともにちょっと活気が出てきた感じです。金貸しの息子雄一(シャカ大熊啓誉さん)への身売り同然嫁入りを強いられた妹・桜子(笛木優子さん)に「ウチにいまあるだけのカネを集めた、コレ持って比呂人くんと逃げろ」と押しつける勝(松田賢二さん)、100万円の札束、何ゆえ新聞紙に包むか。しかもわざとガサガサヘタクソに包むし。誘拐の身代金偽装受け渡しじゃないんだから、せめて茶封筒ぐらいないのかと。商家だろうに。

こういう、細けえところにツッコみの糸口乱れ打ちになってきたら、昼帯、ノッてきたなと思わせますね。

 血縁のない妹への、肉欲含みの思いを曝け出しながら隠してもいる矛盾だらけの勝のキャラもおもしろいし、ウブなようでどこか押し付けがましくしゃあしゃあと“善人のイヤらしさ”満開の桜子親友・沙也香(須藤温子さん)も時限爆弾キャラ。ここへ来て桜子自身の、打算とすら言えない無茶ゴリを押し通す、可哀想なんて到底思えない、食えない女ぶりもだんだん明らかになってきました。

 こうなると、ひたすらカネカネあるのみの櫛山夫妻(神保悟志さん大島蓉子さん)と、ひたすら桜子とやりたいひと筋の雄一、ドラマ的には“野卑で下品でエゴくて悪役”ポジションの人々のほうが、ずっと微笑ましく、見守ってて楽しい、ある意味わかりやすく善良な人物たちのように思われてくるから不思議です。

番組公式サイトトップは、ご覧のようにあえかにロマンティックな官能的なヴィジュになっていますが、とにもかくにも中島丈博さん作。胸かきむしられるような切ない悲恋純愛話なんか期待しても無駄なんで、今後も大っぴらあけすけガハハな、カリカチュールなやりとりの中から、人間存在、男女の本質的な可笑しさ滑稽さ、ペーソスが幾許か掬い取れればそれで良しでしょうね。このドラマで、トップ画像に似つかわしい、ロマンティストで儚く耽美的、パセティックな人間性の持ち主だったのは、2週め途中で退場した郁造さん(村井国夫さん)だけだったような気がします。

そう言えば、昼帯ウォッチャーとしては瞠目の芸能ニュースが、今日は飛び込んできましたなあ。2007『金色の翼』での、得体がしれないながらもどこか可憐でイタげなファムファタール役が印象的だった国分佐智子さん、落語家の林家三平さんとご結婚だそうです。三平さん、まだ“いっ平”さんと言いそうになってしまいますが、もう兄上がこぶ平改め正蔵さんですしね。

三平さんがうっかり八兵衛としてレギュラー出演中の『水戸黄門』に、国分さんがゲストインしたのが交際のきっかけだったとか。ツヤツヤ童顔でいまだにパシリキャラがお似合いの三平さんも気がつけば四十路、大勢のお弟子さんを抱える一門の重鎮です。月河はあまり斯界の状況は詳しくないのですが、真打になられる頃は「(比較的マジメで考え込み性な)(←つまり、笑えない)お兄ちゃんよりも芸風が明るく悠揚迫らざるところがあり、先代(=お父上)三平さんの個性を継いでいる」との評も耳にしました。

そんな三平さんを支えるべく、国分さんは結婚後は芸能活動を引退して噺家の妻に専念されるとのことです。あの美貌がもうドラマ映像作品で観られないのは惜しい気もしますが、今年のお誕生日を迎えて35歳、女優として、『金翼』での怪しい存在感、風のように香気のように滲み出るオーラを超える作品・役柄に、今後出会えるかどうかを考えると、賢明な選択のような気も。

戦争体験のヌシみたいなお姑さんのほか、微妙にコワい小姑お義姉さんたちが2人もいる、一筋縄でいかなそうな一族に嫁がれるわけだけど、まあ頑張って幸せ掴んじゃってください。披露宴には『金翼』監督スタッフさんや共演者の皆さんも出席されるかしら。

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専念桜

2011-01-13 00:38:23 | 昼ドラマ

昼帯ドラマ『さくら心中』は相変わらずそろっとした滑り出しです。

もっぱら深夜録画再生視聴なのでなおさらそう思うのかもしれない。特に今季は正月期のため、週半ばの水曜(5日)からの放送開始で、13話の後、土日が挟まりました。ヒロイン・桜子(笛木優子さん)の運命の人・比呂人(徳山秀典さん)との出会いを1話終盤と2話冒頭にまたがってほんわか幻想的に描写し、「また桜を見にきます」「来年の春」と約束とも言えない言葉を交わさせた後、金曜日(7日)の3話にはその比呂人は一度も登場せず、桜子の生母・秀ふじ(いしのようこさん)と郁造(村井国夫さん)との経緯やいさみ酒造の経営苦境、金貸し櫛山(神保悟志さん)の息子で美容師の雄一(大熊啓誉さん)の桜子への無茶アタック、桜子養母のまりえ(かとうかず子さん)の懸念と思惑などを叙述しました。比呂人との“純愛発火”までに、言わば視聴者も桜子とともに土・日の2日待たされているわけで、この引きはなかなか技ありです。

 七三分けが微妙に油っこい櫛山社長のほかに、その女房でクチがうまくて軽くて利に敏そうな美容院経営者の真紀枝(『タクシードライバー』シリーズで常連?迷惑客の大島蓉子さん)、年じゅう“健康な多動症”状態の息子・雄一と、おもしろキャラ化しそうな人物のおもしろ表情をワンシーン見せてはすぐ次に行く。夫が家を空けがちなまりえさんの、アルコール依存症予備軍っぷりも、ちらっと垣間見せては深追いせず、次の登場場面では普通にプチ不機嫌な田舎商家の奥さんに。

いままでのこの昼帯枠での中島丈博さん脚本作と言えば、のっけから強烈キャラの仰天台詞やエキセントリック行動、珍奇なアイテム(肖像画やいわく因縁つきのジュエリー、アクセなど)満載で押してくるのがつねでしたが、今作は、“桜の呪い”にでもかかったか、家業経営にも愛人関係のメンテナンスにもいまひとつ心棒が抜けたように重だるげな郁造さんの挙措、たたずまい、一件穏やかで思慮深そうな外見からじんわり漂う“没落の予感”が全篇を覆い、本当に珍しいゆるやかムードの作品です。

たぶん3月最終週まで放送期間があると思われるので、このままのペースで終始するはずもありませんが、最近は“肉薄くして骨顕れる”感が強かった中島昼ドラの中では、ちょっと異色な作になる予感も。

…それにしても、2話で雄一が桜子のためにセットしてあげた髪型ってどんなのだったのか、ワンカットぐらい見せてくれてもよかったのに。桜子さんは髪型自体が気に入らなかったというより、「あんなイヤらしい男の手で触られたと思うと気持ちが悪い」という動機で帰宅速攻解体、シャンプーしちゃったようですが。

この時間帯、裏番組のKT子さんみたいのだったんかな。

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花の科(とが)

2011-01-08 15:12:35 | 昼ドラマ

15日(水)から開始の月河贔屓枠、フジテレビ系東海テレビ制作昼帯ドラマ『さくら心中』はどうでしょうか。昨年1年間はこの枠が変化球開眼を目指す特訓ルポ公開に明け暮れたような年で、比較的きれいに変化した『明日の光をつかめ』(夏休みの若いお友達にも適応、78月)、変化自体はオーソドックスだが審判によってストライクボール判定が分かれる『天使の代理人』910月)、開き直ってド直球で来たら肩に力が入ってシュート回転しワイルドビッチ、いやピッチ『娼婦と淑女』46月)、いきなり野球じゃなくソフトボールでふわんと来た『花嫁のれん』1112月)、ボールですらなくバドミントンのシャトルコックが飛んできた『インディゴの夜』13月)と、いろいろ模索開拓努力のあとはうかがえるものの、なかなかスイートスポットに決まりませんでした。

 原点に戻って今作は若い男女の悲恋を出発点とした愛憎、肉親の情に利害欲得、嫉妬や打算もからみ合った古典昼ドラ、脚本にこの枠の“牢名主”とも言える中島丈博さん登場です。

 ここ最近の中島作昼帯は、『偽りの花園』2006年)→『麗わしき鬼』07年)→『非婚同盟』09年)と、作品を追うごとに肉薄くして骨顕れるというか、長尺多話数連ドラストーリーと言うより“書きたいシーン、言わせたい台詞まんま並べてつないだだけ”化が進んでおり、193575歳中島さん、老いてますます盛んながらさすがに残された時間が視界に入ると、題材熟成待てずのせっかちさんになってきたかな?との感もあって、今作、あまり過剰な期待は持たないようにしてきました。

 7日(金)で3話、比較的ゆったりめのスタートです。村井国夫さん扮する飛騨高山の造り酒屋主人・宗形郁造の人物像が、抑えめの描出ながらなかなかいい。文化文政年間からの地元の名主(なぬし)で、明治に副業として始めた造り酒屋が、戦後の農地改革で本業となって4代目の当主。桜見物が道楽で、西行法師の歌風や生き方にひそかに憧れている。昭和34年春、ミッチーブーム(同月10日御成婚)に湧く世間をよそに、小学生の長男・勝を伴い桜名所めぐりに余念ない郁造が、兵庫県の古寺の千年桜に魅せられ、その木陰から精霊のように現われた幼女を「桜のご縁」と引き取って育てる。桜子と名づけられたその女の子は、16年後の昭和50年、19歳の美しい娘ざかり(笛木優子さん)となっていました。

その間、桜子が小学校3年生の冬には、桜子が赤子のとき捨てた実母で、芸者の秀ふじ(いしのようこさん)が名乗り出るということもあり、桜への思いつのる郁造は、ダム建設であの古寺が水没すると聞いて、大枚はたいてショベルカーや大型トラック、業者を動員、境内の千年桜を自邸の裏庭に移植します。桜は無事、根を張って、毎春美しい花を開くようになりますが、出費もかさみその頃から家業は徐々にジリ貧に。使用人への給金も街金から借り、妻まりえ(かとうかず子さん)は「私がお嫁に来た頃は羨ましがられる大店で、町の人たちからも一目おかれていたのに、今じゃ同業者にみんな追い抜かれて」「桜子と縁の深い、あの桜がうちに来た頃からや」と愚痴りながら酒を過ごす日々。

たぶん郁造さんは、ひとつ所に根を下ろして先祖伝来の家業を守り、現実的に商売に励んで、カネ儲け繁盛させてなんぼの人生が基本的に向かない、漂泊者気質の人なのでしょう。やってできないことはないが、性に合わないから、やっていてどこか空々しさや飢餓感がつのる。咲き急ぎ散り急ぐ桜のすがたに心惹かれてやまず、桜が連れてきた少女を美しく育てることに情熱を傾けて、一方では養父と養女という縛りを設け、桜子が女性らしくなってきた(物語時制で)2年前(=桜子推定高校2年生)からは、彼女の面影を求めて秀ふじと深い仲になる。

郁造さんの行動を、“幼少女好きのロリコン”で片付けず、桜への偏愛に象徴される放浪願望、野垂れ死に願望、旧家の当主としての安定した生活、次世代以降にわたって安定を保証せねばならぬ生活から逃亡したい願望の因数で分解するのは、ちょっと高度すぎて難物かもしれない。

最近のこの帯では影の薄い主題歌、今作は徳永英明さん『春の雪』で、これは出色のマッチングです。2004年の『愛のソレア』とFayray『口づけ』以来かもしれない。2話では郁造さんと秀ふじとのスナックでの差し向かい会話シーンにかぶったので、思わず何度も再生してしまいました。

♪心だけはどこにでも 自由に飛んでゆけるから 大切なことは君自身がいつも幸せであること…(中略)…君らしく歩けばいいよ 僕がいつも見守ってゆくから

…という歌詞は、今後桜子のメイン相手役となって行く若き杜氏・比呂人(徳山秀典さん)よりは、むしろ郁造さんが桜子に寄せる思いを歌っているよう。郁造さんはこの後ほどなくして桜子を遺し退場されてしまうようですが、今後を含めてこのドラマは郁造さんの物語、心だけでも自由に、どこにでも飛んでゆきたいと切望した男=“漂泊したくてできなかった男が、後世代に落とした影の物語”なのかもしれません。

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えんじょ交際

2010-11-03 21:13:48 | 昼ドラマ

週初め、111日と“一並び”の切りのいい日に始まった新昼帯ドラマ『花嫁のれん』、観光地の老舗旅館が舞台、ヒロインはアラフォー元キャリ、女将修業で姑の大女将とバトル…となれば、かつてのこの枠のヒットシリーズ『はるちゃん』のオトナ版といった趣きかな?と予想していました。

個人的には、お仕着せ着た仲居さん番頭さんが厨房や勝手口でがちゃがちゃやり合ったり、襖のかげで立ち聞き合戦、次々やってくるヘンなわけあり客たち、合い間に観光風景みたいな“にぎやか温泉モノ”は心底苦手なので、今作、視聴どうしようかなと迷いながら、とりあえず録画スタートしましたが、早くももやもやして来ました。

このドラマ、“言葉”のセンスがヘンです。金沢地方の方言については、行ったこともないし同地に知り合いもいないのでまったくわかりませんが、そういう問題ではなく、人物が発する言葉が、ところどころ、ひどく神経がかよっていない。

最初にアレ?と違和感を覚えたのは、失踪した夫がもしや…と思い彼の実家である老舗旅館を訪れた奈緒子(羽田美智子さん)に、ひょっとして借金の肩代わりを頼みに来た?と疑った大女将・志乃(野際陽子さん)が「アナタに“お母さん”なんて呼ばれる筋合いはありません」と、古典的に一刀両断した後、いかにも癪に障るといった表情で「…いじくらしい」とつぶやき捨てる場面。

志乃は「東京の大学に出すかわり、卒業したら金沢に帰って家業の旅館を継ぐように」と長男に言い含めていたのに、その長男・宗佑(3話時点で顔が映らないけど津田寛治さん)は約束を破って東京にとどまり、東京のキャリアウーマン奈緒子と結婚してしまった。志乃は速攻宗佑を勘当、奈緒子は“認められない嫁”です。ひとりの女性としての人間性や、息子の妻としての適性など“内容”を問う以前に、まず“手続き”が志乃からすれば違法なわけで、その部分を奈緒子がすっ飛ばして、正規の“内容”に則っているかのような「お母さん」呼びをしたから、「…いじくらしい」というリアクションになったのだと思う。

しかし問題はその後。「“いじくらしい”?」と方言の意味がわからず問いたげ顔の奈緒子に「不快で、鬱陶しいという意味です!」と志乃が何のヒネりもなく説明するのはどうでしょう。志乃さんはこの奈緒子との久々のサシ対面劇の別れ際には「この“かぐらや”の門をくぐって来た人を邪険に帰しては、かぐらやの品格が疑われます」「おもてなしの心は大切に」と宣言して孫娘・瑠璃子(ワクワクするお名前=里久鳴祐果さん)に見送りを言いつけており、“品”や“グレード”“義”“本分”をいたく大切にする、古き良き時代の厳格女将として描き出されており、いくら逆鱗に触れたとは言え客前で反射的にぶっちゃけ方言でリアクション、怪訝がられて、馬鹿正直にまんま翻訳、というのは、そこまでの地合いとは不釣り合いに幼稚で、品のない言動です。

奈緒子を「いじくらしい」と思う、志乃の感情にリアリティはあるが、板長でもある夫や、若死にした長女の夫である婿養子、仲居頭さんらとの夕食など、“身内しかいない”場面でぽろっとこぼすのならともかく、そのいじくらしい認められない嫁本人の面前でこれを発射するのは、どうにも志乃の人物像と噛み合わない。

どうしても作劇上“志乃に、奈緒子に対して「いじくらしい」を発させたい”ならば、奈緒子に聞こえるか聞こえないかの声量で小さく呟いておいて奈緒子「イジク…何ですか?」志乃「いいえ、何でもありません、とにかくワタクシはアナタを宗佑の嫁とは認めていないということです」と誤魔化させておき、かぐらやを出た帰途、公園か橋の上で「やれやれ」と放心状態の奈緒子の耳に通りすがりの女子中学生たちの会話「あの先生、体育の時間いっつもここらへん(←太ももとか)じーっと見よるんよ」「うっわーいじくらしぃー」とか、やんちゃな幼児に手を焼く若いお母さん「ほら、そこで騒いだらいかんよ、大人しいしなさい、いじくらしぃが」か何かが飛び込んできて「……いじくらしいってそんなのかぁ…私が」と初めてわかって溜め息、みたいな流れにしたほうが、“東京で働く女性ライフを謳歌してきた奈緒子”と“地元金沢土着に生きるかぐらや一族の世界”との間に立ちはだかる厚い壁、深い溝をも表現できたと思う。

奈緒子に関してかぐらや=神楽家の面々がたびたび「えんじょもん(=よそ者)」という表現をするのも、“方言の中で特に排他的・白眼視的ニュアンスを持つ単語”を象徴的に多用することで何かをどうにかしようという、台詞作りにのぞむ料簡の底の浅さが透けて見える。

東京に帰り自分の実家で、「宗佑の借金は(妻で保証人でもある)自分の働きで全額返済する」と奈緒子が言うと、妹の良美が「お姉ちゃん、肝っ玉だねー」と嘆息するのも鮮烈な違和感がありました。初回の再生で、聞き間違いか?と思わず巻き戻してしまった。キモッタマ?胆力が強い?…度胸やものを恐れない、驚かないことではなく、おカネを出す問題、出す姿勢を言っているのだから、どう考えてもここは「太っ腹だねー」ではないでしょうか。この場面に先立ち、宗佑の借金先である信金窓口で「最近は離婚するから旦那さんの借金は返せない、返す義務はないと言い張る人も多いのに、奥さんは妻の鑑ですね」と言われ「アラ、妻として当然のことなのに、カガミだなんてウフ♪」とデレる奈緒子のシーンがあるので、“さほど余裕の高収入でもない女の「細腕」で、おだてられて自分に酔ってつい身の丈以上に背負い込んでしまった”という滑稽さを際立たせるためにも「太っ腹」のほうがいいと思うのですけれど。

岡本真夜さんの澄明で軽やかなテーマ曲とともに加賀友禅模様がほころぶOPタイトルに大きく映る通り、今作、羽田美智子さんと野際陽子さんという、ゴールデンタイム主役ないし準主役級女優ふたりの共演とともに、脚本・小松江里子さんの名前も、この枠作品における脚本家名クレジットとしては記憶が無いくらい破格にフィーチャーされています。昨年のNHK大河ドラマ脚本家の新作オリジナルというところも今作の売りにしたいのでしょうが、ドラマの“血液”とも言える台詞、言葉に、どうもクレジットほどの重みや風格が感じられず、粗っぽいところが散見されるのは気がかりです。

まだ3話終了時点ですが、コントっぽいオタオタ演技をある程度楽しんでやっているような羽田さんは快適に見ていることができ、それはとても結構なのですけれども、それ以外の人物たちも、基本は仕事に家族に、あるいはほのかな恋心にと真っ当なベクトルを持つ常識人でさほどのトゲもなく、従って「ココがどう転がるか見逃せない」という引っかかりもありません。

平日帯ドラマは多話数を継続することでこそ、作るほうも視聴する側も醍醐味が味わえるもの。『ゲゲゲの女房』で再確認させてもらったばかりなので、軽々に見切ったりはできませんが、とりあえず録画してはおくものの再生はどんどん後回しになり、結局消去リスト入りしそうな気配も。どこか何かしら濃いところ、丹念さ、一筋縄で行かなさが感じられるところ、早く出てきてほしいものです。

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