長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

日本人の言う「イエイ」の味わい 鈴木あみ『alone in my room』

2010年09月05日 14時18分26秒 | すきなひとたち
 こんにちは。最近は、夜は多少涼しくなってきたような気がするんですが……日中は相変わらずですよねぇ!? 今日も最高気温何度になるのやら。でも、ちらほら雲が遠くに浮かんできだしたのが、秋の足音を感じさせるような。9月ですからね。
 先日申したように、私の家がTVを見られない状況になったということで、現在、ひまなときには主にラジオをつけている生活を楽しんでおります。
 昨日は深夜に、普段ほとんど聴かないNHKのFMラジオを聴いてみたんですが、NHKFMいいですね! あまり前に出ないDJによってたんたんと続いてゆくリクエスト曲と、AMにはないかわいた音質が、聴いている私の深夜における孤独感をきわだたせてくれているようで、とても新鮮な深夜を過ごすことができました。私はそれまで、深夜に聴くラジオといえばAMと相場が決まっていたので、同じ状況で番組を聴いているリスナーが全国に大勢いることを、番組内の投稿ハガキで実感するという深夜には慣れていたのですが……NHKFMの孤独感は強烈なものがあります。突然、南国の離島に住む少年が謎の少年に出会うというさわやかラジオドラマは始まるし……置いてかないでぇ!
 そんな中、リクエストアワーに流れ出したある曲を聴いて、私はあまりの衝撃に天井をあおいでしまいました。
 1998年秋に発表された、鈴木あみの『alone in my room』です。

「あろーんいんまるーさーむーくーなぁってきたぁねジャーンジャーン!」

 なんか……あまりに私の現状にマッチングしすぎているような。泣けばいいのか? 泣けば許してくれるんですか? NHKさん勘弁してください!
 この曲は、言わずと知れた小室哲哉プロデュース作品で、その年1998年にバラエティ番組の企画でデビューした鈴木あみ(当時16歳)のセカンドシングルです。
 これはねぇ……鈴木さんの声のういういしさが非常にいい効果を出してます!
 当時の鈴木さんのういういしさ、というかつたなさは、デビューシングルから隠しようのないものではあり、「まぁ、デビューしたばっかりだからな。がんばれよ!」という温かい応援を生んだり、「スターらしくない、つい最近までフツーの女の子だった感じがいい。」という親しみを生んだりしていたというプラスの反応も生み出してはいました。しかし、この『alone in my room』では、つたなさが世間の好感度レベルにとどまらず、作品の完成度までに大きく貢献している要素になっているのです!
 『alone in my room』は、タイトルの通り、何かの事情のために恋人から離れて一人きりになった主人公が、自分以外に誰もいない浜辺や部屋で孤独を味わいながら、隣にいない恋人のことを想うという内容を唄ったものです(作詞・TK&MARK)。
 歌の中で、鈴木さん唄うところの主人公は、
「楽しいかもね そういう一人も こういう場所も わるくないね」
 と言って慣れない久しぶりの孤独を楽しもうとしながらも、
「悲しいかもね でも仕方ない あなたがいない」
 といった感じにいやおうなしに今いない恋人のことを想いだしてしまい、最終的には、
「そろそろそばに 誰かよりそって」
 となげやりな発言をかましてしまうという域に達してしまうのです。
 また、この歌詞にそえられた曲が、暗くもなく明るくもなく一人しかいない風景を的確に映し出してくれるドライさがあっていいんですね! それでも突き放しているわけじゃなく、孤独に耐えられない主人公のつぶやきもしっかり拾ってくれるという、超高性能マイクのような小室サウンドの妙技。ポップミュージックを無数に手がけた小室哲哉ならではの円熟の腕です。
 話を戻しますが、この『alone in my room』の完成のために、歌詞と曲に加えて欠かせない味わいとなったのが、鈴木さんの歌手らしからぬういういしい歌声だったんじゃないかと、私は思うんです。その最大の論拠となるものが、歌詞の2番のサビの部分に登場します。

「alone in my room 寒くなってきたね
 窓辺に座って 星を眺めてる yeah」

 ここ! この「yeah」! ここでの鈴木さんのやるせない言い方が素晴らしいんです。「yeah」なんてかっこいい発音じゃありません。「いぇぃ……」という消え入るようなつぶやきなんですよ! まさに日本人が「yeah」と言うのなら、この言い方だろ!みたいな。
 つねづね、私は日本人が「yeah」と言うのはどんなシチュエーションが自然なんだろうかと思っていたのですが、ここでの鈴木さんの言い方は異様なまでにしっかりした説得力がそなわっているんです。
「私が一人でいるってことをかみしめたいんだけど、あんまりしっかり受け止めちゃうと立ち直れなくなるかもしれないから、ちょっと軽くあつかいたいなぁ……じゃ、イエイって言っちゃえ。」
 これですよ! この言葉が、聴く者の脳裏に一瞬にして浮かんでくるのです……あの、私だけじゃないすよね?
 これは、自分の歌唱力に自信のある唄い手さんが「yeah!」なんて堂々と言っちゃったら出てこない味わいです。というか、自信をもって唄ってしまったらどの情景もウソっぽくなってしまい成り立たなくなってしまうのが『alone in my room』の世界なんだと思うんです。そこを見事に表現したのが、唄うことそのものに対して新鮮な緊張感と戸惑いを持っていた鈴木さんだったわけなんですねぇ。まさにグッドタイミングな出会い!
 突然に私の話になってしまうのですが、私も劇団で役者をやっている以上、物語の中で自分がやっている役の身の上に起こった変化を、ある時あるタイミングで自分の身体で確実に体験して表現しなければならないという局面があります。というか、役者はその作業の連続だと思います。笑ったり怒ったり、身体が空も飛べるように軽くなったり重苦しくなったり。
 でも、これは役者に限ったことではなく、曲を歌うたびに曲それぞれの感情を再現しなければならない歌手だって同じことですよね。歌手の方がそれぞれどんな唄い方をするのか? どんな唄い方が聴く人の心をうつのか? 歌手じゃない私ですが、非常に興味深いものがあります。
 まぁ今回の場合は、歌手・鈴木あみの仕事というよりも、デビューしたての彼女の不安定な心境を見事にフレームにおさめた小室さんの仕事をたたえるものになっているかもしれないですが、日本人がムリなく言う「yeah」の実例を見せてくれた『alone in my room』。日本ポップス史上に残る名曲だと思います、yeah。

 
コメント (2)
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