長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

ほんとうはこわい江戸のロマンス よしながふみ版『大奥』

2010年09月16日 14時19分22秒 | マンガとか
 どうもどうも、そうだいです。なんかもう、秋なんですかねぇ。今日はだいぶ涼しい……ていうか、もはや寒い! 今朝はものすごい土砂降りがふりました。私の住んでいるアパートはほんっっとに古い建物なんで、もう三次元サラウンド方式で「ドドドドドド!!」という雨音が部屋中に響き渡るんですよ。もう、近くに新たなスタンドが迫ってんのかってくらいのド迫力でした。当然のごとく、洪水に襲われておぼれるというベッタベタな悪夢を見て目覚めた朝。さわやかじゃねぇ!
 昨日もまぁ、なべてこともなしな一日だったんですが、最近に発売されたマンガ『大奥』(原作・よしながふみ)の最新第六巻を読みました。いやぁ……いいねぇ。
 私はマンガ雑誌を定期的に買って読む習慣はないのですが、単行本が出たら必ず買うと決めているマンガが何作かあります。今現在でいうと例えば『ヤングマガジン』連載の『センゴク 天正記』とか、『アフタヌーン』連載の『臨死!!江古田ちゃん』、『イブニング』連載の『レッド』、『週刊少年ジャンプ』連載(終わっちゃった! 寂しい)の『ピューと吹く!ジャガー』といったところでしょうか。
 ま、いろいろあるんですが、その中でも特に次の巻が出るのを楽しみにしていたのが、昨日読んだ『大奥』(白泉社『月刊メロディ』連載)だったんですよ。
 とても有名なマンガですし、柴咲コウ、二宮和也の主演で実写映画化されるというビッグイベントも来月に控えてもおりますんで、何を今さらといった感じなんですが、私、好きなんですこれ!
 ご存じの方も多いかと思いますが、このよしながふみ版の『大奥』は、TVの時代劇ドラマでやっているようなそんじょそこらの『大奥』とはまぁっったく!レベルが違います。ただの豪華絢爛なコスプレ劇の、ありがち「女のドロドロ情念泥レス」ものだと思って読まず嫌いをしていたら、大損こきます。
 よしながふみ版『大奥』最大の特徴は、誰がなんと言ってもこの一言につきます。
「男女逆転」!! うーん、わかりやすい。
 要するに、この作品は「歴史劇」じゃなくて「SF」なんです。
 物語の転換点は、江戸時代前期の三代将軍・徳川家光の時代。日本全国に突如として「赤面疱瘡(あかづらほうそう)」なる伝染病が大流行します。なぜか男性にしか感染しないこの病気は致死率が異常に高く、なんと発生から百年もたたないうちに、日本の男性人口が女性の四分の一にまで激減してしまうという異常事態。
 ついに将軍・家光までもが病死してしまう事態となり、大奥の重鎮・春日局(かすがのつぼね)は家光の娘・千恵姫を「三代将軍・家光」にしたてあげます。以降、徳川将軍家をはじめとした全国の諸大名は、人口の少ない男性でなく、豊富にいる女性を武家の当主とし、政治の中心にすえていくようになるのでした。つまり、女性の将軍のために常時三千人もの男性が勤めている「逆大奥」ができあがった、というわけ!
 いや~、これがSFでなくて、何がSFだというのでしょう。素晴らしい発想の転換です。以降、歴代将軍の活躍、「忠臣蔵事件」などの歴史的イベントはほぼ史実通りに起きるのですが、どれもこれもがきれいに男女逆転して進んでいくんですね。ちなみに、実写映画版では柴咲コウさんが「八代将軍・徳川吉宗」役を演じるそうです。吉宗ですから。暴れん坊ですから。
 でもね、よしながふみ版『大奥』の魅力の真骨頂は、男女逆転という奇想のおもしろさではありません。それはそれでなかなか簡単には思いつかないことだとは思うんですが、もっと素晴らしいのは、そんなありえない史実からの逸脱が、360度まわって再び史実にもどってきて、忠実に再現するだけの手法ではできないような、見事なまでのリアルさを提出できているところなんです。
 この作品では、過去の大奥をあつかった作品ではあまりはっきりとは見えてこなかった要素が、これでもかとばかりに克明に描かれます。政治の恐ろしさ、栄光への渇望、孤独へのおびえ、流れる血の鉄くささ、他人を疑うために起こる悲劇の愚かさ、そしてそんな最低な世界の中でも、愛をもとめて生き続ける人たち。
 すげぇんだ……まだ読んだことのない人は、悪いこと言わないから読んでみて! ちょっと胃がもたれるくらいに重い事件の連続なんですが、必ずそれが、のちのちの深い感動につながっていきますから。よしなが先生は素晴らしいね! たんたんと、しかしあますことなく登場人物の心情を描いていく筆力には、ため息が出てしまいます。見事だねぇ! まぁ、この画風なくしては成立しない作品であるだけに、来月公開の実写映画のできにはちと懐疑的な私なんですが……でも、観には行きますよ!
 単行本六冊の段階で、江戸時代中期の六代将軍・徳川家宣の時代まで進んでいる原作なんですが(八代将軍・吉宗の物語は序章みたいなもの)、私はやっぱり、五代将軍・徳川綱吉の物語が一番キツくて、感動したな~! そりゃ、生類憐れむわ……
 ホントに、続きが楽しみなマンガです。よしなが先生、最後までがんばってください! でも、最後って、どこ? 江戸時代だから、やっぱり幕末? 坂本龍子? 高杉晋さ子? 土方歳美? ペリーヌ提督と黒船ちゃん艦隊?……くだらねぇ。

コメント
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