長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

全国城めぐり宣言 第3回「下総国 高品(たかしな)城」

2011年04月30日 22時34分56秒 | 全国城めぐり宣言
 こんばんは~。そうだいです。今日も春でしたね。ゴールデンウィークも2日目なんですけど、オレは特にこれといった予定もねぇぜー!! みなさんはいかが?

 いつの間にか4月も最終日になってしまいました。
 まぁ、先月がいろんな意味で長~く感じるものでしたからね……深刻な内容を報じつづけているニュースや夜の街の暗さなど、まだ日常を取り戻しきったとはいえない春でしたが、桜もきれいだったし、あたたかな陽気もうれしかった。
 ひょっとしたら、今年の4月ほど「春」のありがたみを心の底から感じた4月も、今まではあまりなかったかもしれません。あっというまに終わってしまいましたが、とてもいい月でした。

 さて、あたたかくなってきたらやっぱり外に出たくなるのが心情ってもんであります。そして、そうなると私の中では秘められた大いなる野望が首をもたげてくるんだ!

 ほぼ半年ぶりにこの話題をおっぱじめますが、わたくしそうだいは「いつかは必ず行ってみたい!」と思っている日本国内の城(か城跡)が、全部で402ヶ所あります。

 選定ルールとしては、戦国時代になんらかの重大事件にかかわったというお城からリストアップしました。全国あわせておよそ5万あったともいわれる城のうちの厳選402ヶ所。
 いやー……私、ほんっとに日本史が好き、なのよねぇ。

 なので、これからもヒマで天気がいい時にはいろんな城めぐりをしてみたいものであるぁと考えているのですが、実は今の時点で、402ヶ所のうち2~3すでに探訪を終えているお城(跡)があるんです。まずは近場から攻め落としていこうという感じで、自分の家に近いお城からどんどん計画を始めていました。
 その第1弾となったのが2年前、2008年の春先に行った千葉県千葉市生実(おゆみ)町の「小弓(おゆみ)城」だったわけです。いや~あれは楽しかったねェ。
 そして小弓城を皮切りとしていくつかの探訪を終えていたのですが、今年これからの探訪再開を期するに当たって、まずその前に過去の探訪の記憶を確認しておきたいと。

 ということで、今回はその年の夏に行った、そうだい402城制覇プロジェクト第2弾のリポートを復活させていただきたいと思います。前半は、所属していた劇団のホームページ内の劇団員ブログでも当時つづったことのある内容です。


 時は、2008年7月。

「納涼! 交差点にいた女」

 ※その夏、私の中では未曽有の稲川淳二ブームが到来していました。以下の文章は、なるべく怪談を語っている時の稲川さんの語り口で脳内再生してみてください。

 イヤイヤイヤイヤどうもどうも、そうだいです。
 なんだか最近、ミョ~な異常気象が続いてるんですけど、やっぱり夏ですから、恐い話を聞きたいって言う方もいらっしゃるんですよねぇ。

 これはねぇ……恐くはないんですけどね、ちょーっと不思議な話なんです。

 ついこないだのことなんですけどね、私~、近所の古い城跡をたずねることにしましてね。

 「高品(たかしな)城」っていうんですけどね、なんでも千葉市の若葉区にある城跡なんだけども、戦国時代の前半ごろにこの辺を支配していた千葉さんっていう大名の家来が住んでた城らしいんですよ……なんでもその時ご主人の千葉さんは、今は立派なお城の形をした郷土博物館が建ってる「千葉城」ってところにいたらしいんですけどね。そっちのほうは「亥鼻(いのはな)城」ともいうらしいんですけど、「千葉城」のほうがわかりやすくていいよね、千葉さんが住んでるんだから。

 でさっそく私、真夏の昼過ぎに自転車かっ飛ばしてね、その「高品」っていう地名の残ってる丘に登って、城跡を探してみることにしたんです。

 けどねぇ……それがおかしいんだ。

 城跡だったら、せめて古い石碑ぐらいは立ってるようなもんなんだけど、丘のど~こを探してもなんにもない。
 困っちゃったんで、何人かこの丘に住んでる方にも実際に聞いてみたんだけど、み~んな「高品城なんて知らない、聞いたこともない。」って言うんだ。

 ミョ~だなぁ……もう城跡さえ残ってないのかなぁ~と思って私、あきらめかけて丘を降りちゃったんだなぁ。悔しかったんだけどねぇ。

 そしたらねぇ。あれ~? これがヘンなんだなぁ。

 丘を登るときにはな~ぜか見落としてたんだけど、登り口からちょっと行ったところに、小さなほこらがあるんだ。格子戸はガッチリ閉まってるんだけど、なにかがまつってあるらしいんだな。
 なんだろうなぁ~? と思ってのぞいてみたらね……ずいぶんと古そうな仏像が、昼なのにうす暗~いほこらの奥から、私をジーっと見てるんですよ……
 私もう、あ~こりゃたいへんなものだと直感しましてね、ほとんど反射的に手を合わせてしまいましたねぇ。

 そしたらね、私、突然ハッとひらめきましてね、そこから自転車で往復1時間かかる図書館に駆け込みまして、高品城の『発掘調査資料』ってのを引っぱり出しましてねぇ、よくよく確かめてみたんだ。

 イヤ~驚いちゃったなぁ私……道、まちがえてたんですよ。

 丘の上じゃなくて、ふもと! 例のミョ~なほこらを通り越したところにあったんだ、高品城の城跡っていうのは。

 私はもう、急いで高品の丘にまた向かったんだ。いつのまにかだいぶ時間もたっちゃってて、もう外は日が暮れかけてるんですよ。真っ暗な城跡なんてヤなもんですよ~!
 さっさと見つけちゃおうと思って私、自転車を立ちこぎ全速力で走らせたんだ。もう汗だくですよ~、歩いてる人なんかビュンビュン追い抜いちゃったりしてね。

 でもねぇ……その高品に行く道の最後にあった信号がね……

 そこ、4車線どうしのでっかい交差点なんですけどね、車の交通量もたいしたもんだったんだけど……信号が赤になっちゃったんだなぁ!
 くやしかったなぁ~、もうちょっとだったのに。

 もうだいぶ真っ暗になっちゃっててねぇ、私、信号が青になったらすぐに渡っちゃおうと思いました。必死でしたねぇ。

 ところが……ミョ~にヘンなんだなぁ。

 信号待ちしてる私のとなりにね……すごくかわいい女の子がいたんですよ……ミニスカートで自転車なんだなぁ。
 おかしいなぁ~……だっておかしいんだ。明らかに私のタイプなんだなぁ。

 そこで私ね……信号が青になっても、ちょーっとだけスピードをゆっくりめにして、その女の子と自転車どうしで併走してみようかな~と思っちゃったんだなぁ。
 交差点を渡るぐらいのあいだならねぇ……これも縁ですから。城跡だってもうすぐなんだから。急がないと消えちゃうもんでもないんですしね。

 しばらくして信号が青になりましてね……その女の子、見た目を裏切らないかなりのスロースタートでこぎだしたんだ。私もそれにあわせてゆっくりと……

 その時だ、

 ブゥうウォオおおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~オオオン!!

 わあアアアアぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

 信号無視のチャラい真っ黒ワゴンが、私と女の子のすぐ前を猛スピードで横切ってったんだ!

 イヤ~……スケベ心おこしてほんとによかった……交差点であの女の子に気づいてなかったら私、死んでました……
 そのあと私、またあのほこらに行ったときに拝みたおしましたね。

 あの交差点の女の子は……仏様がつかわしてくださった天女だったんですかねぇ。ふつうに一緒にびっくりしてましたけどねぇ。不思議だなぁ~!

 まぁ、そんな話なんですけどね。

 え、高品城?

 あぁ~……城跡まるまる、マンションになってましたね。
 半日つかってこのオチですからね……恐いなぁ~!!

(ここまでが2年前の記録です)


 いやぁ~。高品城ぜんっぜん関係なかったね。

 でもほんとに、実感として高品城はほぼ「ない」にひとしかったんですよ。
 現在、高品城だった区画の大部分は11階建ての高層マンションの敷地になっております……

 千葉市の市街地からもほど近い住宅街となっている千葉県千葉市若葉区高品町に高品城跡はあったのですが、もともと丘ともいえないような低めの丘を利用して築城されたらしい高品城は、今やマンションとJR成田線の線路に寸断されて「城の形跡」を残している場所はほとんどありません。
 ただ、そもそも「お城」というものは、現役当時に中に住んでいた人々が信仰していた寺や神社といった宗教施設がたいてい敷地のどこかにあるもので、これはもう「生活する場所」や「武器庫」とおんなじくらいに必要不可欠なものだったのです。
 そして、人の信仰心というものは時間がたてばたつほど独特の重みを増してくるものでして、肝心のお城が消え去ったあとも、城内にあった寺や神社だけは取り壊されずに残されている、という現状になっている城跡も少なからずあるんですよ。
 この高品城もそのご多分に漏れず、マンションのすぐ近くには今でも年季の入った春日神社や等覚寺がかろうじて残っており、特に春日神社の敷地内には、いまだに「見ようによっては土塁や空堀に見えなくもない」地形もチョビッとは残っており、高品城付近の道が入り組んでちょっとした高低差が連続しているのも城跡っぽくはあります。でも、ほんとに「小高い」っていう程度の丘なので、「要害の平山城」というほどのお城が建っていたことは、なかっただろうな。

 歴史的なことを確認してみますと、下総国にあった高品城ははっきりした築城時期も廃城時期も確定していないのですが、鎌倉時代のいにしえからながらくこの一帯を支配してきていた千葉一族の重要な拠点のひとつとなっていました。
 高品城の場合は、実用的な軍事基地というよりも宗教的な施設の防衛基地という意味合いが強かったようで、代々千葉家の当主となる人物が元服式を挙げる時にセレモニーを行っていた「千葉妙見神宮」にほど近い地にあった高品城は、同じ千葉市にあった千葉家の本拠地・千葉城から挙式のためにやってきた当主一家の宿所となっていたりもしていたようで、ふだんは千葉家譜代の家臣である安藤家が城主となって経営していました。

 ところが、高品城は戦国時代の前期からかなりアブない戦国大名と戦国大名との軍事境界線に入る地域に。
 ながらく千葉県一帯を支配していた名族・千葉家は、室町時代後期に動乱の時代が始まるに当たってみるみるうちに領地を減らしてゆき、1455年ごろには、本拠地を千葉城からおよそ15キロほど北東にある本佐倉(もとさくら)城(千葉県佐倉市酒々井町)に移転するようになっていました。

 見捨てないでぇ~!!
 高品城のねがいもむなしく、それ以降の千葉家の元服式は本佐倉城ちかくの神社で執り行われることにあっさり決定し、戦国時代が始まる頃には、かつて千葉家が住んでいた千葉城も、それに付き従っていた高品城も時代の表舞台からきれいさっぱり消え去っていたのです……

 哀しいですね~。哀しいけど、これ戦争なのよね!

 由緒ある千葉家をして代々の本拠地を放棄させるほどにまで追い詰めたのは、現在でいう千葉県の中部で独立した「小弓公方」でおなじみの足利義明(義昭じゃないよ!)や、南部から疾風怒濤のいきおいで勢力を拡大してきた『信長の野望』でおなじみの里見家、そして最終的には関東地方のほとんどを呑み込むことになったキョーフの後北条家といった、次から次へとやって来る「新しい時代の波」でした。う~ん、まさに戦国時代!

 当時の高品城探訪のことで思い出す光景は、暗い夜の春日神社の境内で休んでいたときに見た、たかだか30分もしないうちに次から次へとマンションに来ては去っていき、マンションに来ては去って行きしていたデリバリーピザの配達バイクでした。

「配達のバイクが、城に伝令に来たり馬出しから出撃していく騎馬武者のようだ……今もこうやって、ピザを食べて高品城に住んでいる人々がいる。これは観光の名所になるのとは別の次元で、高品城が現代に生きているということなんだろうなぁ。」

 あ~、はやく新しい探訪に行きたいな~!
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合言葉は愛死美絵無  ~『アゴなしゲンとオレ物語』の奇跡~

2011年04月28日 23時42分04秒 | マンガとか
 どう~もこんばんは。そうだいです。
 ほんとにまぁ、日々刻々とあたたかくなってまいりました。気がつけば桜の花も過ぎゆき、「ゴールデンウィークどうするぅ~?」なんていう会話が耳に入ってくる季節に。梅雨のあとは夏の到来ですよ!
 4月ももうおしまいですねぇ。いろいろとやりたいことをやりつつも、まだやっていないことにも想いをはせたりしております。光陰矢の如しですからねぇ、挑戦したいことはいっぱいありますが身体は1つだけ。謙虚に貪欲に生きていこう。


 先日のブログで私、最近読んだ小説とマンガについてのことをいろいろとつづっていたのですが、今回はまたしてもマンガの話題をしてみたいと思います。
 しめ方としては「な~んか、気軽に読めるおもしろいマンガでもねぇかな?」という流れになったのですが、その前に最近好きだったギャグマンガってなんだっけ? と考えたときに、いくつかあった中でもいの一番に思い出したのが、今回とりあげるギャグマンガです。

 これはすでに連載が終了してしまっている作品なので、最新刊を楽しみにするということはすでにかなわないのですが、当時は本当に大好きでしたねぇ。
 とにかくまぁ、作者の発想の豊かさと描写力がきわだっていいんです!


『アゴなしゲンとオレ物語』(作・平本アキラ 1998~2009年に講談社『週刊ヤングマガジン』で連載 単行本全32巻)

 いや~、好きでしたねぇ! だいたい12ページくらいで展開されるショートギャグマンガで、ほぼ1話完結のかたちで11年間、450話を超える珠玉のエピソード群が連載されていきました。
 ストーリーの基本はいたってシンプルで、超零細運送会社「アゴナシ運送」(社員1名、のち2名)を経営している、容姿が極端に特徴的な中年男「アゴなしゲン」ことゲンさん(32歳既婚)と、彼をとりまく人々のダメダメしくもいとおしい非日常の日々を描くというものでした。
 お話の主人公はいちおう、タイトルの「オレ」にあたるアゴナシ運送社員のケンヂ(19歳ヒモ生活)だったのですが、本来はツッコミ役に徹するべきところを急速にゲンさんの生きざまに影響されて自身もダメ人間街道をバク進していくことになり、その後は明確な常識人(読者が感情移入できる人)が誰もいないケイオスワールドがだだ漏れになっていくこととなります。
 天下の『ヤンマガ』連載ということでお色気要素もふんだんにあり……というか、全体的に「お色気」とはちょっと違う次元にいっちゃっている「変態おげれつ要素」だけがストーリーを牽引する原動力であるという悪夢のようなエピソードもひんぴんと見られました。
 まぁそんなこともあって、作品の「華」となるべき見目うるわしいヒロインの方々も単なる美女であるわけがなく、

・低収入のケンヂをやしなっている男気あふれる職業不詳の彼女「ちいちゃん」
・昼は保育士で夜は風俗嬢という、人とのふれあいをライフワークにするゲンさんのマドンナ「ハルちゃん」
・アゴナシ運送第2の社員で巨乳メガネっ子という容姿をまったく活かそうとしない冷徹娘「月形」

 といったひとクセもふたクセもあるキャラクターばかり。でも、男女関係なく全キャラクターに共通しているのは、おのれにウソをつかない生きざまをまっとうしていること! これは素晴らしいことです。まぁ、あまりにウソをつかなすぎたために警察のお世話になったり、存在自体があぶなすぎていつの間にか連載から姿を消してしまった人も何人かいたんですけどね。

 『アゴなしゲンとオレ物語』を語る上でどうしても避けて通れないのが、作者・平本アキラ先生の常識を超越した速度での「画力の上達」です。
 ちょっとね……第1巻と最終第32巻とでは、いくら10年以上の時間差があるとはいえ、作者が違ったとしか思えないような作画レヴェルのへだたりが見受けられます。
 最初期ははっきり言って「マンガを描きたい!!」という気合いだけでコマをうめているような男くさい乱雑&大出血なバイオレンスワールドだったのですが、それがみるみるうちにうまくなってくうまくなってく。
 転機はやっぱり、女性でありながら積極的に体をはったボケに参加していく月形さんの参戦からなのではないでしょうか。だいたい連載3年目、単行本も第10巻を数えたあたりから「カッコイイ(ように一瞬だけ見える)男」と「セクシーな女」が要所要所でビシッと描きだされてお話を引き締めるようになってくるのです。

 すごい! 混沌に秩序が生まれはじめた!!

 平本先生の『アゴゲン』を通した画力の上達の歴史は、まさに人類の武器の歴史にも匹敵しようかというドラマチックなものでした。
 それはそのまま作品の「ギャグの原動力」にも直結しているテーマであり、最初期の画風は、美しいもののいっさいない荒野で「きれいなお姉ちゃんはいねが~! ニッヘェ~。」というゲンさんの雄叫びがこだまする原始時代の石オノのような鈍重な破壊力のみ。全コマ全力投球なので、若干読んでていて疲れます。
 ところが描写力があがった結果、ゲンさんの周辺にもチラホラと美女(たいてい変人か物の怪)が出て来るにつれて、「なんでこんな変な奴らしか寄ってこねぇんだ! デラ・ベッピン!!」という引き気味の余裕がゲンさんに生まれてくるようになるのです。基本はボケつつも、あのゲンさんにもついにツッコミをやる余裕が出てきた……まさにこれは、押して引いてのウデがかなめとなる斬撃系切れ味バツグンの日本刀の時代への移行です。
 この流れにしたがって、ギャグの種類もただただお下劣下ネタ一点押しの前期から、ギャグマンガ界屈指の美麗な描線でベタ、シュール、バイオレンス、エロなどを幅広く描きわけていく後期へと進化していきました。

 連載後半の『アゴゲン』のタッチは、まさに「洗練」とはこういうことなのかという感じで、前半に比べて描線は細くなって的確になり、特にスクリーントーンの技術が格段にアップしたために、全体的に絵に透明感はあるのに描かれている情報量がハンパなく豊潤という域に達していました。
 もともと平本先生は1970年代の日本の劇画マンガやハリウッド映画に相当な思い入れがあるらしく、『実験人形ダミー・オスカー』や『ダーティーハリー』、『ロッキー』などにささげられたと思われるネタがしょっちゅう見られ、そのために前期は異常に点描や線描が多い真っ黒なコマが多かったのですが、そこらへんの想いをたたきつけるように描き、そして無念にも連載中断のやむなきにいたってしまった『俺と悪魔のブルーズ』(2004~08年に講談社『月刊アフタヌーン』で連載)を通じて、いい意味で平本先生はそれらへの傾倒から卒業していったようです。

 こんな感じで、パワー勝負の荒削りな前期とアイデアと上達したテクニック勝負の後期。どちらもまごうことなき『アゴなしゲンとオレ物語』ながら、互いにまったく違う方向性の輝きを見せている表裏鏡あわせの関係が生まれたのです。
 このへんの作品の方向性と画力との密接な関係は、同じ『ヤングマガジン』で1993~96年に連載されていた思春期ギャグマンガの最高峰とも言われる『行け! 稲中卓球部』(作・古谷実 単行本全13巻)にも通じるものがあるかと思うのですが……どっちにしろ、ギャグマンガって、絵のうまいへたって、おもしろさとは意外と無関係なんですよね。むしろ、絵がうますぎるとギャグがさめちゃうっていうマイナス面もあるような……

 平本先生……キャリアの最初っから、10年以上も続く名作マンガを世に出しちゃったし、しかもあんなに絵がうまくなっちゃったし、これからどうするんだろ!?
 余計なお世話ながらも心配でしょうがなかったのですが、去年の暮れからNTTドコモのケータイ電話専用の動画サービス「BeeTV」内で『アゴゲン』のパラパラアニメ放送(マンガのコマに声優のセリフがのっかったようなやつ)が配信されるようになり、今年の2月からは平本先生の満を持しての新連載となる『監獄学園(プリズンスクール)』が始まりました。いよいよ動き出しましたね!


 人に『アゴなしゲンとオレ物語』を「おもしろいから読んでみてよ!」とすすめる時、なんといっても最大の障壁となるのはそのギャグのお下劣性なのですが、もうひとつ気になってしまうのがその全32巻という長さです。
 でも大丈夫! 『アゴゲン』は基本的に1話完結形式ですから、どの巻のどのエピソードから読んでいただいてもけっこうです。とにかく読む人に要求されるのは、『アゴゲン』の狂気に満ちた世界に耐えられる精神の強さと、その狂気の奥に込められている人間の真実の「友愛」を見出すまなざしです。
 それさえあれば、あなたにも『アゴゲン』のすばらしさはわかるはずだ、たぶん……


 ここで、私がもっとも心に残っている『アゴなしゲンとオレ物語』マイベストエピソードを紹介したいと思います。
 基本的に下ネタとエロに満ちている『アゴゲン』ワールドだし、私もそこが大好きなところなのですが、なぜか一番心に残ったのは、あんまりそこらへんの味わいは出てこないお話でした。

第436・437話 『女装のトラッカー 前後編』(2008年12月 単行本第31巻に収録)

 これはすばらしいです。だいたい長く続いたギャグマンガの末期って、ノリノリだったころに比べて見劣りする部分が少なからずあるし、実際に『アゴゲン』の最終巻にも「うむむ。」と思ってしまう物寂しさはあったのですが、その直前に生み出されたこのエピソードは最高でした。これがおさめられたコミックス31巻自体、あのスタジオジブリの有名作への愛情がたっぷり詰まった名編『崖上のトラッカー』などの高レヴェル作がそろっています。『アゴゲン』としては最後のクリスマスとなる2008年の12月24日に起きたドドイツ・テロのお話もあるからすっげぇお得!

 『女装のトラッカー』は『アゴゲン』にしては珍しく前後編の展開となっているのですが、タイトルのとおり、ひょんなことから女装した姿をゲンさんに見られてしまったケンヂが主人公となるお話です。
 ほんのたわむれで女装していた姿をゲンさんに見られたケンヂなのですが、ゲンさんはどうやら女装したケンヂのことを知らない女性だと勘違いしているようすで、調子に乗ったケンヂはゲンさんに好意を寄せているようなそぶりを見せ始めるのだが……というのがお話のすじ。

 いや~……このエピソードのオチには一本とられました。
 400話以上やっている『アゴゲン』なんですから、とびっきりぶっ飛んだオチというものにも見慣れていたつもりだったのですが、これはもう、いやはや上質のミステリーか星新一のショートショートを読んだかのような「すっころび感」に襲われてしまいました。やられた~!!
 あの、たぶん、「見知った人間が変装して初対面のふりをする」という典型的なパターンですし「男が女装して男をだます」というところもギャグマンガとしては特に目新しくはないので、もしかしたらある程度の方はオチを予想することはできるかもしれないんですが、私は見事にやられました。

 無数にある珠玉の名作たちの中で、なぜ私がこのエピソードをおしたのかというと、

 オチがわかったあとで読み直しても、いやさ、オチがわかっているからこそ読み直せば読み直すほどおもしろくなるから!!

 ね~、ホントにミステリー小説の名作みたいでしょ? 『女装のトラッカー』は、ジャンルで言うとミステリー? スリラー? はたまたサイコサスペンス?
 ほめすぎでしょうか……いや、そんなことはないはずです。とにかく、1コマ1コマでの登場人物たちの行動に込められた細かな動きすべてに「隠された意味」がある!
 これは生半可な画力のマンガ家さんにはできない芸当ですよ。だからこそ、描写力の熟達した時期の平本先生だからこそ創造し得た至高の逸品だったのでしょう。
 絵のうまさだけじゃなくて、このエピソードは平本先生の巧妙なストーリーテリングもきわだっています。まぁホントによくできたドラマですよ。しかも、よくよく考えてみたら「マンガ」という形式でしか成立しないんだ、このプロット。

 ところで、この『女装のトラッカー』にはいつも通りレギュラーキャラのほとんどが出演しているのですが、『アゴゲン』きってのリアリストである月形だけが登場していません。
 なにをかくそう、私がいちばん大好きな『アゴゲン』キャラは無駄にナイスバディな月形さんだったので、最初は「なんで出てこないんだろう?」と首をかしげていたのですが、オチを見届けた段階で深くうなずくことができました。
 『女装のトラッカー』は、月形が出てきたらその時点ですべてがぶちこわしになるエピソードなのよ……

 おそるべし、平本采配。
 たかがギャグマンガといわずに、すべての出演キャラクターに熱い愛情と怜悧な計算の眼がゆきとどいた『アゴなしゲンとオレ物語』の伝説を、まだご覧になられていない方はぜひともご一読いただきたいと思います。


 最後に、主人公ゲンさんが愛していやまないこの言葉を。

「愛死美絵無(あいしーびーえむ)」
 意味は……

「愛」することも 「死」ぬことも
  「美」しすぎて 「絵」になら「無」い
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遠くの星にかえったウルトラマン ~また観たいんだけど~

2011年04月27日 23時06分00秒 | 特撮あたり
 どうもこんばんは~、そうだいです。今日も天気が良かったんですけど、夜から雨が降ってきちゃいましたね~。にんともかんともジメジメしててイヤね!


 最近、いっつも聴いているTBSラジオのパワープッシュで、よく「ガールネクストなにがし」の曲が流れることが多くなっています。まぁ、なんちゅうか、最近の曲なのになぜかなつかしい気分にひたってしまうという、100%純正うちこみポップって感じですよね。なんか、なにを歌ってもひとむかし前の曲に聴こえちゃう感じは、90年代前半の音楽シーンにしっくりきすぎてしまった「大黒なにがし」に通じるものがあるなぁ、なんて感じてしまいました。

 で、なんで今「ガールなにがしドア」の曲が流れているのかというと、どうやら去年の暮れに公開されていたウルトラシリーズの劇場最新作『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(監督・アベ ユーイチ)が今月になっていよいよDVD・Blu-ray化されるにあたり、この作品の主題歌となっていたその曲が宣伝のためにパワープッシュされているかららしいのです。

 あぁ……そんな映画、あったねぇ。観には、いかなかったなぁ。

 この『長岡京エイリアン』を何回かご覧になられた方ならば誰でもご存じのことでしょうが、わたし、おたくです。
 で、そのおたく体質の源泉となったのは、まごうことなく家でレンタルビデオやTVの再放送をつうじて大好きになった「ウルトラシリーズ」だったのです。

 私はまことに運の悪いことに、『ウルトラマン80』の放送終了から『仮面ライダーBLACK』放送開始のあいだという約5年間の「特撮作品の冬の時代」に幼稚園児となっていました。つまんねぇ~幼年期。
 しかし、この未曽有の「特撮ききん」のために私は特撮にまったく興味をしめさないサッカー少年になったのか?

 否!!

 逆に枯渇していたからこそ、むしろそれを強くもとめる恐怖の「特撮ブラックホール体質」になってしまっていたのです。こわいね~! まわりの友だちはだいたいミニ4駆かビックリマンシールにハマッてたんですけどね。

 それで、話は現在にまた戻るのですが、そんな私が!! 「ウルトラマン」こそおのれの原点としていたはずの私が! そのシリーズの最新作を観に行ってないって言うのよ!?
 こりゃいってぇどうしたことなんでぇ!!

 理由はいたって簡単。「怪獣が地球であばれないから。」

 天下の円谷プロ(現在はパチンコ大企業フィールズの傘下会社として存続)が制作する「ウルトラシリーズ」は、2007年に放送が開始されたTVシリーズ『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』から、物語の舞台が「地球じゃないどっかの星」になっているのです。
 TVシリーズの『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』と、その続編にあたる『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』(2008~09年)の2作は宇宙のどっかにある惑星での、宇宙人と宇宙人とのそれぞれの手持ち怪獣を使ったポケモン的バトルが物語の基本ラインとなっています。その中で地球人やウルトラマンはわき役扱いとなっているのですが、とにかくしちめんどくさい前準備ナシで、宇宙人に召喚されたゴモラやエレキングといったメジャーなウルトラ怪獣同士がドリームマッチを繰り広げるという単純明快さは子ども達におおいにウケたようです。
 そしてそれらの発展型として映画化されたのが、『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(2009年 監督・坂本浩一)と最新作の『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』というわけなんです。
 この2つの映画はさらに物語の舞台が地球から遠くなっており、ついにウルトラ兄弟の故郷であるM78星雲「光の国」となってしまいました。
 『ウルトラ銀河伝説』ではとんでもない数のウルトラ怪獣が合体して1コのラスボスになるという展開になったし、『ウルトラマンゼロ』では往年の『ミラーマン』や『ファイヤーマン』、『ジャンボーグA』といった「非ウルトラ兄弟系」ヒーローがカッチョよくなって復活するというイベントも用意されていました。

 でも……私は興味がわかないなぁ~! 『ウルトラマンゼロ』なんて、地球どころか地球人すら1人も登場してないんでしょ? みなさん、出演してるのは「地球人に限りなく酷似した異星人」なわけですよ。
 なんか、いまいちアツくなれないというか、対岸の火事というか。「対岸」どころか300万光年以上離れてるし……
 それにさぁ、どんなに大怪獣がふっとんでもすっころんでもビルひとつ壊れない荒野だなんて、おもしろくないじゃない!? 『ドラゴンボールZ』じゃないんですから。

 まま、今の「スペースオペラ式ウルトラマン」にたいする違和感というかついていけない感は、昔のシリーズが好きだった私の個人的印象ですからね。今はウルトラヒーローやウルトラ怪獣たちのカードバトルも大流行してるし、映画のほうも好評で新ヒーローのウルトラマンゼロ(ウルトラセブンの実の息子)や、極悪キャラのウルトラマンベリアル(声・宮迫博之)も人気者になっているようです。いいことですよ。

 ただ。私としては、だいぶ遠いところに帰っていっちゃった気がするんだよなぁ、ウルトラマンのご兄弟。
 まぁ、1966年のシリーズ第1作『ウルトラマン』から2008年の映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(監督・八木 毅)まで、40年以上も地球人を助けに来てくれてたんですからね。しばらくは実家の生活に専念していただきたいと思います。お疲れさぁ~っした!!


 ところで、「ウルトラマン関連」の話題としては、今月に入って実にかなしいニュースが流れてしまいました。


44歳若すぎる死……田中実さん首つり自殺か(デイリースポーツオンライン・2011年4月27日の記事より)

 俳優の田中実さん(44歳)が、25日に東京大田区の自宅マンションで首を吊って死んでいたことが26日、警視庁池上署などへの調べで明らかになった。同署は自殺とみて調べている。田中さんは高校卒業後に仲代達矢さん主宰の無名塾に入塾。1990年、NHK朝の連続テレビ小説『凛凛と』に主演し、さわやかな好青年ぶりが人気となり、ドラマ・映画などで活躍していた。まじめな性格で知られ、近年は精神的に不安定だったと証言する関係者もいる。


 なぁに勝手に死んでるんですか、隊長!! ご家族の方も親しかった彦麻呂さんもみ~んな悲しんでますよ。み~んな悔しがってますよ。生前にどんなに一生懸命頑張っていたのだとしても、ここまで多くの人を深く傷つける権利はあなたにはありません。もちろん、生きている人の誰にだってそんな権利ありません。

 田中さんは、「地球を訪れたウルトラ兄弟」としては現時点で最後の方となるウルトラマンメビウスが活躍したTVシリーズ『ウルトラマンメビウス』(2006~07年)で、地球防衛組織「CREW GUYS」のサコミズ・シンゴ隊長を演じていました。
 サコミズ隊長を演じた当時の田中さんは40歳前後。シリーズではこれまで数多くの名物隊長のみなさんがそれぞれの防衛組織の陣頭指揮を執ってこられたわけなのですが、サコミズ隊長はひときわ若くさわやかな印象で、軍人の隊長というよりは学校の先輩といった感じの好人物でした。
 ところが、サコミズ隊長はそのほんわかした人柄とはうらはらに、シリーズ後半に驚愕の「真の姿」をあらわすことになります……いや~、今までそんなものすごい生き方をしてきた隊長なんていなかったよ!?
 また最終回には、あのウルトラ兄弟の中でもひときわ尊敬されている(けど火山怪鳥バードンにはさんざんな目に遭わされた)長兄ゾフィーと一体化して闘うという大活躍っぷり! サコミズ隊長は地球人側のヒーローとも言える名キャラクターだったのです。

 それなのに……

 これは別に、田中さんがウルトラシリーズで重要な役柄を演じていたから言うわけでもないのですが、
 人に夢と希望を与える人は、与えたあとはもう終わりで関係ないってことはないの! 夢と希望は永遠に与え続けられていくものなんだから。

 特に役者さんというお仕事は、やっぱり大変な責任をおうものなんですよ。これから先だって、DVDのかたちで『ウルトラマンメビウス』の世界を新しく知って、サコミズ隊長の活躍に感動して、生きる勇気をもらっていく人だって必ずいるはずなんですよ。田中さんのファンになる人だっているでしょうよ。
 そういう人たちが田中さんの最期のことを知ったらどう思うんでしょうか。それだけでなく、田中さんをすでに知っていた方々もふくめて、無数の人たちの想いを踏みにじるために役者をやってきたはずではないはずですよ、田中さんは。

 なにはなくとも、自殺だけはぜっっっったいに、ダメ!! お世話になった人、愛していた人にまで多大な迷惑をかけることになるんだから。無差別暴力ですよこんなもの!


 どうせ行くんだったら、わたしもあなたも、M78星雲のほうがいいよね~。
 誰だって、どうあがいてもいつかは必ずその日をむかえるんだから、せいぜいそれまではがんばって生きていきましょうよ。ハーイテーンショ~ン!!


《ほんとにどうでもいいんですが》
 私、いつもこのブログのためにネットを調べてまず手書きでメモをとっているんですが、今回もメモをシャシャッと書いていたら、本来「ウルトラマンメビウス」と書くべきだった部分を、

「ウルトラマンメビウS」

 と書いてしまいました。
 ……半年以上個人ブログを続けてしまったために、ついに脳みその中まで「ローマ字変換方式」になってしまったというのか……手書きだぜ!?
 あたしゃもう、自分がこわくってしかたがねぇよ。オロロ~ン!
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おもに読んでます

2011年04月25日 23時02分37秒 | 日記
 どーんもどんもどんも、そうだいでございます。みなさま、今日も一日お疲れさまでした。
 いよいよあったかくなってきましたね~。なんとなく潮のかおりとしめりけのある空気もただよってきて、ついに夏の足音も聴こえてきたような気までします。まだ早いかな?


 いや~なんかね、最近はなんか本を読んでますねぇ。活字の本だけじゃなくマンガも読んでます。
 さきごろ辻村深月先生の『スロウハイツの神様』のことをつづった時にも申したとおり、ひまな時には本を読んでる生活を始めまして、今思い出せる範囲でいうと、ここ1週間くらいの間では、

宮本 輝  『流転の海 第1部』(1984年 新潮文庫)
島本 理生 『リトル・バイ・リトル』(2002年 講談社)
辻村 深月 『ロードムービー』(2005~10年 講談社ノベルス)

 そんなにスピードをあげてないもんで量は読んでないんですけど、いいもの読んでる感はありますね。いい感じでさくさく読んでますよ~。

 『流転の海』は親しい人にすすめられて読んだのですが、まぁ~おもしろいね!! 恥ずかしながら私、宮本輝さんの作品を読むのが初めてだったりしまして……30すぎで初もってる!
 いや~、もってる先生はすごい。わかりやすいのに文章に詰め込まれた情報量が膨大。登場するキャラクターがいちいち魅力的。魅力的なのに存在に無理がないからとってもリアル。
 1980年代に書かれた小説なのに、終戦直後の荒廃した日本と、そこに満ちあふれていた人間の生のエネルギーというものが、文章だけの力で見事に立ち上がっているんですね。
 もちろん、本当に1940年代の日本にあった風景がその通りだったのかどうかは別問題だし、1980年代に生まれた私がそれを比較するすべもないのですが、「こういう時代だった」と私に信じさせてくれる強力な牽引力が『流転の海』にはありました。
 さっすがライフワーク。さっすが「ちがいのわかる男」。ふるっ!
 『流転の海』、続きを読むのが楽しみですね。今のところ第5部までが文庫化されているようです。
 物語の時間はどんどん現在に近づいていくわけなんですが、第1部で八面六臂の活躍をした怪物・松坂熊吾の1人息子である伸仁くんがどんな人間に成長していくのか? 気になるな~。
 余談なんですが、その伸仁くんの誕生日が私とおなじ3月6日だったのにはビックラこいてしまいました。ほんとに本を読みながら「おおっ。」と声をあげてしまいましたからね。こんなささいなことでも、人間って全身に電流が走ったようなリアクションをとっちゃうのねぇ~。

 辻村さんはあいかわらず読んでいるのですが、島本理生さんは今回の『リトル・バイ・リトル』が最初に読んだ作品となりました。去年にちょっとした縁があって島本さんの存在をはっきり知るようになりまして、今ごろになってやっと彼女の作品を手にするようになったのです。おそっ。
 島本さんはうまいね~!! あら、みなさん、もうそんなことご存じ?
 ただ、まず『リトル・バイ・リトル』によって島本理生というプロの小説家がいる、ということは十二分にわかったのですが、私の生活にとって読むことが必要な作家さんである、という感覚まではまだつかんでないんですね。えらそうなこと言ってんねぇオイ!
 ま、島本さんの本は、おそらく今のところいちばん有名なんじゃないかと思われる『ナラタージュ』(2005年)をはじめとした何冊かをすでに買いだめしてあるんで、どんどん読んでいきたいです。


 でね、話は変わるんですけど、実は今、小説よりもマンガのほうをけっこう読んでたりしてまして……へへ。
 なんだかんだいって先月まではあんまり書店に行く余裕がなかったのですが、久しぶりに今月になって近所の本屋さんに行ってみたらアラビックリ。
 続きを読んでないままになってた連載中のマンガの新刊単行本が、出てる出てる!
 私はもともとマンガを連載している雑誌の段階で読むくせがなかったもので、うひょひょうひょひょと己の欲望のおもむくままに買いあさってしまいました。
 そして気がつくと家には、単行本の山が。


山田 芳裕  『へうげもの』第12巻(講談社 週刊モーニング連載)
宮下 英樹  『センゴク外伝 桶狭間戦記』最終第5巻(講談社 週刊ヤングマガジン連載)
宮下 英樹  『センゴク 天正記』第10巻(講談社 週刊ヤングマガジン連載)
山本 直樹  『レッド』第5巻(講談社 隔週刊イブニング連載)
椎橋 寛   『ぬらりひょんの孫』第12~15巻(集英社 週刊少年ジャンプ連載)
藤崎 竜   『屍鬼』第8~10巻(集英社 月刊ジャンプスクエア連載)
ヤマザキ マリ『テルマエ・ロマエ』第3巻(エンターブレイン 月刊コミックビーム連載)
山内 泰延  『男子高校生の日常』第4巻(スクウェアエニックス 月刊ガンガンONLINE連載)


 いや~。もう幸せ。単行本だと新しい展開が山ほど読めるんですからね。当ったり前のことに今さらながら感じ入っております。読みたいマンガはこれでもう、だいたい読み尽くしちゃったかなぁ。
 しっかしまぁ、戦国時代ものに妖怪ものに吸血鬼もの、おまけに風呂もの童貞もの。そろいもそろったねぇ。

 けっこう、しばらくマンガを読んでなかったんでね。去年に出た単行本も、今ごろになってやっと手にすることとなりました。
 いろいろ読んだわけなんですけど、作品全体を通してじゃなく、1冊の単行本として読んでいちばんおもしろかったのは、なんといっても『へうげもの』でしたね。
 いや~、マンガを読んで泣くなんてことは滅多にない私なんですが、最後に収録された第131席「J-DREAM」にはやられてしまいました。あんな幸せな死に方をした秀吉さんなんて、今までどの作品にも出てこなかったんじゃないかしら。

 『センゴク外伝 桶狭間戦記』は、まぁ~こんな終わりかたですよね、といった感じでした。ちょっとキレイにまとまりすぎてしまったきらいはありましたが、個人的には本編の『センゴク』よりもよっぽどスリリングで大好きな作品でしたね。なるほどねぇ~、「商業」と「農業」のたたかい。
 宮下先生は『天正記』で忙しいでしょうからいいんですけど、誰か手のあいてるマンガ家さん、今川義元の伝説的ボンクラ息子・今川氏真と今川家の崩壊をメインにすえた作品をつくってくれませんかね!? ゼッタイおもしろいから。
 今川氏真はすごいですよ……自分の親父を殺した人間の目の前でけまりを披露してますからね。日本代表クラスのJリーガーだってなかなかそんなことはできねぇよ。

 『レッド』はもう、すごい試みですよね! はっきり言って今回の第5巻もほっとんどなんにも起きてないんですけど、かなり高い純度で1969~72年に展開したある集団の活動が記録されており、そしてその行く末には、昭和を知る者ならば誰もが知っているあの惨劇が待っている……
 その、これから起きることの予感、予兆、ざわめき! それがコマの裏からにじみ出てくるんだよなぁ~。こういう怖さのある作品はなかなかないですよ。また、山本さんのタッチがリアル&ドライ。基本的に登場人物たちとはそうとうな距離をおいた描写にはなっているんですけど、ある瞬間には急にズームアップして彼ら彼女らの「あせり」や「疑心暗鬼」をとらえるリアリティをもっているのです。こーわーいー!!

 恐いといえば、いよいよ人間VS屍鬼の全面戦争が始まってしまった『屍鬼』第10巻もそうとうな勢いでブルーな読後感におちいってしまいました。
 キッツいなぁ……いやもちろん、約10年前にぶあつい原作小説が発表された時にそれをむさぼり読んだ記憶のある私ですもんで、こんな感じの流れになるな~なるな~と覚悟はしていたのですが、やっぱりキツいですよ……

 去年の春すぎに始まった深夜アニメの『屍鬼』も好きだったんですけど、この作品はともかく、日本のどこかにいかにもありそうな地方の一村落と、日本のどこでもお目にかかりそうにないスーパーモデル体型とファッションセンスの持ち主である美女美男子たちとのスパーク飛び散るミスマッチ大戦争っぷりが最大の魅力でしょうね。
 そうなんですよ、物語上では第9巻から本格的に勃発する人間VS屍鬼の大抗争なのですが、実はそれ以前、すでにマンガ連載の第1回が始まった時点で「小野不由美の世界VS藤崎竜のタッチ」という激烈バトルは火蓋を切っていたのです!! これはもう、数ある原作つきマンガの中でも歴史に残る名勝負。
 ただ、そこがマンガ『屍鬼』ならではの、原作にはない特異な魅力になっているんですよねぇ! 正直なところ、いよいよ原作のおそろしさがきわだってきた終盤では藤崎さんのほうがやや劣勢になってきているのですが、いよいよ最終巻になるらしいという第11巻、藤崎ワールドがどんな地獄絵図を現出せしめてくれるのかが、今から楽しみです。


 こんな感じでいろんなマンガを一気読みしたわけなんですけど、『へうげもの』もいよいよ主人公の最期へのカウントダウンが始まってきた感がありますし、『屍鬼』もクライマックスまっさかりだし。
 そろそろ、あらたなるハマりものを見つける時期かな~。
 なんとなく重いマンガが続いた気がしますから、なんかぶっ飛んだ明るいギャグマンガでもないかどうか探してみましょうか。

 しっかし、『テルマエ・ロマエ』を阿部寛さんでって、どうなの……?
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たぶん、わたしは3人目だから……  戦国ニッチ武将列伝・豊臣秀勝!! 其ノ弐

2011年04月24日 23時44分50秒 | 日本史みたいな
 どんもどんも~。そうだいでございますよっ。いや~、今日は天気が良かったですね。まさに春の陽気を味わうことができました。もう寒くはならない……かな?

 さあ~今日はさっそく、このたび2011年のNHK大河ドラマではなばなしくメジャーデヴューすることとなった豊臣家のプリンス・豊臣秀勝の話題をしていくこととしまっしょい。
 メジャーデヴューなんて言っちゃいましたけど、もちろん豊臣秀勝という人物の存在はちょっと日本史に詳しい方なら周知の事実でしたし、だいいち秀勝さんは、ある時期には将来もっとも天下人になる可能性が高い超セレブリティとして認識されていたこともあったのです!

 ところが! この豊臣秀勝、映像化作品にとんっと縁がない。
 まぁ、こんなこと言っちゃうとこれまでドラマや映画の中で秀勝役を演じてこられた俳優さんに申し訳が立たないのですが……そんな人、いた?
 私が調べたかぎりでは……あんまりいないんですよね。
 豊臣家の若きプリンスというからには、なにはなくともその当主たる豊臣秀吉を主人公にした大河ドラマの中では最新のものとなる1996年の『秀吉』(主演・竹中直人)には出てるでしょ! と思って調べてみたのですが……
 いない、みたいだねぇ。秀勝さんの兄貴に当たる豊臣秀次は出てたみたいなんですけど。ていうか『秀吉』やってたのって、もう15年前なんだ……あの頃わたしも若かった。

 実の叔父さんが主人公で1年間50回ぐらいやっていたドラマにさえ出ていないとは……豊臣秀勝、なんかかなしいね。

 そして、ドラマがダメならばと、私が大好きな歴史シュミレーションゲームの王道『信長の野望』シリーズも調べてみました。
 今さら説明するまでもないのですが、『信長の野望』とは、天下の「コーエー」が1983年4月に発売した第1作『信長の野望』から始まる歴史シュミレーションゲームの代表的シリーズで、2009年に発売された『信長の野望 天道』まで13作がリリースされるという人気をほこっています。そろそろ今年あたりに最新第14作が出るんじゃないかと思うんですけどね~。
 『信長の野望』は簡単に言っちゃうと、ゲームのプレイヤーが戦国時代に実際にいた大名の誰かになって領国をうまく経営し、日本全国を統一したらめでたくクリアというゲームです。余談ですが、私がどのシリーズ作をやってもまず最初に選択する戦国大名は「足利義昭」です。藤孝、今度はうらぎるなよ!

 そんな『信長の野望』なんですが、自分がプレイする大名にも言うことを聞いてくれる家臣がいて、当然ながら自分以外にいる敵の戦国大名もみんなそれぞれの家臣を引きつれていて……ということで、なんやかんやいって日本全国に有名な戦国武将がひしめきあっている状態になっています。特に最近のシリーズ作では膨大な情報容量を処理することが可能になったため、だいたい基本的に1000名、最大で1500名くらいのおさむらいさんがゲームに出場するという活況を呈しています。
 もちろん、『信長の野望』は1530年代から1610年代といったおよそ1世紀のあいだの日本を舞台にしているので、千ウン百人の武将達が一時期にみんな登場するわけではありません。死んでいく武将と誕生する武将、史実になるべく近づけた「交替」がされつつゲームが展開されていくわけです。

 んで、なにが言いたいのかっつうと、その『信長の野望』の中! 最大1500名ものむっさい武将たちがギュウギュウづめになっていた中でも! 今まで「豊臣秀勝」が登場することはなかったんです……私の知るかぎりでは。

 嫌われてる……のかな……


 いやいや!! そんなことはないはずだ! 豊臣秀勝が今までさまざまな世界でかなり不当なあつかいを受けてきていたのは、それなりの理由があったのです。

 その理由とは、なにはなくとも「ややこしい」。

 前回にも申しましたが、このたびめでたくEXILEのAKIRAさんが演じることとなった「豊臣秀勝」を含めまして、豊臣秀吉という歴史的巨人の周辺には、同じ「秀勝」という名前を持った3人の人間が存在していました。
 正確には「豊臣秀勝」は1人だけなんですが、「羽柴秀勝」は3人いたんですね~。
 さっそくご紹介いたしましょう、3人の秀勝さん! 前回は「13人の女仮面ライダー」だったもんですから、楽……


ファースト羽柴秀勝(1570~76)
・木下秀吉(34歳)と側室(南殿)との間に生まれた、秀吉の長男
・幼名「石松丸」
・秀吉は石松丸が生まれた年の6月に近江国横山城(滋賀県長浜市)の城主となっている
・1573年、秀吉は琵琶湖畔に新しい城「長浜城」(長浜市)を築城して移転
・長浜城主となった時期に秀吉は名字を「羽柴」にあらためている
・天正4(1576)年10月に石松丸は7歳で急死

セカンド羽柴秀勝(1568~85)
・羽柴秀吉の主君である織田信長の4男
・歴史上有名な信長の子たち(信忠、信雄、信孝)の弟にあたるが、母親はちがう
・1579年、12歳の時に秀吉(42歳)の養子となる
・当時、秀吉は播磨国姫路城(兵庫県姫路市)の城主となって織田家中国方面軍を指揮していた
・秀勝自身、武将として毛利家との合戦に従軍している
・1982年6月、実父である織田信長の暗殺後に行われた「清洲会議」の結果、15歳で丹波国亀山城(京都府亀岡市)の城主となる
・もともと病弱だったらしく、亀山城主となったあたりからふせりがちになり天正13(1585)年12月に18歳で死去

サード羽柴秀勝(1569~92)= 豊臣秀勝!
・羽柴秀吉の姉である木下ともの次男
・3兄弟の真ん中で、兄はのちの「殺生関白」豊臣秀次、弟は叔父である豊臣秀長の養子となる豊臣秀保
・1585年9月に17歳で近江国瀬田城(滋賀県大津市)の城主となっているが、当時の本名は不詳
・瀬田城主となった3ヶ月後、セカンド秀勝の死により「羽柴秀勝」の名前を継いで丹波亀山城主となる
・サード秀勝として秀吉の養子となるが、どうも仲は良くなかったらしい
・1586年ごろに18歳でお江の方(14歳)と結婚
・お江の方は以前に佐治一成という武将と婚約していたが一成は1584年に失脚しており、実質的な夫婦生活はなかったらしい
・1586年9月に秀吉が朝廷から「豊臣」という姓をたまわったため、秀勝も「豊臣秀勝」にあらためる
・1589年5月に秀吉の待望の次男となる鶴松丸が生まれたため、秀勝の「秀吉後継者」としての存在感は急速にうすまる
・1590年7月に秀吉から甲斐国と信濃国の支配を任されて甲府城(山梨県甲府市)の城主となるが、ていのいい左遷だった可能性がある
・1591年3月に秀吉に許され、美濃国岐阜城(岐阜県岐阜市)の城主となる
・1591年8月に秀吉の実子である鶴松丸が3歳で急死するが、その後に秀吉が後継者に選んだのは、秀勝の兄の豊臣秀次(24歳)だった
・文禄元(1592)年4月に始まった第一次朝鮮出兵に、第9軍総大将として従軍する
・秀勝の指揮した第9軍は朝鮮半島に近い巨済島(コジェド)に駐屯しており、秀勝自身が最前線に立つことはなかった
・文禄元(1592)年9月に巨済島で病死(享年24歳)
・秀勝の死後、妻のお江の方が一人娘となる完子(さだこ)を出産した


 なんか……全体的に不幸じゃね!?

 やっぱりねぇ、こう言ってしまうとミもフタもないのですが、特に目立った活躍もなく早死にしちゃわれると、ドラマにはなりづらいですよね。
 ファーストは7歳、セカンドは18歳でサードは24歳。みんな若いですよ。
 ドラマも出づらいでしょうけど、『信長の野望』にはなおさら必要とされない感じになっちゃうかな……だって、たいした活躍もしてないうちに退場しなきゃいけないんですからね。『信長の野望』の中で流れる時間の10年間なんか、2~3時間プレイしてたらすぐにたっちゃうもんなぁ。ファーストにいたっては、ゲームに武将として登場する資格もないうちに死んじゃうから。さすがに小学校にはいりたてくらいの子が2~3000人の兵士を指揮するわけにはいかんでしょ。「かくよくのじん、できるー?」とか言って。

 ただ、ここで3人に共通して重要となってくるのが、
「本人の才能ではなく、その存在そのものに意義がある。」 
 というところなんです。

 3人は3人とも、木下~羽柴~豊臣とみるみる巨大化していくファミリーのドンである秀吉にとって、なんとしても確保しておかなくてはならない大切な「後継者」のワクにおさまっている人物だったのです。
 整理してみると、秀吉が自分の後継者にと考えていた人物の移り変わりは、

 ファースト秀勝(1570~76)……セカンド秀勝(1579~85)……サード秀勝(1585~89)……次男の鶴松丸(1589~91)……甥の秀次(1591~93)……3男の秀頼(1593~)

 となってるっちゅうわけなんですな。まぁ~……これだけ短い期間でコロコロ変わってるんですから、豊臣政権の未来は明るくはないですよね!
 んで、いくら子どもができにくいからといって、なぜにこれほどまでに秀吉が後継者ワクに執着していたのか、セカンドに至っては自分の血縁でもなんでもない人間まで引っぱってきて養子にしなければならなかったのかというと、

 後継者をちゃんと用意しておくことが、そのまま自分の家の戦国武将としての存続に関わる大問題だったからなんですね。

 つまり、当時の戦国武将の跡継ぎは、現代のように単なる「夫婦のあいだにできた子ども」という家庭の問題だけにとどまらず、その家臣と軍隊、何百何千の人間とその家族をやしなってくれる当主が存在しつづけてくれるのか? 存在しているとしても、逆にやしなわれる人間側から観て「一族の命をあずけるにたる人物」なのか? という大変重要な問題になっていたのです。
 ということは、いっくら秀吉さん個人の才能がズバ抜けて信頼できるものだったとしても、秀吉さんにもしものことがあった時にそれを引き継いでくれる跡目がいなかったのだとしたら、そんな無責任な上司に命をあずけることはできない、したがって秀吉につかえる価値はない、という論理になるわけなんです。
 おそらく誰よりもそのへんの問題をシビアにとらえていたのが当の秀吉さんだったのだと思うのですが、上のような後継者対策の努力もむなしく、あまりにもカリスマ過ぎた彼がいなくなった後、豊臣コンツェルンはあっという間に凋落してしまいました。

 話はズレますが、いわゆる日本の戦国時代が始まった理由、というのは諸説さまざまありまして、気の早い人は嘉吉元(1441)年6月に起きた室町幕府第6代征夷大将軍・足利義教の暗殺から実質的な戦国時代は始まったといいますし、おおかた一般的なところでは1467~77年に繰り広げられた「いよむなしい」応仁大乱がそのきっかけだと言われています。
 ただ、私としては本当の戦国時代の始まりは、永正4(1507)年の6月に日本の首都・京で発生した「永正の錯乱」なのではないかとふんでるんだな。
 「永正の錯乱」というのは、当時の日本で最大の権力を握っていた室町幕府管領(かんれい まぁ~今でいう総理大臣くらいの人?)の細川政元(まさもと)が家臣に暗殺された事件です。

 政元さんは、衰退したとはいえまだまだ強大だった室町幕府の全権力を掌握していたけっこうやり手な政治家で、元気のすっかりなくなった足利将軍家をしのぐ勢いを持っていたのはもちろんのこと、あの天皇サマにたいして
「カネがないのなら、即位礼だ大嘗祭だなんて儀式やらなきゃいいんじゃなくって?」
 などという、現代でもなかなか言えないような発言をズケズケいう方なのでした。
 そんな、ある意味で織田信長を6~70年さきどったようなイケイケ政元だったのですが、彼が暗殺されてしまったのは、

 跡継ぎ問題にやる気がなさすぎたから!!

 政元さんは政治家としては確かに素晴らしかったのですが、プライベートでは山伏みたいな「修験信仰」にハマリにハマッており、
「おれ、空とべるんだぜ! この前、天狗のおっさんに教えてもらったんだよ。マジマジ!」
 というリアクションに困る発言を頻繁に繰り返していたのです。そしてそれがこうじたあまり、「女人禁制」という教義を守りすぎて我が子をいっさいのこそうとしませんでした。
 そしてしまいには超テキトーに2人の後継者を近所からみつくろってしまうというしまつだったため、
「ダメだ、こいつ! ガチでついてけねぇわ。」
 と家臣たちに愛想を尽かされてしまったのです。

 で、入浴中の無防備な状態で暗殺されてしまった政元さんだったのですが、その権力を継承する人間がハッキリしなかったため、応仁大乱のあとでもなんとかかんとかもっていた室町幕府という政府機構は今度こそ屋台骨からガンラガンラと崩れ去り、その後ふたたびその勢いがもどることはついになかったのです。

 ま、とにかく跡継ぎだけはしっかりおさえなくちゃいかん時代だったっつうことなんですな!!


 話が脱線しましたが、跡目問題という、個人よりも「一族郎党」という過去の集団単位についてのことだったため、現代の民主主義っぽい社会に生きる私たちにとってはいまいちピンとこないトピックに関わる「豊臣家のプリンスたち」だったわけなんですが、今回たまたま「主人公のダンナだった。」という縁があったために、めでたく豊臣秀勝という人物が映像の世界でスポットライトを浴びるはこびとなりました。

 うれしいねぇ~、5月からドラマに登場するんでしょ。え、5月?

 来週じゃないか……なんとかして観たいんだけどなぁ、動く秀勝さん。なるべく長生きしていてくれぇ~、24歳まで!!


《余談ですが》
 ファースト秀勝さんはその実在を疑問視する方も多いのですが、いちおう証拠もあるし、なによりも「いたほうがおもしろい」ので、我が『長岡京エイリアン』では実在する人物とさせていただきました。
 ちなみに、1996年の『秀吉』ではファーストだけが登場してきています(もちろん子役)。

 いっぽう、3人の秀勝さんの中でただひとりゲームの『信長の野望』に登場できていたのがセカンド秀勝さんでした(1994年に発売された第6作『信長の野望 天翔記』の1回だけ)。まぁ、『実の親父の野望』ですからね……
 その時のセカンドの能力データは、手元のメモによると、
 「政治力……43 統率力……46」
 でした。パッとしねぇ~!!
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