長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

これぞ21世紀の耳嚢!? YouTubeの『都市伝説考察チャンネル THE つぶろ』 ~資料編3~

2024年06月29日 11時14分53秒 | ミステリーまわり
『都市伝説考察チャンネル THE つぶろ』 個人的に興味があった動画リスト3 ≪2023年11月~24年6月≫
※前々回の動画リスト1 ≪2019年1月~21年10月≫と前回の動画リスト2 ≪2021年11月~23年10月≫は、こちら!
※私そうだいが個人的に「おっ。」と思った動画だけをリストアップしたもので、全動画のリストではありません(動画は2024年6月時点で1500本を超えてます……)
※「……」をはさんだ左が動画の内容、右側が大まかな真相です(このチャンネルの動画の面白さは真相にいたるまでの「考察」の経路にあると思いますので、ネタばらしの意図はございません)
※内容の頭に「〇」が付いているものは、私そうだいが特に面白いと感じた動画です

2023年11月
・1986年4月の静岡新聞東部版に掲載された「募金活動の心霊写真」…… いまだ発見されず。静岡新聞の別版か別の日付に掲載されているかも?
・1976~78年頃に東京都練馬区で貼られていた奇妙な手配書「スリカエ殺人」1 …… 警察でなく捜査に疑問を持った者が作成したものか
〇1976~78年頃に東京都練馬区で貼られていた奇妙な手配書「スリカエ殺人」2 …… 「水本事件」の陰謀説を主張する団体が作成したビラ
〇コラ画像と言われていた人身事故の心霊写真だが、実は …… 2005年7月に JR只見線七日町駅付近で実際に起きた人身事故の加工無し写真
〇2001年「付属池田小児童殺傷事件」の死刑判決時の「畜生発言コピペ」は事実か …… 判決前に創作された文章だが事実もほぼ同じだった
・ YouTubeで流布している1967年「アポロ1号火災事故」の画像と音声は本物か …… アメリカ国立公文書館に所蔵されているもので全て事実
・1999年頃に流行した札束風呂のネット広告『勝ちまくり ヤリまくり』会社の現在は …… 当時の代表取締役は2010年に逮捕されたが存続
・茶色の着物の女性が子どもを惨殺し続ける奇妙な浮世絵の謎1 …… 明治時代後期以降に描かれた怪談仕立ての無惨絵か
〇茶色の着物の女性が子どもを惨殺し続ける奇妙な浮世絵の謎2 …… 明治時代に制作された肉筆画帖『地獄の夢』(作者不詳)と判明した
〇1986年4月の静岡新聞東部版に掲載された「募金活動の心霊写真」…… 1986年4月の静岡新聞沼津版にあったが、角度による単なる錯覚
・1992年「大阪府熊取町7人連続怪死事件」の謎 …… たまたま連鎖的に自殺が続いたもので相関関係や殺人事件の可能性は無い
・あの有名キャラをパクった謎の駄菓子「たこぶえ」1 …… 名古屋の和菓子会社「福寿製菓舗」が製造していたがどんな駄菓子かは詳細不明
〇都市伝説コピペ『神との接触実験』…… アメリカCIA が1950年代に行った人体実験計画「 MKUltra」の中の「感覚遮断実験」などがモデル
12月
〇あの有名キャラをパクった謎の駄菓子「たこぶえ」2 …… 1965年~80年代に販売されていた笛ラムネのような駄菓子だった
・ YouTube幻の動画『新宿駅の地下に潜入』…… 「早稲田大近くの歯医者のトンネル」や「地下鉄銀座線万世橋駅跡」などの噂が存在する
〇2013年大阪府堺市の市営団地の奇妙な事件「あなたの部屋で人が死んでいる」…… 警察に関わりたくない人間の自殺だった可能性がある
〇情報が一切存在しない奇妙な「生首の看板」1 …… 岡山県のスポーツセンターで肝試しの道案内表示として設置されていた可能性がある
・TV で紹介された「砂浜のハンバーガー」…… 砂浜に打ち上げられたクジラの脊椎か、ナマコの一種「キンコ」
・1980~90年代に流行した怪しい広告『まったく簡単だ』ブルワーカーの効果は? …… 1970年代から海外でも有名だったドイツの健康器具
〇東京浜離宮水堀に浮かんでいた UFO2 …… 1986年8月放送の『時空戦士スピルバン』第18話で UFOとして使用され内部も撮影されていた
・麻原彰晃の名付け親となった謎の人物・西山祥雲とは …… 1982~83年のみの付き合いで、宗教的な影響よりも経営理念の教育を行った
〇北海道歌志内市のある火葬場の1956年の死産遺体のみが激増している謎 …… 前年に中絶手術の資格を持つ医師が着任したことが原因か
・情報が一切存在しない奇妙な「生首の看板」2 …… 石川県奥城山の少年自然の家で類似した看板が多く発見された
・2022年福岡県糸島市「自宅の敷地内で焼死した男子中学生」…… 事件性が無いと見られて報道が自粛された可能性がある
〇2011年に鳥取砂丘で発見された4体分の人骨の謎 …… 江戸時代末期~明治時代前期のコレラ流行時に即席で埋葬された遺体か
2024年
1月
〇真相解明に至らなかったネタ No.4「神子筋」2 …… 江戸時代に代々巫女を出していた特別な家系が昭和時代には差別の対象となっていた
・生鮮売り場の食品がそのまま放置されていたショッピングモールの廃墟 …… 2002年のある朝に突然閉店した石川県のマルシェ羽咋店
・1976年「元大学学長夫妻セスナ機飛び降り心中事件」…… 持病と精神錯乱が悪化した元学長が、多額の保険金を狙って無理心中を図った
〇2018年1月に Twitterで「都内練馬区の住宅街で人が燃えている動画」が投稿された …… 動画は本物だが事件性が無く報道されなかった?
〇埼玉県戸田市の元工場のスタジオの奇妙な噂 …… 工場主の一族はスタジオの貸主として健在で、一家全滅や自殺などの噂は全くのデマ
〇悪霊を描いた絵が放置されたままだった「青森県碇ヶ関村の宗教施設の廃墟」1 …… 「坐不動信仰」の寺院で悪霊の絵は厄除け祈願が目的
≪調査隊≫哀愁のある有名なコピペ『飯盒炊爨AV 』の由来となったAV とは2 …… 『女子校生と林間学校に行こう。』(2004年)と判明
2月
・北海道大学にアイヌ民族の生首を保管する「首倉庫」があった!? …… 1930~70年代まで標本があったが1984年に遺骨以外は処分された
〇1994年「一家心中事件の父親が最期を録音した自殺実況テープ」1 …… 2009年頃に YouTubeにアップされたらしいが現在は削除されている
〇岡山市の山中の有名な廃墟「キューピーの館」の放置された大量の人形の意味とは …… 奇岩「産幸さま」に安全を祈った
・1970年代に佐賀県多久市に存在していた「相原の幽霊屋敷」の歴史 …… 現地の旧領主「多久(相ノ浦)家」とは無関係で由来不明
〇ネット上の謎過ぎる画像『ベンチ下に寝ている男』…… 愛知県の JR飯田線長山駅で2019年以降に撮影されたものだがやらせの可能性あり
・東京都豊島区のある小学校で2010年代に流行った電話をかける遊び「チョモランマさん」…… 普通にテレクラの男性客につながっていた
〇都心一等地にあったヤバい物件「チェーンソービル」…… 出版社を運営していた個人の所有ビルだったが2018年の死去以降に取り壊された
・1999年滋賀県「高架線下に焼けたマネキンがあると思ったら焼死体だった」…… 焼けて四肢が欠けた遺体はマネキンに見間違えられやすい
〇1994年「一家心中事件の父親が最期を録音した自殺実況テープ」2 …… 書籍出版後にデマが流れ2000年代後半にフェイク音声が上げられた
・2018年ロシアのハバロフスクで54個の手首が見つかった!? …… 地元の法医研が指紋情報採取のために切断した手首を廃棄したか
・ネットで出回っている怖い画像『ホームの下に誰かいる』…… JR博多駅のホーム下の業務用通路にいる職員がたまたま不気味に写った
〇2ちゃんねるで有名な怪談『家族の奇行の真相』の元ネタとなった実際の事件とは …… 2003年「千葉県館山市一家4人放火殺人事件」
3月
〇ネット上に存在する奇妙な画像『山の休憩所の顔』…… 柱の貼り紙にかけられた布がたれたものが顔に見えた可能性があるが詳細不明
〇2001年の車内のAV で横からニュッと白い顔が出てくる映像 …… 車内にいた演者以外の2名のうちのいずれかがカメラに見切れた
・ヤバいサイト「体毛や体液も売っている中古ショップ」…… 保護者本人が子どもの物を商品化している可能性が高い
・ネット上に存在する画像「廃墟のようなディズニー施設」の正体は …… 2005年に撮影されたネパールの児童公園だが現在は閉園か
・『TV ジョッキー』で実際に放送された「切断マジックの失敗」…… 女性が切断され死亡する結末の残酷ショーは当時流行の出し物だった
〇「貞子ウイルス」で表示されていた『黒い目の少女』の由来 …… 2001年に発売された台湾のホラーソフト『ヒカル』だがモデル不詳
≪調査隊≫北九州市に実在していた謎の廃墟「小人の家」2 …… 河内貯水池の南北に「小人の家」と呼ばれる廃墟が一ヶ所ずつあった
4月
〇千葉県富津市の洞穴にある謎の子ども向け施設「東京のびのび教室」…… 旧陸軍の東京湾要塞の一基地「富津海堡」の貯蔵庫だったか
〇サブリミナル映像が使用されている農協のCM があった? …… サブリミナル規制前の1988年に野坂昭如が制作出演した米自由化反対のCM
・『投稿!特ホウ王国』の謎の回『怪奇!夕日が2つある』…… 飛行機雲が夕陽でオレンジ色に光っている現象ではないか
・YouTubeに投稿された『手榴弾で手首が吹き飛ぶ映像』は本物か …… アルゼンチンの番組収録時に起きた本物の事故で被害者は死亡
≪調査隊≫横浜市旭区白根のミステリースポット「時間の止まる場所」2 …… 愛宕公園のある場所らしいが現在は特に何の変化も見られない
≪調査隊≫図書館にあったメイドが表紙の謎のビデオ『死ぬより甘い』2 …… 狂言『附子』を元にした学校演劇の録画ビデオのパッケージか
5月
〇「変なおじさん」の原曲『ハイサイおじさん』の元ネタとなった事件があった? …… 1962年に沖縄県コザ市で狂った母が娘を殺した事件
〇情報が一切存在しない奇妙な「生首の看板」3 …… 石川県小松市の自然学校「大杉みどりの里」の肝試しコースの道案内表示と判明した
・一部の家に伝わる奇妙な風習「午前中に猿と言ってはいけない」…… 「猿=去る」を不吉とする古来からの俗信が現代にも残っている
・出典の記載も情報もほとんど無い和歌山県の高校「那智女子高等学校」…… 那智勝浦町のホテル浦島が開校していた昼間定時制高校
・福島県郡山市の小学校の幽霊騒動 …… 1983~84年に S小学校で実際に起きたが、少女の不審者騒ぎが誇張されたか
〇正体不明の謎の空間「 Backrooms」の起源とは …… 2002年に撮影された改装中のアメリカ・オレゴン州オシュコシュのおもちゃ屋店舗
≪調査隊≫千葉県佐倉城址公園の「呪いの13階段」…… 大日本帝国陸軍の高所飛び降り訓練用の階段で、そもそも12階段
≪調査隊≫都市伝説『地図から消えた伝説の杉沢村』2 …… 現在は鳥居とドクロ石を残して集落の遺構は全て消滅している
6月
〇2004年の放送開始前に流出した『仮面ライダーブレイド』の仮オープニング曲の謎1 …… 没候補曲か別作品用の曲かパロディか諸説あり
〇教祖が小学生だったという青森県五所川原市の謎の新興宗教神社 …… 1990年に創始され地元政治家も支援したが2012年に廃絶した
・ガッツ石松から電話アンケートがかかってきた!? …… 2000年代前半にマーケティング会社GF のイメージキャラクターを務めていた
〇2004年の放送開始前に流出した『仮面ライダーブレイド』の仮オープニング曲の謎2 …… 東映特撮に関わった作曲家の未公開曲が流出した
・ザ・ドリフターズ謎の「第6のメンバー」綱木文夫とは …… 1964~65年に在籍した人物で、宗教家・綱木ウメノの親族(息子?)
・2018年『めざましテレビ』で押し入れに映り込んだ白い手 …… 押し入れに入れた一双のゴム手袋が映り込んだ
〇「アヒル歩きの女の子」が登場する後味の悪いアニメ …… 1993年のアニメ『へんてこなボランティア』中のエピソード
・2000年頃の『世界の怖い夜』で放送された「天井裏から大量のお札」の怪 …… 工事の安全を祈願する「奉祈所」札で心霊的な意味は無い
〇ネット上で流布している恐怖画像『かわいくさせて』の起源4 …… 2004年に Yahoo!オークションに3000円で出品されていた古い市松人形
・ある心霊写真スレに上げられた「卒業アルバムに写っていた心霊写真」…… 愛知県美浜町の中学校の石碑による錯覚のようだが現物未発見
≪調査隊≫悪霊を描いた絵が放置されたままだった「青森県碇ヶ関村の宗教施設の廃墟」2 …… 地元の坐不動国上寺とは無関係の個人宗教施設
≪調査隊≫城主と家臣700名が自害した千葉県八千代市の米本城跡 …… 伝承は昭和時代に定説化したもので城ではなく村上家とも無関係か


 ……いや~、やっと間に合ったぁ!! いちおう、もちろんTHE つぶろさんのチャンネル自体は日刊ペースで絶賛現役放送中なのですが、こちらでのリストアップは2024年6月いっぱいでいったんストップとさせていただきます。
 観た観た。1500本以上、本チャンネルもサブチャンネルも、ひとっつ残らず全部拝見させていただきましたよ! ほんとに、週1ペースですと言われても全然問題ないクオリティの調査を、毎日やってんだもんね。お2人でやってるとしても手が足りないでしょ……

 振り返れば、私が大変遅ればせながらこのチャンネルにハマったのはゴールデンウィーク明けのだら~んとしてた時期だったので、全動画を観るのにまるまる2ヶ月かかりましたな。時々ほんとにエグすぎ重すぎな話題を扱っておられる回もあったのでおっかなびっくりで動画を観続けていたのですが、過去動画を観終えた今は開放感もあり、寂しさもあり。これからは一日一動画の適切な処方量で楽しませていただきます。

 ちょっと、資料編のまとめが今回も多めになってしまったので、THE つぶろさんのチャンネルにハマった者としての感想やつれづれ、極私的な「面白かった回ベスト10」などは、また改めて次回にくっちゃべらせていただきたいと思います。
 でも、このチャンネルを観てしみじみ感じるのは、「三人寄れば文殊の知恵」というか、「ネットは広大だわ……」という至言の真実味です。無数の泡のように有象無象の謎がポコポコ生まれ出てくるのもネットだし、その謎をバチコーン!と快刀乱麻を断つ爽快感で解決してくれるのもまた、ネットに集まる無名の「賢人たち」なのですから。大自然とは言わないけど、それに似た世界ができていることをひしひしと感じるのが、THE つぶろチャンネルさんの魅力でもあるのではないでしょうか。ネット版の『グレートネイチャー』だな!

 全動画を観てちょっと残念だったのは、THE つぶろのお2人が私と同郷ではなかったということでした。なんということか……でも、この勘違いでチャンネルが気になり出したというきっかけでもあったので、それはそれでいいじゃないかと!

 そうなんすよ。実は、古い動画の方から観ていったので、わりと最近の過去動画やお2人の方言交じりの肉声が聴けるサブチャンネルの中で山形県出身でないことは明らかだったのですが、死後婚を扱った回でTHE つぶろさんの故郷にも同じ習俗(おそらく「むがさり絵馬」)が残っていると語っておられたことがあり、その時点でお2人の故郷として可能性が上がったのは、

・山形県村山地方
・山形県置賜地方
・青森県津軽地方

 となったわけです。なので、村山地方出身の私は「すわっ!?」と色めき立ったわけだったのですが、その後、地方都市に立つ謎の大仏像を扱った回でTHE つぶろさんが「地元の道沿いにもあってビックリしたことがある」みたいな内容の発言をされていたので、村山地方説にはにわかに暗雲が垂れ込めてきます。山形の村山地方の道沿いにそんな大仏像、ないんだよなぁ。「大きな仏像」という意味で無理やり挙げれば山形市には「山寺立石寺奥ノ院大仏座像」と「平泉寺大日如来頭像」、東根市に「仏心寺木造釈迦如来坐像」があるのですが全てお堂の中にあるものですし、山形県内に範囲を広げても道沿いに大仏像が立っているのは酒田市日吉町の「持地院酒田大仏」(高さ17m)のみです。そして、それは山形でも海沿いの庄内地方にあるので死後婚伝承とは無関係の土地となってしまいます。
 いっぽう、最後に残った青森県の津軽地方でいいますと、大仏は青森市の青龍寺に「青銅大日如来坐像昭和大仏」(高さ22m)というものがおはすそうで、がぜん津軽地方出身説が脚光を浴びてくるわけです。ただ、昭和大仏はどうやら青龍寺の最奥部に腰を据えられているようなので、「道沿いに見える」かどうかは確認できないので、また別の大仏である可能性もあるのですが。

 ちなみに、また別の動画にてTHE つぶろさんは2011年の東日本大震災で被災されたそうで、「停電とガス、水道の停止」という被害にあったとのことでした。そこでどちらも海沿いの山形県酒田市と青森県青森市の当時の被害を見てみると、どちらも「停電のみ」なので発言とは合致しません。でも、今から約10年前にTHE つぶろさんが故郷に住んでいたのかどうかも分からず、むしろ学生として別の都市、東北地方として可能性が高いのはダントツで「宮城県仙台市」に住んでおられたのではないかとも考えられるので、震災時の被害に関する発言は、故郷を推定するための判断材料にはならないと見ていいでしょう。

 な~んてことをつらつら考えながら動画を順番通りに観ていたら、ある回でなんの気も無しに青森県出身であることが語られて確定!と……
 結局、同郷ではないかと興奮したのは勝手な一人相撲だったわけですが、こんな感じで急に気になり出して調べものをするのって、脳みそのふだん使ってない部分が回転するような気がして、運動とおんなじくらいに楽しいんですよね。THE つぶろさん、楽しいきっかけをありがとう!

 この他にも、私としてはいくつか、動画を観ていて「あ、これ、あれだったのか!」とか、「私も調べてみたら、なにか真実めいたものに近付けるかも!?」と刺激される話題がありましたので、それに関しましてはまた、次回ということにいたしましょう。

 いや~、謎解きって、ほんっとに、楽しいものですねェ! それではまた、ご一緒に楽しみましょう~。
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才気超爆発!!イギリス時代のヒッチコック文句なしの最高傑作 ~映画『バルカン超特急』~

2024年06月28日 20時37分56秒 | ふつうじゃない映画
 ハイみなさまどうもこんばんは~! そうだいでございますよ~い。
 さぁさ、いよいよ夏だ夏だ! こちら山形ではつい先週に梅雨入りしたばっかりなんですが、私の住む山形はそんなにひどい雨も降らないし、基本的にもう夏本番といった感じです。今年も、ど~か暑さはお手柔らかに……

 そんでもって、今回はまた「ヒッチコック監督の諸作を観なおす企画」の続きでありますが、いや~、ついにここまで来たかという感じですね! いろいろと思い入れのあるタイトル。初期イギリス時代の代表作といっても過言ではない、この作品のご登場でございます!


映画『バルカン超特急』(1938年10月 97分 イギリス)
 『バルカン超特急』(原題:The Lady Vanishes)は、イギリス・アメリカ合作のサスペンス映画。原作はイギリスの推理小説家エセル・リナ=ホワイト(1876~1944年)の長編ミステリー小説『車輪は回る』(1936年刊)。

 本作のマクガフィン(観客の興味を引っ張るストーリー上の謎)である「ギター弾きの歌」に関してヒッチコックは、「ばかばかしいものだ」と言いつつも大いに気に入っていた旨の発言をしている(ヒッチコックとフランソワ=トリュフォーの対談集『映画術』より)。
 本作でノーントン=ウェインとベイジル=ラドフォードが演じたイギリス人の乗客2人は、1940年のキャロル=リード監督のスリラー映画『ミュンヘンへの夜行列車』(プロデューサーが本作と同じエドワード=ブラック)にもほぼ同じ役で再登場している。また役名は異なるが、1945年のホラー映画『夢の中の恐怖』や1948年のオムニバス映画『四重奏』にも出演している他、日本未公開の8作の映画にコンビで出演している。さらに BBCラジオでは、2人が出演するスピンオフラジオドラマシリーズ『チャータースとカルディコット』も1946~52年に放送された。
 ヒッチコック監督は、エンディング近くのヴィクトリア駅のシーンで、コートを着てタバコをふかし、肩をすくめて通り過ぎる人物の役として出演している。

 本作は、イギリス映画協会が1999年にイギリスの映画や TV業界の1000人に行ったアンケート「20世紀の英国映画トップ100」で第35位に選ばれている。
 また、イギリスの雑誌『タイムアウト』が150人以上の俳優、監督、脚本家、プロデューサー、評論家や映画界関係者に行ったアンケート調査による「イギリス映画ベスト100」で第31位に選ばれている。
 本作は1979年にシビル=シェパード主演で『レディ・バニッシュ 暗号を歌う女』(製作ハマー・プロ)としてリメイクされている。


あらすじ
 世界各国がふたたび戦争に突入しそうな不穏な時代。ヨーロッパ・バルカン半島のある国バンドリカの山奥でスイス行きの列車が雪崩により運行停止となり、駅の待合所では出発が翌日に延期される旨が乗客に告げられた。乗客にはクリケット狂のチャータースとカルディコット、トッドハンター弁護士と実は妻ではなく愛人で不倫関係にある仮のトッドハンター夫人、家庭教師のミス・フロイなどがいて、仕方なく駅の近くの狭いホテルに泊まることになる。チャータースとカルディコットは、ホテルで客室が足りないためにメイド用の部屋を当てがわれ、レストランでは食べる物が足りず、イギリス本国でのクリケットの試合結果情報も入ってこないので不満ばかり。同じホテルには、結婚前の最後の旅行を友人2人と楽しんでいるアイリス=ヘンダーソンというイギリス人女性がいるが、友人たちからは結婚を心配されている。その夜、ミス・フロイがホテルの自室で窓の外から流れるギター弾きの歌を聴いていると、上階からクラリネットと民族舞踊の踊りが始まり、隣室のアイリスはうるさくて眠れないので静かにするようにとホテル支配人に頼む。しかし上の階のギルバートは、クラリネットで民族舞踊を記録するのは大事な作業だと譲らなかった。支配人に部屋を追い出されたギルバートはアイリスの部屋に転がり込んできて、根を上げたアイリスはギルバートを元の部屋に戻してもらう。この間、ホテルの外にいたギター弾きは何者かに殺される。
 翌日、列車運行は再開されるが、アイリスは出発時にミス・フロイを狙って落ちて来たと思われる植木鉢が頭に当たり、列車に乗ってからも意識が朦朧としていた。列車で同室となったミス・フロイと食堂車に行ってお茶を飲んで過ごし、客車に戻って一眠りしたアイリスが起きた時には、ミス・フロイは消えていた。同室の乗客がミス・フロイなど知らないと言ったため、不審に思ったアイリスは列車内を探し回るのだが、他の乗客も乗務員も初めからそんな老女は見なかったと口を揃える。さらに同乗していた高名な医師のエゴン=ハーツは、ミス・フロイは実在せず、アイリスが頭を打った後遺症で記憶障害を起こしているのだと断定した。ミス・フロイの実在を信じるアイリスは、たまたま乗り合わせていたギルバートと共に列車内でミス・フロイを探し始める。しかし、お忍びの不倫旅行中のトッドハンター弁護士は周囲の他人と関わりたくないために見た覚えがないと嘘を吐き、イギリスで開催されるクリケットの試合観戦に間に合いたいチャータースとカルディコットは、列車を停車させてでも捜し出すと息巻くアイリスの訴えを煙たがり、さらにクリケットを馬鹿にしたアイリスに激怒して協力を拒否してしまう。

おもなキャスティング
アイリス=ヘンダーソン     …… マーガレット=ロックウッド(21歳)
ギルバート           …… マイケル=レッドグレイヴ(30歳)
チャータース          …… ベイジル=ラドフォード(41歳)
カルディコット         …… ノーントン=ウェイン(37歳)
ミス・フロイ          …… メイ=ウィッティ(73歳)
エリック=トッドハンター弁護士 …… セシル=パーカー(41歳)
仮のトッドハンター夫人     …… リンデン=トラヴァース(25歳)
奇術師ドッポ          …… フィリップ=リーヴァー(34歳)
ドッポ夫人           …… セルマ=ヴァズ・ディアス(26歳)
クマー夫人           …… ジョセフィン=ウィルソン(34歳)
尼僧              …… キャサリン=レイシー(34歳)
アトーナ男爵夫人        …… メアリー=クレア(46歳)
エゴン=ハーツ医師       …… ポール=ルーカス(44歳)
ホテルの支配人ボリス      …… エミール=ボレオ(53歳)

おもなスタッフ
監督 …… アルフレッド=ヒッチコック(39歳)
脚本 …… シドニー=ギリアット(30歳)、フランク=ラウンダー(32歳)、アルマ=レヴィル(39歳)
製作 …… エドワード=ブラック(38歳)
音楽 …… ルイス=レヴィ(43歳)、チャールズ=ウィリアムズ(45歳)
撮影 …… ジャック=コックス(42歳)
編集 …… ロバート=E=ディアリング(45歳)
製作 …… ゲインズボロウ・ピクチャーズ、ゴーモン・ブリティッシュ映画社
配給 …… メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(イギリス)、20世紀フォックス(アメリカ)


 きたきたきた~! バル超! バル超! そんな略し方してる人が果たしているのかどうかわかんないのですが、列車ミステリーというジャンルで行くと、かの名作映画『オリエント急行殺人事件』(1974年 監督シドニー=ルメット)や、我が国が誇る伝説のカルト映画『シベリア超特急』シリーズ(1996~2005年 監督マイク水野)の祖先にあたる作品ですし、本作後半の列車スリラーアクションという展開から見れば映画『新幹線大爆破』(1975年 監督・佐藤純彌)や『カサンドラ・クロス』(1976年 監督ジョージ・パン=コスマトス)の源流ともなっているかなり重要な作品です。もしかしたら、黒澤明の『天国と地獄』(1963年)とか、スティーヴン=セガールはんの『暴走特急』(1995年)にも、このバル超の血が流れているのかも~!? いや、関係ねっか。
 ちなみに、映画じゃなくて原作小説の『オリエント急行殺人事件』をアガサ=クリスティが発表したのは1934年のことなので、そこはさすがにミステリーの女王が一歩先をリードしております。そこはやっぱ、そうよね~。

 ただし、ヒッチコック監督はこの作品以前にも、「船」とおんなじくらいに作中によく「列車」を登場させていますし、特に『第十七番』(1932年)や『三十九夜』(1935年)『間諜最後の日』(1936年)では、作中の大きな見せ場に「走行中の列車内」というシチュエーションを持ってくるテクニックをすでにバンバン使っています。やっぱり、もうもうと黒煙を上げて驀進する機関車というイメージが、映画ならではのサウスペンスフルな興奮と相性がいいんですかね。
 それでも、本作『バルカン超特急』の「列車成分」は格段にアップしているというか、具体的に見てみますと「上映時間97分中、67分が列車内」という高濃度になっております。イメージだけだと、もっと列車シーンばっかりだと思ってたんですけどね。

 さて、本来ならば、このヒッチコックおさらい企画をやるときは通常、ざっと映画本編を見た上でシーンごとで気になったポイントを羅列していく「視聴メモ」のコーナーを設けているのですが、今回『バルカン超特急』に関しましては、もうそんなこといちいちやってたらこの記事の字数が2万字を余裕で超えてしまいますので、やりません! もうとにかく皆さん、まだ観てないという方はとにかく観て!!

 いやホント、ヒッチコック監督の約半世紀という悠久のキャリアの中でのベスト、最高傑作を選ぶことほど難しい問題もないのですが、こと初期イギリス時代に限って言うのならば、ヒッチコックのベストはもう簡単、満場一致でこの『バルカン超特急』で決まりだと思いますよ。いや、異論なんて、出てくる!?
 もちろん、ここにくるまでの諸作でも、21世紀の今観てもなお魅力的な傑作はいっぱいありました。『下宿人』(1927年)のショッキングなカメラワーク、『恐喝(ゆすり)』(1929年)の野心的なロング無音ショット、『暗殺者の家』(1934年)の緊迫感あふれる銃撃戦、そして前作『第3逃亡者』(1937年)のユーモアたっぷりなストーリーテリングと、ただ実験的なだけじゃなくて観客の興味をちゃんと引っ張ってくれるロングワンカット撮影!
 どの作品一つをとっても、「昔ものすごく斬新な映画監督がいたよ」という記憶に残ってしかるべき仕事ではあるのですが、ヒッチコック監督はそこで満足することなど決してなく、ついにそれらの良かった点をぜ~んぶまるっと一つの作品におさめ、それどころが全面において上位互換となる、さらにワンステップ上の超傑作を生んでしまったわけなのです。

 それまでのヒッチコック監督作品の、文字通りの総決算にしてネクストレベル、そして「次なる時代」を開く奇跡の鍵となった伝説的名作! それこそが、この『バルカン超特急』なのであります!! そこまででっかくブチあげていいでしょうか!? い~んです!! へぱりーぜ!!


 そもそも、私がこの作品の時代を超えた面白さのとりことなったきっかけは、かなり昔の話になります。

 話は『バルカン超特急』からも脱線してしまうのですが、そもそも私がアルフレッド=ヒッチコックという歴史的に有名な映画監督がいることを生まれて初めて知ったのは、ご多分に漏れず彼の映画そのものの鑑賞ではなく、彼の生涯を描いたバラエティ番組や、彼の映画を題材にしたパロディコントからでした。

 具体的に思い出してみますと、なんてったって1990年代の日本のテレビ界における「偉人伝バラエティ」といえばこれ!とも言うべき、日本テレビ系列で毎週日曜日の夜9時から放送していた『知ってるつもり?!』をはずすことはできませんね。関口宏と加山雄三!!
 ここでヒッチコックが特集されたのは1992年7月19日の放送回だったのですが、彼の生涯を通覧しつつも、あの「切り裂きジャック事件」をキーワードにヒッチコックと故郷ロンドンとの因縁をミステリアスに強調したり、はっきりパワハラとは言わないまでも、彼の映画に主演したブロンド美人女優たちとの愛憎関係にはっきり言及したりと、なかなか、当時紅顔の小中学生だったそうだい少年には刺激の強い内容となっておりました。ヒッチコックって、こえぇ!

 その他、思い出せる限りでは NHKで放送されていた同趣向の伝記バラエティ番組『西田ひかるの痛快人間伝』(1991~93年放送)の1992年5月14日放送回でもヒッチコックが取り上げられていまして、こちらはさすがに天下の NHKの教養番組だしナビゲーターも西田ひかるさんなんで、ヒッチコックの実人生よりも彼が監督した映画に導入されたグリーンバック合成や遠近法を利用した大胆な映像演出のセンスにクローズアップした内容だった覚えがあります。各映画にカメオ出演したヒッチコックの登場シーン集なんてのもやってましたよね。なつかし!

 そんな感じで、映画の面白さは西田ひかるさんから、人間ヒッチコックのヤバさは『知ってるつもり?!』から知らされた上で、私は満を持してヒッチコック監督作品そのものに触れる流れとなったのでした。あの、『痛快人間伝』(5月)と『知ってるつもり?!』(7月)とで、ヒッチコックを特集した時期がミョ~に近いんですが、1992年ってヒッチコックのなんかのアニバーサリーイヤーでしたっけ? 別に生没年のどっちから見てもキリのいい年ではないのですが……なんで?

 あ~、ごめんなさい! もひとつ、いっすか!?
 そういった伝記番組の他にもう一つ、私とヒッチコックとの出逢いを語る上で絶対に忘れるわけにはいかない、この番組のあの放送回に触れさせていただきたいと思います。個人ブログなんで、もちっと我慢してつかぁさい!

 それは、『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』内のコントドラマコーナーで1990年12月1日に放送されたヒッチコック作品のパロディ『裏の窓』です!! うわ~なつかし~!!
 これ、もともと映画好きとしても知られているウッチャンナンチャンの趣味が爆発したような、毎回毎回有名な映画作品のパロディコントを繰り広げるコーナーの1エピソードだったのですが、特にこの回は、言わずもがなヒッチコックの超有名作『裏窓』(1954年)をそうとうぜいたくな予算のセットで再現していて、当時小学生だった私には本当に面白かったんです。足を骨折した役のナンチャンを介護する田中律子さん(当時19歳)の看護師がかわいかった! 今現在も私が健康的に日焼けした女性が大好きなのは、ここに原因があります。
 ここでは、ウッチャンが映画の登場人物でなく全身とほっぺに肥満体メイクをしてハゲヅラをかぶってヒッチコックその人を演じていたのですが、思えば、ここでの「なんか怪しげなおじさん」こそが、私とヒッチコックとのほんとに最初の出逢いだったのです。いや、本人じゃねぇけど!

 すみません、ここでいい加減にお話を戻しますが、こういったさまざまな前情報をゲットした上で最初に私が観た正真正銘のヒッチコック作品は、記憶する限りレンタルビデオでは1992、3年ごろに借りた『サイコ』(1960年)で、テレビで観た最初が NHK衛星第2(当時)の『衛星映画劇場』内で放送していた『バルカン超特急』だったのでした。やっと戻って来たよ~!!
 ここ、確か『サイコ』が先で『バル超』が後だったかと思います。なんでかっていうと、『バル超』を観てかなりほっとした記憶があるんですよ。「あ~、ヒッチコックって、やっぱウッチャンナンチャンがやってたみたいに面白い映画撮る監督なんだよねぇ!」って。

 そうなんです。『サイコ』は言うまでもなくヒッチコック畢生の大傑作ではあるのですが、やっぱりああいった感じでかなりトンガッた作品なので、正直、当時中学生だった私はドン引きしちゃってたんですよね。そしてその後に観たのがこの『バル超』だったので、その頭をからっぽにしてハラハラドキドキを楽しめる100% エンタメ全振りな内容に、胸をなでおろすことができたのでした。
 まぁ、そうやって安心した直後、調子に乗って『鳥』(1963年)を観ちゃって、再び恐怖のズンドコに叩き落されるんですけどね……もう、いじわる!!

 まぁ長々と思い出話をしましたが、私が言いたいのは、ヒッチコックのエンターテイナー、娯楽映画作家としての才能が最初にいかんなく発揮された大傑作こそが、この『バルカン超特急』なのではないか、ということなんですね。

 本作の面白さを語り出したら本当にキリがなくなってしまうのですが、大事なところをかいつまんで申しますと、「無駄な登場人物がいない」というか、「登場人物全員がキャラ立ちしている」という事実が大きいかと思います。そして、主人公であるアイリスとギルバートの凸凹コンビの好感度がハンパない!!

 上の情報の通り、本作はヒッチコック作品恒例の「男女カップル主人公」という定型を踏襲しているのですが、アイリスは婚約者との結婚を目前に控えたマリッジブルーまっただ中の娘さんで、対するギルバートは恋愛そっちのけで自身の民俗学研究に没頭するさすらいの放浪青年という、まるで接点の生じようのない関係から始まります。しかも、出逢いの最初はホテルの部屋の中でブンガブンガ大音響を立てて民俗舞踊を現地人に踊らせるギルバートにアイリスが「うっせぇ!!」と苦情を入れ、それを根に持ったギルバートが荷物をひっくるめて「同室いいっすか!? おめぇのクレームのせいで支配人から部屋追い出されたんで!!」とアイリスの部屋に押しかけるという最悪の状況から。高橋留美子のマンガか!?

 ところが、この2人があれよあれよという間に、「列車の中でアイリスが見知っている老婦人が失踪する」という謎をきっかけに距離を縮めていき、「老婦人なんて最初っからいなかったよ?」とか「モル……じゃなくてアイリス、あなた疲れてるのよ。」とか言われたりして孤立無援の状態になったアイリスを見て、「義を見てせざるは勇無きなり!!」とばかりに敢然と立ちあがった英国紳士ギルバートが彼女のナイトになるという、そりゃアイリスもフィアンセそっちのけで惚れてまうやろがいという運命的な関係に発展していくのです。

 うわ~、この甘ったるいまでのスリル&ロマンス!! まさにエンタメですよねぇ。ま、若干「吊り橋効果」の不正操作疑惑もありますが、ギルバートを演じるマイケル=レッドグレイヴの上品な雰囲気もあって、アイリスを助けるギルバートの存在は本当に飄々としていながらも頼もしく、かっこいいんです。
 いや~、このカップルってほんと、『三十九夜』のリチャード(演ロバート=ドーナット)とパメラ(演マデリーン=キャロル)の「出逢いも過程も最悪カップル」を反面教師にしてるとしか思えませんよね。リチャードは冤罪で逃亡中の身とはいえ、パメラにやってること最低すぎますから……本編終了後にパメラに速攻で訴えられるどころか、殺されても文句は言えません。

 ともかく、映画は「主人公にどれだけ感情移入できるか」が非常に大きいと思うのですが、今作は二重三重の構えでアイリスとギルバートのキャラクターを魅力的にする盤石の態勢を敷いているのです。
 私、不勉強なことに本作の原作である小説『車輪は回る』をチェックできていないのですが、アイリスのマリッジブルー設定あたりは原作由来なのかな。なんか、これまでのヒッチコック作品におけるヒロインたちは同性から見ると嫌な感じになりそうな状況に陥ることが多かった気がするのですが、婚約者をむげにフッてしまうような自由度すら持っている今作のアイリスは、けっこう画期的に新しいキャラなのではないでしょうか。

 このアイリスとギルバートの定番主人公ペアだけでも充分に面白いわけなのですが、今作のすごいところは、ここにさらに脇役ポジションでも「チャータースとカルディコット」という名コンビが加わっているという事実ですよね、やっぱ。
 上にあるように、この2人は嫌味なまでに英国紳士あるあるな滑稽さを備えたキャラであるために、本作の後に完全独立していくつもの映画やラジオドラマに登場する名コンビになっています。
 この2人の魅力は、本編序盤30分くらいの「無理やり泊まらされるはめになった雪のド田舎の宿屋」シチュエーションのやりとりでも十二分に発揮されているのですが、これが単ににぎやかし要員で呼ばれているだけでなく、のちに列車内の展開で「大好きなクリケットをバカにされたから捜査に協力してやんない」という、作品の本筋にも大きな影響を与える存在になっているのが本当に素晴らしいです。

 敵か味方かだけじゃなく、「機嫌が悪いと協力しない」第三勢力のいる作品世界って、ものすごくリアルで目が離せない緊張感を生む味付けになりますよね。ここが効いてるんだよなぁ! チャータースとカルディコットは、『それいけ!アンパンマン』のドキンちゃんやロールパンナの祖先だった……!?

 まぁ、終盤の銃撃戦でこの2人が異様に頼もしい戦力になるのは、さすがにご都合主義な感も否めないのですが、それも「俺達のクリケット観戦の邪魔をする奴ら……全員ぶっ殺す!!」という、イギリス・ウェールズ伝統の聖獣レッドドラゴンの逆鱗に触れた当然の結果であるとも言えます。よくできてんなぁ~。

 ちょっと、字数の都合で登場人物全員の魅力を語るわけにもいかないのですが、取り上げた2カップル4名の他にも、今作最大の謎の渦中にいる謎の老婦人ミス・フロイから田舎ホテルの支配人ボリスにいたるまで、もはやマンガチックと言うまでにキャラの立った人物のオンパレードで、本作は本当に楽しいです。もちろん、だからといって単なる喜劇になっているわけでは決してなく、楽観的で平和主義を標榜するトッドハンター弁護士があんな目に遭ってしまう描写なんかは、背筋がぞわっとするリアルさがありますよね。一瞬にして場の空気が変わる、その見事な演出。

 たくさんいる魅力的なキャラの中でも、特に私がおおっと感じたのは、クライマックスになって実はそうとう悪い役だったと判明する、あの人ですよね。それまで列車の中では無口で目立たない存在だったのに、主人公たちの乗る列車が走り去るのを見て、ハーツ医師の横でタバコをスッパーと吸って微笑する姿は、悪の大幹部の魅力たっぷり! あっ、この人、前作『第3逃亡者』で意地悪な叔母さんを演じてた人か! そりゃ悪いわ。


 俳優さんに限らず、この作品は本当に語るべき魅力がたくさんあふれまくりの大傑作なのですが、やはり主人公たち一行と観客の視線が一緒になって、「異国の地で孤立無援となったヒロインは救われるのか」、「失踪した老婦人はどこへ行ったのか」、そして「一行の乗ったバルカン超特急は無事に終着駅にたどり着くことができるのか!?」という興味がクライマックスに向かってきれいに集束していく構造の美しさ! ここが最大の魅力だと思います。ただ笑えるシーンやドキドキするシーンがつるべ打ちになってるだけじゃなくて、全てが伏線となってハッピーエンドにつながってゆく……無駄な部分がほぼないんですよね。

 よく言われますが、国際的にかなり重要な機密情報が、ほんとにあんな単純で短い鼻歌のメロディにおさまりきるのかという問題は当然あります。でも、

「こまけぇこた、いいんだよ!!」

 という、チャキチャキのロンドンっ子ヒッチコックのエンタメ精神が、これほどまでにはっきり打ち出されたマクガフィン要素も、他作品には無いのではないでしょうか。後年の『サイコ』における「横領した現金4万ドル」と比べて、どんだけ粋で風流なんだって話ですよ。


 本作『バルカン超特急』は、確かにヒッチコック「全生涯中のベストはどれか?」という観点からすれば、決して目立つ位置にはいない作品であるとは思います。
 しかしながら、彼がただの映画監督どころか、名匠と讃えられるレベルの人達の中でも、さらに数段上の次元に達している人物であるがゆえに、そんな信じられないクオリティのインフレを招いているのであって、『バルカン超特急』単体は押しも押されもせぬサスペンス映画の大傑作であることは間違いないでしょう。
 古い映画とあなどることなかれ……ほんと、観て絶対に損しない名作だと思いますよ。時間だって1時間半ちょっとよ! ぜひぜひ見てみて!!

 こうして、監督デビューから13、4年目にしてとんでもない傑作を生んでしまったヒッチコック監督なわけですが、この才能はイギリス一国に留まらず、海を渡って映画の都ハリウッドへと、進化の場を移していくのであります!
 さぁさぁ、 サスペンスの巨匠ヒッチコックの真の大躍進の場となるアメリカ・ハリウッド編が、ついに始まるぞぉ~!!


 ……え? ハリウッド編、まだ? もう1本、イギリス時代の作品が残ってるって?

 あぁ、そう……じゃあ、次回はそれいってみよっか。そのあとハリウッドね、うん……
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これぞ21世紀の耳嚢!? YouTubeの『都市伝説考察チャンネル THE つぶろ』 ~資料編2~

2024年06月16日 20時23分40秒 | ミステリーまわり
『都市伝説考察チャンネル THE つぶろ』 個人的に興味があった動画リスト2 ≪2021年11月~23年10月≫
※前回の動画リスト1 ≪2019年1月~21年10月≫は、こちら!
※私そうだいが個人的に「おっ。」と思った動画だけをリストアップしたもので、全動画のリストではありません(動画は2024年6月時点で1500本を超えてます……)
※「……」をはさんだ左が動画の内容、右側が大まかな真相です(このチャンネルの動画の面白さは真相にいたるまでの「考察」の経路にあると思いますので、ネタばらしの意図はございません)
※内容の頭に「〇」が付いているものは、私そうだいが特に面白いと感じた動画です

2021年11月
・ネットに存在する恐怖画像『北関東連続幼女誘拐殺人事件の犯人の顔』…… 2008年の大阪コンビニ強盗未遂事件の犯人画像が誤って伝わった
〇ネットに存在する恐怖画像『長州力の背後の観客』…… 2003年のプロレス試合の模様を普通に撮影した写真であり加工は無い
〇TV でも紹介されていた「都内マンションの呪われた部屋」…… 宗教団体の神社の敷地内にあるマンションで入居者が頻繁に替わることも事実
・世界的に有名な恐怖映像『鏡の中の女の子』…… 『ベティの誕生日』と同じ動画アーティストが2008年に製作した創作である可能性が高い
〇ネットに存在する恐怖画像『カメラを見つめる女』…… 2009年に放送された『ごきげんよう』のスタジオ観覧者の反応を元にしたコラ画像
・『バンキシャ!』VTR に映った心霊写真 …… 2013年の「三重県中3女子死亡事件」報道のキャプチャ画像を加工したもの
〇ネットに存在する恐怖画像『報道特集の早杉さん』…… 2005年に放送された映像とテロップを使用して捏造されたコラ画像
・「岐阜中2少女殺害事件」の犯人がネット上に書き込んでいた? …… 事件前後にたまたま犯行現場の空き店舗の写真を上げただけで全くの別人
〇恐怖映像『廃病院の少女』…… 廃墟系サイトの管理人が2006年頃に大阪の廃病院「〇病院」での映像を販売していたものだが幽霊は演者
・ネットに存在する恐怖画像『廊下の幽霊』…… 1994年に韓国で発売された3D びっくり画像本の一枚を加工したもの
〇1986年「三原山大噴火の映像に映り込んだ人影」…… 写真家・青木章氏か全島避難に遅れて救出された38名のうちの誰か
〇呪われた廃墟「三角の家」の噂は本当か …… 元墓地だった土地ではなく誇張が多いがトラブルで手放され転居が多かったことは事実
・心霊写真『集合写真の崩れた顔』…… 1959年に撮影された同志社中学校のクラス集合写真が2006年以降に加工されたもの
12月
〇心霊写真『園児とデカすぎる先生の集合写真』…… 部屋のTV 画面が顔のように見える1975年撮影の写真で先生のサイズも加工されている
〇朝の情報番組『ズームイン!!朝!』で水死体発見2 …… 1991年4月の福岡・大濠公園で実際にあった出来事だが遺体発見は放送直前
・オーストラリアの心霊写真『カンバーランドの宇宙飛行士』…… 1964年に撮影された写真に撮影者の妻が写り込んだもの
・2ちゃんねるの謎のコピペ「土生明弘を捜しています」…… 2011年2月の短い期間に拡散されたがそれ以降の動きはない
〇事件現場の窓が勝手に閉まるニュース映像 …… 2008年「江東区マンション神隠し殺人事件」の部屋の捜査員が隠れながら閉めたか
・恐怖画像『ジェフ・ザ・キラー』の正体を追う1 …… 2005年に日本で加工された可能性が高いが元画像は不明で自殺者だという情報はデマ
〇宮崎市はにわ園のはにわの目が光る!? …… カメラのフラッシュではにわの内部が照らされることによる錯覚
2022年1月
〇有名な恐怖映像『顔にゅ~動画』の別バージョンとは …… 1990年に TV放送された際の検証映像や再現ドラマの映像が混同されたか
〇TV番組に問い合わせが殺到した『目が開いた生首の掛け軸』1 …… スタジオで掛け軸を映し出したスクリーン上の画像ノイズか
・『探偵!ナイトスクープ』2 ぴーちゃんごめんね。…… もともと不明瞭なインコの言葉を不気味な文章に恣意的に改竄したデマ
・桜塚やっくんの事故車両の心霊写真 …… 車内のタオルや窓ガラスに反射した撮影機材が顔のように見えたもの
〇ネットに存在する恐怖画像『廃遊園地の不気味な遊具』1 …… 北海道・苫小牧市の野生動物公園ジョイランド樽前の跡地に廃棄された遊具
・仙台の高校の案内パンフレットに写った心霊写真 …… パンフ制作会社の編集ミスによる合成写真の消し忘れ
〇アイドルももちの写真集メイキングDVD に謎の黒い影 …… 波間で遊んでいた一般人か波を立たせるために配置された撮影スタッフ
2月
〇AV女優の右腕が突然消えた心霊映像 …… 女優が袖に余裕のある衣装を着て後ろ手に手すりを掴んでいたために起きた錯覚
・千葉県我孫子市の廃墟「オレンジハウス」の呪われた噂は本当か …… 近所で起こった一家心中事件を混同したデマ
・『やべっちF.C.』生放送のキャプチャ画像に写り込んだ「白い女」…… カメラ位置を確認した撮影スタッフが映り込んだ
・島根女子大生死体遺棄事件の中継現場で聞こえた謎の声 …… 中継現場付近のマスコミ関係者か野次馬の声を拾ってしまった
〇『おもいッきりテレビ』に一周忌の美空ひばりが現れた!? …… 特集コーナーで使用したパネルがセット奥で見切れていた
〇『アンビリバボー』史上最恐の心霊写真『2枚続きの大きな顔』…… カメラの不具合と二重露光で顔のように見える錯覚
〇『探偵!ナイトスクープ』3 恐怖の幽霊下宿の黒い影…… 黒っぽい衣服を着た霊能者の後ろ姿が影のように見えた
〇『ヒルナンデス!』で起きた怪奇現象「鏡の中の動きが違う」…… 角度によって動いていないように見えるだけで動きは違っていない
3月
・『USO!?ジャパン』の「瞬きする心霊写真」…… 目の部分に白い映像ノイズがかかっただけで瞬きはしていない
〇海外掲示板4chan で話題になった謎の日本アニメ『さきさのばし』…… 書き込み主や回答者のデマの可能性が高いが無いとも言い切れない
〇都市伝説「1975年かぐや姫解散コンサートの謎の声」…… 録音地点に近い場所にいた観客の声の可能性が高い
4月
・北日本新聞に実際に掲載された心霊写真 …… 太極拳奉納式の集合写真にイレギュラーで加わった人が陰に隠れて写っていた
〇ドラえもん5 出所不明のイラスト1 …… プリントはがき用ソフトのイラスト集か、海外展開用のイラスト集から流用したもの
〇実在していた呪いのサイト『 niceday-fineday』1 …… 2003~12年頃にあったネット上の恐怖画像を集めたサイトで管理人の生死は不明
〇真相解明に至らなかったネタ No.4「神子筋」1 …… 特定の家系の差別を助長する恐れがあったためお蔵入り
・妖怪くねくねを撮影した動画は本物か? …… 2006年以前に福祉施設でチック症の入居者を盗撮した悪質ないたずら動画
5月
〇静岡県浜名湖に放置されているホンダ・シビックフェリオの謎 …… 住人が常にいるわけではなく釣りの際に利用されている可能性が高い
・『探偵!ナイトスクープ』4 幻の花見の名所 …… 和歌山県にある国土交通省の航空保安無線施設で、照明も鑑賞目的ではない
〇ネット上に広まっている詳細不明の「ホワイトボードダンス」画像 …… 2004年11月に NHK関西で放送された振付家・北村成美の VTR
・1990年「宮城拓磨君殺人事件」の優しいおじさんとは誰か …… 実在して被害者の洗脳を行っていた、人心掌握術に長けた変質者
〇ネット上に広まっているインタビュー画像「先生と二人できました」…… 取材映像は本物だがテロップによる強調は放送後の加工
〇不思議な心霊写真『帽子をかぶった遺影』…… 故人の着けていた転倒防止ヘッドギアを隠すための写真屋の修正を知らない人物が流したデマ
〇真相解明に至らなかったネタ No.9「岡田幹事長を囲む取材陣」…… 『news zero』のVTR の一場面のようだが動画が発見されていない
・和歌山県の廃墟「飯森山荘」に誘い込む不気味な書き込み …… 実際に現地にいたわけではない自作自演のいたずら
6月
〇Yahoo知恵袋に現れた「K.カズミの偽物」とは誰だったのか …… レシートの偽造やネットニュースからの引用で作られた偽情報か
〇有名な「意味がわかると怖い画像」の正体とは …… アイドル時代の早見あかりの自撮り場所が実際よりも狭い密室のように見えた錯覚
・富士山の標高2100m 地点に放置されているグランドワゴニアの謎 …… 現在よりも規制の緩い時代に富士登頂を目指した車両か
〇世界的に有名な情報量の多すぎる画像『タキシード ミシン』…… 2004年にアメリカで実際に起きた事故を背景に撮影した本物の写真
7月
〇新聞に掲載された奇妙な三行広告『結婚おめでとう!』…… 1995年に新郎が話題作りのために掲載したジョーク広告
・顔の部分が削られている江戸幕末の集合写真 …… 「中央に写る人は早死にする」という迷信の対策か
〇地蔵の前で小石が浮遊する奇妙な動画 …… クモが糸で吊っていた小石が空中に浮かんでいた可能性が高い
〇Instagram で有名な『雪の中の美女』…… 2013年にネット上にあがった日本人の自撮り写真に「自殺した女性」というデマが付けられたもの
〇2006年『めちゃイケ』の怪奇現象「鏡に映らない有野」…… 編集で時間の流れを入れ替えたが鏡を修正しなかったために一瞬鏡像のみ消えた
〇2003年『人体の不思議展』の妊婦の人体標本の謎 …… 2012年の薄熙来失脚後に生まれた噂でネット上に流布する張偉傑の顔画像も別人
・2014年のボリビアのサッカー中継で観客席を疾走する幽霊が …… 客席の通路スペースを急いでいる客が走っていただけ
〇ネットで有名な画像『車内で変顔をする女性の後ろで窓ガラスを舐めるぐちゃぐちゃの顔』…… 大貫亜美のCM と舐めフェチ系AV のコラ画像
8月
〇旅館口コミサイトに掲載されている奇妙な写真「庭園の池に人」…… 米子市の旅館「東光園」で2012~13年に庭園の池を温泉にしていた
・2002年「三島女子短大生焼殺事件」の中継リポーターの肩に手が …… リポーターが外したイヤホンを回収しようとした撮影スタッフの手
・恐怖画像『ジェフ・ザ・キラー』の正体を追う2 …… ネットアイドルTERUMI 説の可能性は低く、2005年7月のふたばちゃんねるが発祥か
・世界的に有名な GIF画像『黒い目のアジア人女性』…… 1971年「大久保清事件」の被害者の写真を使って2008年に海外で流布したもの
9月
・Twitter で話題になった『妖怪テケテケを撮影した画像』…… ニホンザルのシルエットを錯覚したものかフェイク画像
〇視聴者が選ぶガチでヤバい心霊映像『Acceed ホモビデオのポルターガイストくん』…… 諸説あるが全く原因不明
・昔から流布している心霊画像『学校をさまよう首だけ女の霊』…… 2010年に TVで放送された走査速度の遅いガラケーで撮影して歪んだ画像
〇視聴者が選ぶガチでヤバい心霊映像『稲川淳二の樹海ロケのお経』…… 撮影スタッフの演出でなければ全く原因不明
〇引退したはずのアイドル「水越万里菜」が復活している謎 …… 引退後の2018年から熱狂的なファンが彼女の名をかたり個人で活動している
≪調査隊≫秋田県北秋田市坊沢胡桃舘の廃墟「黒塗りの家」跡 …… 住民は1976年まで居住しており一家毒殺の噂はデマの可能性が高い
10月
・よく見ると怖い画像『うしじまいい肉の鏡の顔』…… 2008年にうしじまのグラビア写真を利用したコラ画像
〇1987年「藤沢悪魔祓いバラバラ殺人事件」の現場で流れていた「救世の曲」とは …… 事件直前まで作曲されていたが現場では流れていない
〇視聴者が選ぶガチでヤバい心霊映像『2015年ペルセウス座流星群中継の犬の声』…… 別の中継先の音声が入ったミスでなければ全く原因不明
〇解明不可能なネタ『台風の日は家中が真っ赤』…… 2019年のスレで出た発言で、台風の直前は夕焼けが出やすいがそれ以外は意味不明
≪調査隊≫ネットに存在する恐怖画像『廃遊園地の不気味な遊具』2 …… 黒木テック工業が製造した遊具「クレイジーカー」だった
11月
・ドラえもん6 謎の回『二日後にどこでもドアを使うな』…… 『タンマウォッチ』の回などの記憶が混同されて作られた都市伝説か
〇詳細不明な謎の番組「緑色の液体に浸かる水着の女性」1 …… 2017年10月に放送された実験番組と思われるが詳細不明
〇埼玉県のマンション「 Vシティ草加」の敷地内に残り続けている廃墟1 …… むじな伝説を伝える吉岡家の屋敷の一部と祠を移築した土地
〇詳細不明な謎の番組「緑色の液体に浸かる水着の女性」2 …… NHK でなく放送大学の「無重力状態を再現する水圧実験」の可能性がある
・ドライブ中にラジオからお経の声が …… 夜は海外の電波を受信しやすくなるため海外のラジオ番組が混信した可能性がある
≪調査隊≫ TV番組に問い合わせが殺到した『目が開いた生首の掛け軸』2 …… 現物を確認したが、虫説とノイズ説のどちらも可能性がある
≪調査隊≫北海道ジョイランド樽前の霊の噂 …… 閉園後も飼育され続けた動物の鳴き声や不審火騒ぎが噂の元となったか
12月
・NHK の深夜番組『2355』で流れたキューピー人形の生首 …… 現代芸術家アーサー=ギャンソンの作品『ボールを見つめる子ども』
・恐怖画像『ジェフ・ザ・キラー』の正体を追う3 …… 2005年の投稿とされる元画像らしき画像が出回っているが巧妙に偽造されたデマ
・ドラえもん7 出所不明のイラスト2 …… 韓国のイラストも日本から流用した可能性が高く、カレンダーの絵として目撃した報告があった
〇ネット掲示板から生まれた仮想暴走族「狂翼天使」事件 …… 2001年に実際に起きた事件でメンバー内の暴行事件から発覚した
・オリジナルDVDアニメ『学校の幽霊』シリーズ詳細不明のエンディング曲 …… ローランドのフリー音源ピアノ曲『愛は静けさのなかで』
≪調査隊≫2017年に死亡事故を招いたという埼玉県の心霊スポット「浦山ダム」…… 付近は落石が多く事故の原因も落石との接触だった
2023年1月
・1915年「三毛別ヒグマ事件」の写真と紹介される巨大ヒグマの画像 …… 2005年に海外で投稿された無関係な画像でコラの可能性もある
〇ヤバ過ぎてお蔵入りしたネタ「千葉県松戸市の妖怪」…… 2012年から某団地で屋外自撮りを行っているラバーマスク女装趣味の男性
〇2011年東日本大震災で壊れたはずの岩手県大槌町役場の時計が動いていた怪現象 …… 残った内蔵電池で少しずつ動いていた可能性がある
≪調査隊≫だるま人形を使った呪術の伝わる千葉県船橋市の「白旗神社」…… だるまは祈願の意味のある物だが全て撤去されていた
2月
〇東京・新宿ルミネエストで「ホワイティさんですか?」と尋ね続けていた男 …… 興味のある男性と交際するための新手のナンパか
〇JR茅ヶ崎駅で線路上から消えた子どもの怪 …… 2015年に電車が緊急停止したことは事実だが見間違えの可能性もある
・2ちゃんねる謎のカルト団体「りんご会」…… 実際に存在していた SMサークルのようだが規模も資金背景も不明
・画像生成AI に「 AOKIGAHARA」と入力すると黒髪の女性が描かれる謎 …… 「 AOKI」で長髪の人物、「 GAHARA」で女性が出力されるから
・ホラードラマ『ダムド・ファイル』のお蔵入り回『地球の思い出』1 …… 青山真治監督で作品は2004年に完成していたがシーズン4全体が中止
〇ヤバ過ぎてお蔵入りしたネタ「アイドルプライベートグッズショップ」…… 商品の真偽は不明だがサイト閉鎖後も売買は行われている
・カナダのホテルの空きチャンネルに映った「砂嵐の中の顔」…… 何者かによる電波ジャックのテストだった可能性がある
3月
・深夜に放送されていた「行方不明者捜索番組」…… 2002~08年にケーブルテレビで実際に放送されていた深夜番組『たずねびと』
・覆面の人物の奇妙な動画『 what are you thinking?』…… 2015年以前から存在していた可能性があるが出所が全く不明
〇都市伝説「19Hz の音を聴くと幽霊が見えるようになる」…… 1998年の超低周波が幻覚などの体調不良を引き起こすとの論文を誇張したもの
・ホラードラマ『ダムド・ファイル』のお蔵入り回『地球の思い出』2 …… 2004年5月に試写が行われたが10月の中越地震の影響でお蔵入りか
≪調査隊≫東京都東村山市の住宅街にたたずむ「呪いのプレハブ小屋とたっちゃん池」…… 事故や怪現象があったのは事実だが現在は怪異なし
4月
〇5年間で11名の死者が出た大阪市内の投資目的マンション …… 空き部屋を無くすために高齢者を無理やり入居させて孤独死が続出した
・「宇部」と「松木」の「相撲板10年戦争」…… 片方が不在になっても荒らし同士の抗争が継続してスレが存続できなくなった怪現象
・1996年「北海道豊浜トンネル崩落事故」の中継現場に映った「岩盤に顔」…… はっきり顔に見えたわけではなく報道規制で噂が誇張された
・図書館にあったメイドが表紙の謎のビデオ『死ぬより甘い』1 …… 「死ぬより甘い」は題名ではなくキャッチコピーの可能性もある
〇2005年の廃墟写真集に写り込んでいた人間の首 …… 神奈川厚木恵心病院跡の写真だがスペースに人間が座り込んでいた可能性が高い
・NHK で放送していた「呪文を唱える時に顔が怖くなる魔法少女」のアニメ …… BSプレミアム『ワラッチャオ!』内の『黒魔法少女ワリー』
〇『怪奇心霊㊙ファイル』ブランコを押し続ける少女の怪談 …… 2003年7月放送回で紹介されたエピソード
〇大阪万博の太陽の塔で行方不明になっている「地底の太陽の顔」…… 2000年代まで兵庫県立教育研修所に保管されていたが消息不明に
5月
・2018年「深夜の新京成線松戸駅の男子トイレに大量の血液」事件 …… 事件性は無く駅員が迅速に清掃した可能性が高い
・ドラえもん8 出所不明のイラスト3 …… 2002年以降に海外展開グッズで同イラストが何度か流用されているが初出は不明
〇謎の貼り紙「 IKKOは2017年10月から別人に入れ替わっている」…… ものまね芸人の誤認かカプグラ症候群による妄想が原因か
・テレビ東京の『ありえへん世界』にリモート出演する美輪明宏が全く動かない謎 …… 高齢で座っての出演であるため動きがほとんど無い
〇『ウルトラセブン』欠番回のスペル星人が密かに復活していた? …… 1970年の欠番処置までは普通にアトラクションショーに登場していた
・宮城県登米市の伝説の丸パクリコンビニの廃墟「セブン・メルシー」…… 3県3店舗で1991~2002年に営業していたが経営難により閉業
〇「トップガム」CM に出ていた謎のおじさんは誰なのか …… 2000年代前半に CM制作会社が解散しているため詳細が全く不明
・ヤバ過ぎてお蔵入りしたネタ「ありえない動きをするサッカー選手」…… 2005年の試合中に側頭部を強打した選手の発作だったが復帰した
・『笑っていいとも!』2 千葉市立誉田中学校の創立40周年記念空撮写真に巨大な横顔が …… 森の木の陰影が顔に見えた錯覚か
〇 YouTubeのヤバい写真が流れる謎のチャンネル『1945日本国』…… 昭和の犯罪事件の本物の捜査資料や報道写真をアップしていると思われる
・ニューハーフがトラックに轢かれる有名な GIF画像のその後 …… ブラジルで起きた本当の事故映像だが死亡する程でなかった可能性が高い
6月
〇兵庫県の自殺の名所「チョコビル」の屋上にある穴の噂 …… かつて古墳群のあった土地全体で飛び降りが多いのだが屋上の穴は無い
〇福島の妖怪「マンモガイガイ」とは? …… お化けのことを「あんもけっけ」と言う福島方言の聞き間違いか
〇1994年のアニメ『花子さんがきた!!』の怪人トンカラトンの起源 …… 制作スタッフの誰かの故郷の伝承(九州?)が起源らしい
・ホームページが一風変わった「目覚めてしまったおかき屋さん」…… 5代目社長が「目覚めた」が、経営と味は確かで社員への強要もない
〇史上最悪のサイト「クラブきっず」事件 …… 当時現役の小学校教師が管理していたサイトで大問題になった
・Yahoo オークションで内装が血まみれの日産シーマが出品されていた? …… 内装工事の失敗による糊の跡で事故車両ではない
〇1983~84年に起きた「東京赤坂二丁目怪音事件」の謎 …… 噂のアメリカ大使館(赤坂一丁目)でなく二丁目の地下に原因があった?
・2012年に千葉県内で出回っていた謎のチラシ「ジャイアンチャリティコンサート」…… 脱法ハーブパーティの開催を知らせるものだった
〇ニコニコ動画生中継で起きた心霊現象「消えた仮面」…… パソコンディスプレイの前にあった物の影が仮面のように見えた錯覚か
・2022年に出典不明のため Wikipediaから削除された世界最小の単位「涅槃寂静」…… 2002年まで存在していなかった可能性が高い
・恐怖画像『ジェフ・ザ・キラー』の正体を追う4 …… 2004年4月に話題になったネットアイドル真理子の動画が元である可能性が浮上
・中学校の社会科の教科書に心霊写真が? …… 1970年の水俣病原告団の座り込みで、患者の写真を拡大した看板が写り込んだもの
7月
・千原ジュニアの話「地元の人が語りたがらない学校行事『飢餓訓練』」…… 戦時中から1990年代まで行われていた奄美大島の慣習
〇哀愁のある有名なコピペ『飯盒炊爨AV 』の由来となったAV とは1 …… 設定の同じ作品はあるが全く同一の会話がある作品は未発見
・映像が全く出回っていない1985年制作のタツノコプロ版アニメ『こち亀』…… イベント上映のみでソフト化もされていない可能性が高い
・『あなたの知らない世界』の廃病院中継で映り込んだ男の顔 …… 神奈川県の相模外科病院跡の中継らしいが映像が残っておらず
・メルカリに銃痕のような傷のついたトヨタセルシオが出品されていた …… 銃痕でなく人の手で破壊された盗難戻り車両
・都市伝説「便秘で死亡した女性の解剖写真」…… 1998年に実際に起きた事故の医学論文の掲載画像がネット上に流出した
〇実在していた呪いのサイト『 niceday-fineday』2 …… 管理人から連絡があり、「ネット上のお化け屋敷」を意識して制作したとのこと
・大島てる2 入居者が相次いで自殺か行方不明になっている物件 …… 物件の内情に詳しい人物が誹謗中傷のためにデマを投稿している
〇アパートのトイレの配管を改造して他人の排泄物を入手していたヤバいサイト『ゲ〇日記』…… 2002~05年に存在しており信憑性が高い
・ネット上で有名な『混浴心霊写真』は本物か …… 2007年頃にエロサイト上で出回っていたスパム広告の写真を加工したもの
・都市伝説「熱中症で発狂」は本当か? …… 1926年から日射病(熱中症)の症状のひとつとして発狂を報道する記事はあった
≪調査隊≫謎の映像『Blank room soup』2 …… RayRay の公式アカウントで『Blank room soup』が宣伝されていた
8月
・YouTubeのヤバい写真が流れる謎のチャンネル『1945日本国』2 …… 1940年代の実在の事件を元にしているが不正確な記述もある
〇YouTubeのヤバい写真が流れる謎のチャンネル『1945日本国』3 …… 『死刑無期刑刑事事件判決集 第56号』を元に動画を制作していた
〇都市伝説「拷問が行われる部屋があったラブホテル『アエナブランカ』」…… 新風俗営業法の規制逃れのために SMルームを登記しなかった
・ネット上に出回っている写真『車内で日本刀を抜く男』…… カーセックス盗撮写真のゴルフクラブを日本刀にすり替えたコラ画像
≪調査隊≫『探偵!ナイトスクープ』1 謎のビニール紐2 …… 地元では有名な知的障害のある女性が目印のために結びつけていた
≪調査隊≫埼玉県のマンション「 Vシティ草加」の敷地内に残り続けている廃墟2 …… 吉岡家の伝説に限らず草加市ではむじな伝承が多い
≪調査隊≫エリサ=ラム怪死事件2 …… 異常に見える行動は廊下の鏡を意識したものであり、閉じないエレベーターも操作によるものだった
≪調査隊≫日本人形の髪の毛は本当に伸びるのか? …… 糊や髪の毛の劣化により抜けたものが伸びているように見えたのがほとんどの原因
≪調査隊≫千葉県成田市大栄町のヤバ過ぎる心霊スポット「地蔵ヶ原の十三塚」…… 付近の延命地蔵尊と「びった塚」の伝承が誇張されたもの
10月
〇深夜に走っていたボロボロの幽霊バス …… 廃業したバス会社の車両を修理業者が回送していた
・2004年「新潟県中越地震」の救助活動に関する「即死した母親が我が子を救った」不思議な噂 …… 子どもの声を女性と聞き間違えた誤報か
〇「タイ 宴」で検索すると出てくる異様な死体解体写真の謎 …… 一時的に土葬した無縁仏を掘り起こして改葬する宗教儀式「ランパチャ」
・東京浜離宮水堀に浮かんでいた UFO1 …… 1980年代中期~2000年代後期に停泊していた個人蔵の救護用ボートか
・詳細不明のヤバい動画『カンフー 道場破り』…… 1984年に実際に起きた暴行事件の録画映像だが被害者は死亡していない
〇 YouTubeにアップされている「不倫女性焼身自殺録音テープ」は本物か …… 1989年に実際に起きた現場で録音された本物
・未解決ネタ「渋谷の謎のゲームの女」…… 2019年8月に渋谷ツタヤ前で段ボールを抱えていた女だが、類似目撃例はあるものの詳細不明
〇未解決ネタ「断崖絶壁に吊るされた雑誌」…… 岐阜県八百津町の断崖で旧道は近くにあるが吊るす理由が一切不明
〇2001年「福岡県大刀洗町城山公園小六男児同級生殺害未遂事件」と情報が符号する怪談 …… 事件の事情に詳しい人間が投稿したと思われる


 ……いや~、終わりません、終わりません!! 
 あと半年分くらいの動画が残っておる! 私がこうやってえっちらおっちら過去動画を追っている今日あたりにも、またTHE つぶろサマでは新たなる謎への挑戦が。今もう、総動画本数はゆうに1500本の大台を超えちゃった! ほんと、毎日1動画って、どんだけ労力と知的欲求が無尽蔵なのだ!?
 念のために言っておきますが、上のリストの2023年9月にタイトルが無いのは、あくまでわたくし的にグッとくる回が残念ながら無かったというだけでありまして、ほぼ毎日動画が投稿されているというペースは変わっておりません。そんな9月だって、別に動画のクオリティが良くないとかいうことじゃ全然ないと思いますよ。とにかく私、ネットの闇とかゲーム関連が不得手でして……

 今回で動画リストをおしまいにしたかったのですが、あと半年分をひかえる時点で、こんなにおもしろネタがたまってしまいましたので、リスト編纂はいったんここで中断しまして、次回こそリストをおしまいにして、ついでに私的雑感なぞをつづりたいと思います。

 THE つぶろ、動画を追えば追うほど面白いチャンネルです。投稿内容によっては、非常に闇が深くドギツイものもありますので全ての動画を他人さまにお勧めすることはできないのですが、やはりTHE つぶろを運営されているお二人の捜査能力と品性の高さもさることながら、それに呼応して世界から続々と集まる「無名の賢人たち」の頼もしさも、回を追うごとに存在感をグイグイ増してくれるのが、まるで『南総里見八犬伝』か『三国志演義』のような長編大河ロマン小説を読んでいるようでものすごいです。最初は投稿者だけの努力でまわっていたものが、徐々にそれに感応した視聴者からの「これって、あれじゃない?」という助言が参集してきて、あたかも、ほんわかわたあめの如く世界全方位のミステリーに挑戦できうるクラウドな知になっていくというダイナミズム! ほんとすごい、このチャンネル!!

 当然ながら、情報収集を目的に作成されている回も多いので、取り扱った全ての謎が解決するというわけでもないのですが、半年か1年くらい経って忘れた頃に突然解決するという流れもよくあるので、これが YouTubeチャンネルの、TV 番組にはなかなかない強みなのではないでしょうか。最近のTV 番組もアーカイブ放送が見やすくなってはいるのでしょうが、過去動画をパパッと見られるスピード感はありませんよね。お金がかかることもあるし。

 にしても、THE つぶろさんは1500本動画があるので、アーカイブの検索もひと苦労なんですけどね……
 ほんと、このチャンネルは無数の知を集めて暗黒怪獣バキューモンのごとく膨れ上がり、一体これからどうなっていくのでありましょうか。個人的には、このままひっそりと知る人ぞ知る知的秘境でいてほしいのですが。

 さぁ、もうちょっとで追いつくぞ~!
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ヒッチコック meets 赤川次郎チック少女冒険譚!? ~映画『第3逃亡者』~

2024年06月02日 23時10分13秒 | ふつうじゃない映画
 みなさま、どうもこんばんは! そうだいでございます~。週末いかがお過ごしでしょうか。明日からまた月曜日! ひえ~。
 いよいよ私の住む山形も雨のお天気が増えてきまして、梅雨入りももうすぐかな、という感じになってまいりました。とは言っても、まだまだ先かな。キュウリ、キュウリ! うちの食卓のどこかに必ずキュウリが顔を出す季節がやって来ます……キュウリが嫌いじゃなくてほんとに良かった。
 キュウリって、食べるのが平気な人から見たら、そのまんまでも漬け物にしてもサラダに加えても、何にでも応用が利く素晴らしい食材ですよね。やみつきキュウリ最高!
 しかし、そんな万能選手なキュウリでも、嫌いな人はその強い「青臭さ」が苦手なので、どの料理に参加しても必ずその存在感を隠さず発揮してしまうところがたまらなく嫌なのだそうです。確かにキュウリは、トマトやナスほど「生だった時代の自分を消す」ことはできませんよね。頑固一徹というか、自分を貫くというか。

 ということで今回は、どのジャンルの作品を撮影しても、自身の色やセンスが隠しようもなく見えてしまうヒッチコック監督の諸作の中でも、特に「青春の青臭さ」のただよう傑作を……もう、何も言わないで! 強引なのは私が一番知ってるから。助けてキューちゃん!!


映画『第3逃亡者』(1937年11月公開 84分 イギリス)
 『第3逃亡者(だいさんとうぼうしゃ)』 (原題:Young and Innocent)は、イギリスのサスペンス映画。イギリスの推理小説家ジョセフィン=テイ(1896~1952年)による、スコットランド・ヤードのグラント警部を主人公とする小説シリーズの第2長編『ロウソクのために一シリングを』(1936年)の映画化作品である。 ただし、本作での真犯人は、原作小説とは異なる人物に設定されている。

 本作の見どころとして、クライマックスシーンにおけるクレーンを使った大がかりな移動撮影によって、真犯人の居場所を観客にだけ先に明示する約70秒間のワンカット撮影シーンが挙げられる。
 ヒッチコック監督は本編開始15分34秒、裁判所前で小さなカメラを抱えた記者の役で出演している。


あらすじ
 ある朝の海岸で、水着姿の映画女優クリスティーン=クレイの遺体を偶然発見した青年ロバート=ティズダルは、殺人犯と誤解されて逮捕されてしまうが逃亡し、警察に追われながらも、警察署長の娘エリカの助けを借りながら真犯人を探し出して自らの潔白を証明しようと奮闘する。

おもなキャスティング
エリカ=バーゴイン    …… ノヴァ=ピルビーム(18歳)
ロバート=ティズダル   …… デリック=デ・マーニー(31歳)
バーゴイン署長      …… パーシー=マーモント(54歳)
エリカの叔母マーガレット …… メアリー=クレア(45歳)
エリカの叔父ベイジル   …… ベイジル=ラドフォード(40歳)
ケント警部補       …… ジョン=ロングデン(37歳)
ウィル爺さん       …… エドワード=リグビー(58歳)
男            …… ジョージ=カーゾン(39歳)
クリスティーン=クレイ  …… パメラ=カルメ(?歳)

おもなスタッフ
監督 …… アルフレッド=ヒッチコック(38歳)
脚本 …… チャールズ=ベネット(38歳)、エドウィン=グリーンウッド(42歳)、アンソニー=アームストロング(40歳)、ジェラルド=サヴォリ(28歳)、アルマ=レヴィル(38歳)
製作 …… エドワード=ブラック(37歳)
音楽 …… ルイス=レヴィ(43歳)
撮影 …… バーナード=ノウルズ(37歳)
編集 …… チャールズ=フレンド(28歳)
制作 …… ゴーモン・ブリティッシュ映画社


 ということでありまして、今回はイギリス時代のヒッチコック監督の手腕もいよいよピークに近づいてきた、監督第21作の登場でありんす。
 作品の内容に関するつれづれは、いつものように後半の視聴メモにまとめましたので総論から言いますと、この作品は全体的に非常にコメディチックでライトな雰囲気でありながらも、随所でヒッチコック監督の専売特許である「細かいカットの切り換えしによるスピーディな映像」が楽しめるハイクオリティな娯楽作となっております。

 この作品、邦題が『第3逃亡者』ということで、『三十九夜』(1935年)みたいに主人公がヒーヒー言いながら逃亡するサスペンスなのかなと思われる方もいるかも知れないのですが、原題を直訳すると『若者と子ども』ということで、青年ロバートと18歳の少女エリカの2人が奇妙な逃走劇を繰り広げながらも、ロバートにおっかぶせられた殺人容疑者の疑いを晴らすべく真犯人を追うという愉快痛快な冒険スリラーになっているのです。
 しかも、2人のうち実質的な主人公となるのは少女エリカのほうで、裁判所から逃走してお尋ね者となっているロバートに変わって活躍する場面が非常に多く、事件解決後のラストカットも彼女の笑顔になっているので、まるであの、薬師丸ひろ子あたりが主人公となって1980年代前半に大ブームとなった角川アイドル映画群、もしくは NHK-FMのラジオドラマシリーズ『青春アドベンチャー』や NHK教育(当時)の「少年ドラマシリーズ」 をほうふつとさせるジュブナイル映画の先駆け的傑作なんですね。カイ……カン♡

 エリカを演じたノヴァ=ピルビームさんは、正面から見た顔こそ、眉毛と目つきがきりっとしていて実年齢以上に大人びた雰囲気はあるのですが、ロバートたち大人の男どもと並ぶといかにも体格が小さくて華奢ですし、横顔も意外とデコッぱちなラインを描いているので、人並外れて義侠心のあるだけのフツーの18歳の少女が青年の冤罪を証明するという、赤川次郎作品にありそうな、大人顔負けの子どもが大活躍する作品に仕上がっております。
 作中のノヴァさんの凛としたたたずまいは非常にかっちょよく、薬師丸ひろ子というよりはむしろジブリアニメのヒロインのようなりりしさに満ちているのですが、たとえば警察の追手がすぐそこまで迫ってきているのに、冷静に愛車のセダンのフロントグリルにささったクランク棒を半回転させて、ノーミスでブルンッとエンジンを起動させて運転席に飛び乗る一連の仕草なんか、もうこれに惚れずになにに惚れるんだっていう漢前感ですよね。あれ、一発で起動させるのそうとう難しいんじゃないの!? かっけぇ!!

 いや~、こういう映画が、第二次世界大戦のおよそ2年も前に作られてたんだねぇ。さすがはイギリス、文化レベルが高い。

 ただ、実はここまで少女エリカが前に出てクライマックスまで活躍するのは、毎度おなじみヒッチコック監督による映画化の際の完全オリジナルな改変なのでありまして、本作の原作となった推理小説『ロウソクのために一シリングを』(1936年)では、エリカの活躍はせいぜい物語の中盤程までとなっており、ロバートの出番もさらに少なく、あくまでも女優殺人事件の捜査の中で発生したエピソードのひとつとしてしか語られていないのです。ヒッチコック監督、ふくらましたねぇ~!!
 具体的に言うと原作小説『ロウソク……』は、序盤でロバートが女優殺害の濡れ衣を着せられる展開や、彼を助けるために警察署長の娘エリカが冤罪の証拠となる「ロバートのコート」を捜すという流れこそ同じではあるのですが、女優が生前に残した遺言書にロバートのことは全く書かれておらず、映画版には一人も登場しなかった女優の親族・関係者たちが捜査線上に容疑者としてあがっていくというように物語が分岐していきます。つまり、わりと早めにエリカの奮闘によってロバートが真犯人でないことが判明して、その後は女優の周辺の人物たちの中から真犯人を探し当てていくという、非常にまっとうな本格ミステリーにシフトしていくのが原作小説なんですね。

 ここで特記しておきたいのですが、原作小説『ロウソク……』も、映画版とは全く違うベクトルでめちゃくちゃ面白い推理小説となっております! ハヤカワ・ポケットミステリから邦訳が出ているのですが、1930年代にこういう真犯人の設定してる作品があったんだ……と私はビックリしました。もちろん、映画版の真犯人とはまるで別の人物です。
 これ、ふつうにデイヴィッド=スーシェの「名探偵ポワロ」シリーズみたいに原作に忠実に映像化しても面白いと思いますよ。ただ、本作の名探偵であるグラント警部がいまいちパッとしないんだよなぁ。原作でロバートをみすみす逃亡させてたのもこの人のせいだし。
 でも、この原作の真犯人像って、好きですねぇ。スーシェ版の「名探偵ポワロ」の中にも、非常に似たテイストの犯人が出てくる傑作があるのですが、それも私、大好きなんだよなぁ。いいですよね、こういう人間の心の闇が生む犯罪……

 意外とダークな味わいの原作小説と違って、ヒッチコックが映像化した映画版はきわめて明朗快活な娯楽作で、例えて言うのならば、日本の江戸川乱歩の大人向け通俗探偵小説『猟奇の果』(1930年)とか『影男』(1955年)が原作小説『ロウソク……』側で、子ども向け探偵小説の『怪人二十面相』(1936年)とか『超人ニコラ』(1962年)が映画版側、ということになるでしょうか。要するに、完全オリジナルではないのですが、原作の中の「エリカの大冒険!」パートのみの抽出してひとつの作品にまで拡大したのが映画『第3逃亡者』なわけなのです。

 あ~そうか、イギリスで本作が出ていたのとほぼ同時期に、日本でも『怪人二十面相』を皮切りとする大乱歩の「少年探偵団シリーズ」も産声をあげていたんですなぁ。なんか、浅からぬ縁を感じますな。映画好きの乱歩だったらイギリスで『 Young and Innocent』という映画が出たという情報は絶対に掴んでいたでしょうけど、『怪人二十面相』の連載開始のほうが先なんですよね。イギリスに天才あらば、極東にも天才あり!


 本作『第3逃亡者』は、ちょっとお堅いタイトルからは想像できないような、肩の力を抜いて楽しむこともできるファミリー向けな娯楽作となっております。ただし、ちょっとしたアクションにも細かなカットの切り換えしを入れて臨場感を持たせる編集の妙や、グランドホテルのロビーとミュージックホールの実寸大セットを壁ぶち抜きで製作し、そこを縦横無尽に動くクレーンを投入して70秒間長回しのカットを創出するカメラワークなど、当時のヒッチコックが全力をかけて本気で作った意欲作であることは間違いありません。エンターテイナーとしてのヒッチコックの、当時の時点での最高の仕事を堪能できる傑作になっていると思います。
 唯一の瑕疵というのならば、作中の警察の方々がびっくりするくらいに無能ぞろいなところくらいですかね……『ルパン三世』第2シリーズの警察か君たちは!? ま、作品の流れ上、いたしかたないよね。有能だったらロバート速攻でとっつかまって話が続かないから。

 まぁ、その「ヒッチコック史上最高」の記録は、このすぐ後の次作でいとも軽々と更新されちゃうんですけどね! すげーなヒッチコック!!


≪いつもの視聴メモ~!≫
・ジャズ調のアップテンポな音楽で始まり、開幕の嵐吹きすさぶ夜のシーンから、女優を殺害する真犯人の顔と、彼が女優の夫であること、そしてその犯行動機までもが矢継ぎ早に観客に提示されるというスピード感がハンパない。でも、原作小説の真犯人とは全くの別人なので問題ナシ!
・嵐の去った翌朝、快晴のドーバー海峡の砂浜に打ち上げられた女優の遺体! モノクロではあるのだが海岸の情景は非常に美しく撮影されていて、もともとヒッチコック監督が鉄道と同じくらいに海や船の撮影も好きであることを思い出させてくれる(『マンクスマン』や『リッチ・アンド・ストレンジ』など)。
・女優の遺体を最初に発見したがためにいろいろひどい目に遭ってしまう主人公ロバート。高身長のハンサムというわけではないのだが、マイケル=J・フォックスやオリエンタルラジオの藤森さんみたいな、人たらしっぽくて憎めない顔立ちの青年である。いいキャスティング!
・ロバートの次に遺体を発見して恐れおののく女性2人の表情に、空を舞うカモメのスローモーション映像をかぶせ、遺体を直接撮影しないところが非常にお上品。
・ちゃんと警察に通報したのに、「第一発見者こそ怪しい」みたいな雰囲気だけで身柄を確保されてしまうロバート。ひどすぎ……哀しいけど、これ、ヒッチコック映画なのよね。理屈よりもテンポ重視!
・被害者と親しかったことと、遺体のそばにあったベルトがロバートのオーバーコートから取れたものらしいことを警察が調べ上げ、ロバートの旗色は俄然悪くなってしまう。本作でのキーワードとなるこのベルトは、原作小説ではコートのボタンである。もちろん、映画として見栄えするという理由からの変更だと思われる。
・ロバートを追求する理知的なケント警部補を演じるのは、『ゆすり』(1929年)以来ヒッチコック作品にちょいちょい出演しているジョン=ロングデン。刑事役が似合う。
・殺された女優が生前、ロバートに資産1200ポンドを譲る旨の遺言書を残していたと知り、ロバートはプレッシャーのあまり失神してしまう。ちなみに1937年当時の1200ポンドの価値は、現在の日本円にして約1200万円である。う~ん、そんなに多くもないのが逆に生々しい!
・失神したロバートを、刑事そっちのけで率先して介抱する本作のヒロイン・エリカ! 演じるのはヒッチコック作品『暗殺者の家』(1934年)で子役を演じていたノヴァ=ピルビーム18歳。本作のタイトルでは身もフタもなく「子ども」と評されている彼女だが、のっけから義侠心にあふれた漢気あふれる勇姿を見せてくれる。顔立ちこそ正統派な美人ではないものの、いかにも刑事の娘らしくきりっとしたまゆ毛と鋭い眼光がすばらしい。親父さんのバーゴイン署長のほうが、逆にのほほんとした顔なんですよね。
・冒頭の真犯人といい失神したロバートといい、男どもが女優さんがたに、これでもかというほどにビンタされるくだりが頻繁に出る。ヒッチコック監督、ご趣味がもれてます!
・ロバートの顔を見て「人殺しをするような顔じゃない。」とつぶやくエリカ。それを聞いた刑事が「見た目で判断しちゃいけませんぜ。」と諭すと、何を勘違いしたのかエリカは冷たい表情で「べっ、別にタイプだからってかばったわけじゃないんだから!」と答える。お~い、ツンデレ! 第二次世界大戦前のツンデレ発見!! しかもこれ、原作小説にもがっつりあるくだり!
・そうやってエリカがツンとなったかと思えば、エリカのおかげで失神から目が覚めたロバートも、開口一番「し、失神なんかしてないぞ。」と意味不明な意地を張って応戦する。相性よすぎだろ、この2人。ちなみに、こっちのロバートの返し言葉は原作には無い。脚本、グッジョブ!
・登場してすぐに立ちまくったキャラクターを発揮するエリカだが、さらには警察署長の令嬢で車の運転もお手の物というおてんば娘でもあった。いや~、このへんのつるべ打ち感、21世紀でも全然通用する軽快なテンポである。映画というよりはテレビドラマっぽいけど。
・さほど物語には絡んでこないのだが、裁判がかなり不利な状況なのに他人事のようにのんびり天気の話などをして、ロバートが大丈夫なのかと尋ねると「今すぐ前金払える?」と外道なことをぬかす高田純次みたいな弁護士のおっちゃんがいい感じにひどい。そりゃロバートも早々に見切りをつけるわ!
・裁判所の喧騒にまぎれてみごと脱走に成功するロバート。ここでの、ちょっとした廊下の混みあいにまぎれた失踪からさざ波のように「被告が脱走したってよ!」の伝言ゲームが始まり、最終的に裁判所から全員が逃げ出してパトカーがバンバン出動する大騒ぎに発展するピタゴラスイッチな流れが非常に丁寧で面白い。その中にちっちゃなカメラを抱えた記者の役で、迷惑顔のヒッチコック監督自身がいるのも粋である。
・本作ではエリカの愛車として、当時としても古いと思われるオープン形式のセダン車が大活躍するのだが、いちいちフロントグリルに付けたクランク棒(スターティングハンドル)を回してエンジンを起動させなきゃいけないのが古式ゆかしい。ジブリアニメの『紅の豚』か! このコツのいる力仕事を自分でやれるっていうのが、エリカ18歳のすごいとこなんだな! 余談だが、1930年代の当時でも車内からの操作で電力によってエンジンを起動させる機能(英語でセルフスターター。日本でよく使われる「セルモーター」は和製英語)はすでに普及しており、クランク棒を使って起動させるエリカの姿は周囲からそうとう珍しく見られていたと思われる。今で言うと、うら若い娘さんがマニュアル車を運転しているようなものだろうか。かっこいいな!
・このエリカの愛車についてなのだが、実は原作小説での愛車(「ティニー」という愛称もある)は、イギリスの自動車メーカー「モーリス」の2ドア小型車である「初代モーリス・マイナー」(1928~34年製造 車長3m、重量700kg、最高時速88km)であると推定され、映画に登場するような立派な図体のセダン車(おそらく同じモーリスが1919~26年に製造していた「2代目モーリス・カウリー」と思われる)ではない。また、映画で描写されるようにクランク棒で人力起動させることもなく、普通に車内からの電力起動でエンジンをかけている。要するに、原作版のエリカは若い女性が一人で使用する車として機能的にも価格的にも順当な小型中古車を使っているのに、映画版のエリカはわざわざロープを使ってレバーを引きながら人力起動させなければいけない(=電力起動が故障している)ほどに古くて無駄にでかいセダン車を使っているのである。これはつまり、ロバートがエリカの車のトランクに隠れて裁判所からの逃走に成功するという映画オリジナルの展開のために小型車でなくセダン車にしたという理由もあるし、何よりも「画的に面白い」という動機から原作以上におんぼろな車種にしたものと思われる。いや~ヒッチコック監督、この頑ななまでの「原作がどうか知らんが、映画的には絶対にこっちの方が面白い」と確信した時のためらいの無いアレンジが微に入り細に穿ちまくりである。こまけ~!!
・中古車をはさんでのエリカとロバートの奇妙な出逢いから、2人がロバートの無実を証明するコートを探し求めるドラマチックな逃避行の始まりとなるのだが、原作小説での2人の接触はほんの数分間のみで、ロバートはエリカを巻き込むまいと早々に姿を消し、彼の無実を確信したエリカが単独でコートを探すという流れとなる。まぁそっちのほうが現実的なのだが、どちらのバージョンでもエリカが人並外れた義侠心の持ち主であることに変わりはない。むしろ原作版のエリカは行きがかり上の必要から、スカートの下に履いていたブルマの内側に刺繍された自分の名前を、初対面の中年男性にめくって見せるという映画版以上にきわどい行動もとっていて、ほんと、勇気と無謀が紙一重の大冒険をしてしまうのである。さすがにこれ、当時の映画界では映像化不可能だったろうなぁ。
・宿なしの連中がたむろする定食屋「トムの帽子」に単独潜入するエリカに、亭主がうっかり見慣れないコートを着たウィル爺さんの話をしてしまい、ウィル爺さんをかばおうとする連中と正直に話そうとするトラックの運ちゃん達とで壮絶な殴り合いに発展してしまう。ここ、やっぱり殴り合いの部分が映画オリジナルなので、別にウィル爺さんから金をもらってるわけでもないのに殴り合いまでする理由がよくわからない。まぁ、それだけ仲間意識の強いホームレスさんなんだな、ということで……
・展開的には強引なのだが、この客同士の大乱闘のおかげで、巻き添えをくらって流血してまでもエリカを救おうとしたロバートの勇気が証明される重要なシーンとなったので、映画的にはオールオッケー! でも、あのドリフのコントみたいな噴水のくだり、2人ともよく笑わずに演技できたな……
・ロバートの「君の左折に感謝するよ。」というセリフも粋だが、その後に並木道をさっそうと去って行くロバートの後ろ姿も、後年の歴史的名画『第三の男』(1949年)の構図を先取りしているようで小憎らしい。そしてそこからの「続くんかーい!」な流れは、ユーモアセンスが冴えわたる流れである。
・2人が忍んでエリカの叔父叔母の邸宅に寄ったところ運悪く誕生パーティの真っ最中で、しかも詮索好きな叔母とお人よしすぎる叔父のために予想外の足止めをくらうという展開が観ていてハラハラするわけだが、別にその時点で警察が『三十九夜』のように全力で2人を追っているわけでもないので、いまひとつ緊張感がわかないのが惜しい。ロバートの人相が知れ渡るテレビニュースみたいなツールも無いしね……のんびりしたもんです。
・どうやら仲が良くないらしい妹マーガレットからのチクリ電話によって、娘エリカに変な男が同行していることを知るバーゴイン署長。最初こそ「まぁあいつも年頃だし、彼氏の一人や二人……」と余裕の表情だったが、なんとその相手がくだんの逃亡者らしいと聞いて愕然としてしまう。とは言っても、愛娘が殺人犯の恐れのある男と2人きりでいるという絶望的状況にぶち当たった割には、的確に捜査網を張って2人を確保寸前まで追い詰めているので署長は意外と冷静である。さすが父娘、エリカに対して「そう簡単におっ死ぬようなやつじゃないよ、あいつは。」という堅い信頼があるのであろうか。
・本作は原題通りにロバートとエリカの逃避行が中心の物語となるので、運転席と助手席に並ぶ2人を映す「スクリーンプロセス」撮影のシーンが非常に多い。だが、さすがヒッチコック監督というべきか、バーゴイン署長の張った検問を抜けた時に慌てふためく警察官たちを背景に映すなど、合成前の映像にもしっかり演技をつけているので、観ていて飽きない。それにしても、2人が突破した検問のお巡りさんは、非常時にすぐ出動できるパトカーも用意していなかったのか……役に立たなすぎ!
・ほんとに一瞬しか使われないのだが、捜査網から逃れた2人が潜入した地方駅の車両倉庫を遠景で映すために、町並みから線路から、そこを走る汽車や自動車、果てはロバートとエリカの人形までをもミニチュアサイズで制作して撮影する力の入れようがものすごい。ふつうの特撮映画だったら、そういうのが出てきたらのちのちハデに破壊されるのかとか思うじゃん? それが、そんなスペクタクルほとんどないんだなぁ! 監督、ロケ撮影めんどくさかった!?
・浮浪者用の安宿「ノビーの宿」で、問題のウィル爺さんを待つロバート。逃避行でたまった疲労からついつい熟睡してしまい、朝に起きるとウィル爺さん用のベッドには誰かが寝ていた跡が! ここでの「人間の形にへこんだベッドの跡」という小道具が、のちのちの『サイコ』(1960年)のあるカットを彷彿とさせる。こんなに昔から使ってたキーワードだったんだなぁ。
・念願のウィル爺さんを確保したロバートは、エリカの車で駅から脱出するが、その時にミニチュアと実景を非常にうまく組み合わせたカーアクション撮影で、パトカーに追われる緊迫感を見事に演出している。ここ、横転クラッシュや爆発炎上が当たり前の昨今のハデハデなカーアクションから見ればかわいらしいことこの上ないひと幕なのだが、0コンマ何秒で切り換わるカット割りがスピーディなので、21世紀の現在でも固唾を呑んで楽しめる場面になっている。やっぱ、映像作品はカット割りが命!
・とっつかまえたウィル爺さんから、ベルトの無いロバートのコートをくれた謎の男の存在を聞き出し、2人はついに女優殺害の真犯人にたどり着く。この、ロバート、エリカとは別の「第3の逃亡者」の出現で邦題の伏線回収となるわけだが、ここまでかれこれ約1時間、真犯人の動向はまったく語られていないので、やっぱり邦題はいまいちピンとこない感がある。そもそも、真犯人は逃亡してねぇし! 薬のみながら頑張って働いてるし!
・駅からなんとか逃れたものの、結局エリカは逃げ込んだ炭坑で警察に確保され、ロバートとは離れ離れになる。ここも、単に別れたというだけでなく、1分そこそこの場面なのにかなり大規模な炭坑崩落の実寸大アクションを入れてくるのが贅沢きわまりない。エリカの愛車と愛犬、お疲れさまでした。
・ロバートと別れて警察の厳重な取り調べを受け、失意のていとなるエリカ。原作のエリカはバーゴイン署長の一人娘なのだが、映画版では4人の弟たちがいる設定となっている。普段は元気でうるさいのに、お父さんにこってりしぼられたエリカを気遣いシュンとなってしまう弟たちの様子がほほえましい。
・1~2日の逃避行の中でロバートが犯人でないことを確信したエリカだったが、逃亡犯を手助けした上に頑固にかばおうとする娘を深刻に思ったバーゴイン署長は、自身の辞表さえをも用意してロバート捜索に血道をあげる。まぁ、はたから見たらエリカの言動はストックホルム症候群以外の何者でもないだろうしね……
・しかし、バーゴイン署長が自身のバッジも懸けて捜索しているというのに、他ならぬ署長の邸宅に侵入してまんまとエリカに再会しおおせるロバートの逃亡スキルがハンパじゃない。1人で逃げてんじゃないよ、ヨボヨボのウィル爺さんも一緒なんだぜ!? ジャパンのニンジャもビックリな隠密行動術だ。
・真犯人につながるたった一つのキーアイテム「グランドホテルのマッチ」をつかみ取り、物語はついに伝説の「約70秒間のワンカット撮影」をまじえたクライマックスへ! そこで単に盛り上がる音楽を流すというだけでなく、演奏するバンドの中に……という演出が非常に巧妙でニクい。『暗殺者の家』でのオーケストラ公演中の殺人に並ぶアイデアだと思う。もちろん、こんな展開は原作小説のどこにもない。
・グランドホテルの場面は、観客がすでに冒頭で真犯人が誰なのかを知っているので、『刑事コロンボ』のように真犯人が追い詰められるハラハラを中心に描く倒叙ものミステリーのような楽しみ方となる。ただ正直言って、本作に名探偵のようなポジションの万能キャラがいないので(原作小説にはいるのに……)理論で真犯人が責め立てられる醍醐味はなく、エリカのいつもの義侠心によって「たまたま」真犯人が見つかるという結末なので爽快感はさほどないのだが、「天網恢恢疎にして漏らさず」といった因果応報なラスト、と言えるかもしれない。なによりも、捕まったことでホッとしたような朗らかな笑顔を浮かべる真犯人の表情が興味深い。結論:悪いことはしちゃダメ!!
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