長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

在りし日の名曲アルバム  鬼束ちひろ『眩暈/edge 』

2014年09月30日 10時01分48秒 | すきなひとたち
鬼束ちひろ『眩暈/ edge 』(2001年2月リリース 東芝EMI )

 『眩暈(めまい)/ edge 』は、鬼束ちひろ(当時20歳)の4thシングル。作詞・作曲は鬼束ちひろ、編曲は羽毛田丈史。1stアルバム『インソムニア』(翌3月リリース)の先行シングルとしてリリースされた初の両 A面シングル。デビューからちょうど1周年目にリリースされた。
 CD-EXTRA 仕様で、オリジナルのスクリーンセーバー、『シャイン』の TVスポット、『月光』のプロモーションビデオの一部、『 Cage 』の TVスポットが収録されている。
 オリコンウィークリーチャートで最高6位を記録した。

収録曲
1、『眩暈』(5分7秒)
 バラードで、『月光』と並ぶ代表曲とされる。「優れた歌唱と同時に、男女の間に潜む亀裂を、別れを切り出しかねている女の立場からモノローグする詞のユニークさによって広く同世代の共感を得ている。」という選考理由により、第43回日本レコード大賞作詩賞を受賞した。また、この楽曲で音楽番組に出演した際から裸足で歌うようになる。

2、『 edge 』(4分34秒)
・全国東映系公開映画『溺れる魚』(2001年2月 監督・堤幸彦)主題歌
 もともとはデビュー前に作られていた楽曲で、英語詞だったものを日本語詞に書き直している。プロモーションビデオは、堤幸彦の監督作品ということでも話題を呼んだ。堤はこの楽曲について「バランスを失って倒れる瞬間を捉えたような歌詞である。」とコメントしている。


 いよいよ本格的となった「羽毛田丈史ソロプロデュース体制」の始まりを告げる作品で、かつ、翌月に満を持してリリースされる初アルバムの先行シングルというかたちになっております。
 そして、「2曲ともあたたかい曲調」という、鬼束シングルにしては非常に珍しい構成も、この4thシングルが初めてなんですね。そんなにアゲアゲっていうわけでもないわけなんですが。

 ただ、例によって歌の中で語られる状況は微妙に本人(一人称の人物)の望みどおりにいっているのではないらしく、2曲とも本人が愛していると思われる「あなた」という存在が色濃く投影されているものであるのですが、すぐ近くにいるらしいその「あなた」当人の描写はかなりそっけなく、「あなた」にかんする想いのひとり語りが中心というかたちになっていますね。やっぱり「あたしの心象風景」か! この、他者を寄せつけない結界というか……A.T.フィールドが第14使徒ゼルエルなみに徹底してますねぇ。

 そうか、『眩暈』は一人称のほうから「あなた」に別れを告げようとしているからこそ、ここまで平安なメロディの中でやすらかに唄われている曲だったのか。「あなた」のことを忘れられない、「あなた」から逃れられないと告白している割には、『月光』ほどの感情の揺さぶりがないのは、それだけ一人称が成長したから?と考えていたのですが、「あなた」との別れのかたちが全く違うものだったからなんですね。

 それに、実際の歌詞世界の中に「あなた」が登場している、一人称の目の前に確かに「あなた」の「ひざ」「腕」「声」「背中」が存在しているという、これまでの作品史上初めての状況であるのに、一人称の思索がおもいっきり突っ走ってしまっているがために、その中に登場する「あなた」は明らかに実像ではない「予想される未来にまとわりついてくる」亡霊になってしまっているんですよね。
 ここ! 生きている者が生きてない「未来の亡霊」に押しのけられちゃっているという不可思議な逆転現象! これがおもしろいんですよねぇ。だからこそ、一人称は「あたし、なに考えてるんだろ?」と混乱して「眩暈」におちいるのではないのでしょうか。まったく本体の見えてこない、「ひざ」とか「腕」とか「背中」だけがフワフワした亡霊がうろつく観念ワールド。こわ~い。

 ただ、この錯乱っぷりを「考えすぎ!」とか「やっぱ不思議ちゃんは思考回路がちがうねぇ。別に今しあわせなんだからいいじゃないの。」と切り捨てるのは簡単ですが、こういう「目の前のものを見ていない状態」というか、「現在の平穏を観て未来の終わりを恐れる」感覚を、今まで生まれてこのかた一度も経験したことがないという幸福な人は、そうそういないでしょう。

 つまりこの『眩暈』のオリジナリティは、「女性からの別れ歌」という点だけにあるのではなく、男性だって無論のこと共感することのできる「未来へのおそれ」を明確にそのキャンバスにとらえきっているという、描写力の精密さにあると思うのです。確かに、相変わらず語っていることがあいまいで人間らしい他者が不在な作品世界ではあるのですが、「語る対象がボンヤリしているんだからしかたない」ということで、他のどの作品よりもボンヤリしていることに説得力のあるのが『眩暈』の世界なのである、という結論に達したのでありました。
 そうそう、『眩暈』はべつに「あなた」と別れることが前提にはなってないですもんね。別れる可能性がある未来のことを感じている段階なんですから。
 こういう、表面上はまったくなにも起きていない現実の中から、心もようのわずかなさざめきを見事にすくいあげて共感を呼ぶ作品に昇華させる、鬼束ちひろ20歳(当時)……末恐ろしい才能といわずにはおられないでしょう。それがいったい、どのような変遷を経て現在にいたるのか……人生はドラマよりも奇なり、ですねぇ!

 いっぽうの『 edge 』は、さすが初の両 A面シングルなだけはあるといいますか、非常にすてきな曲で、私個人は『眩暈』よりもこちらのほうが好きなくらいです。『眩暈』は歌詞世界は大好きなんですけど、間奏で唐突にケルト音楽っぽい笛の合いの手が入ったりして、全体的にあざとい印象があるんですよねぇ。無理に着飾って体裁をととのえたみたいなよそいき感があるんです。

 それに比べて『 edge 』は、前に出る派手さはないんですがリラックスしたやわらかさがあって、サビの部分でも鬼束さんがごくごく自然な流れで声量をあげている説得力があるような気がするんです。
 内容は、こちらこそが本格的に「あなた」との別れを経験した後のひとり語りになっているようなのですが、「行かないで」「あなたなしじゃ全て終わればいいのに」と告白しているのにも関わらず、曲調がまったく悲観的でなく、むしろ「あなた」がいない世界で生きていくために新生する決意を強く感じさせる、静かに熱い作品になっているのがすばらしいと思うんですよね。
 「片付いた部屋」と、(本人はどこかで生きているのだとしても)亡霊になった「あなた」が、まったく一人称を束縛する力を持っていない過去の遺物になっていることと、それをまるっと捨てていけるパワーを持つ一人称のカッコよさがきわだつ名作だと思います。

 まさに、『眩暈』の繊細さを持ち、『月光』の悲しみを経験したからこそ生まれた、『 edge 』の力強さ。いいですねぇ~。こういう、つながっていないようでつながっているほのかな関係が、羽毛田プロデュース時代の「あいまいな歌詞世界」を読み解く楽しみを豊かにしているのではないのでしょうか。深くしようと思えばいくらでも深掘りできる浅さ。失礼を承知の上で言わせていただけるのならば、鬼束さんがプロの作詞家になった、初めてのシングルだと思います。みごとに一皮むけました!

 さぁ、こういった感じで「浅いですが、なにか?」というたくましさを持ってきた鬼束さんの待望の1stアルバムが、4thシングルまでを世に出した時点でついに完成するわけなのです。どんなことになっているのでしょうか!?

 この時点で20歳か……若いねぇ~! 鬼束さんとほぼ同年の私も、若かったねェ。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

史上最大の決戦……プリキュア VS 東日本大震災!!  映画『プリキュアオールスターズ DX3』

2014年09月29日 23時13分42秒 | アニメらへん
映画『プリキュアオールスターズ DX3 未来にとどけ!世界をつなぐ☆虹色の花』(2011年3月19日公開 70分 東映)


 劇場版プリキュア第10作目記念作品。プリキュアシリーズの歴代作品のクロスオーバー作品『プリキュアオールスターズ DX 』シリーズ自体では3作目となり、『スイートプリキュア♪』にとってはスクリーンデビュー作にあたる。本作は「プリキュアオールスターズ三部作の最終作」とされている。
 『ハートキャッチプリキュア!』のキュアサンシャイン・キュアムーンライト、そして『スイートプリキュア♪』のキュアメロディ・キュアリズムが初登場し(ただし前作『 DX2』ではキュアムーンライトへの変身能力を失効中の月影ゆりと、キュアサンシャインに覚醒する前の明堂院いつきがセリフ無しで出演している)、合計21名のプリキュアが出演する。最終作ということもあり、オールスターズシリーズの集大成として歴代の劇場作品の世界やゲストの宿敵などを登場させ、「シリーズ史上最大のスケール」と謳われた。また、第1作と同様に歴代各シリーズの怪物もネガトーン以外すべて登場する。
 プリキュアたちは従来のパートナーと離れ離れにされ、ピンク、ブルー、イエローという3組に分かれて各劇場版作品の異世界に飛ばされてしまう展開となる。また、前作で当時の最新作『ハートキャッチプリキュア!』をメインにしていた展開とは異なり、「旅立ち」をテーマとして、今までは少なかった、プリキュアたちの各シリーズの垣根を超えた共演シーンが増えている。
 音楽は前作までとは異なり、佐藤直紀が単独で担当した。佐藤がプリキュアシリーズで音楽を担当するのは『 Yes!プリキュア5』シリーズ以来である。これまでの『 DX 』シリーズでは、佐藤の音源に関しては過去作品からの流用だったが、本作では歴代作品のモチーフを散りばめた新規楽曲が作曲され、収録は各パート別録りではなく同時録音で行われた(ただし、全てが新作楽曲というわけではなく、かつて担当していた過去作品からの流用曲も使用されている)。

 2011年3月14日には本作の完成披露試写会が、また公開初日の19日には舞台挨拶が予定されていたが、公開直前の3月11日に発生した東日本大震災による計画停電の影響で困難となり、いずれも中止となった(舞台挨拶は翌4月以降に延期)。また、災害を連想させることに配慮して20秒間のシーンをカットしての上映となったが、のちに同年7月に発売された DVD、BD ソフト商品では該当シーンは再編集されて復活している。この他、主題歌シングルとサウンドトラックの CDが発売延期になり、3月30日に開催される予定だった歴代プリキュア声優や各シリーズの主題歌を担当した歌手が出演するスペシャルコンサートも上演中止となった。
 東日本大震災の影響によって上映館の休館や営業時間短縮もあり国内映画興行全体の興行収入が落ち込んでいた中、2011年3月19・20日の初日2日間で興行収入は約1億3500万円、動員は約12万4000人となった。最終的に興行収入は10億2千万円に達し、観客動員数も過去最高の92万人超えを記録している。

 キャストの人数の都合上、プリキュアオールスターズ全員のセリフつきの出演は、本作が最後となった。『プリキュアオールスターズ DX 』シリーズは本作で終了したと明言されたが、翌年に新たな作品として『プリキュアオールスターズ NewStage 』と題された新作シリーズが公開されることが決定した。


あらすじ
 幼なじみである北条響と南野奏は、妖精のハミィと一緒にオープン初日の巨大ショッピングモールへやって来たが、来海えりか主催のファッションショーに乱入してしまう。
 そんな最中、突如として「おもちゃの国」や「デザート王国」といった別世界の建物や住人が出現し、さらには、かつてプリキュアたちを苦しめた数々の強敵が、「ブラックホール」の闇の力で蘇り、世界を繋ぐ奇跡の花「プリズムフラワー」を枯れさせて全世界を暗黒化させようと活動を始めた。
 敵の策によって異世界に飛ばされたプリキュア達は、いつものパートナーや仲間から引き離されてしまい、強敵達が作り出した世界にそれぞれ招かれてしまう。最初は息が合わず混乱し、苦戦するプリキュア達だったが、自分の仲間達を信じあう心を取り戻すと反撃を開始、全員元の世界へと帰還する。元のパートナー達と再会したプリキュア達は、強敵達をそれぞれ撃破するが、ついに真の敵ブラックホールが姿を現した。


おもな登場キャラクター
『ふたりはプリキュア / ふたりはプリキュア Max Heart 』より
美墨 なぎさ / キュアブラック …… 本名 陽子(32歳)
 ピンクチームとして行動。ムシバーンやサーロインが率いるザケンナー軍団と戦っていく。ピンクチームではリーダー格として真っ先に仲間たちに指示を下したが、人を指揮することに慣れておらず大雑把な言い回しをしたため、かえって皆を混乱させる。それでも、不屈の精神で仲間たちとともに状況を打開していく。

雪城 ほのか / キュアホワイト …… ゆかな(36歳)
 ブルーチームとして行動。魔女、フリーズンとフローズンが率いるデザトリアン軍団と戦っていく。新人プリキュアであるキュアリズムをリードし、知略の面でも活躍する。

九条 ひかり / シャイニールミナス …… 田中 理恵(32歳)
 イエローチームとして行動。トイマジンやサラマンダー男爵率いるウザイナー軍団と戦っていく。お菓子作り対決で活躍した。

『ふたりはプリキュア Splash Star 』より
日向 咲 / キュアブルーム / キュアブライト …… 樹元 オリエ(32歳)
 ピンクチームとして行動し、サーロインやホシイナー軍団と戦っていく。新人のキュアメロディをどんな状況下にあっても前向きに勇気づけた。

美翔 舞 / キュアイーグレット / キュアウィンディ …… 榎本 温子(31歳)
 ブルーチームとして行動し、魔女やザケンナー軍団と戦っていく。新人プリキュアのキュアリズムを手助けする役目が多かった。

『 Yes!プリキュア5 / Yes!プリキュア5GoGo!』より
夢原 のぞみ / キュアドリーム …… 三瓶 由布子(25歳)
 ピンクチームとして、ムシバーンやサーロインたちと戦っていく。持ち前の明るさで仲間たちを励まし、キュアメロディをうまく援護しながら目的地を目指した。

夏木 りん / キュアルージュ …… 竹内 順子(38歳)
 イエローチームとして行動し、トイマジンやコワイナー軍団と戦っていく。一部の仲間の奇抜な行動に対して慌ただしくツッコミを入れていた。当初はスゴロクに乗り気ではなかったが、状況を打開するために頭を切り替え、途中からは運動関係の試練で中心的に活躍する。

春日野 うらら / キュアレモネード 伊瀬 茉莉也(22歳)
 イエローチームとして行動し、ホシイナー・コワイナー軍団と戦っていく。持ち前の天然気質を発揮し、真っ先にスゴロクに参加した。現役アイドルとしてカラオケ勝負で活躍する。

秋元 こまち / キュアミント …… 永野 愛(36歳)
 ブルーチームとして行動し、フリーズンとフローズンと戦っていく。慣れない戦いをするキュアリズムをうまく援護した。

水無月 かれん / キュアアクア …… 前田 愛(35歳)
 ブルーチームとして行動し、持ち前の頭脳を駆使して魔女やザケンナー軍団と戦っていく。

ミルク / 美々野 くるみ / ミルキィローズ …… 仙台 エリ(29歳)
 イエローチームとして行動し、トイマジンやサラマンダー男爵たちと戦っていく。トイマジンを相手にしても軽く蹴飛ばし、他のメンバーたちをリードしていた。

ココ  …… 草尾 毅(45歳)
ナッツ …… 入野 自由(23歳)
 本作でも妖精たちのまとめ役として活躍し、プリズムフラワーやミラクルライトに関しても詳しい知識を披露した。

『フレッシュプリキュア!』より
桃園 ラブ / キュアピーチ …… 沖 佳苗(26歳)
 ピンクチームとして、サーロインやムシバーンたちと戦っていく。改心して幸せになったはずのトイマジンの過去の姿を利用して悪事を行うブラックホールに激怒した。

蒼乃 美希 / キュアベリー …… 喜多村 英梨(23歳)
 ブルーチームとして、魔女やフリーズンとフローズンと戦っていく。キュアピーチがいないことで調子を乱され、苦手なタコの姿をした怪物と対峙するなど苦戦を強いられる。その後は敵を挑発し、状況を打開する役割に一役買った。

山吹 祈里 / キュアパイン …… 中川 亜紀子(37歳)
 イエローチームとして、トイマジンやサラマンダー男爵たちとすごろく対決で戦っていく。動物仲良し対決で活躍した。

東 せつな / キュアパッション …… 小松 由佳(33歳)
 イエローチームとして、トイマジンやウザイナー軍団とすごろく対決で戦っていく。野球対決では、過去にも対戦経験のあるナケワメーケと再戦していた。ダンス対決でも活躍する。

『ハートキャッチプリキュア!』より
花咲 つぼみ / キュアブロッサム …… 水樹 奈々(31歳)
 ピンクチームとして、ムシバーンやザケンナー軍団と戦っていく。プリキュアの先輩として、キュアメロディをリードしていた。サラマンダー男爵の過去の姿を悪事に利用したブラックホールに憤りを露わにする。
 序盤に全員でプリキュアに変身する際には、先輩プリキュアを代表して音頭をとった。

来海 えりか / キュアマリン …… 水沢 史絵(31歳)
 ブルーチームとして、フリーズンとフローズンと戦っていく。チーム内ではムードメーカーであり、持ち前のマイペースな発言に仲間たちが苦笑いする場面も見られた。しかし、彼女の何気ない一言がブルーチームの反撃の糸口となる。
 新たに出会った響と奏と積極的にコンタクトをとり、サポートした。

明堂院 いつき / キュアサンシャイン …… 桑島 法子(35歳)
 イエローチームとして、トイマジンやデザトリアン軍団と戦っていく。武道対決で活躍した。

月影 ゆり / キュアムーンライト …… 久川 綾(42歳)
 イエローチームとして、サラマンダー男爵やウザイナー軍団と戦っていく。慣れない者同士が集まる中でも冷静さを失わず戦い、混乱するチームを立て直した。自身も勉強対決で活躍する。

『スイートプリキュア♪』より
北条 響 / キュアメロディ …… 小清水 亜美(25歳)
 リズムと別れてピンクチームとして行動し、ムシバーンやサーロイン率いるザケンナー軍団を相手に戦っていく。復活した敵幹部軍団の力やブラックホールの桁外れの強大さを見て一時は弱気になるが、先輩であるキュアブラックたちに勇気づけられ、状況打開の突破口を切りひらいていく。

南野 奏 / キュアリズム …… 折笠 富美子(36歳)
 メロディと別れてブルーチームとして行動し、魔女やフリーズンとフローズン率いるデザトリアン軍団を相手に戦っていく。慣れない海上の戦いに苦戦するが、先輩のキュアホワイトたちの援護を受けて次第に自信をつけていく。

ハミィ …… 三石 琴乃(43歳)
 ファッションショーに乱入して響を怒らせるが、響と奏が他のプリキュアたちとの交流を始めるきっかけを作った。


本作の敵キャラクター
 本編中では軍団名は語られていないが、公式ガイドブックでは「ダークライズ」と呼称されていた。
ブラックホール …… 山寺 宏一(49歳)
 今までプリキュアたちに倒されたドツクゾーン、ダークフォール、ナイトメア、エターナル、ラビリンス、砂漠の使徒の邪悪なエネルギーが宇宙で融合し、宇宙最強の「暗黒の力」として復活した存在。
 悪意の塊「フュージョン」や深海の闇「ボトム」を生みだした(それぞれの登場作品の冒頭で、宇宙のブラックホールからやって来る描写がある)、いわばオールスターズ DX三部作の事件すべての黒幕であり、今までのプリキュアたちに敗れ去った全ての敵たちの集合体でもある。魔女いわく「邪悪の神であり、闇の意思そのもの」。
 宇宙最強の暗黒の力で「プリズムフラワー」を消し去って宇宙を飲み込み、すべての希望と命の輝きをなくし、無限の闇の世界を創ることが目的。
凄まじい悪のエネルギーをもち、近くにいるだけでプリズムフラワーが弱って枯れてゆく。
 その大きさは太陽系を超えており、その名の通りブラックホールのような姿をしている。中央に赤い目があるほか、口に白色の炎ガスのようなものがあり、長い両手もある。クライマックスでは6つの目を持つ邪悪な最終形態となった。

歴代劇場版作品の敵たち
 「プリズムフラワー」を探すためにプリキュアたちの前に姿をあらわす、かつての敵たち。全員がこれまでのシリーズ単独劇場版作品に登場した敵である。ブラックホールが、その邪悪な心のみを再現して生み出した存在であり、全員の瞳や目全体が赤く光っている。
 邪悪な心のみを再現しているため、劇場版作品では最終的に改心したムシバーン、トイマジン、サラマンダー男爵(のコピー)も、再びプリキュアたちと敵対している。
 プリキュアたちを3つの世界にバラバラに飛ばし、それぞれのパートナーと引き離すことによってペースを狂わせて苦戦させる。

魔女 …… 勝生 真沙子(52歳)
 かつて「希望の園」でジャアクキングを復活させようとした、ドツクゾーンの魔女。敵幹部軍団のリーダー格を務めている。「水晶玉」でプリズムフラワーを発見し、魔力でプリキュアたちを離間させて異世界に迷い込ませた。
 フリーズンとフローズンとともにプリキュアのブルーチームと交戦する。

フリーズン …… 草尾 毅(妖精ココと兼役)
フローズン …… 檜山 修之(43歳)
 かつて「雲の園」で世界を氷の闇にしようとしたドツクゾーンの魔神のコンビ。魔女と組んでブルーチームと交戦する。過去と変わらず「最強のコンビ」を自称しているが、安易に挑発にのる一面も見せる。

サーロイン …… 速水 奨(52歳)
 かつて「時計の郷」で世界の時間を止めようとした、ダークフォールの住人。ムシバーンとともにプリキュアのピンクチームと交戦し、ウザイナー軍団を召喚する。

シャドウ …… 朴 璐美(39歳)
 かつて「鏡の国」を支配していた魔物。ブラックホールの力によりプリズムフラワーが自然に枯れるのを待ちきれずに単独で人間世界に残り、自分の鏡を使役してプリズムフラワーの探索をする。それを妨害した妖精たちを追いつめるが、逆にミラクルライトの光を浴びて消滅した。そのため、プリキュアたちと直接戦闘することはなかった。

ムシバーン …… 大塚 明夫(51歳)
 かつて「デザート王国」でプリキュアたちを菓子にしようとした男。サーロインと組み、ピンクチームを倒そうとする。

トイマジン …… 塩屋 浩三(55歳)
 かつて「おもちゃの国」で子どもたちに復讐しようとしていた魔神。サラマンダー男爵とともにプリキュアのイエローチームを「すごろくゲーム」で邪魔しようとする。しかし、正当なルールでゲームをするつもりはなく、さまざまな妨害を行った。

サラマンダー男爵 …… 藤原 啓治(46歳)
 かつてフランスのパリで世界を破壊するために暗躍していた砂漠の使徒。トイマジンとともにイエローチームを「すごろくゲーム」で倒そうとする。ステッキの先端についているクリスタルの色が以前の赤ではなく青になっており、攻撃の際も炎ではなく衝撃波を使っていた。


本作でのプリキュア
 今作では敵の罠によって3組のチームに分断されてしまい、歴代作品のプリキュアが混合して戦うことになる。また、チームごとにそれなりの長所・短所を持っている。
「ピンクチーム」
メンバー …… ブラック、ブルーム、ドリーム、ピーチ、ブロッサム、メロディ
 歴代作品のリーダー的ポジションかつイメージカラーがピンクのメンバー(厳密にはブラックは黒でブルームは金)が集まったチーム。サーロイン、ムシバーンと対決する。行動的ではあるものの、作戦を考えることが苦手なメンバーがほとんどであるため、うまく連携が取れず苦戦を強いられる。しかし持ち前の心の強さで弱気を打ち払い、自分たちのペースに持ち込んでいく。また変身前でも、響とつぼみを除いた4名は「デザート王国」のお菓子を食べまくり、遠くから見ていたえりかに「何やってんのよ!?」と突っ込まれるなど、早くも個性を垣間見せていた。

「ブルーチーム」
メンバー …… ホワイト、イーグレット、ミント、アクア、ベリー、マリン、リズム
 主人公のパートナーや頭脳派かつイメージカラーがブルーのメンバー(厳密にはホワイトとリズムは白、イーグレットは銀、ミントは緑)が集まったチーム。魔女、フリーズン、フローズンと激突する。作戦考案や咄嗟の機転に優れるが、自発的に行動するタイプではないメンバーが大半を占めるため、調子が出ずに困惑する。頭脳を活かして敵を挑発するなどして戦況を有利に持っていった。

「イエローチーム」
メンバー …… ルミナス、ルージュ、レモネード、ローズ、パイン、パッション、サンシャイン、ムーンライト
 歴代シリーズに途中参戦したメンバー(追加戦士)、もしくはイメージカラーがピンクでもブルーでもないメンバーが集まったチーム。便宜上「イエローチーム」と呼ばれているが、ルミナスはピンク、ルージュとパッションは赤、ローズは紫、サンシャインは金、ムーンライトは藤色がイメージカラーである。
 トイマジン、サラマンダー男爵の策ですごろく空間で激突することになる。ルージュやローズなどはすごろくゲーム参加には反対したが、レモネードやパインなどの天然ボケなメンバーによってなしくずしにスタートしてしまう。すごろくで行われる様々なイベントではキュアムーンライトの指揮でそれぞれ得意分野を持つメンバーの個性を活かし、順調にクリアしていく。

合体技
プリキュア・コラボレーションパンチ
 ピンクプリキュアチームが同時にパンチを放つ技。ピンクのオーラを放ち、怪物たちを一撃で蹴散らした。その結果、異世界からの出口が露見した。
 のちの映画『プリキュアオールスターズ NewStage3 永遠のともだち』(2014年)では、本作の6名に加え、『スマイルプリキュア!』のキュアハッピー、『ドキドキ!プリキュア』のキュアハート、『ハピネスチャージプリキュア!』のキュアラブリーを加えた計9名による「プリキュア・コラボレーションパンチ NewStage 」として再登場した。

ショッピングモール
 本編の主な舞台。正式な店名や所在地は語られていない。開業初日、響・奏・ハミィがここを訪れ、吹き抜けのあるイベントスペースでは、つぼみ・えりか・いつきによるファッションショーが行われ、変身前のプリキュア16名・サブキャラクター・シプレ・コフレ・ポプリが観客となっていた。だがプリズムフラワーが弱った影響で、上空から大量の妖精と異世界精霊たちが舞い降り、付近一帯はかつてプリキュアが訪れた異世界と融合した風景に一変し、更に敵幹部軍団と共に現れたブラックホールの魔力で、その場所は瓦礫の山と化した。なお事件解決後は元の風景に戻っている。

プリズムスターミラクルライト
 本編では「ミラクルライト」と呼称されていた。プリズムフラワーの力と連動しており、鏡に光を反射させると威力が強化される。歴代妖精・歴代サブキャラクター・歴代劇場版登場キャラクター・その他の異世界の精霊たちがライトを振り、プリキュアたちをスーパープリキュア化させた。

プリズムフラワー
 人間世界と妖精の各世界を繋いでいる力の源。これが消滅すると妖精たちは強制的にそれぞれの世界に戻され、交流が断絶してしまう。

高台
 事件の解決後に、変身前のプリキュア20名(くるみはパルミエ王国に帰ったため不在)が、気晴らしにボール遊びをしていた場所。桜の木がある。場所の具体的な地名は語られておらず、近くに海が存在するが、ショッピングモールの近所なのかは不明である。
 のちに映画『プリキュアオールスターズ NewStage3 永遠のともだち』(2014年)でも、『ハピネスチャージプリキュア!』までの歴代プリキュアと妖精たち(『 NewStage 』シリーズのキュアエコー・グレル・エンエンも含む)と精霊ブルーがこの場所で記念撮影をしている。


主なスタッフ
監督 …… 大塚 隆史(30歳)
脚本 …… 村山 功(36歳)
キャラクターデザイン・作画監督 …… 青山 充(57歳)
音楽 …… 佐藤 直紀(40歳)
演出・絵コンテ …… 大塚隆史、松本 理恵(26歳)
制作 …… 東映アニメーション

主題歌
オープニングテーマ『キラキラ kawaii!プリキュア大集合♪ いのちの花』
 歌唱 …… 工藤 真由(24歳)、コーラス …… 五條 真由美(39歳)、うちやえ ゆか(40歳)
 オープニングアニメーションはプリキュアオールスターズ DX シリーズ初の3D 仕様となった。パワーアップしたプリキュアたちとブラックホールとの最終決戦シーンでも挿入歌として使用された。

エンディングテーマ『ありがとうがいっぱい』
 歌唱 …… キュア・レインボーズ(五條真由美・うちやえゆか・工藤真由・宮本佳那子・茂家瑞季・林桃子・池田彩) with プリキュアオールスターズ21(プリキュア声優21名)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『軍師官兵衛』  視聴メモ 第38回『追い込まれる軍師』

2014年09月24日 10時51分38秒 | 日本史みたいな
『軍師官兵衛』第38回『追い込まれる軍師』(2014年9月21日 演出・藤並英樹)


登場する有名人・武将の『信長の野望』シリーズでのだいたいの能力評価(テロップ順)

黒田 官兵衛 孝高  …… 知力84、統率力67
 (演・岡田准一)

徳川 家康      …… 知力102、統率力65
 (演・寺尾聰)

黒田 長政      …… 知力77、統率力63
 (演・松坂桃李)

浅井 茶々姫     …… 知力16、統率力21
 (演・二階堂ふみ)

母里 太兵衛 友信  …… 知力44、統率力80
 (演・速水もこみち)

後藤 又兵衛 基次  …… 知力14、統率力75
 (演・塚本高史)

石田 三成      …… 知力92、統率力60
 (演・田中圭)

宇都宮 鶴姫
 (演・市川由衣)

井伊 直政      …… 知力69、統率力81
 (演・東幹久)

佐々 成政      …… 知力27、統率力70
 (演・大谷亮介)

加藤 清正      …… 知力63、統率力81
 (演・阿部進之介)

宇都宮 朝房     …… 知力47、統率力55
 (演・橋本淳)

本多 忠勝      …… 知力66、統率力84
 (演・塩野谷正幸)

榊原 康政      …… 知力45、統率力78
 (演・中村育二)

千 利休
 (演・伊武雅刀)

豊臣 秀吉      …… 知力95、統率力94
 (演・竹中直人)


ざっとの感想

○長政「その黒田家が無くなっては元も子もない!」
 なんともやりきれない城井家殲滅の挙に出た黒田長政の、単なる早とちりや恨みとも言い切れない動機を端的にあらわす叫びでした。いや~、ここらへんの、決して大きな声では言えない役柄の闇の部分も、しっかりと受け留めて堂々と入魂の演技を見せる松坂さんはすばらしいですね。黒田長政のキャスティングは本当に大成功ですよ! 若くてカッコイイだけじゃないんだもんねぇ。何も見ていない空虚な瞳が、黒すぎる!!
 ただ、鎮房と鶴姫は中津にいても、もう一人の朝房は親父と一緒に出かけてるんですから、全ての泥を長政がひっかぶる、っていう解釈にはなりませんよね。官兵衛がなにもせずに知らんぷりして朝房を連れて帰ってくるわけがないですもんねぇ。
 やっぱり史実の流れからいくと、ドラマの長政独断決行説はちと苦しいんじゃないのだろうか……結局は、父子なかよく騙し討ちの汚名をシェアしようってことで!

○今まで、この『軍師官兵衛』の中でもさまざまな悲運の武将たちが無惨な最期を遂げていきましたが、直接官兵衛の手にかかるということで、朝房はやけに力を入れた誅殺シーンになりましたね。でも、どんなに意匠を凝らしたカット割りにしても、やっぱりあの手法で誰にも血が飛び散らないというのは……くるしい~!! 先週あんなに思い切った描写になったのに、官兵衛の方はやや感傷的なイメージにかたよりすぎたような気がいたしました。「みんな秀吉が悪いんだ~い!」っていうことで、いいのか? 弱者に厳しい戦国時代に強者に対して意地を張ったんですから、それはしかたのないことなのよね。
 史実でどうだったかは知らないのですが、せっかく肥後国の一揆鎮圧に出陣している最中なんですから、ドラマのように静かな陣所の中ではなく、ハデな戦闘のどさくさにまぎれて……というような朝房の最期も見たかったような気がしました。いくさのシーンが観たい~!

○又兵衛「お鶴どの、生きよ……なにがなんでも、生きるのだ。」
 長政をさしおいて官兵衛イズムを確かに継承する男・又兵衛! 落ち着くなぁ~、塚本さんの武士姿は、ほんっとうに似合ってて落ち着く。これからどのような経緯をへて黒田家を去って浪人の道を選んでいくのか、とっても気になりますね。

●エッ、鶴姫、処刑されずに生き延びたの!? いや、それはさすがにフィクションが過ぎるのでは……そこは史実どおりに涙をのんでズバッといくのが、戦国の論理なんじゃないですか。
 だったら、鶴姫のエピソードをいじくるよりも、ちゃんと朝房の妻のお龍の方が、妊娠した身でありながらも肥後国で黒田家の手からみごとに逃げきって男子を産んだという、史実そのままの城井家存続エピソードをしっかり映像化したほうがず~っと感動的だったんじゃなかろうかと思うんだけどなぁ!
 ……あ、それじゃ、黒田家が完全な悪役になりすぎちゃうのか。難しいなぁ~、大河ドラマの主人公って。

●秀吉「人は、将棋の駒じゃ! それを、わしが自在に操る。まるで、神のようにな……上様(織田信長)も、それをおもしろがっていたに違いない! ハッハッハッハ……」
 いやいや! 今現在のあなたに比べたら、織田政権なんてそんなに大したもんじゃないですって! だいたい、自分の経営術やささいなミスの積み重ねがもとで、ものの見事にすっころんだ信長のことなんか、ここで秀吉が口にするはずがないと思いますよ。縁起が悪くてしょうがないもん、あんなお方。
 この時点で秀吉が意識していた過去の人物は、間違いなく源頼朝もしくは足利義満といった最高級クラスの天下人だったはずなのです。史実の逸話でも、秀吉が頼朝を語ったという話はありますよね。
 ここで秀吉が語っている神が限りなくキリスト教の「 GOD 」に近いっていうのも、おかしな感じですけどね。でも、当時の日本人がそれに相当する存在を考えるとしたら、いったい何なんだろうか……「おてんと(天道)さま」ですかね。太陽サンサン、熱血パゥワー!!

○佐々成政さん、まるでコントみたいなやつれっぷりでしたね。織田家家臣の最後の生き残りとして、みごとな凋落っぷりを見せつけてくれました。
 ……ん? 最後? いやいや! だから、前田の犬千代さんはいつ出てくんの~!? 今週は名前だけが出てたけど、ご本人登場は、いつ?

○「大明帝国への侵攻」、「官兵衛 VS ダーイシ」、「官兵衛 VS 秀吉」、そして「秀吉 VS 利休」! いろんなフラグがおっ立ちまくりで緊張しまくりのこんな茶室、イヤ~ン!! リラックスの「リ」の字もありゃあしねぇ!!
 でも、この時点ではまだ、さすがの暴君秀吉にも、出された茶碗を蹴り倒すことを控えるくらいの節度は残ってるんですね。秀吉の中でせめぎあう良識と狂乱の闘いも、見ごたえたっぷりですね~。そりゃ、ゴールドの足袋を履いてる人はブラックはお嫌いでしょうね。

○まともなセリフがほとんどなくとも、北政所おねからスルスルと正直なうち明け話を聴くことができる寡黙なイケメン官兵衛。男前はトクだねぇ~オイ! わざわざ「おいしいです。」って言わなくても、瓜を食べるその表情だけでメッセージを伝えられる顔と度胸がほしいもんですよ、このわたくしも!!
 だいたい、脚の障害のせいだから仕方ないことはよくわかるんですけど、基本的に座る姿勢が崩れてるっていうのも、他の武将にはない魅力ですよね、官兵衛って。木村拓哉理論か!?

○加藤清正を演じる阿部進之介さんの眼光は、今日もギラギラですなぁ~。ほんとにいい面構えですよね。よっ、武断派!

○今回も冴えわたる、秀吉の作り笑いと家康の鉄面皮のマスカレード・トーク! ほんとに喰えない二人ですよね。

○意外や意外、今回で初めて実現した官兵衛と家康の会見! いや~なんちゅうか……ホントに3歳差!? あなたがた。いやでも、寺尾さんの肌つやと手の感じはものすご~く若々しいんですけどね。
 秀吉とか明智光秀とか家康とか、いちいち会うたんびに「おぬしのような軍師が欲しいもんじゃわい。」と定型のお世辞を言われる官兵衛なんですが、そんな官兵衛にしれっと秀吉の「次期天下人トーク」のうわさを語って大いに動揺させる家康の手練手管は、さすが古ダヌキ! ヤな感じですね~。
 秀吉の宴席シーンを、実は家康の作り話なのかもしれないという可能性を濃厚におわせる俗悪そのものな雰囲気にして、肝心の「官兵衛じゃ。」というセリフを対極的に静寂な利休の茶室で家康がボソッとささやくという演出は、けっこう印象的でおもしろかったですね。歴史好きな人ならば誰でも知っているようなベタなエピソードを、こういう「おっ?」と思わせるようなモダンな手法で映像化するのは、すばらしいのではないのでしょうか。演出の藤並さんって、『軍師官兵衛』ではこの回で初めて演出を担当された方でしょ? 若い方なのかな。気になりますね!


結論、「第39回がとてもたのしみです。」

 史実ではこの回の時点(1588年)でまだまだ43歳ということで、思ったよりもけっこう若い官兵衛なのですが、なんだかこの数回でぐっと老けこんできたような気がして、実際にセリフもなく苦悩する表情だけのカットが多くなってきたような気がします。その苦みばしった沈黙の姿は、確実に放送第1回のアバンタイトルの小田原征伐に近づいてきているような。いよいよ、物語が一巡するタイミングが迫ってきたわけなんですなぁ。

 にしても、前々から言ってはきたんですが、今回は特に、官兵衛を演じる岡田さんが、あの『太平記』で足利尊氏を演じた真田広之さんにオーバーラップする瞬間が多かったような気がしました。尊氏さんも、室町幕府初代征夷大将軍とは言いながらも、将軍就任後も本当に苦労の絶えないお方でしたからねぇ……実際、天下統一できてなかったもんね、尊氏・義詮の2代は。

 主人公が後半戦で苦悩する大河ドラマは、やっぱりなんといっても視聴者がその悩みについていけるかどうかが大事なポイントになるかと思います。その「ついていけるか?」という問題は、完全に観る人ひとりひとりの主観によるので、どれが成功してどれが失敗したのか、ということを議論したってしかたのないことなんですけれども、それでも個人ブログなので強いて私自身の経験だけをもとに語るのならば……成功したのは『太平記』と『八代将軍吉宗』で、失敗したのは『北条時宗』と『平清盛』、っていう記憶はありますね、なんとなくですけど。俳優さんが若いと、主人公の後半生はホントに大変ですよね!

 そんな中でも、今年の『軍師官兵衛』はおおいにがんばってると思いますよ。岡田さんと松坂くんが父子という関係も、今回の城井家殲滅エピソードでやっと違和感が消えた気がしました。
 いけいけ、オッサン官兵衛~!!
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

在りし日の名曲アルバム  鬼束ちひろ『 Cage 』

2014年09月21日 22時58分43秒 | すきなひとたち
 お~たむ~ん。みなさまどうもこんばんは、そうだいでございます~。日曜日の今日も一日、お疲れさまでした!
 いや~、千葉は実に秋めいてまいりました。もう、どんなに晴れても暑いってことはないやね。ほんとに気持ちいい気温だったし、第一、空気のにおいが完全に秋ですもんね。「あぁ、また夏がすぎていったんだな。」と感じると、自然に感傷的な気分にひたってしまいます。

 そうですか、道重リーダーは今回の秋ツアーが終了したら、しばらくのあいだ休養に入られるんですか。
 モーニング娘。の卒業後に芸能界から距離をおくという去就を聞くと、言うまでもなく私が毎朝その御真影に向かって手を合わせている「かのお方」のことが即座に胸に浮かんできてしまうのですが、すべてが済んだ今年の冬、どこかで必ず会うと思われるお2人は、いったいどんな話に花を咲かせるんでしょうか。私なんかは、まるで『平家物語』のエピローグ『大原御幸』みたいな諸行無常感がただよう風景しか想像がつかないんですが、なんだかんだ言ってもお2人とも20代なんですからね! 恐ろしい話ですよね~、アイドル栄枯盛衰。
 結局、今年9月の10・11日はどっちも行けなかったからね……30日の日本武道館はほんとに楽しみにしてますよ! 第12期!!

 そういえば、昨日の夜に疲れた足をひきずって帰宅したら、うちのポストに非常にそっけないハガキで「資格試験の一次試験通過&実技試験受験票」がとどいてました。
 別に、開いたらオルゴールが鳴るとかいうオマケはいらないんだけどよう……3年目にしてやっと手に入れたチケットだからもっとこうさぁ……いえいえ、別にこれで資格の免許がもらえることが確定したというわけでもありませんので、実技試験合格に向けて、浮かれずに気を引き締めてがんばりたいと存じますです、ハイ!! あ~よかった。


鬼束ちひろ『 Cage 』(2000年11月リリース 東芝EMI)

 『 Cage(ケージ)』は、鬼束ちひろ(当時20歳)の3rdシングル。作詞・作曲は鬼束ちひろ、タイトル曲『 Cage 』の編曲は土屋望と羽毛田丈史の共同、カップリング曲『 Ash on this road 』の編曲は羽毛田丈史。
 もともとは2000年7月に2ndシングルとしてリリースする予定であったが、TVドラマ『トリック』の主題歌として『月光』が起用されるとそちらの方が話題となったため、急遽差し替えて『月光』がリリースされることとなり、いったん発売が中止となっていた。その際のカップリング曲は『 My Fragile Life 』(2001年リリースの1stアルバム『インソムニア』収録曲『螺旋』の初期音源)であった。
 オリコンウィークリーチャートは最高15位を記録した。

収録曲
1、『 Cage 』(4分31秒)
 制作当初は前作『月光』と同様にバラード曲であったが、プロデューサーの土屋望の提案でアップテンポにしたという。作曲のモチーフとなったのは、鬼束の自宅に電飾を施してインテリアとして飾っていた鳥かご。

2、『 Ash on this road 』(4分16秒)
 鬼束のキャリアの中で初めて発表されたカントリーロックナンバーであり、この楽曲がのちの『 We can go 』(『インソムニア』収録曲)や『 LITTLE BEAT RIFLE 』(2001年リリース 5thシングル)に続くきっかけとなった。この曲はいまだにアルバムに収録されたことがない(2014年9月時点)。


 これは、かのオバケ名曲『月光』に「どけや!」と押しのけられて3rdシングルにあまんじてしまったという、デビューシングル『シャイン』にも匹敵する不遇の背景を持つシングルだそうなのですが、うん、まぁそうなることも、むべなるかな。

 まずこのシングルの特徴として「2曲とも曲調はアップテンポ」という点があるのですが、聴いてみるとアラびっくり、印象が今までの鬼束シングルの流れである「1曲目で重くダウンし、2曲目でちょいアップ」というものとほとんどいっしょなんですね。
 つまり、プロデューサーの意向でアップテンポになろうがどうしようが、歌詞にいつものように「トゲ」「ひび」「すり傷」「ひとりにしないで」という、地味であるがゆえにズンとくる単語がちりばめられて、おまけにサビの部分では、

「神さま あなたがいるなら 私を遠くへ逃がしてください」

 という致命的にせつない言葉が叫ばれるこの『 Cage 』が、明るい曲になるわけがなかった、ということなんですね。
 だいたいタイトルが「鳥かご」なんですからね……解放感を期待するほうがどうかしています。

 『月光』であそこまで明確に像を得ていた「もういない他者」というものがきれいさっぱり影も形もなくなって、再び自分を閉塞させている環境だけになっている作品世界が、気持ちいいくらいに『シャイン』に戻っているわけなんですが、確かにこれは、『シャイン』と『 Cage 』の間に『月光』を入れといて大正解だったのかもしれません。
 歌詞を読んでいけば、『シャイン』や『 Cage 』のように鬱屈した状況を打破したいマグマが煮えたぎる時期があり、そこから主人公を救ってくれた「誰か」との出逢いの日々があり、そしてやがて訪れた別れに慟哭する『月光』のひとときがある。そういった感じで、やっぱり『月光』の「いったいどうしたの?」という突然変異感を引き立てる役割だけ、と感じずにはいられない『 Cage 』なのでした。『シャイン』とちがって、こちらはピアノオンリーバージョンで転生するという機会も与えられず……あぁ不遇!

 その一方で、カップリングの『 Ash on this road 』は非常に気楽に聴けるカントリー調になっていて、唄うご本人の肩の力も適度にぬけているようで、格好の耳休めな感じがあります。
 それに加えて、こちらの歌詞には多少『 Cage 』と同じように閉塞した境遇にありながらも、

「なくなりそうになるあたしを あなただけはしっかり見つけていて」

 というように、自分を救ってくれる存在が近くにいることを、少なくとも『 Cage 』の「神さま」よりは明確につかんでいる、という希望が見えているんですね。よかったね~。
 ただ、聴いていくと絶望の中から希望がひらけていく、というこの2曲の流れは非常にけっこうなんですが、そうなってくると、それぞれたかだか4分強のうちに絶望したり気楽になったりするこの情緒不安定ぶりは、まさに聴く者をぐわんぐわん揺さぶりたおして、最終的には、

「なんなんだ、この娘は……まぁ、若いうちにそういう時期があるのは、よくわかるけど。」

 という疲労感を残して嵐のように去っていくという効果をもたらすのではないのでしょうか。う~む、これぞ鬼束ワールドの醍醐味……なのか?
 ある意味、『月光』以上に鬼束さんらしいシングルともいえるのではないのでしょうか、『 Cage 』。

 実際、鬼束さんという素材の扱い方に苦慮しているという舞台裏が露骨に作品に出てしまっている土屋望プロデュース時代はこのシングルが最後になり、この後は、比較的安定して「鬼束ちひろは、こうですよ!」というスタイルを商品化し続けた羽毛田丈史ソロプロデュース時代が、次作から始まっていくことになります。

 さぁ、鬱屈する天才の未来は、果たしてどのような調べをつむぎだしていくのでありましょうか。静寂か? 狂乱か? ま、どっちもか。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

在りし日の名曲アルバム  鬼束ちひろ『月光』

2014年09月18日 11時28分11秒 | すきなひとたち
鬼束ちひろ『月光』(2000年8月リリース 東芝EMI)

 『月光』は、鬼束ちひろ(当時19歳)の2ndシングル。作詞・作曲は鬼束ちひろ、編曲は羽毛田丈史(はけた たけふみ)。
 『月光』を主題歌とした TVドラマ『トリック』がヒットしたこともあり、オリコンウィークリーチャート初登場30位から最高11位までランクアップ、10ヶ月近くもチャート内にランクインするロングヒットを記録した。累計出荷枚数は60万枚を記録している。これは鬼束のシングル作品では自己最高である。
 もともと、この作品は2枚目のシングルとしてリリースする予定はなかったが、『トリック』のヒットにより、シングル『 Cage 』に先駆けて急遽シングル化された。

収録曲
1、『月光』(5分9秒)
・テレビ朝日系連続ドラマ『トリック』主題歌
・全国東宝系公開映画『トリック』、『トリック ラストステージ』主題歌
 抑圧からの開放を願うミディアムバラードである。
 TV ドラマのタイアップに起用され、ドラマのヒットにより急遽シングルリリースが決定したため、鬼束の全作品中でも最も制作期間が短い。プロデューサーの羽毛田丈史は1stベストアルバム『 the ultimate collection 』(2004年12月リリース)のライナーノーツで、「楽曲のアレンジが3パターン、ピアノのみ、ピアノとストリングスカルテット、バンド、それぞれ存在した。ピアノだけでは強烈な歌詞には脆弱で、バンドでは楽曲の持つ美しさや儚さが損なわれる恐れがあるため、ピアノとストリングスカルテットを採用した。」と語っている。ちなみに、ピアノのみのバージョンは翌2001年にリリースされた1stアルバム『インソムニア』に『月光 アルバムバージョン』として収録された。
 この楽曲のヒットにより「鬼束=月光」というイメージが定着してしまったため、鬼束本人は後に「この曲は嫌い。」と、音楽雑誌や公式ファンブック『 Pretty Witch Complete Book 』で発言している。なお、本曲は小原孝、ニコチン、徳永英明、ソルジャら複数のアーティストによってカバーされている。

2、『 Arrow of Pain 』(5分15秒)
 1stアルバム『インソムニア』に未収録だったのちに2ndアルバム『 This Armor 』(2002年3月リリース)に収録され、映画『グローウィングローウィン』(2002年 監督・堀江慶)で挿入歌として使用された。


 う~ん、なんてったって月光。本人が嫌いだって言ってたって月光。
 あっ、仲間由紀恵さん、ご結婚まことにおめでとうございます!! なんとタイムリーな、ねぇ。
 実は、何日か前にこの「鬼束ちひろを聴く」シリーズを始めるにあたって、いくらなんでも「なぜ今……?」という躊躇が自分の中でなくもなかったんですが、こういうつながりがなくもないニュースが報じられると、このタイミングで始めてやっぱり良かったんだな、とホッとしてしまうんですよね。しかも、よりにもよって『月光』の回をアップするときにこれなんですもんね! まさしく「やらないで後悔するより、やって後悔したほうがいい」! 『トライアルかおる』ですね。

 さてこのシングルも、1曲目で暗い内容、2曲目でちょい明るめのメロディといった「下げて上げる」構成は『シャイン』とまったくいっしょなんですが、大きく違うのは、『月光』が聴けば聴くほど救いのない内容なのにメロディがひたすら美しいことと、どちらも歌詞世界に「あなた」という、明確な他者が存在しているということなんですね。これは大いに違いますよ!

 前作では自分以外の存在が言及されないひとりごとか、外部の世界ぜんたいがまるごと敵であるかのような視点しか語られず、まぁそれはそれで作詞しなければ生きていけないという意思がはっきりしていていいんですが、その反面で隠しようのない幼さが露呈している歌詞になっていたような気がします。
 ところが、今作の2曲は「いなくなったあなた」と「私の意思の通じないあなた」という相手がいる世界なので、ものすごく人口に膾炙するものがあるというか、聴く人それぞれの記憶の中の「あなた」を想起させる許容範囲の広さがあるんですね。「いなくなった」り「意思の通じない」他者に出あわずに生きてこられた人なんて、いませんよね!? これは共感せずにはいられませんよ。まぁ、例によって内容は非常に抽象的で幼さも残ってはいるわけなんですが。
 『 Arrow of Pain 』なんて、相手とのコミュニケーションの手段が「矢を射る」っていう思いっきり原始的な狩猟法にたとえられてるんですからね。「愛する」と「殺す」が紙一重っていう思考は……ステキに危険だ! だから鬼束さんは、自分のファッションやパフォーマンスでことさらに奇矯なことをやらなくても、自分の作った歌を唄っているだけで十二分に「もののけ姫」なんですよ。余計なうじゃらぐじゃらはやんなくていいんです!!

 「あなた」が非常に大事な存在であることはわかるのですが、それが恋愛対象の誰かなのか、家族のようなちかしい身内なのか、解釈が自由になっているのも魅力的です。要は聴く人しだい! 恋愛ソングにしては、妙に「わたし」の割合が大きくて、「あなた」の説明が少ないんですが。

 それにしても、『月光』のメロディの、歌詞の内容とまったく相反している美しさはすごいですよね。要するに、人が大事な存在をなくして嘆き悲しむさまがひたすら美しいという、嘆き悲しむ人の事情自体はまったく無視している視点の高さが、人間の事情を超えている神とか自然、ただ光を放って人を照らしているだけの「月」の高みにまで達しているということなんでしょう。この歌のタイトルを『月光』にしたというのは……まさに神業。本人さえもが、「この後キビシイな~。」とうとんじてしまうようなケタはずれの出来になってしまったのは、まさに神さまのいたずらなのでありましょうか。

 非常にミーハーなことに、私が決定的に鬼束さんにイチコロになってしまったのは、ドラマ『トリック』第1期の最終回のエンディングに、鬼束さんが説明しようのない不可思議な演出で「特別出演」していたのを観たときでした。いや~、ありゃないよ! 19歳の娘ッコをひっぱりだして「誰? 通りすがりの神さま?」みたいな立場においたら、そらぁ視聴者も目を奪われるでしょうよ!! やられましたね~。ただ単に堤幸彦さんが好きだったってだけなんでしょうけれども。それは『 edge 』の PVを観ても明らかですよね。

 ところで、鬼束ちひろさんの楽曲をカラオケで歌唱したことのある方ならばご共感いただけるかと思うのですが、特にこのシングルの2曲は、聴くたびに「アゴが痛くなる」感覚を思い出させるものがありますね。

『月光』のサビは、「あいあむ がぁっ!! ちゃぁあ~あいるぅ」
『 Arrow of Pain 』のサビは、「あぁたぁあ~しのっ はぁなぁあったぁやぁわぁ~ぁあっ」

 はい、どちらも、みごとにサビ部分で口を全開にする「あ」母音がこれでもかというほどに連続するんですねぇ。唄う人は、あたかも食事中のウバザメのように大口を開け続ける必要に迫られるわけでして、この2曲にかぎらず鬼束作品では、顎関節症の人には絶対におすすめできない楽曲が目白押しになっています。「い」でも「え」でもなくて、なぜ「あ」が好きなんでしょうか。そこに楽曲のはかない雰囲気とはまったく異なる、肉体にわざと過酷な負荷をかけるスポーツマンシップを感じるのは私だけではないはずです。なんとマッチョなこだわりなのだ……さすがは、九州女子。

 さぁ、シングルの2曲目からものすんごい名曲をぶっ飛ばしてしまった鬼束さん、これからいかがはせむ!? 天才はつらいのねぇ。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする