≪毎度おなじみ、7年も前の資料編は、こちらだ!≫
お天気が良くてもさみー!! みなさま、どうもこんにちは。そうだいでございます。
早くも1月が終わろうとしておりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。こちら山形は、まだ冬の終わりは見えないやねぇ。この冬は雪が多かったな~! 主に年が明けてからでしたが、雪かきいちばん多くやったんじゃないかしら。早起きがきつい……
コロナ、コロナ言ってもう2年になりますから、仕事場でのうんぬんは慣れっこになっていたつもりなのですが、いよいよ山形市が「まん防」に入ってしまいまして、仕事の後の「夜ラーメン」という背徳の時間が無くなってしまい、これにはさすがにショックを受けています。わたしの至福のひとときが……
毎日のように「感染者数過去最多を更新」のニュースが流れる時期が、また来ちゃったねぇ。家で楽しく過ごす方法はいくらでもある時代なんですが、気分がくさくさしていけねぇや。来月にも庄内地方の温泉にでも行こうかと考えていたのですが、それもまた夢のまた夢のようで。待ってろよ、春!! 「米沢上杉まつり」、今年はどうかな……こちとら、身体の準備だけは万端なつもりなんですけどね。
さてさて、今回もまた、そんな有り余るおうち時間を我が『長岡京エイリアン』の宿題消化に充てようという、なんとも不毛きわまりないマッチポンプの「やっと本文コーナー」でございます。今回も「7年ぶり」よ! 古酒でも造ってんのか!?
お題は、ついにここまでやってきました、映画『五人ライダー対キングダーク』(1974年7月公開)! ある意味、悠久の仮面ライダーシリーズの、最初の一区切りを象徴する作品であると思います。
映画のタイトルにはないのですが、この作品は当時放送されていた「仮面ライダーシリーズ」第3作『仮面ライダーX 』のオリジナル映画作品であります。タイトルの「五人ライダー」とは、言うまでもなく主人公の Xライダーと、その時点までのオールライダーである1号、2号、V3、そして本作で初めて復活するライダーマンのことですね。
正直、主役なんだからタイトルに Xライダーの名前くらい出してあげてもいいじゃないかと思ってしまうのですが、映画のセールスポイントが「五人ライダー」の集合なんだもんね。しかたねぇかぁ。
この作品、シリーズ恒例の再生改造人間軍団あり、過去ライダーのゲスト出演あり、大爆破&アクションありの天湖森夜な展開を、TV本編ではなかなか見られないド派手な規模で送る豪華作なのですが、な~んか、全体的に雰囲気がヘンなんですよね! 別に主人公が大ケガで降板したとか失踪しちゃったとかいう緊急事態はなかったはずなのですが、作品としての完成度がおかしい! ストーリーの展開が急すぎて、子ども向け作品とは思えない「筋の省略」が多いのです。
端的に言っちゃえば「説明不足で意味不明な部分が多い」ということになるのですが、これは明らかに「制作スタッフが意図的にはしょってる」わけなので、そもそも説明する必要がないという判断があったのでしょう。つまり、「説明できなかった」じゃなくて「説明しなかった」と! プロがいらないと思って捨ててるんですから、そこを批判するのは野暮のような気もするんですよね。デイヴィッド=リンチ監督の映画を「わけわかんない!」と批判したり、ブラックコーヒーを飲んで「なにこれ、にが~い!!」と言うようなもんだと思うんです。そういうもんなの!ということで。
でもさぁ……これ、直球どストレートの子ども向け作品ですからね。子どもにモネとかルノワールみたいな印象派の絵画を見せて、理解できるかどうか……いや、印象派だったらまだわかるかもしんないけど、この映画、カンディンスキーくらいのレベルなとこもあるしなぁ。おもしろけりゃいいのかな?
簡単に言ってしまいますと、本作はたった29分というなかなかタイトな尺の中に「1、歴代ライダー集合」、「2、GOD機関の東京カラカラ作戦」、「3、Xライダー打倒の最強改造人間の登場」という3つのトピックを詰め込んでいます。まぁ、そこは料理のしようによってどうとでも収まるはずなのですが、本作の場合は、1に必然性を持たせるために2を Xライダーひとりではカバーできない規模の広範囲にわたって展開させます。それはいいのですが、それと同時進行で3のために Xライダーの能力を『ウルトラセブン』のガッツ星人方式にえっちらおっちら観測しているのが、ややこしい! つまり、観客はシーンが変わるたびに1&2の話を見ているのか3の話を見ているのかをいちいち推測しなければならなくなるので、途中からもうどうでもいいやモードになってしまうのです。最終的に1に従事した再生改造人間軍団のみなさんも3のコウモリフランケンも、都合よく集合してやられるので結果オーライなんですが。
こういった感じの、特撮ヒーロー番組における悪の秘密組織が「組織としての作戦」と「邪魔なヒーローの打倒」を同時進行でやってしまおうとするクセは、映画『仮面ライダー対じごく大使』の先例を見てもおわかりの通り、秘密で進めるべき作戦が、よりにもよって一番知られたくないヒーローにバレるという最悪の「あぶはち取らず」に終わってしまうオチがほとんどの、「悪の秘密組織あるある」ですね。なにごとも、欲ばりはよくない!!
それ自体はよくあるパターンなのですが、今回の場合、そこらへんの混線具合が異様に不親切に感じられます。作品の中で、だぁれも物語全体の大枠を語ってくれないので、まじめに見ている人ほどストレスがたまる内容になっているんですね。せいぜい、仮面ライダー2号がクライマックスの手前で語る、
「『東京カラカラ作戦』とは、東京中の水を涸らしてしまう作戦だ!」
くらいが関の山だし、2号がそんな超絶推測にいたった経緯もぜんぜん描写されないし……そう聞いて、作中で事件に巻き込まれたマサル少年も、「うん……よくわかんないけど、たぶんそう。」という表情で、うつろな目で虚空を見つめ小さくうなずくばかりなのですが、老若男女を問わず、この作品を観ている者はそんな表情になってしまうことでしょう。マサルくん、トレンディエンジェルの斎藤さんに似てるし、滑舌も絶妙にギリギリで非常にいい感じです。
ここらへんのストレスって、本作と先ほどの『仮面ライダー対じごく大使』とを比較してしまうと一目瞭然なのですが、要するに本作では、物語の大枠を簡単に説明してくれたり、物語全体の流れに関わっていたりする地獄大使のような「トリックスター」がいないんですよね。いないというか、いるんだけどほとんど仕事してない! 誰が本作のトリックスターなのかと言いますと、それは言うまでもなく、地獄大使と同じ立場にいる、東京カラカラ作戦と Xライダー打倒を一緒にやっちゃおうという愚挙に出た GOD機関大幹部・キングダークその人です。アジトの奥で寝そべってヴエーとかうなってないで、もうちょっとしゃべれやー!!
っつうことで、今作のいちばんの戦犯である、大幹部キングダークについて。
大幹部? 最高幹部? それとも……? 謎の巨大ロボット・キングダークとは( Wikipediaより)
キングダークは、GOD機関の大幹部にして巨大ロボット。仮面ライダーシリーズ初の巨大キャラクターである。身長26m、体重5t。
『仮面ライダーX 』第22話(1974年7月13日放送)から登場(第21話では声のみの登場)。前任の GOD機関大幹部・再生アポロガイストの殉職後に着任した2代目大幹部。
鋼の全身を黒いマントで包んだ巨人型ロボット。普段はアジトの奥で、涅槃仏のように寝転がって頬杖をついている。口からの毒ガスや目からの破壊光線、指先からのロケット弾など、多彩な武器を持つ。
南原光一博士が開発した、すべての物質をエネルギーに変換する「RS装置」を体内に組み込んで起動する予定であったが、すでに RS装置を完成させていた南原博士は、その悪用を恐れて装置の設計図を9枚に裂き、分散させてしまう。分割された設計図を奪還すべく、キングダークは悪人改造人間軍団を次々と投入して Xライダーとの設計図争奪戦を繰り広げる。
キングダークの巨体は、横になった姿の実物大セットが作られ圧倒的な存在感を示した。セットの制作は佐久間正光が指揮を執った。目と口には開閉ギミックを備えている。立ち上がった姿は着ぐるみで表現されたが、実物大の造形物とは印象の異なるものであった。
日本支部大幹部赴任期間1974年7~10月、全15作戦 ※(複)表記は X以外の仮面ライダーとも交戦した改造人間
ジンギスカンコンドル、ガマゴエモン、コウモリフランケン(複)、サソリジェロニモ、カブト虫ルパン、ヒトデヒットラー、再生改造人間軍団(複)、クモナポレオン(複)、カメレオンファントマ、ヒルドラキュラ、トカゲバイキング、アリカポネ、ムカデヨウキヒ(複)、タイガーネロ(複)、サソリジェロニモJr.
ということで、今回の「東京カラカラ作戦」はキングダークにとって3回目の作戦ということになります。まだ駆け出しなのね! これまでの悪の大幹部と違ってだいぶ図体のデカい彼なのですが、やっぱり作戦は14~5回くらいの失敗で限界が来ているようですね。
駆け出しとは言いましても、この、前任のアポロガイスト時代の改造人間たちもほぼ全員フル動員した GOD機関の再生改造人間オールスター感謝祭状態は、これまでのオリジナル映画に比べても規格外のもので、たいていこういう場合は、自分の直接指揮する「悪の偉人改造人間」が中心となって、前任者の管轄にあった「神話改造人間」のみなさんは数名チョイスされるだけで肩身が狭いという人選が通例なのですが(死神博士しかり地獄大使しかり)、今回のキングダークはかなり寛大に、ボーダレスに作戦参加者を募っているということになります。
それだけ GOD機関内での人事権を自由に行使できるということは、キングダークはこれまでの大幹部とはちょっと違う次元の権力を持っているということになり、ということはつまり……ってなわけで、『仮面ライダーX 』本編の最終話に明らかになるキングダークの正体につながる伏線が、すでにこの映画の時点でほのめかされているのは、さすがですね! いや、ただ単に GOD機関の改造人間が少ないから見境なくかき集めただけなんじゃ……というツッコミは、なしだ!!
ところで、Wikipediaの記事にもある、悪名高い「実物大の造形物とは印象の異なる」着ぐるみなのですが、これはやっぱり、先に出た実物大セットがカッコよすぎたのが原因ですよね。セットのどこがカッコいいのかと言うと、たぶんあの「肩幅の広さ」なんじゃなかろうかと。逆に言えば「小顔」なわけで、着ぐるみの場合、中にアクターさんが入ることを考えると、顔と身体の比率が実物大セットのあれほど離れたものにはなりえないと思うんですよ。大谷翔平さんみたいなとんでもない体型のアクターさんでもいないかぎり。もちろん、着ぐるみの質感の問題もあったのでしょうが、なにげに着ぐるみでは表現できないデザインに、あのセットは挑戦していたのではないかと。やっぱりスタイルって大事ですよね。
話をキングダークから物語に戻しますが、結局本作は、コウモリフランケンによる Xライダー打倒というひとつの目的は失敗したものの、GOD機関の「東京カラカラ作戦」が成功したのか失敗したのかがはっきりしないまま終わります。まぁ、作戦に従事していた再生改造人間軍団のみなさんがもれなく殉職したし、その後東京がカラカラになったという話も聞かないので「頓挫したんだろうな。」みたいなふわっとしたエンディングになっているのが、いくらなんでもどんなもんなのか……
これが、30分弱の枠ということで時間が短すぎたからこうなってしまったのか。でも問題は、脚本を担当したのがあの伊上勝先生だってことなんですよね。当然、仮面ライダーシリーズの第一功労者であるわけなんですが、92分もあった映画『恐竜・怪鳥の伝説』(1977年)のとっちらかりようを思い出すだに、単に時間だけの問題ともいえない気もするような……そもそも、あれ伊上さんの脚本じゃないらしいんですけどね。
ここは非常に難しい問題なのですが、本作に限らず、作品全体に「もうホラ、ここらへんは雰囲気で。」とか、「いちいち言わなくても、わかるよね?」みたいな空気が蔓延しているのって、やっぱり作り手の驕りなんじゃないかと思うんですよね。いかにも初心者お断り、わかる人だけついてこい!って感じで。
それだけ、多くの観客にそのジャンルのルールが浸透しているという恵まれた前提があってこその話なんでしょうが、それは『仮面ライダーX 』じゃなくて、そこにいたるまでの先輩作品の開拓のおかげだもんねぇ。こうなってくると、単体作品の魅力で戦っていないというか、ブームの「まとめ」に入ってきたというか、円熟期を通り過ぎた「まつりのあと」感がにじみ出てきてしまうと思うんだな。それは、他の『マジンガーZ 』だなんだという外的要因に追われてのことではなく、自身の中から自然と発生してきてしまう「終わりの始まり」なのでしょう。プロだとしても、人間、続ければ馴れは生まれますよね。
よそのウルトラシリーズにしろゴジラシリーズにしろ、非日常なはずのスーパーヒーローや怪獣、宇宙人たちが毎回毎週出てきて当たり前、となった時からどう勝負していくか。ここが作り手の本当の修羅場であり、腕の見せ所でもあるんでしょうねぇ。
当然、『仮面ライダーX 』も恐ろしいぐらいのプレッシャーの大きさに耐えながら、多くの新機軸への挑戦に彩られた作品であるわけです。特に本作でも堪能できる、主演の速水亮さんのスピーディなアクションとドスのきいた声の迫力はすばらしい! 前作の宮内洋さんのハデさの陰に隠れがちですが、やっぱり危険なシーンを変身してない本人がこなせるのって、カッコいいですよね。
また変身した後も、特にクライマックスの奇岩城基地での五人ライダーと再生改造人間軍団との殺陣は、『仮面ライダー』時代から格段のレベルアップをとげていると思います。 Xライダーは棒術も当然すごいんですが、足技もまた華麗なんだよなぁ。日々研鑚のたまものよね!
悪の組織のほうの挑戦もキングダークだけにとどまらず、まず「外国の神さま」を悪の側にしたてているというのが、色々問題はあるにしてもものすごいことです。アポロガイストなんか、正義のヒーローでもいいようなビジュアルだし。どストレートに組織の名前が「 GOD機関」というのも、いかにも石ノ森章太郎先生ごのみなアイロニーにあふれていて最高ですよ! 改造人間たちのデザインも、もうこれでもかってくらいに左右非対称で不気味! 本作の目玉のコウモリフランケンも、左の口角が下がっている絶妙に左右非対称な顔面の造形がすばらしいです。つぎはぎだらけの青白くふやけた肉体も気持ち悪~!
ちょっと、子どもにとっつきにくい怖さがあるというデメリットも大きいんですが、本作でも跳梁跋扈する神話改造人間のみなさんは、な~んか記憶に残るインパクトに満ちています。ユリシーズこわい~! よく見るとアクターさんの生の目が奥に見えるという、シリーズ伝統の「こわっ。」イズムが生きていますね。
最終的に『仮面ライダーX 』の挑戦が成功したかどうかは判断が難しいところですが、まさに「冒険者に失敗など存在しないッ!!」ということで、その果敢なチャレンジ魂は、その後に生きる私たちにとって、絶対に忘れてはいけない先人の教訓となるのではないでしょうか。まぁいいんだ、なんてったってシリーズは半世紀も続いてくんだから! セーフセーフ!!
とにもかくにも、今回もまた、本編には観るべきポイントや「?」な笑いどころがたくさんあるのですが、今回も今回とて、だいぶ字数がかさんできてしまいましたので、そのごくごく一部を、かいつまんでのメモにとどめておきたいと思います。ホント、本作も超濃厚な30分弱ですよ!
・オープニングののっけからの五人ライダー集結は威勢が良いのだが、ロケ地の天気が悪い……そして、ライダーマンがなんか変! 中身が山口暁さんだったら最高だったのだが……ザボーガーで忙しいんじゃ、しょうがない!
・開始して3分00秒後に再生改造人間(ジンギスカンコンドルとガマゴエモン)が登場、3分30秒後に Xライダーに変身。展開がかなり早い!
・「地下から声が聞こえる」って言って様子を見に外に出るマサルくんが、2階の外階段から降りてくるのって、おかしくない? 単に駐車ガレージに人がいるだけなんじゃ……
・開始7分25秒後にさっそく仮面ライダー1号が登場! 声がちゃんと本郷猛なのが、頼もしい!
・仮面ライダー2号の本気めの「2号ライダーキック」をくらっても余裕で撤退するユリシーズ。新旧改造人間のシビアな性能差がわかる珍しいシーン。
・ネプチューン「見たな小僧……お前の命はもらった。」いや、何も見てねぇよ! 言いがかりも甚だしい。海の神が濁った用水路から出てくんな!
・トランポリン撮影の背景がぜんぶ灰色のホリゾントなのが、どうしようもなくテンションの上昇を阻害する。
・生まれた瞬間に上司(キングダーク)にたてつくコウモリフランケン。とりあえずイキればいいと思って……これが若さか!
・喫茶店に紳士的に入ったのに、店長の藤兵衛にフォークで右目をえぐられるキャッティウスの悲哀。やってらんねぇ~!
・人類の存亡をかけた闘いよりも、自分の喫茶店の内装にキズがつくかつかないかを気にする藤兵衛。歴戦をかいくぐってきた男の余裕!
・コウモリフランケンの空撮ふう爆破アクションが、けっこう新鮮。
・Xライダーの「クルーザーアタック」を受けても平気なコウモリフランケンだが、「大丈夫か?」と心配して駆け寄ってくる再生改造人間喫茶店チームの気遣いがあたたかい。「うるさい!」じゃないだろう……
・開始してちょうど折り返しの15分00秒で五人ライダーが勢ぞろい。それに対する藤兵衛の笑顔が実にいい。あと、やけにかっぷくのいい「43」シャツのおさげの娘さん(セリフ無し)も、なんかおもしろい。
・忘れている人に「東京カラカラ作戦」の存在をわざわざ思い出させた上で拉致するという鳥人イカルスの行動の意味不明さが、人間体の容姿もあいまって最高に気持ち悪い。これで邪魔なマサルくんを殺していたら、ジョーカー並みにいい感じのキャラクターなんだが……そんなこと仮面ライダーシリーズで許されるわけないんだよなぁ。
・黒マントをはおって女性の血を飲むコウモリフランケンのキャラクターの不安定さ。それフランケンじゃないよ~!! まぁ「コウモリドラキュラ」じゃなんのひねりもないからなぁ。ところで、「美女」の血じゃないんですね……制作スタッフさん、『 V3』で小野ひずるさんを起用した目はどこに落とした?
・GOD のスパイコウモリを追って住宅街をバイクで駆け抜ける五人ライダー……の後ろに、車両規制をかけている制作スタッフが思いっきり見切れているのがキビしい。隠れろ!! あと、車止め切れてないよ!
・Xライダーのクルーザーの右プロペラしか回ってないのが、なんとも言えない哀愁をさそう。撮影お疲れさまです!!
・今回の再生改造人間軍団の名乗りシーンは、19分35秒後! 神話改造人間10体の名乗りの時点ですでにジンギスカンコンドル、ガマゴエモン、キャッティウス、メドウサが Xライダーと対峙しているので、コウモリフランケンと合わせてその場には15体が出撃しているという陣容。
・ネプチューンの名乗りだけ、両手を前に「ドーン!」と出すしぐさが TVショッピングの司会者みたいでちょっとおもしろい。
・通常の撮影シーンではきれいなのだが、トランポリン撮影のカットだけ、Xライダーのおしりと両ひざが土で汚れている……ちゃんと洗濯してね!
・再生改造人間軍団の中でも、比較的新型(悪の偉人系)のジンギスカンコンドルとガマゴエモンが真っ先に殉職するのはどうなんだろう。他の旧型神話改造人間のみなさんの士気が心配!
・ライダー4人連続の「過去映像使いまわし」変身はちょっと……1号ベルトの風車が回る時の効果音も、オリジナル版じゃなく、なんだかメルヘン少女みたいな「しゃらららら~ん♡」になってるし……おかしいと思わんか!? でも、『仮面ライダーV3対デストロン怪人』での錦晴殿を背景にした志郎の変身の掛け声が撮り直されて「ブイスリャー!」になってるのは、うれしい。
・大乱戦シーンで子門真人の『レッツゴー!!ライダーキック』が流れるのはファンとしてはうれしいのだが、Xライダーとしてはどうなんだろうか……ショッカーせまってねぇし! GODだし!! あと、V3の主題歌『戦え!仮面ライダーV3』が水木一郎バージョンになっているのが、なんと言いますか……宮内さんじゃ、ダメ?
・ヒロインのエツ子さんの、ミニスカートの生足に刺さっている採血用チューブがエロい。
・最後に五人ライダーと手を組む時の、藤兵衛の腕がほれぼれする程ごつい。これこそ、昭和の男の腕だ!!
・エンディングテーマの、子門真人の『かえってくるライダー』は確かに名曲なのだが……Xライダーの存在感が……
・それぞれの愛機を駆りいずこへともなく去っていく五人ライダーと、岡本太郎デザインの飛行船(なぜ!?)から実に感慨深げな表情で見送る藤兵衛の対比が見事なエンディング映像なのだが、どことなく寂しい雰囲気でもある。まさか、仮面ライダーシリーズのオリジナル映画作品が6年おあずけになることを予見しているはずもないだろうが……
ね、見どころはいっぱいあるでしょ? 個人的には、ほんとにそうする必然なんかどこにもないも無いのに、エツ子さんとマサルくん姉弟を怖がらせるためだけに人間体になって近づく鳥人イカルスのくだりが最高に好きです。あれ、GOD機関からは単に「エツ子をさらって来い」って言われてるだけですよね? そこをふくらませて、あそこまで気持ち悪い挙動に走るとは……その、マサルくんを始末しなかったという詰めの甘さが本作最大のミスとなっているだけに(まさしく『仮面ライダー対じごく大使』での再生ザンジオーの役割!)、非常においしいキャラになっていました。
続けて、本作での改造人間のみなさんの努力の軌跡も、どうぞ。
登場した19体中、本作で実際に仮面ライダーたちと戦闘した改造人間は……(殉職 or 画面フェイドアウト順に)
開始から6分35秒後 …… マッハアキレス、Xライダーに普通に殴られ殉職
開始から20分00秒後、奇岩城基地での最終決戦のスタートから
25秒後(1分55秒後)…… ジンギスカンコンドルとガマゴエモン、Xライダーの名前は言わないけど必殺技っぽい同時2点キックで殉職
2分12秒後 …… アルセイデス、Xライダーに奇岩城基地の空中通路から普通に地上に投げ飛ばされ殉職
2分37秒後(4分07秒後)…… キャッティウス、1号に奇岩城の外壁から普通に地上に投げ飛ばされ殉職(ネコのくせに!)
※ジンギスカンコンドルとガマゴエモンとキャッティウスは他の再生改造人間軍団の名乗りシーンの1分30秒前から、奇岩城にたどり着いた Xライダーを包囲してロープで縛りあげているため、()内の時間が正確な戦闘時間である。
3分38秒後 …… 鉄腕アトラス、1号に普通に投げ飛ばされ殉職
3分45秒後 …… 死神クロノス、ライダーマンに普通に投げ飛ばされ殉職
3分55秒後 …… ヘラクレス、V3に普通に投げ飛ばされ殉職
4分02秒後 …… 火焔プロメテス、Xライダーにライドルスティックで普通に投げ飛ばされ殉職
4分13秒後 …… ヒュドラー、2号に普通に投げ飛ばされ殉職
4分15秒後 …… ケルベロス、1号に普通に蹴り飛ばされ殉職
4分22秒後 …… ネプチューン、V3に普通に投げ飛ばされ殉職
同 …… キクロプス、ライダーマンに普通に投げ飛ばされ殉職
4分33秒後 …… パニック、2号に普通に投げ飛ばされ殉職
4分35秒後 …… キマイラ、鳥人イカルス、ユリシーズ、誰に投げ飛ばされたのか不明だがとにかく殉職
※キマイラは奇岩城の名乗りシーンでもお台場の並びカットでもいなかったのだが、なぜか殉職する瞬間だけ出てくる。遅れて到着したのか?
※ユリシーズもお台場の並びカットにはいなかったが、なぜか殉職する瞬間だけ出てくる。間に合ってよかったね。
4分40秒後(6分10秒後)…… メドウサ、Xライダーに普通にライドルスティックでぶん殴られ殉職
※メドウサは、他の再生改造人間軍団の名乗りシーンの1分30秒前から、奇岩城にたどり着いた Xライダーを包囲してロープで縛りあげているため、()内の時間が正確な戦闘時間である。コウモリフランケンよりも長く闘ってるよ! お疲れさまでした!!
6分08秒後 …… コウモリフランケン、1号の「ライダーキック」で右の翼をもがれ、2号の「2号ライダーキック」で左の翼をもがれ、5人ライダー連携の必殺技「 Xライダースーパーファイブキック」により殉職
ちょっと殴られたくらいで画面から消えていくマッハアキレスの扱いが雑すぎて涙が出てくるのですが、仮面ライダー的文法で言えば、あれは殉職したっていう解釈でいいんじゃなかろうかと。同じ場所にいたキマイラは、最後の最後で出てくるのにねぇ。遺体で。
結局本作は、新型のコウモリフランケンの魅力が埋もれちゃってるのがけっこう痛いんだよなぁ。
まず、目新しい要素が少ないというがツラいですね。「女性の生き血がエネルギー源」の設定からして、ショッカーの元祖最強改造人間ゲバコンドルがオーバーラップするんですが、初戦で仮面ライダー1号にしっかり圧勝しているゲバコンドルに対して、コウモリは Xライダーを圧倒できないままクルーザーアタックを受けて撤退してますから。死なないだけマシといえばそうなんですが、その強さがあんまりピンとこないんですよね。口でいくら最強だ最強だとのたまっていても、勝てなきゃねぇ。クライマックスでの、奇岩城基地を放棄してお台場の草原に戦場を移した判断も逃走にしか見えないし、五人ライダーからも一方的にいたぶられているようにしか見えないしで……これは五人ライダーを相手にして優勢に持っていけという方が無理な話なわけなんですが、やっぱり、特別強そうには見えないんだよなぁ。最後も翼をもがれて無様だったし。
人間、改造されてもデカい口は叩くなという教訓ですな。実るほど こうべを垂れる 稲穂かな!!
今回取り上げた映画『五人ライダー対キングダーク』は、決してあるシリーズの最終作として作られたものではなく、本編シリーズも『仮面ライダーX 』から『アマゾン』、『ストロンガー』へと続いていきます。そうではあるのですが、オリジナル映画作品としてはいったんの区切りとなった本作は、そうなっただけの「理由」を随所ににおわせた、実に味わい深い作品になっているのでした。これを「つまんない」の一言で片づけるのは、いかにももったいない! そこから何が学ばれ、どんな打開策が生まれていったのかを後続作品の中に探すのも、ひとつの楽しみなのではないでしょうか。ただ、個人的に私は「昭和仮面ライダー第2期」にうといところもあるので、昭和ライダーに関するあれやこれやをつづるのは、ここでひとまずおしまいにしたいと思います。
さぁ、いよいよ今年は庵野秀明監督による『シン・仮面ライダー』の公開年でもあります! やたらとくすんだ緑のライダー、うなじで後ろ髪がなびいているライダー、そして、日本を代表する名優・池松壮亮のライダー!! 楽しみですね~。
ちらっと出てくるシン・蜘蛛男のお姿から見て、ショッカーの改造人間側のデザインがだいぶ『仮面ライダー THE FIRST』よりになっているのがちと心配なのですが、ぜひとも、この令和の御代に悪の秘密結社の威厳と恐怖を蘇らせていただきたいと思います! くれぐれも、デジタル出演とか関智一さんのモノマネとか、「イカでビール」とかは、やめてね!!
お天気が良くてもさみー!! みなさま、どうもこんにちは。そうだいでございます。
早くも1月が終わろうとしておりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。こちら山形は、まだ冬の終わりは見えないやねぇ。この冬は雪が多かったな~! 主に年が明けてからでしたが、雪かきいちばん多くやったんじゃないかしら。早起きがきつい……
コロナ、コロナ言ってもう2年になりますから、仕事場でのうんぬんは慣れっこになっていたつもりなのですが、いよいよ山形市が「まん防」に入ってしまいまして、仕事の後の「夜ラーメン」という背徳の時間が無くなってしまい、これにはさすがにショックを受けています。わたしの至福のひとときが……
毎日のように「感染者数過去最多を更新」のニュースが流れる時期が、また来ちゃったねぇ。家で楽しく過ごす方法はいくらでもある時代なんですが、気分がくさくさしていけねぇや。来月にも庄内地方の温泉にでも行こうかと考えていたのですが、それもまた夢のまた夢のようで。待ってろよ、春!! 「米沢上杉まつり」、今年はどうかな……こちとら、身体の準備だけは万端なつもりなんですけどね。
さてさて、今回もまた、そんな有り余るおうち時間を我が『長岡京エイリアン』の宿題消化に充てようという、なんとも不毛きわまりないマッチポンプの「やっと本文コーナー」でございます。今回も「7年ぶり」よ! 古酒でも造ってんのか!?
お題は、ついにここまでやってきました、映画『五人ライダー対キングダーク』(1974年7月公開)! ある意味、悠久の仮面ライダーシリーズの、最初の一区切りを象徴する作品であると思います。
映画のタイトルにはないのですが、この作品は当時放送されていた「仮面ライダーシリーズ」第3作『仮面ライダーX 』のオリジナル映画作品であります。タイトルの「五人ライダー」とは、言うまでもなく主人公の Xライダーと、その時点までのオールライダーである1号、2号、V3、そして本作で初めて復活するライダーマンのことですね。
正直、主役なんだからタイトルに Xライダーの名前くらい出してあげてもいいじゃないかと思ってしまうのですが、映画のセールスポイントが「五人ライダー」の集合なんだもんね。しかたねぇかぁ。
この作品、シリーズ恒例の再生改造人間軍団あり、過去ライダーのゲスト出演あり、大爆破&アクションありの天湖森夜な展開を、TV本編ではなかなか見られないド派手な規模で送る豪華作なのですが、な~んか、全体的に雰囲気がヘンなんですよね! 別に主人公が大ケガで降板したとか失踪しちゃったとかいう緊急事態はなかったはずなのですが、作品としての完成度がおかしい! ストーリーの展開が急すぎて、子ども向け作品とは思えない「筋の省略」が多いのです。
端的に言っちゃえば「説明不足で意味不明な部分が多い」ということになるのですが、これは明らかに「制作スタッフが意図的にはしょってる」わけなので、そもそも説明する必要がないという判断があったのでしょう。つまり、「説明できなかった」じゃなくて「説明しなかった」と! プロがいらないと思って捨ててるんですから、そこを批判するのは野暮のような気もするんですよね。デイヴィッド=リンチ監督の映画を「わけわかんない!」と批判したり、ブラックコーヒーを飲んで「なにこれ、にが~い!!」と言うようなもんだと思うんです。そういうもんなの!ということで。
でもさぁ……これ、直球どストレートの子ども向け作品ですからね。子どもにモネとかルノワールみたいな印象派の絵画を見せて、理解できるかどうか……いや、印象派だったらまだわかるかもしんないけど、この映画、カンディンスキーくらいのレベルなとこもあるしなぁ。おもしろけりゃいいのかな?
簡単に言ってしまいますと、本作はたった29分というなかなかタイトな尺の中に「1、歴代ライダー集合」、「2、GOD機関の東京カラカラ作戦」、「3、Xライダー打倒の最強改造人間の登場」という3つのトピックを詰め込んでいます。まぁ、そこは料理のしようによってどうとでも収まるはずなのですが、本作の場合は、1に必然性を持たせるために2を Xライダーひとりではカバーできない規模の広範囲にわたって展開させます。それはいいのですが、それと同時進行で3のために Xライダーの能力を『ウルトラセブン』のガッツ星人方式にえっちらおっちら観測しているのが、ややこしい! つまり、観客はシーンが変わるたびに1&2の話を見ているのか3の話を見ているのかをいちいち推測しなければならなくなるので、途中からもうどうでもいいやモードになってしまうのです。最終的に1に従事した再生改造人間軍団のみなさんも3のコウモリフランケンも、都合よく集合してやられるので結果オーライなんですが。
こういった感じの、特撮ヒーロー番組における悪の秘密組織が「組織としての作戦」と「邪魔なヒーローの打倒」を同時進行でやってしまおうとするクセは、映画『仮面ライダー対じごく大使』の先例を見てもおわかりの通り、秘密で進めるべき作戦が、よりにもよって一番知られたくないヒーローにバレるという最悪の「あぶはち取らず」に終わってしまうオチがほとんどの、「悪の秘密組織あるある」ですね。なにごとも、欲ばりはよくない!!
それ自体はよくあるパターンなのですが、今回の場合、そこらへんの混線具合が異様に不親切に感じられます。作品の中で、だぁれも物語全体の大枠を語ってくれないので、まじめに見ている人ほどストレスがたまる内容になっているんですね。せいぜい、仮面ライダー2号がクライマックスの手前で語る、
「『東京カラカラ作戦』とは、東京中の水を涸らしてしまう作戦だ!」
くらいが関の山だし、2号がそんな超絶推測にいたった経緯もぜんぜん描写されないし……そう聞いて、作中で事件に巻き込まれたマサル少年も、「うん……よくわかんないけど、たぶんそう。」という表情で、うつろな目で虚空を見つめ小さくうなずくばかりなのですが、老若男女を問わず、この作品を観ている者はそんな表情になってしまうことでしょう。マサルくん、トレンディエンジェルの斎藤さんに似てるし、滑舌も絶妙にギリギリで非常にいい感じです。
ここらへんのストレスって、本作と先ほどの『仮面ライダー対じごく大使』とを比較してしまうと一目瞭然なのですが、要するに本作では、物語の大枠を簡単に説明してくれたり、物語全体の流れに関わっていたりする地獄大使のような「トリックスター」がいないんですよね。いないというか、いるんだけどほとんど仕事してない! 誰が本作のトリックスターなのかと言いますと、それは言うまでもなく、地獄大使と同じ立場にいる、東京カラカラ作戦と Xライダー打倒を一緒にやっちゃおうという愚挙に出た GOD機関大幹部・キングダークその人です。アジトの奥で寝そべってヴエーとかうなってないで、もうちょっとしゃべれやー!!
っつうことで、今作のいちばんの戦犯である、大幹部キングダークについて。
大幹部? 最高幹部? それとも……? 謎の巨大ロボット・キングダークとは( Wikipediaより)
キングダークは、GOD機関の大幹部にして巨大ロボット。仮面ライダーシリーズ初の巨大キャラクターである。身長26m、体重5t。
『仮面ライダーX 』第22話(1974年7月13日放送)から登場(第21話では声のみの登場)。前任の GOD機関大幹部・再生アポロガイストの殉職後に着任した2代目大幹部。
鋼の全身を黒いマントで包んだ巨人型ロボット。普段はアジトの奥で、涅槃仏のように寝転がって頬杖をついている。口からの毒ガスや目からの破壊光線、指先からのロケット弾など、多彩な武器を持つ。
南原光一博士が開発した、すべての物質をエネルギーに変換する「RS装置」を体内に組み込んで起動する予定であったが、すでに RS装置を完成させていた南原博士は、その悪用を恐れて装置の設計図を9枚に裂き、分散させてしまう。分割された設計図を奪還すべく、キングダークは悪人改造人間軍団を次々と投入して Xライダーとの設計図争奪戦を繰り広げる。
キングダークの巨体は、横になった姿の実物大セットが作られ圧倒的な存在感を示した。セットの制作は佐久間正光が指揮を執った。目と口には開閉ギミックを備えている。立ち上がった姿は着ぐるみで表現されたが、実物大の造形物とは印象の異なるものであった。
日本支部大幹部赴任期間1974年7~10月、全15作戦 ※(複)表記は X以外の仮面ライダーとも交戦した改造人間
ジンギスカンコンドル、ガマゴエモン、コウモリフランケン(複)、サソリジェロニモ、カブト虫ルパン、ヒトデヒットラー、再生改造人間軍団(複)、クモナポレオン(複)、カメレオンファントマ、ヒルドラキュラ、トカゲバイキング、アリカポネ、ムカデヨウキヒ(複)、タイガーネロ(複)、サソリジェロニモJr.
ということで、今回の「東京カラカラ作戦」はキングダークにとって3回目の作戦ということになります。まだ駆け出しなのね! これまでの悪の大幹部と違ってだいぶ図体のデカい彼なのですが、やっぱり作戦は14~5回くらいの失敗で限界が来ているようですね。
駆け出しとは言いましても、この、前任のアポロガイスト時代の改造人間たちもほぼ全員フル動員した GOD機関の再生改造人間オールスター感謝祭状態は、これまでのオリジナル映画に比べても規格外のもので、たいていこういう場合は、自分の直接指揮する「悪の偉人改造人間」が中心となって、前任者の管轄にあった「神話改造人間」のみなさんは数名チョイスされるだけで肩身が狭いという人選が通例なのですが(死神博士しかり地獄大使しかり)、今回のキングダークはかなり寛大に、ボーダレスに作戦参加者を募っているということになります。
それだけ GOD機関内での人事権を自由に行使できるということは、キングダークはこれまでの大幹部とはちょっと違う次元の権力を持っているということになり、ということはつまり……ってなわけで、『仮面ライダーX 』本編の最終話に明らかになるキングダークの正体につながる伏線が、すでにこの映画の時点でほのめかされているのは、さすがですね! いや、ただ単に GOD機関の改造人間が少ないから見境なくかき集めただけなんじゃ……というツッコミは、なしだ!!
ところで、Wikipediaの記事にもある、悪名高い「実物大の造形物とは印象の異なる」着ぐるみなのですが、これはやっぱり、先に出た実物大セットがカッコよすぎたのが原因ですよね。セットのどこがカッコいいのかと言うと、たぶんあの「肩幅の広さ」なんじゃなかろうかと。逆に言えば「小顔」なわけで、着ぐるみの場合、中にアクターさんが入ることを考えると、顔と身体の比率が実物大セットのあれほど離れたものにはなりえないと思うんですよ。大谷翔平さんみたいなとんでもない体型のアクターさんでもいないかぎり。もちろん、着ぐるみの質感の問題もあったのでしょうが、なにげに着ぐるみでは表現できないデザインに、あのセットは挑戦していたのではないかと。やっぱりスタイルって大事ですよね。
話をキングダークから物語に戻しますが、結局本作は、コウモリフランケンによる Xライダー打倒というひとつの目的は失敗したものの、GOD機関の「東京カラカラ作戦」が成功したのか失敗したのかがはっきりしないまま終わります。まぁ、作戦に従事していた再生改造人間軍団のみなさんがもれなく殉職したし、その後東京がカラカラになったという話も聞かないので「頓挫したんだろうな。」みたいなふわっとしたエンディングになっているのが、いくらなんでもどんなもんなのか……
これが、30分弱の枠ということで時間が短すぎたからこうなってしまったのか。でも問題は、脚本を担当したのがあの伊上勝先生だってことなんですよね。当然、仮面ライダーシリーズの第一功労者であるわけなんですが、92分もあった映画『恐竜・怪鳥の伝説』(1977年)のとっちらかりようを思い出すだに、単に時間だけの問題ともいえない気もするような……そもそも、あれ伊上さんの脚本じゃないらしいんですけどね。
ここは非常に難しい問題なのですが、本作に限らず、作品全体に「もうホラ、ここらへんは雰囲気で。」とか、「いちいち言わなくても、わかるよね?」みたいな空気が蔓延しているのって、やっぱり作り手の驕りなんじゃないかと思うんですよね。いかにも初心者お断り、わかる人だけついてこい!って感じで。
それだけ、多くの観客にそのジャンルのルールが浸透しているという恵まれた前提があってこその話なんでしょうが、それは『仮面ライダーX 』じゃなくて、そこにいたるまでの先輩作品の開拓のおかげだもんねぇ。こうなってくると、単体作品の魅力で戦っていないというか、ブームの「まとめ」に入ってきたというか、円熟期を通り過ぎた「まつりのあと」感がにじみ出てきてしまうと思うんだな。それは、他の『マジンガーZ 』だなんだという外的要因に追われてのことではなく、自身の中から自然と発生してきてしまう「終わりの始まり」なのでしょう。プロだとしても、人間、続ければ馴れは生まれますよね。
よそのウルトラシリーズにしろゴジラシリーズにしろ、非日常なはずのスーパーヒーローや怪獣、宇宙人たちが毎回毎週出てきて当たり前、となった時からどう勝負していくか。ここが作り手の本当の修羅場であり、腕の見せ所でもあるんでしょうねぇ。
当然、『仮面ライダーX 』も恐ろしいぐらいのプレッシャーの大きさに耐えながら、多くの新機軸への挑戦に彩られた作品であるわけです。特に本作でも堪能できる、主演の速水亮さんのスピーディなアクションとドスのきいた声の迫力はすばらしい! 前作の宮内洋さんのハデさの陰に隠れがちですが、やっぱり危険なシーンを変身してない本人がこなせるのって、カッコいいですよね。
また変身した後も、特にクライマックスの奇岩城基地での五人ライダーと再生改造人間軍団との殺陣は、『仮面ライダー』時代から格段のレベルアップをとげていると思います。 Xライダーは棒術も当然すごいんですが、足技もまた華麗なんだよなぁ。日々研鑚のたまものよね!
悪の組織のほうの挑戦もキングダークだけにとどまらず、まず「外国の神さま」を悪の側にしたてているというのが、色々問題はあるにしてもものすごいことです。アポロガイストなんか、正義のヒーローでもいいようなビジュアルだし。どストレートに組織の名前が「 GOD機関」というのも、いかにも石ノ森章太郎先生ごのみなアイロニーにあふれていて最高ですよ! 改造人間たちのデザインも、もうこれでもかってくらいに左右非対称で不気味! 本作の目玉のコウモリフランケンも、左の口角が下がっている絶妙に左右非対称な顔面の造形がすばらしいです。つぎはぎだらけの青白くふやけた肉体も気持ち悪~!
ちょっと、子どもにとっつきにくい怖さがあるというデメリットも大きいんですが、本作でも跳梁跋扈する神話改造人間のみなさんは、な~んか記憶に残るインパクトに満ちています。ユリシーズこわい~! よく見るとアクターさんの生の目が奥に見えるという、シリーズ伝統の「こわっ。」イズムが生きていますね。
最終的に『仮面ライダーX 』の挑戦が成功したかどうかは判断が難しいところですが、まさに「冒険者に失敗など存在しないッ!!」ということで、その果敢なチャレンジ魂は、その後に生きる私たちにとって、絶対に忘れてはいけない先人の教訓となるのではないでしょうか。まぁいいんだ、なんてったってシリーズは半世紀も続いてくんだから! セーフセーフ!!
とにもかくにも、今回もまた、本編には観るべきポイントや「?」な笑いどころがたくさんあるのですが、今回も今回とて、だいぶ字数がかさんできてしまいましたので、そのごくごく一部を、かいつまんでのメモにとどめておきたいと思います。ホント、本作も超濃厚な30分弱ですよ!
・オープニングののっけからの五人ライダー集結は威勢が良いのだが、ロケ地の天気が悪い……そして、ライダーマンがなんか変! 中身が山口暁さんだったら最高だったのだが……ザボーガーで忙しいんじゃ、しょうがない!
・開始して3分00秒後に再生改造人間(ジンギスカンコンドルとガマゴエモン)が登場、3分30秒後に Xライダーに変身。展開がかなり早い!
・「地下から声が聞こえる」って言って様子を見に外に出るマサルくんが、2階の外階段から降りてくるのって、おかしくない? 単に駐車ガレージに人がいるだけなんじゃ……
・開始7分25秒後にさっそく仮面ライダー1号が登場! 声がちゃんと本郷猛なのが、頼もしい!
・仮面ライダー2号の本気めの「2号ライダーキック」をくらっても余裕で撤退するユリシーズ。新旧改造人間のシビアな性能差がわかる珍しいシーン。
・ネプチューン「見たな小僧……お前の命はもらった。」いや、何も見てねぇよ! 言いがかりも甚だしい。海の神が濁った用水路から出てくんな!
・トランポリン撮影の背景がぜんぶ灰色のホリゾントなのが、どうしようもなくテンションの上昇を阻害する。
・生まれた瞬間に上司(キングダーク)にたてつくコウモリフランケン。とりあえずイキればいいと思って……これが若さか!
・喫茶店に紳士的に入ったのに、店長の藤兵衛にフォークで右目をえぐられるキャッティウスの悲哀。やってらんねぇ~!
・人類の存亡をかけた闘いよりも、自分の喫茶店の内装にキズがつくかつかないかを気にする藤兵衛。歴戦をかいくぐってきた男の余裕!
・コウモリフランケンの空撮ふう爆破アクションが、けっこう新鮮。
・Xライダーの「クルーザーアタック」を受けても平気なコウモリフランケンだが、「大丈夫か?」と心配して駆け寄ってくる再生改造人間喫茶店チームの気遣いがあたたかい。「うるさい!」じゃないだろう……
・開始してちょうど折り返しの15分00秒で五人ライダーが勢ぞろい。それに対する藤兵衛の笑顔が実にいい。あと、やけにかっぷくのいい「43」シャツのおさげの娘さん(セリフ無し)も、なんかおもしろい。
・忘れている人に「東京カラカラ作戦」の存在をわざわざ思い出させた上で拉致するという鳥人イカルスの行動の意味不明さが、人間体の容姿もあいまって最高に気持ち悪い。これで邪魔なマサルくんを殺していたら、ジョーカー並みにいい感じのキャラクターなんだが……そんなこと仮面ライダーシリーズで許されるわけないんだよなぁ。
・黒マントをはおって女性の血を飲むコウモリフランケンのキャラクターの不安定さ。それフランケンじゃないよ~!! まぁ「コウモリドラキュラ」じゃなんのひねりもないからなぁ。ところで、「美女」の血じゃないんですね……制作スタッフさん、『 V3』で小野ひずるさんを起用した目はどこに落とした?
・GOD のスパイコウモリを追って住宅街をバイクで駆け抜ける五人ライダー……の後ろに、車両規制をかけている制作スタッフが思いっきり見切れているのがキビしい。隠れろ!! あと、車止め切れてないよ!
・Xライダーのクルーザーの右プロペラしか回ってないのが、なんとも言えない哀愁をさそう。撮影お疲れさまです!!
・今回の再生改造人間軍団の名乗りシーンは、19分35秒後! 神話改造人間10体の名乗りの時点ですでにジンギスカンコンドル、ガマゴエモン、キャッティウス、メドウサが Xライダーと対峙しているので、コウモリフランケンと合わせてその場には15体が出撃しているという陣容。
・ネプチューンの名乗りだけ、両手を前に「ドーン!」と出すしぐさが TVショッピングの司会者みたいでちょっとおもしろい。
・通常の撮影シーンではきれいなのだが、トランポリン撮影のカットだけ、Xライダーのおしりと両ひざが土で汚れている……ちゃんと洗濯してね!
・再生改造人間軍団の中でも、比較的新型(悪の偉人系)のジンギスカンコンドルとガマゴエモンが真っ先に殉職するのはどうなんだろう。他の旧型神話改造人間のみなさんの士気が心配!
・ライダー4人連続の「過去映像使いまわし」変身はちょっと……1号ベルトの風車が回る時の効果音も、オリジナル版じゃなく、なんだかメルヘン少女みたいな「しゃらららら~ん♡」になってるし……おかしいと思わんか!? でも、『仮面ライダーV3対デストロン怪人』での錦晴殿を背景にした志郎の変身の掛け声が撮り直されて「ブイスリャー!」になってるのは、うれしい。
・大乱戦シーンで子門真人の『レッツゴー!!ライダーキック』が流れるのはファンとしてはうれしいのだが、Xライダーとしてはどうなんだろうか……ショッカーせまってねぇし! GODだし!! あと、V3の主題歌『戦え!仮面ライダーV3』が水木一郎バージョンになっているのが、なんと言いますか……宮内さんじゃ、ダメ?
・ヒロインのエツ子さんの、ミニスカートの生足に刺さっている採血用チューブがエロい。
・最後に五人ライダーと手を組む時の、藤兵衛の腕がほれぼれする程ごつい。これこそ、昭和の男の腕だ!!
・エンディングテーマの、子門真人の『かえってくるライダー』は確かに名曲なのだが……Xライダーの存在感が……
・それぞれの愛機を駆りいずこへともなく去っていく五人ライダーと、岡本太郎デザインの飛行船(なぜ!?)から実に感慨深げな表情で見送る藤兵衛の対比が見事なエンディング映像なのだが、どことなく寂しい雰囲気でもある。まさか、仮面ライダーシリーズのオリジナル映画作品が6年おあずけになることを予見しているはずもないだろうが……
ね、見どころはいっぱいあるでしょ? 個人的には、ほんとにそうする必然なんかどこにもないも無いのに、エツ子さんとマサルくん姉弟を怖がらせるためだけに人間体になって近づく鳥人イカルスのくだりが最高に好きです。あれ、GOD機関からは単に「エツ子をさらって来い」って言われてるだけですよね? そこをふくらませて、あそこまで気持ち悪い挙動に走るとは……その、マサルくんを始末しなかったという詰めの甘さが本作最大のミスとなっているだけに(まさしく『仮面ライダー対じごく大使』での再生ザンジオーの役割!)、非常においしいキャラになっていました。
続けて、本作での改造人間のみなさんの努力の軌跡も、どうぞ。
登場した19体中、本作で実際に仮面ライダーたちと戦闘した改造人間は……(殉職 or 画面フェイドアウト順に)
開始から6分35秒後 …… マッハアキレス、Xライダーに普通に殴られ殉職
開始から20分00秒後、奇岩城基地での最終決戦のスタートから
25秒後(1分55秒後)…… ジンギスカンコンドルとガマゴエモン、Xライダーの名前は言わないけど必殺技っぽい同時2点キックで殉職
2分12秒後 …… アルセイデス、Xライダーに奇岩城基地の空中通路から普通に地上に投げ飛ばされ殉職
2分37秒後(4分07秒後)…… キャッティウス、1号に奇岩城の外壁から普通に地上に投げ飛ばされ殉職(ネコのくせに!)
※ジンギスカンコンドルとガマゴエモンとキャッティウスは他の再生改造人間軍団の名乗りシーンの1分30秒前から、奇岩城にたどり着いた Xライダーを包囲してロープで縛りあげているため、()内の時間が正確な戦闘時間である。
3分38秒後 …… 鉄腕アトラス、1号に普通に投げ飛ばされ殉職
3分45秒後 …… 死神クロノス、ライダーマンに普通に投げ飛ばされ殉職
3分55秒後 …… ヘラクレス、V3に普通に投げ飛ばされ殉職
4分02秒後 …… 火焔プロメテス、Xライダーにライドルスティックで普通に投げ飛ばされ殉職
4分13秒後 …… ヒュドラー、2号に普通に投げ飛ばされ殉職
4分15秒後 …… ケルベロス、1号に普通に蹴り飛ばされ殉職
4分22秒後 …… ネプチューン、V3に普通に投げ飛ばされ殉職
同 …… キクロプス、ライダーマンに普通に投げ飛ばされ殉職
4分33秒後 …… パニック、2号に普通に投げ飛ばされ殉職
4分35秒後 …… キマイラ、鳥人イカルス、ユリシーズ、誰に投げ飛ばされたのか不明だがとにかく殉職
※キマイラは奇岩城の名乗りシーンでもお台場の並びカットでもいなかったのだが、なぜか殉職する瞬間だけ出てくる。遅れて到着したのか?
※ユリシーズもお台場の並びカットにはいなかったが、なぜか殉職する瞬間だけ出てくる。間に合ってよかったね。
4分40秒後(6分10秒後)…… メドウサ、Xライダーに普通にライドルスティックでぶん殴られ殉職
※メドウサは、他の再生改造人間軍団の名乗りシーンの1分30秒前から、奇岩城にたどり着いた Xライダーを包囲してロープで縛りあげているため、()内の時間が正確な戦闘時間である。コウモリフランケンよりも長く闘ってるよ! お疲れさまでした!!
6分08秒後 …… コウモリフランケン、1号の「ライダーキック」で右の翼をもがれ、2号の「2号ライダーキック」で左の翼をもがれ、5人ライダー連携の必殺技「 Xライダースーパーファイブキック」により殉職
ちょっと殴られたくらいで画面から消えていくマッハアキレスの扱いが雑すぎて涙が出てくるのですが、仮面ライダー的文法で言えば、あれは殉職したっていう解釈でいいんじゃなかろうかと。同じ場所にいたキマイラは、最後の最後で出てくるのにねぇ。遺体で。
結局本作は、新型のコウモリフランケンの魅力が埋もれちゃってるのがけっこう痛いんだよなぁ。
まず、目新しい要素が少ないというがツラいですね。「女性の生き血がエネルギー源」の設定からして、ショッカーの元祖最強改造人間ゲバコンドルがオーバーラップするんですが、初戦で仮面ライダー1号にしっかり圧勝しているゲバコンドルに対して、コウモリは Xライダーを圧倒できないままクルーザーアタックを受けて撤退してますから。死なないだけマシといえばそうなんですが、その強さがあんまりピンとこないんですよね。口でいくら最強だ最強だとのたまっていても、勝てなきゃねぇ。クライマックスでの、奇岩城基地を放棄してお台場の草原に戦場を移した判断も逃走にしか見えないし、五人ライダーからも一方的にいたぶられているようにしか見えないしで……これは五人ライダーを相手にして優勢に持っていけという方が無理な話なわけなんですが、やっぱり、特別強そうには見えないんだよなぁ。最後も翼をもがれて無様だったし。
人間、改造されてもデカい口は叩くなという教訓ですな。実るほど こうべを垂れる 稲穂かな!!
今回取り上げた映画『五人ライダー対キングダーク』は、決してあるシリーズの最終作として作られたものではなく、本編シリーズも『仮面ライダーX 』から『アマゾン』、『ストロンガー』へと続いていきます。そうではあるのですが、オリジナル映画作品としてはいったんの区切りとなった本作は、そうなっただけの「理由」を随所ににおわせた、実に味わい深い作品になっているのでした。これを「つまんない」の一言で片づけるのは、いかにももったいない! そこから何が学ばれ、どんな打開策が生まれていったのかを後続作品の中に探すのも、ひとつの楽しみなのではないでしょうか。ただ、個人的に私は「昭和仮面ライダー第2期」にうといところもあるので、昭和ライダーに関するあれやこれやをつづるのは、ここでひとまずおしまいにしたいと思います。
さぁ、いよいよ今年は庵野秀明監督による『シン・仮面ライダー』の公開年でもあります! やたらとくすんだ緑のライダー、うなじで後ろ髪がなびいているライダー、そして、日本を代表する名優・池松壮亮のライダー!! 楽しみですね~。
ちらっと出てくるシン・蜘蛛男のお姿から見て、ショッカーの改造人間側のデザインがだいぶ『仮面ライダー THE FIRST』よりになっているのがちと心配なのですが、ぜひとも、この令和の御代に悪の秘密結社の威厳と恐怖を蘇らせていただきたいと思います! くれぐれも、デジタル出演とか関智一さんのモノマネとか、「イカでビール」とかは、やめてね!!