長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

これぞ21世紀の耳嚢!? YouTubeの『都市伝説考察チャンネル THE つぶろ』 ~資料編1~

2024年05月19日 20時52分13秒 | ミステリーまわり
 いや~、最近ドはまりにはまってるんです、このチャンネルに。

 今、私そうだいが毎回視聴を楽しみにしてるのって、『光る君へ』とこのチャンネルの動画ですね。
 昔っから、こういう考察・検証系の TV番組って大好きだったんです。『驚きももの木20世紀』とかね~。
 でも、『特命リサーチ』とか『アンビリバボー』とか、番組が長生きするとカルトでシリアスなそっち系はいつの間にかフェイドアウトしちゃって、感動~だの健康~だのおもしろ~だのって感じになっちゃうんですよねぇ。変節しおって!

 具体的にどこらへんが大好きなのかは、以下のリストを2024年5月現在ぶんまで仕上げてからつづりたいと思います。なにしろ、このチャンネルは「ほぼ日刊」なんですよ。ペースがむちゃくちゃ!!
 それを最初っから追ってる最中なんで、一体いつ今日昨日の動画にたどり着けるのかは皆目見当もつかないのですが、1本のこさず楽しみつくしております。THE つぶろさん、ありがとうございます!!

 実は、ただ YouTubeで好きなチャンネルがあるってだけなら我が『長岡京エイリアン』で記事にさせていただくつもりはなかったのですが、えっちらおっちら観ている中、ある回の動画で THE つぶろさんが、私の住んでいる山形県山形市にかなり近い地域のご出身である可能性が高いことに気づきまして、これもなにかの縁だべと、勝手に個人リストを作成させていただくことといたしました。むがさり、むがさり!

 勝手にこんなリスト作ったら、やっぱ怒るかな。
 いやいや、こんなアカダニみたいな微小ブログがあーだこーだ言ってても、関係ないですよね?
 大好きなんです、見逃してください!!(田中圭一先生ふうに)


『都市伝説考察チャンネル THE つぶろ』 個人的に興味があった動画リスト1 ≪2019年1月~21年10月≫
※私そうだいが個人的に「おっ。」と思った動画だけをリストアップしたもので、全動画のリストではありません(動画は2024年5月時点で1500本前後あるそうです……)
※「……」をはさんだ左が動画の内容、右側が大まかな真相です(このチャンネルの動画の面白さは真相にいたるまでの「考察」の経路にあると思いますので、ネタばらしの意図はございません)
※内容の頭に「〇」が付いているものは、私そうだいが特に面白いと感じた動画です

2019年1月
・謎の映像『Blank room soup』1 …… 登場するぬいぐるみキャラクター「RayRay 」の作者による創作映像
・エリサ=ラム怪死事件1 …… 精神疾患からの自殺か事故死
・ジョイス=チュー『I MiSS U』のMVに映った飛び降り自殺? ……制作者の演出
・幻のゲームソフト『手紙』…… 実在したホラーゲームだが実際に起きたという怪談はデマ
・秩父貯水槽女性遺体遺棄事件にまつわる怪談 …… 実際にあったが一部誇張あり
〇都市伝説「鬼門を開ける方法」…… 2008年に実際に発生した東京都目黒区の男性怪死事件とは無関係のデマ
・都市伝説「『きさらぎ駅』の謎」…… 創作
・都市伝説「『ミュージックステーション』の逆拍手」…… デマで逆拍手に呪いのような意味も無い
2月
・三重県中河原海岸橋北中学校水難事故にまつわる怪談 …… デマ
・Yahoo知恵袋の都市伝説1 俳優・大杉漣の死の予告 …… 偶然と Yahoo知恵袋の不具合
〇幻の動画『タクラーン村の少女』…… 動画自体が存在しないデマ?
・ダークウェブ発の違法ゲーム『Sadsatan』…… YouTuber が創作した捏造
〇『探偵!ナイトスクープ』1 謎のビニール紐1 …… 精神疾患の行動のため TVで放送できず
・長岡京市蕨採り主婦殺人事件・第3の被害者? …… 事件同士の関連は無い
・ゲーム『トロと休日』の心霊写真 …… 制作スタッフのいたずらか
・「大阪エレベーター殺人事件」の謎 …… 噂になった事件は存在せず、エレベーターに緊急停止ボタンの設置義務はない
・ゲームソフト『コワイシャシン』制作時の怪談 …… デマ
・大島てる1 アイドルが感電死した東京・高田馬場のプール施設 …… デマ
・妖怪くねくねの起源 …… 2001年にオカルト板に投稿された怪談『分からない方がいい』が原作
・不動産サイトに掲載された「押入れの心霊写真」…… 不動産社員のいたずら
・ロシアからの抗議で発売停止されたゲーム『臨界点』…… デマ
・放送禁止になった香港の怖いCM …… 映像の不自然な点は編集の都合によるものであり放送禁止にもなっていない
・祟り神リョウメンスクナのミイラ …… デマ
・物部天獄の呪具「鬼こけし」…… 創作されたジョークグッズ
・プレイステーション2の正体不明のセーブデータ「身」の呪い …… 偶然にできたバグか捏造
・ベトナム帰還兵の都市伝説「ラジールカが来る」…… 2007年に日本のネットに上がった創作怪談
・YouTube に上げられたソ連の12km 地下掘削計画の「地獄の音」…… 計画は事実だが音声は捏造された偽物
・都市伝説「お憑かれさまでした」…… 2006年のネット掲示板に上がった釣りスレ
〇横浜市旭区白根のミステリースポット「時間の止まる場所」1 …… 鍛冶久保公園もしくは愛宕公園に実在するが一部誇張あり
・月で発見されたミイラ「かぐや姫」…… 海外アーティストのいたずら
・都市伝説「昭和65年製の1万円硬貨」…… 2つの実在の事件が混同されたデマ
・ZARD 坂井泉水の死の直前に聞こえた歌声 …… 死去報道の直後に捏造されたデマ
・超深層ウェブ「マリアナ・ウェブ」の存在 …… デマ
3月
・2036年からやって来た未来人ジョン=タイター …… IT専門知識のある人物が創作したいたずら
・病院の廃墟から大量のホルマリン漬け胎児が発見 …… 違法中絶胎児の処分に困った関係者が隠していた所有品
・会津若松母親殺害事件の犯人のネット書き込み? …… 事件とは無関係
・2058年からやって来た未来人・原田 …… 2018年の異常気象のみ当たっている偶然
〇禁足地「八幡の藪知らず」の都市伝説 …… 宗教・法律的な理由で入ることが禁じられている
・都市伝説「須磨海岸にて」…… 2004年のスレ主の自作自演怪談が発祥
・都市伝説「泡姫」…… 2ちゃんねるの自作自演スレが発祥

2020年6月
・2007年能登半島地震「苗山さん事件」…… 多忙時に責任者の名前を使用した別人が適当な対応をした
・アメリカのアーケードゲーム『Polybius』の都市伝説 …… ゲーム自体が存在しないデマ
・巣鴨プリズン跡地のサンシャイン60の心霊現象 …… デマ
・神戸の高校の紹介映像に映る黒い影 …… 生徒が文化祭で制作した恐怖映像が誇張して紹介された
・深層ウェブの謎の動画『ポリゴンの焚火』…… CGソフト『blender』のテストキャラクター「スザンヌ」の映像を元にしたデマ
・ナチスドイツの人体実験『お前は誰だ?』…… 2006年の2ちゃんねるへの投稿が発祥のデマ
7月
・中国の人口1000人の村が一夜にして消滅した?「夜狸猫事件」…… 2010年に中国サイトで広がったデマ
・謎の隔離施設の注意書き「×××を外に絶対出さないでください」…… コロニーにいがた白岩の里の旧棟を元にしたデマ
・謎のチェーンメール「犬鬼寺へ行きなさい」…… 2012年に大量送信された業者のメールアドレス収集目的の迷惑メール
・1989年「北海道大雪山 SOS遭難事件」の謎 …… 数年後に矛盾点は解消されたが大きく報道されなかった
・海外の恐怖の子ども向け番組『Candle Cove』の謎 …… 動画制作者が創作した映像が元となったデマ
8月
〇2ちゃんねる発祥の都市伝説『裏S区』は実在するか …… 福岡市早良区や北九州市門司区など諸説あり
・読んだら呪われるネット上の怖い話『おじゃま道草』、『トミノの地獄』、『お憑かれさま』…… 全て創作怪談でデマ
・記憶に残るCM 1 砂嵐と能面 …… 2010~12年頃に流れた地デジ化推進の砂嵐CM と日本食研『魔法のメニュー』の能面CM を連続で見た
・鏡に向かってお辞儀をするな ネット怪談『リアル』の謎 …… 創作怪談でお辞儀をしても何も起きない
・わらべ歌『かごめかごめ』と徳川埋蔵金の関係 …… 江戸時代には歌詞が違うので無関係
・2003年のネット怪談「ヒサルキ」は地名だった? …… 太平洋戦争時のイギリス軍による日本地名の誤記だが場所を特定できず
・1970年代の都市伝説『3本足のリカちゃん人形』は実在したのか …… 手作りで生産していることや人形の構造上からありえない
9月
・歴代CM出演者に不幸が? サントリー『桃の天然水』の呪い …… 11名中6名に不幸が起きたが内容もこじつけが多く無関係
・北海道遠軽町の瞰望岩の「心霊写真カレンダー」騒動 …… 1981年に実際に起きたが誇張が大きい
〇都市伝説『地図に存在しない犬鳴村』は実在したか …… 福岡県宮若市犬鳴峠周辺にあった柳原集落と朝鮮人労働者集落が由来か
・YouTube で数日間実際に流れていた意味不明な広告映像 …… 設定の手違いで広告になってしまった個人撮影映像
10月
〇google マップで表示される「首無しライダー目撃多発地点」…… 表示はいたずらだが都市伝説は1970年代から存在する
・茨城県の廃墟「龍宮城」の怖い噂 …… 壁に経営者夫人の遺体が埋まっているという噂はネット発祥のデマ
・記憶に残るCM 2 大きな顔の妖怪 …… 2000年に放送された水木しげるの妖怪画『おおかむろ』を使用したNTT goo のCM
・自殺に見せかけた事件? 集団事故死した看護師たちの真相 …… 事実が誇張された事故
11月
・新宿駅西口のサイネージ広告に現れた不気味な目 …… 日本人形の目を写したもので広告ディスプレイオーナーのいたずらか
・秋田県に実在する「医者いじめ村」の真相 …… 2007~13年に7名の医者が退職したが原因はまちまちであり現在は医者がいる
・Yahoo知恵袋の都市伝説2 大型犬の溶かし方 …… 2013年の「東京・八王子カリスマホスト失踪事件」とは無関係のいたずら
・記憶に残るCM 3 SSK『サンスキップ』の母親役の顔が見えない …… 他社ツナ缶のCM に出演したため再編集された
・ドラえもん1 アニメ版の伝説回『タレント』の謎 …… 1984年7月20日に放送されたと言われるが2002年のネット書き込みが発祥のデマ
・大量の便器? 四国の謎の集落 …… 桜玉吉のマンガ『しあわせのかたち』が元ネタのデマか
・ゲームで使用すると呪われる名前「ツナカユリコ」…… 1990年代前半に雑誌『コミックボンボン』で採り上げられた怪談が発祥か
〇ニコニコ動画の呪われたコメント「桐村萌絵」の謎 …… 2010年に元ファンが投降したマーキング行為が発祥か
12月
・都市伝説「風呂場でだるまさんがころんだをやるな」…… 2003年からコピペやチェーンメールで広まったデマ
・2ちゃんねるの都市伝説『置き去りにした友達』の真相 …… 鹿児島市内の人工池・谷山釣堀で起きたため死亡事故はありえない
〇都市伝説「夢日記を書くと気が狂う」…… 筒井康隆やねこぢる、東峰夫のエッセイや言説が発祥の噂だが影響は個人差あり
・伝説の心霊写真『クーパー家の招かれざる客』の真相 …… 1981年に制作された加工アート作品
・裏サイトの犯罪者集団「eEky」の謎 …… 2007年の日本発祥のデマ
・心霊写真『秋田連続児童殺人事件の被害者』…… マスコミのカメラマンが窓に反射して映った姿
・放送されるたびに地震を呼ぶアニメ『ミンキーモモ』最終回の真相 …… ほぼ毎日地震が発生する日本列島での偶然の一致
2021年1月
・心霊写真『死の直前の岡田有希子』…… 岡田の存命中に佐藤有文のオカルト本で作成された加工写真で被写体も岡田ではない
〇住民不在の家から無言の119番がかかってくる現象 …… 電話機の老朽化により短い番号につながってしまう不具合
・『映画クレヨンしんちゃん』の TV放映時に流れた不気味な女性の放送事故 …… 撮影用テスト「カーネーションガール」が映り込んだ
・関係者が必ず不幸になる「最凶の呪い面」…… 作家・山口敏太郎と『アンビリバボー』の発信したデマ
〇現存する「鬼のミイラ」の正体 …… 江戸時代に流行した幻獣のミイラと称する見世物加工品のひとつ
2月
〇google マップに映り込む不気味な女性 …… 福島市で2015年頃から活動している自称霊媒師
・記憶に残るCM 4 『ファミコンミニ がんばれゴエモン!』背後に女性 …… 通行人が映り込んでいるという演出
・記憶に残るCM 5 ドコモのポケベルCM に映る謎の男 …… 探偵か刑事風の衣装を着たエキストラ
・1990年12月に新潟県上越市に落下した巨大な手の噂 …… 1920年9月に落下した「櫛池隕石」を元にしたデマ
・ドラえもん2 単行本未収録回『バラバラボタン』…… 未収録回『分かいドライバー』がTV で誤って解説されたもの(2012年に大全集に収録)
3月
・YouTube に上げられた廃墟の心霊動画の真相 …… 埼玉県秩父市山掴集落跡の民家廃墟で撮影されたフェイク動画
・世界中で鳴り響く怪音「アポカリプティック・サウンド」の謎 …… 映画『宇宙戦争』から音声を取ったフェイク動画かなんらかの自然環境音
・ミュージカル映画『オズの魔法使い』の VHSビデオに映り込んだ顔 …… ホラー映画『エクソシスト』の未公開映像を使ったフェイク
・記録に残っていない深夜番組『ミノケモヨダツ11ジ』の謎 …… 2017年にマンガ家が流布した創作の可能性が高い
〇都市伝説『山から何かが下りてくる神戸市北区の一軒家』…… 同地区の「稚児ヶ墓山」の伝承を元にした創作か
・違法音楽アプリに入っている呪い曲『呪念』…… インドなどのアジア諸国のお経を合成した音楽だが出所も呪いの効果も不明
・ドラえもん3 映画『のび太とアニマル惑星』から聞こえる謎の声 …… アニメの口の動きと合っていないのび太役のアドリブか
・TV番組『田舎に泊まろう!』の蛭子さんの背後に不気味な顔が …… 撮影スタッフが映り込んだ
・YouTube に上がる意味不明の子ども向け番組『井出ピノチャンネル』とは …… 平和をテーマとしたフィクション動画を制作するチャンネル
〇都市伝説『地図から消えた伝説の杉沢村』1 …… 青森市小畑沢の小杉集落をモデルにした伝説で1995年には流布していたが内容はデマ
〇ネット掲示板の怪談『SOS やめてください』…… 大阪府吹田市立山田第二小学校の様々な出来事を元に2004年から流布した怪談
・古いVHS テープから見つかった奇妙な映像『clip 094』…… 謎解きゲームのヒント映像として制作されたものが2016年に誤って怪談にされた
〇ネット上で流布している恐怖画像『かわいくさせて』の起源1 …… 2004年には広まっていた日本人形の写真を加工したいたずら画像か
・心霊動画『黒いワンピースの女』…… 『ほんとにあった!呪いのビデオ』を参考に2009年頃にいたずら目的で制作されたフェイク動画
〇東日本大震災の映像に映り込んだ白い気体の謎 …… プロパンガスの中の液化ガスが噴出したもの
〇長野県の廃墟「ホテル・セリーヌ」の不気味な妊婦の落書き …… 妊婦の絵はホテルに限らず流布しておりやくざの被害者という説もデマ
〇エマ=ワトソンそっくりになれる? 夢の変装マスク …… CG加工によるフェイク映像
〇北九州市に実在していた謎の廃墟「小人の家」1 …… 西洋風のデザインを取り入れた河内貯水池の周辺施設の印象から生まれたデマ
4月
・心霊映像『ベティの誕生日』の正体 …… 2009年に海外の心霊番組が製作したフェイク映像
〇幻の動画『タクラーン村の少女』2 …… 動画自体が存在しないデマ?
・2ちゃんねる発祥の都市伝説『巨頭オ』…… 自作自演の創作
〇都市伝説『福知山線電車脱線事故を予言した老女』 …… 別の意図での老女の発言が予言と誤解されたか、作り話
〇滋賀県東部にある遭難続出の呪われた山「見上げず山」…… 2017年にネット上で創作された都市伝説だが遭難多発地帯ではある
〇幽霊の顔が迫りパソコンが止まる!? 謎のオカルトサイト内動画 …… 2000年代後半に作成されたフェイク動画が重かったため画面停止した
〇2ちゃんねる発の怪談『通学バスの老紳士』…… 実際の事故を元にしてはいるが2001年と03年に分けて投稿された創作
〇都市伝説『帝国陸軍第十三号坑道の井戸』…… 当時の技術で地下70m の坑道を掘ることは不可能
〇朝の情報番組『ズームイン!!朝!』で水死体発見?1 …… 別番組の放送事故や本番組のフィクションドラマを混同したマンデラ効果デマ?
・大量殺人が起きた?『七つの家』の真相 …… 1980年代に建設途中で計画が中止した地区の廃屋から生まれたデマ
〇都市伝説『北陸本線の幽霊列車きたぐに』…… 1972年の実際の事故と深夜に廃車回送される古い列車のイメージが合わせられた怪談
5月
・福井県坂井市公式ソング『しあわせの花』PV に謎の人影が …… 撮影スタッフがエキストラの影に隠れていた
〇超能力者ユリ=ゲラーは本物か? …… 壊れた時計が直る現象も視聴者の数字当てもトリックがある
〇2020年6月に宮城県仙台上空に現れた謎の白い気球 …… 外国が飛ばした大気観測用のラジオゾンデ
6月
〇都市伝説「羽田空港の呪いの鳥居」…… コンクリート製で危険なため撤去せず、1999年に移転したが祟りは無かった
〇黒い幽霊「シャドーピープル」の正体とは …… ストレスに起因する寝起き覚醒時の幻覚や爆音症候群、異臭症などが原因
〇Yahoo知恵袋の都市伝説3 天井から黒い棒が生えてきた …… 空中蟻道か、天井の劣化によりタールが漏れてきたもの
〇異世界に行ける「タットワの技法」…… 魔術結社「黄金の夜明け団」の瞑想法に使用する記号表
〇狂った男の住む廃墟「きちがい村」…… 精神を病んだ男がかつて住んでいた住居であり村ではない
〇犬が生首の状態で生き延びたソ連の動物実験 …… 事実で現代の人工心肺技術の基礎になった
〇焼死した子どもの生前の写真に悪魔モレクの姿が …… 扮装した大道芸人とたまたま一緒に写真を撮っただけ
・ネット上の不気味な写真『膝を抱えて座る青白い顔の女』…… アイドル紺野結衣を誹謗中傷する人間が作ったコラ画像か動画配信者の画像
7月
〇謎のツイート「犬鳴村の廃墟で死体を発見」…… 神奈川県山北町の廃旅館で本当に死体を発見した者が後にツイートした
〇都市伝説「深川通り魔連続殺人事件の後日談」…… 稲川淳二の怪談が由来だが根拠はない
・都市伝説「2008年のニュース生中継に映り込んだ巨人の骨」…… 吉野ケ里遺跡の人骨を利用したコラ画像に尾ひれがついたデマ
〇聴いた多くの人が自殺した呪いの歌『暗い日曜日』…… ハンガリーはもともと自殺率が高く、1930年代当時の社会情勢も暗かった
〇都市伝説「JR御徒町駅ホームで飛び降りたはずの女性が消えた」…… 見間違いか女性が自分で退避した可能性が高い
〇有料道路のライブカメラに映り込んだ黒い影 …… 伊豆スカイラインが無料の時間帯に忍び込んだ者のいたずら
・都市伝説「見続けると死ぬ女の絵」…… 描いた中国のイラストレーターが噂を否定しているが2002年に中国で拡散し2006年に日本でも流布した
8月
〇『笑っていいとも!』1 再生されるたびに歌が変わる呪いのCD …… 別の歌手のCD のラベル部分のみを偽造印刷したもの
・ドラえもん4 原作者の命日に放送されたアニメ版幻の回『行かなきゃ』…… 数年前に放送された原作者出演のCM を元にしたデマ
〇鹿児島県大隅地方に実在した謎の風習「おっとい嫁女」…… 過去に実在していたが昭和初期にはすでにほぼ消滅していた
〇『世界仰天ニュース』スタジオで収録中に聞こえた「こっくりさん」の声 …… スタジオ観覧者の反応した声が拾われたもの
〇20名以上の高校生が体調不良に? 霊山「英彦山」のたたりか …… 2014年に高校で発生した集団ヒステリー
・投稿者の顔がみるみる歪んでいく配信動画『1年後の君え』…… 噂が広がった2011年当時のニコニコ動画の再生時の不具合による画面の歪み
〇長男以外は人権無し!? 長野県神原地域の謎の風習「おじろく、おばさ」…… 昭和後期まで実在していたが誇張されている
〇成田空港の立ち入り不可能なはずの場所にあった変死体の謎 …… 2017年に VIPルームを覗こうと侵入した女性が転落死したか自殺
・不動産サイトに実際に掲載されていた「謎の赤い部屋」の真相 …… 物置を赤く表示しているサイトの慣習で心霊的な意味はない
〇ロシアにソ連時代から存在する一般人立ち入り禁止の都市「メジゴーリエ」…… 大規模地下核シェルターを建造するための施設都市
〇福知山線電車脱線事故の被害者が写った写真は心霊写真か …… 生存者を撮影した写真かコラ画像
9月
・『報道ステーション』で表示された不思議なテロップ …… 番組のテロップ誤表記はもともと多くディレクターの自殺とも無関係
・コミックマーケットへの偏向報道「10万人の宮崎勤」は本当にあったのか …… コミケ主催者・米沢嘉博の文章が発端だが偏向報道は多かった
〇東京都板橋区の高島平団地はなぜ自殺の名所になったのか …… 1970年代に屋上に出られる高層建築は少なかった(その後侵入禁止に)
〇呪われた映画『ポルターガイスト1・2』…… 出演者4名が亡くなっているが因果関係は薄い(映画で本物の人骨が使用されているのは事実)
〇都市伝説「イッツ・ア・スモールワールドの裏ルート」…… 創業時に混雑対策としてボート修理用のバックヤードを開放していた可能性がある
〇本物の人骨が使用された人体模型はどこから来たのか …… 1985年に法律で禁止されるまで人骨を輸出していたインドのものが多かった
・スーパー戦隊シリーズの都市伝説「オーグリーンは死にました」…… 2015年以降に作家・朱雀門出が流布した誤伝(知人の勘違い)が発祥
〇2016年「湯河原凸事件」の真相 …… 被害者の老婆とトラブルのあった出会い系SNS ツールに詳しい近隣住民の可能性が高い
〇キャプテン・キッドの隠し財宝伝説と神の島「大神島」のたたり …… 財宝の可能性は低いが1990年の道路工事の際にたたり騒動はあった
〇2003年にオークションサイトに出品された「幽霊を封印した壺」…… 売ることでなく話題作りによる金儲けを狙ったいたずら
〇50年以上開かずの間だった地下室から PS2が出てきた!? …… 2006年に5ちゃんねるに投稿された創作の可能性が高い怪談
〇都市伝説「ワイの部屋から見た風景」の真相 …… 2017年時点で廃墟だった旅館ではなく隣接する着物店ビルの上階から撮影したものか
〇都市伝説「見たら気分が悪くなる呪われた少年の絵画」…… 画家ビル=ストーンハムの自画像シリーズの一枚であり呪いの噂はデマ
10月
〇ネット上で流布している恐怖画像『かわいくさせて』の起源2 …… 加工後の2種よりも怖い日本人形の元画像が発見された
〇1972年「霧積温泉女性殺人事件」5枚目の心霊写真 …… 遺族が語ったという5枚目の写真の存在自体がデマの可能性が高い
〇都市伝説「釜鳴神事をカメラに収めた生放送番組」…… 1982~3年の兵庫県の武庫川水害と鹿塩熊野神社の神事「鳴動式」を合わせた創作
〇2017年「座間9人殺害事件」の犯人が立てたスレ? …… 2013年に立っていたスレの模倣で事件とも時間的な矛盾があり無関係
〇都市伝説「東京中に張り巡らされた国会議事堂の地下空間」…… ほぼ事実だが特殊な空間ではなく避難経路が主であり誇張が多い
〇ネットに存在する恐怖画像『真顔で見つめる女』…… 2013年頃に電車内で盗撮された映像を元に顔部分のみをすげ替えたコラ画像
〇都市伝説「フィリピンの見えない怪物」…… 1953年に実際に起きた「少女クラリータ悪魔憑き事件」を元にした怪談
〇1954年「該当する紙幣が存在しない謎のニセ札事件」…… 新しく独立する国家の新紙幣の偽造か、特定の団体内で使用する金券か
〇ネットに存在する恐怖画像『この橋SUGEEEE 』…… 2001年に撮影された茨城県花貫渓谷の吊り橋の写真に


 いや~……これで、その時期の動画のだいたい半分くらいなんですもんね。全動画数1500て……バケモンや。
 え~、リストの続きは、まったじっかい~と……
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ヒッチコック流ちゃちゃっと軽食サスペンス? ~映画『サボタージュ』~

2024年05月14日 21時53分53秒 | ミステリーまわり
 どもどもこんばんは! そうだいでございます~。
 ゴールデンウィークも終わってしばらく経ちましたが、みなさま、五月病にもならず元気にお過ごしですか? こちら山形はなんだか、梅雨を通り越したような暑い日もあったりして、いい意味でも悪い意味でも5月っぽくないので、ぼちぼちつつがなく生きております。
 最近はもう、NHK 大河ドラマの『光る君へ』くらいしかテレビの楽しみがなくて……あっ、先日ついに『鬼滅の刃 柱稽古編』が始まりましたね! でも、新聞のラテ欄の表記が小さすぎて完っ全に見逃してしまった……ま、劇場で第1話は観たから、いっか。
 『柱稽古編』はもう、ご周知のとおりのインターリュード部分ですのでこのシーズン自体の面白さはそれほど楽しみにもしていないのですが、いよいよ最後までちゃんとアニメ化されるんだろうなぁ、という感じになってきましたね。関俊彦さんや石田彰さんの演技が今から楽しみで仕方ありません。だいたい、メインのキャラクターは全員声つきになりましたかね? 人間時代のあかざのお師匠さんくらいかな? 未キャスティングの気になるキャラは。誰になるのかな~。藤原さん……
 いろいろ、無限城での決戦はそのままテレビ放送することができるとは思えない凄惨な描写が連続するので、たぶん TVシリーズとしてアニメ化されるのは『柱稽古編』が最期になるんでしょうかね。出演陣の皆さん、不祥事も起こさずに、お元気でオリジナルキャストのまんまでゴールインしてくださいね~! 私は特に千葉繁サマ!! 応援しております。

 さて、今回も今回とて、ぶつっぶつっと続けている、「ヒッチコック監督作品を可能な限り総ざらえ企画」でございます。

 今回お題にする作品はですねぇ、なんかなつかしいというか、ここまでズンズン、サイレントからハリウッド的エンタメ映画へとめきめき進化する流れが加速していた当時のヒッチコック監督のキャリアの中で、「あれっ?」という感じで先祖返りしちゃったかのような古さのある作品であります。
 かと言って、面白さも昔レベルに戻っちゃうってことには決してなんないのが、さすがのヒッチコック監督なんですよねぇ。なので、ヒッチコック監督の「黒歴史」には全然ならない安心のクオリティが保障されております。
 でも、なんで思い出したようにこんな、当時からしてもクラシックな手法の多い作品を作ったんですかね。なにか、サイレント時代にやり残していた遺恨でもあったのかしら?


映画『サボタージュ』(1936年12月 76分 イギリス)
 『サボタージュ(Sabotage)』はイギリスのサスペンス映画。ジョゼフ=コンラッド(1857~1924年)の小説『密偵』(1907年発表)を映画化した作品で、日本劇場未公開。1996年に『シークレット・エージェント』(主演・ボブ=ホスキンス)としてリメイクされた。

 ヒッチコック監督は、当初ヴァーロック役にピーター=ローレを想定していたが、前作の『間諜最後の日』(1936年)でローレに対して不満が残ったことから、オスカー=ホモルカを起用することにしたという。 テッド=スペンサー役は『三十九夜』(1935年)で主演したロバート=ドーナットに決まっていたものの、持病の喘息が悪化したために撮影前に降板し、代わりに当時スターだったジョン=ローダーが起用されたが、ヒッチコック監督はローダーの演技に対して、幅もなければ厚みもないとして大いに失望したという。
 劇中で上映されているアニメーション映画は、ウォルト=ディズニーの短編アニメ映画『誰がコック・ロビンを殺したの?』(1935年)である。

 イギリスの雑誌『タイムアウト』が150人以上の俳優、監督、脚本家、プロデューサー、評論家や映画界関係者に対して行ったアンケート企画「イギリス映画ベスト100」で、第44位に選ばれている。 ヒッチコックの娘で女優のパトリシア=ヒッチコック(1928~2021年)は自著で、父親の作品の中で『めまい』(1958年)や『サイコ』(1960年)と並んで最も暗い映画のひとつであると評している。
 ヒッチコック監督は本編開始約9分後、停電が修復した時に電灯を見上げる通行人として出演している。


あらすじ
 ロンドンで映画館を営むヴァーロックは、破壊活動をする裏の顔を持っていた。隣の八百屋の店員になりすました刑事スペンサーが彼を監視する中で次の指令を受けたヴァーロックは、警察の目をごまかすために、妻の幼い弟スティーヴィーに爆弾を持って行かせる。

おもなキャスティング
ヴァーロック夫人   …… シルヴィア=シドニー(26歳)
テッド=スペンサー  …… ジョン=ローダー(38歳)
カール=ヴァーロック …… オスカー=ホモルカ(38歳)
スティーヴィー    …… デズモンド=テスター(17歳)
ルネ         …… ジョイス=バーバー(35歳)
タルボット警視    …… マシュー=ボルトン(43歳)

おもなスタッフ
監督 …… アルフレッド=ヒッチコック(37歳)
脚本 …… チャールズ=ベネット(37歳)、イアン=ヘイ(?歳)、ヘレン=シンプソン(?歳)、アルマ=レヴィル(37歳)
製作 …… マイケル=バルコン(40歳)
音楽 …… ルイス=レヴィ(42歳)
撮影 …… バーナード=ノウルズ(36歳)
編集 …… チャールズ=フレンド(27歳)
製作・配給 ゴーモン・ブリティッシュ映画社


 第二次世界大戦直前の1936年の映画と言うことで、現代のように2時間を優に超えるボリュームのある映画などほとんど無い時代ではあったのですが、それでも今作の「76分」という本編時間はいかにも軽量級というか、ここから面白くなるのかな~と思ったらあっという間に終わっちゃった、という印象の短編映画のような作品です。
 この作品付近のヒッチコック作品はだいたい80分台が通常のペースといった感じで、本作までに私が鑑賞することのできた諸作の中で最も短かったのは『第十七番』(第15作 1932年)の「65分」で、最も長かったのは『殺人!』(第12作 1930年)の「104分」だったかと思います。『殺人!』も確かに長かったけど、それでも2時間ないんだもんねぇ。いい時代だわ。

 作品内のシーンごとについての詳しい感想は、例によって末尾につけた視聴メモを読んでいただければありがたいのですが、全体的な印象を述べていきますと、本作はヒッチコック監督が培ってきた「セリフに頼らない」映像演出テクニックを総まくりした卒論的な作品、といえる感じがします。本格的にサイレント映画が過去のものとなりつつあった時代にヒッチコック監督が形にした「決別の一作」というべきなのでしょうか。その後周知のとおり、ヒッチコック監督はサイレントどころか、白黒映画ともイギリス映画界ともお別れをして新時代へ突入していくわけなのですが。

 でも、確かに本作はヒロインに降りかかる不幸も相当なものだし、なんだか釈然としない棚ぼた的な結末もヒロインの精神的な救済にはなりえていないような暗~い色調の作品なのですが、それはあくまでも物語の中だけのお話でありまして、映像演出だけを観てみますと、懐古的な後ろ向き感はまるでなく、相変わらずの「そうきましたか~!」なアイデアのつるべ打ちで退屈しない面白さを感じさせる作品なんですよね。さすがに21世紀の現代にも通用するとまでは言えないかも知れませんが、セリフ無しで登場人物の感情、特に疑惑や焦燥を的確に暗示させるカット割りやズーム技術の使用は、基本的な映像演出の教科書ともいえる密度があると思います。勉強になるわ~。

 不可抗力で犯罪に手を染めてしまうヒロインとか、そのヒロインが意外な運命のいたずらでおとがめなしになってしまうラストは、ヒッチコック監督自身の過去作『恐喝(ゆすり)』(第10作 1929年)とまるで同じ構図で、ひょっとしたらセルフリメイクなのではないかとさえ勘ぐってしまうのですが、その犯行の瞬間の演出にしても旧作とは比較にならない程スマートでわかりやすく、最終的にヒロインの犯行の証拠が爆弾によって消滅してしまうピタゴラスイッチ的なプロセスも、「鳥かご」という小道具を軸にした伏線を事前に張り巡らせていて格段の進歩を感じさせるものがあります。といっても、ヒッチコック監督の小道具やマクガフィンの活用技術はさらに進歩していくんですけどね!
 それにしても、鳥かごを返してもらいに行くだけなのに、万が一の時のために自決用の爆薬を隠し持っていくペットショップの店主も用心深すぎと言いますか、覚悟の決まり方が男前すぎますよね……イギリスというよりは大日本帝国の戦争末期の発想よ、それ。

 こんな感じで、本作は決してヒッチコック監督のキャリアの中で目立つとは言えない不思議な位置にある作品となるのですが、それは割とあっさりしたボリュームと結末という作りもさることながら、何と言っても「主人公」「ヒロイン」「悪役(?)」の3役が3役ともパッとしないという、作品の看板であるべき俳優キャスティングの面にも大きな原因があるような気がします。はっきり言っちゃってすんません!
 皆さん、悪くはないんですよ!? 悪くはないんですけどね……ここまでの諸作で自己中すぎる主人公(『三十九夜』)とか自我のはっきりしたヒロイン(『三十九夜』と『間諜最後の日』のマデリーン=キャロル)とか、なんてったってあのピーター=ローレとか見てきちゃったじゃん!? そんなおもしろ過ぎる面々と比べちゃうと、地味なんですよね~、暗いんですよね~、まじめなんですよね~!

 主人公のテッド刑事を演じるジョン=ローダーは、決定的に演技がヘタであるということもないのですが、いかんせんヴァーロック家とのつながりが希薄で言動もいかにも刑事といった感じで生真面目。それなのに、ヴァーロック夫人を助けるためにいきなり「ヨーロッパにトんじゃおう!」と唐突に言い出したりして、妙に感情移入しにくいキャラになってしまっております。細かいところだけど、夫人の故郷であるアメリカでなくヨーロッパに逃亡しようと提案するあたりに、大事なところで夫人に寄り添えていない決定的なダメさがあるような気がする。そういうとこ、女性はちゃんと見てるんじゃないかな~!?
 一方、本作の実質的な主人公であるヒロインのヴァーロック夫人を演じるシルヴィア=シドニーも、確かに不安や疑念を抱く表情は迫真そのものなのですが、アメリカ人という設定がまるで活きていないとしか言えない、一挙手一投足がネガティヴで暗い悲劇のヒロインを見事に演じきっています……誉め言葉にならないよ! まぁ、日本の関西人だって全員がお笑い好きというわけでもないだろうし、ね。
 にしても、そんなにブロンドじゃないとテンション下がるんですか、監督!?と言いたくなるほどに、夫人の出てくる画面には華が出てきませんね。シルヴィアさんにしても、いい迷惑ですよ……だいたい、ファーストネームくらい付けてあげてくださいよう!!
 そして、序盤の裏表のある謎の紳士から一転、自分の義理の弟を死なせてしまったのはアイツのせいコイツのせいと、自分の責任を棚に上げまくるクズに堕してしまうヴァーロックを演じるホモルカさんも、基本的に表情がどのシーンでも一緒なので破壊工作に失敗しようが身内が死のうが大きな変化がなく、何だか面白みのない人物になってしまっているような気がします。所属している組織の幹部にあおられて人生が狂っていく小市民というあたりの悲哀が感じられないんですよね。う~ん。
 上のWikipedia の記述によりますと、なんだかこのヴァーロックの役は企画当初ピーター=ローレが演じる予定だったのをヒッチコック監督の側から不満があって取り下げたとされているのですが、これ、ローレさんからしても願い下げという役柄なんじゃないでしょうか。ヒッチコック監督とローレさんが組む最初の作品がこれだったらまだわかるのですが、『暗殺者の家』と『間諜最後の日』の次にこの役となると、どう見てもスケールダウンとしか言いようがないですよね。俳優としてローレさんがヴァーロックを演じるメリットは無いような気がします。観客としても観たくないでしょ、こんなせせっこましくて辛気くさい役柄のローレさん!

 総じて本作は、定型的な個性のキャラが雑然と並ぶ地味なキャラ設定となっているのですが、ここまで華が無いと、ヒッチコック監督は逆にそれを狙っていたのではないかと勘繰ってしまいます。つまりこの『サボタージュ』は、リアルにどこにでもいそうな市民たちの間に起きた悲劇的な家庭崩壊劇を描きたかったのではなかろうかと。昨今の映画界でも東西を問わず、大監督と言われる人って大作ばっかじゃなくて、たま~に明らかに予算のかかっていない規模とキャスティングで、ちゃちゃっと地味めな人間ドラマを作ることってあるじゃないですか。ヒッチコック監督にとっての『サボタージュ』も、多分にそんな要素があったんじゃないのでしょうか。やっつけ仕事じゃないことは確かですよ。

 なので、本作はヒッチコック監督というお人の華やかなキャリアをたどる上では、ちょっと「必見!」とは言い難い異色作ではあるのですが、あくまでもパワーダウンではなく、ギアチェンジするためにちょっと息を整えた、みたいな味わい深いポジションの作品となっております。それでもこれだけ面白くなっちゃうので、その実力たるやものすごいものがあるわけでして、長編映画らしからぬあっさり味は、のちのちの『ヒッチコック劇場』に象徴される、映画すら超えて30~60分のテレビドラマが娯楽の中心となっていく来たるべき未来を予見するものであったのではないか……とまで言うのは、言い過ぎっすかね。
 ともかく、観て損する作品ではないと思います。76分という短さなのでお手軽だし!

 最後にちょっとだけ。本作の中で私がいちばんドキッとしたのは、スティーヴィーの爆死後に、精神的に相当まいったヴァーロック夫人が見るスティーヴィーの幻覚の描写がけっこう怖いところだったんですよね。なんの飾りっ気もなく、夫人が見た群衆の中に一瞬だけ笑顔の弟が見えたり、同じような背格好の少年が弟に見えるというだけの演出なのですが、ヒッチコック監督流のテンポの速さでほんとにパッと見えるそっけなさが逆に怖くて……これも、のちの『サイコ』や『鳥』につながる、感情をいっさい差しはさまない冷たさをたたえた恐怖演出だと思います。中途半端な怪談映画よりもよっぽど怖いよ~!


≪毎度おなじみ視聴メモで~っす≫
・本作はまず、タイトルの「 sabotage」の意味を説く辞典の項目から映像が始まる。「サボタージュ:大衆や企業に不安や警告を与える意志を持って建物や機械を破壊する行為。」という物騒な文章が映るのだが、現代日本で使われる「サボる」とはけっこうニュアンスが異なるのが興味深い。今の日本だともっぱら無断で休む行為を指すだけで意志なんかあっても無くてもどうでもよくて、サボタージュよりはボイコットに近いですよね。
・そういったお堅い辞書のページをバックにオープニングタイトルとクレジットが流れるという出だしが、斬新とは言わないまでも、後年の『めまい』や『サイコ』などでさまざまなインパクト大のオープニングを世に出すヒッチコック監督の片鱗が垣間見えるようで面白い。
・オープニングクレジットで「アニメ:ウォルト=ディズニー」という名前が出てくるのがものすごいのだが、使われ方は実に効果的ではあるものの、過去作品の流用である。
・開始から約3分、ヒロインのヴァーロック夫人が出てくるまでほぼセリフが無い時間が続くのが、なんだかサイレント映画時代の諸作を思い出させるようでなつかしい。ヒッチコック監督お手のものの導入ですな。ただこれ、メインのヴァーロックを演じる俳優さんが英語圏出身の人じゃないからという、現場から生まれた苦肉の策だったのかも?
・工場で破壊された機械から出てくる砂と帰宅したヴァーロックが手を洗った時に洗面台に残る砂の対比とか、工場の刑事が「犯人はどこだ?」と言った次の瞬間に工場から出ていくヴァーロックの顔が映るカット割りなど、一言も言っていないのにヴァーロックが破壊行為の犯人だと観客にわかりやすく提示される演出がともかくスマート。ノーストレス!
・別にオールナイト上映をしているという深夜でもない時間帯に、映画の経営を若妻におっかぶせてグースカ寝たり外出したりしている支配人というのは、果たしていかがなものなんであろうか。しかも、停電で上映が止まったので金返せと詰め寄るお客さんのクレーム対応も人任せにするとは……せめて自室にこもって働いてるフリしろ!
・「ロンドン全体の停電は映画館の不手際で起こったわけではない不可抗力なのだからチケット代は払わない」という考えは、それで観客が納得するのかどうかは別としていちおう理屈が通ってはいるのだが、それを映画館の人間でなくとなりの八百屋の雇われ店員が語っているという状況が全く意味不明である。いや、なんでお前が……?
・余談だが私も、映画館で上映中に警報ベルが誤作動で鳴ってしまい映画が中断され、30分ほどロビーで待たされてから上映が再開されたという出来事を体験したのだが、その時は観客全員に1回分の無料鑑賞券を配布するという対応だったと記憶している。返金とはいかないまでも、そんな感じなんじゃないかなぁ。ともかく「さぁ、とっととけぇれ!」の一点張りの八百屋のテッドはいきすぎであり、そこらへんのカッチカチの大衆あしらいからしても、うすうすテッドの正体が知れようというものである。親方ユニオンジャックぅ~!
・物語の筋に直接からんでこないのが非常にもったいないのだが、ヴァーロック家と映画館が壁一枚でつながっていて、家族や家に用事のある人間が上映中の劇場の奥通路を通り抜けて出入りするという位置関係がなんだかおもしろい。映画が身近にある生活はうらやましいのだが、小窓を開けたら映画の音響が丸聞こえって、遮光は大丈夫なのか!?
・工場の破壊行為というとんでもない犯罪をしでかしているヴァーロックが、その一方で経営者としては異常に腰が低く「私は大衆に怒りをぶつけられるのが嫌なんだよ。」とうそぶいている二面性がいい感じである。もうちょっと軽い印象の人がヴァーロックを演じていたらもっと良かったんだろうけどなぁ~、チャールズ=チャップリンとか植木等みたいな。
・ヴァーロックが余裕しゃくしゃくで「ずっと家にいたよ~。」と語るのはいいのだが、外から戻るところをテッドにがっつり見られているのがあまりにもダメダメすぎ……おまけにゃテッドの同僚のホリン刑事にも余裕で尾行されてるしさぁ! この映画、たぶん早めに終わるぞ。
・イギリスの生活風俗の様子がわかって非常に興味深いのだが、向こうの八百屋さんは仕事着が白衣にネクタイという、お医者さんか薬剤師みたいな恰好なんですね。生鮮食品だもんね、なるほど。
・ヴァーロックが水族館で接触する謎の紳士の言葉の裏に潜む「無差別殺人テロもできない奴に金は払わん。」という圧力が、物腰が柔らかなだけに逆に恐ろしい。娯楽映画の悪漢という定型にとらわれないこの役の正体不明感が、作中には全く登場しない秘密組織の恐怖を体現してくれているのである。いいね~!
・全体的に地味な印象の本作なのだが、それだけに、爆弾テロの指令を受けたヴァーロックが水族館の水槽に崩壊するロンドンの幻を見て戦慄するという効果演出が妙に浮いていて記憶に残る。ヴァーロック、メンタルもろいな!
・何かと一本気で面白みに欠ける人物のように見えるテッドなのだが、ヴァーロック夫人が夫を愛していることを知って心を痛めたり、夫人姉弟と昼食を摂った事実を上司に報告できなかったりする面があったりと、夫人に対する感情が公私のはざまで揺れているさまが丁寧に描写されていて、それなりにキャラクターの温かみはある。『下宿人』(1926年)の操り人形のような登場人物群から10年、だいぶ進化したんだなぁ。
・ヴァーロックが訪問するイズリントンの鳥専門店ペットショップのシーンで、モンティ・パイソンの『死んだオウム』コントをすぐさま連想することができたら、君も立派な大英帝国臣民だ!?
・尾行されてるのも気づかないくせに制服警官を見たとたんにビビりまくるヴァーロックと、「来たら爆弾で歓迎するだけです。」と泰然自若な表情のペットショップ店主との態度の差が面白い。覚悟の度合いが違いますね。にしてもヴァーロック……ここまで小心者で犯罪者になる素養の無い人物も珍しいのではないだろうか。いや、これピーター=ローレがやらなくて正解でしたね。
・ヴァーロックが土曜日の爆弾テロ決行のために自宅に招いた怪しげな連中の中に一人、どっか別の映画で見た記憶のある顔の人がいて、誰かな誰かなと思ってたら、思い出した、キューブリック監督の『博士の異常な愛情』(1964年)でソ連大使の役をやってたピーター=ブルって人だ! え、本作の時は24歳!? 20代にはとても見えない貫禄!
・テッドが刑事であると判明したとたんに空気が重たくなるヴァーロック家なのだが、本作のヒロインであるヴァーロック夫人を演じるシルヴィア=シドニーは金髪でもないしさほど若くもないしとびっきりの美人でもないしで印象が薄いのだが、親密だったはずの夫が何か重大な隠しごとをしていると気づいた時に浮かべる不安と疑念に満ちた表情が非常にうまい。この演技力を買っての器用だったんだろうなぁ。そうですねぇ、日本でいうと麻生祐未さん的な、ニッチな感情の表現に長けた種類の方でしょうか。いいよな~♡
・正面にテッド、裏口にホリン刑事が張っているという状況に進退窮まったヴァーロックは、爆弾をスティーヴィーに託して運ばせるという悪魔の選択をしてしまう……もう嫌な予感しかしない展開なのだが、のんびりしたスティーヴィーの態度にいきなりキレるヴァーロックのテンパり具合が見ていて哀しくなってくる。もうダメだこいつ!
・本編とは関係ないが、ヴァーロックがカモフラージュのために爆弾入りの包みと一緒に持たせたフィルム缶の映画のタイトルが『絞殺魔』なのが、ヒッチコック監督晩年の大傑作『フレンジー』(1972年)を予兆させているようで感慨深いものがある。あれ、ヒッチコック監督のなんと33年ぶりのロンドン復帰作だもんねぇ。『フレンジー』の感想をこのブログでつづるのは、さて一体いつのことになるのかナ~!?
・スリラー映画演出の定石として、「時間制限のある用事がある人物に襲いくるクソどうでもいい足止め障害の数々」というものがあるのだが、本作でもご多分に漏れず、時限爆弾を抱えたスティーヴィーが街中のチューブ歯磨きと整髪料の行商のモニターにされてしまう。あるあるだけど、ハラハラしますね~、意地悪な演出ですねぇ~!!
・他にも時間的なサスペンス感覚をあおる演出として、テンポアップしたBGM はもちろんのこと、せわしなく動く歯車のシルエットや異常な速さで進む時計の針といった古典的なイメージ映像がつるべ打ちにインサートされる。21世紀の現代から見れば使い古されたベタな演出なんだけど、ここから爆発までの数分間は、何度観てもドキドキしてしまう。ルイス=レヴィの音楽がめちゃくちゃいい仕事してるよ~!
・本作のひとつの山場は間違いなく、中盤の時限爆弾が爆発する瞬間なのだが、ここまでで本編が55分も経過していて、あと残り20分もない時点であるという事実に驚いてしまう。どうやってシメるの?これ……
・スティーヴィーの爆死という結果を招き、最悪の関係となるヴァーロック夫妻。原因は100% 自分なのに、「おれが死ぬよりはマシだ」とか「いっぱい泣いて忘れろ」とか「すべては水族館のあいつかテッドが悪い」とか、考えうる限りの言ってはいけない地雷を踏みまくるヴァーロックなのであつた……そりゃ、その日のうちにぶっ殺されるわ。
・あまりにも理不尽な夫の態度に心の中がぐちゃぐちゃになるヴァーロック夫人であったが、たまたまその時に映画館でかかっていたディズニーアニメの『だぁ~れぇが殺したくっくろぉびん』を観てしまったがために、思いが固まってしまう……なるほど、それは他のディズニーアニメではいけませんわな。ふつうに殺人を描く犯罪映画とかでなく、子ども客が笑って観ているアニメ映画というチョイスがむしろ残酷で冴えまくっている。
・スティーヴィーのいない食卓で会話の途切れたヴァーロック夫妻の息詰まる攻防、セリフいっさい無しで約2分! 非常に挑戦的な演出……のようだが、セリフに頼らないサイレント出身のヒッチコック監督にとってはむしろ実家のような得意分野だろうし、同じような状況にヒロインがおちいる展開は『ゆすり』(1929年)ですでに描かれている。でも、そんな咄嗟の一撃で大の男が即死するかな……凶器もあんなんだし。
・ヴァーロックの死後の流れは、はっきり言って『ゆすり』とほぼいっしょなので新味のあるものは特にない。彼氏が刑事っていうのまでおんなじなんだもんなぁ。
・ヴァーロックの死の真相をうやむやにするという、ヒロインにとっての「救世主」の役割を担うのが例のペットショップの店主なのだが、店主がヴァーロック家に鳥かごを取り返しに行くのを見て張り込んでいた刑事がすわ逮捕!と色めき立つのは、少々大げさすぎる気がする。その時点で店主がバスの爆破テロに関わったという証拠はなんにもないわけですよね。「とりあえず映画も大詰めなので盛り上げてみました。」という意図しか見えないのは私だけだろうか……これがヒッチコック流!
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おまえ0まで、わしゃ-1.0まで!! ~映画『陰陽師0』~ 感想本文!

2024年05月06日 23時26分02秒 | 日本史みたいな
 あっちょわ~。みなさま、どうもこんばんは。そうだいでございます。
 ゴールデンウィーク、もう終わっちゃいますね。基本的に全国ではもう夏かってくらいの好天が多かったみたいですが、楽しくお過ごしになれましたでしょうか。でも、連休の最終日は疲労感や明日へのヒーコラ準備やらばっかりが残っちゃっていけませんやね。また今年もあっという間だったぁ……

 私もおかげさまでカレンダー通りの連休をいただきまして、5月3日には人生で2度目となる川中島合戦(ただし於:山形県米沢市松川河川敷)に参陣してまいりました。米沢市が市長以下、威信を賭けて盛り上げる「上杉まつり」最終日の最大イベントですね。
 私は2年前と今年に、上杉軍の雑兵の一般参加枠に応募して毎年3日に開催される上杉軍団行列(午前)と川中島合戦(午後)に参加できたのですが、いや~、今年も楽しかった……めっちゃくちゃ疲れて、めっちゃくちゃ日焼けしますけどね!
 実は、個人的に「今年も楽しかった」どころか「今年が最高に楽しかった!!」と、いち雑兵役として参加した身としては思わず昇天してしまいそうな超貴重な体験ができましたので、正直、来年以降にまた雑兵として参加するかどうかは微妙な気持ちです。もう、今年以上の奇跡には巡り合えないんじゃなかろうかと……
 時間に余裕さえあったのならば、上杉まつり関連の体験記のみで記事を挙げたい気もするのですが、明日からまた普通の日々が始まりますし、だいたい本記事も完成させていないことですし、我が身をもって経験したかけがえのない「十数秒間」は、ひそかに胸の中におさめておきたいと思います。ま、職場では多分さんっざんに言いふらすだろうけどね!
 具体的にどういった体験をしたのかは言いませんし、地元のケーブルテレビ局による生中継番組をはじめとする公式各局のニュース映像のどこにも、今年の川中島合戦のクライマックスで起きたその瞬間をカメラに収めたものはないのですが、実は某超有名動画配信サイトにアマチュアの方が撮影してアップした合戦の録画映像に、なんとそれが遠目ながらばっちり激写されております。末代までの恥……
 ともかく、私が申しあげたいのはこれだけです。「角田信玄サマ、誠にありがとうございました!!」 やっぱり漢だったねェ。


 さぁ! そんでこんで今回は戦国時代じゃなくてもっと昔の平安時代、延び延びになっていた映画『陰陽師0』を観た感想の本文でございます。映画に関する情報は、こちらの前回記事でどうぞ。

 さっさか本題に入りたいのですが、私はこの『陰陽師0』を大変おもしろく観まして、いかにも自作に確固たる美学を貫き通す名匠・佐藤嗣麻子監督らしく、様々な観点からみても完成度の高いエンタメ作品であると感じました。
 さすがに佐藤監督のダンナ様の『ゴジラ -1.0』ほどの規模で制作されたとは思えないのですが、だからこそ、限られた条件の中で手堅く破綻の無い物語を構築する佐藤監督の本領が発揮されているとも言えると思います。ハデな大作ではないんだけど、綺麗な名品って感じでしょうか。
 曲がりなりにも、本作はあの野村萬斎の『陰陽師』シリーズ2作の続編(前日譚)ですからね。いくら佐藤監督でも大丈夫かな……という心配は若干あったのですが、萬斎晴明の呪縛に引っぱられることなく、立派に独り立ちした作品になっているところにも好感が持てました。まぁ、『陰陽師Ⅱ』(2003年)からおよそ20年も経ってますからね……でも、いまだに安倍晴明と言えば萬斎さんか羽生結弦くんですよね。初代はゴローさんなのに!


 私が『陰陽師0』のここがいいと思っている点は、ざっくり言うと4つありますので、それぞれについてぱぱっと触れていきましょう。

1、役者陣のキャスティングと各演技が非常によろしい
 日本を代表する実在のオカルトヒーローといえばこのお人!という感じで、2000年代の夢枕獏原作の連作幻想時代小説『陰陽師』シリーズの映画化から始まった大ブームから2020年代現在に至るまで、他の追随を許さない第一人者として不動の地位を得ている安倍晴明なのですが、そのミステリアスなキャラクターも影響してか、実写作品に出てもその史実上の年齢に、演じている役者さんが必ずしも忠実にキャスティングされているわけではない状況が、なかば慣習化していました。簡単にいえば、たいていの作品の時代設定ではすでに老齢であるはずの晴明を、30代前後のかっこいい俳優さんが演じることが多いんですね。
 この齟齬は、藤原道長やら紫式部やらといった日本史の有名人が活躍する時代よりも晴明が前の世代の人だったという点と、実際に晴明が30代だった時の彼の事績がほとんど残っていないという2つの原因によるもので、晴明がいること自体は無理がないんだけど若くはない……というジレンマが生じているのでした。ま、気持ちよくガン無視してる映像作品ばっかですけどね! 最たるものは窪塚晴明の『源氏物語 千年の謎』(2011年)になりますでしょうか。85歳の最晩年の晴明を当時32歳の窪塚さんが演じてるよ~!!

 その点、まさに晴明伝説の始まり「0」を語る本作は、「とにかく若き日の晴明をちゃんと描こう」という、過去作品のどれよりも晴明に誠実に寄り添ったスタンスに立っており、数え年28の晴明を、ほぼ同年齢の山崎くんが演じているところにも、真面目なキャスティングの姿勢が見えます。

 この史実の人物の年齢をしっかり反映させたキャスティングは、晴明以外の実在した人物たちの配役にも徹底されており、ワトスン役の源博雅や村上天皇も、ほぼ同年齢の俳優さんが演じています。実はこれ、単なる佐藤監督のこだわりとかいう問題ではなく、本作オリジナルの架空の人物である貞文(40代)も陰陽頭の藤原義輔(70代)も、作中でそれぞれの年齢を明言したうえで同じ年代の俳優さんが演じているし、しかもそれが彼らの行動の動機になっているので、本作では「年齢」というテーマがかなり重視されているがゆえのキャスティングであるようです。
 え? 史実の徽子女王は当時20歳? で、演じていた奈緒さんは……いいじゃないか! かわいかったんだから!! 女性に対して失礼だねチミ!!

 いや、実は本作キャスティングでの例外ともいえる徽子女王と奈緒さんとの年齢の差、私としましては勝手に「我が意を得たり!」と感じてしまう点なのでありまして、つねづね我が『長岡京エイリアン』でも、こういう歴史ドラマのお話をするたんびにバカの一つ覚えのように連呼しているのですが、私は「歴史上の人物は10歳ほど年上の現代人が演じる方が良い」という実感を持っているのです。理由は、江戸時代以前と現代とで日本人の平均寿命がだいぶ違っているし、生活上の精神的な成熟も現代の方がかなりのんびり屋さんになっていると思うからです。最近やっと日本の成人年齢が下がって18歳になりましたが、昔の成人にあたる元服 or 裳着(もぎ)は年齢が統一されてはいないものの早ければ11~12歳くらいなんですからね! やっぱり同じ歳でもつらがまえが違ってくると思うんだよなぁ。
 だって、今の20歳前後の女優さんで、奈緒さんくらいに徽子女王を演じられる実力のある人、いますかね? それは難しいと思う。

 なので、年齢を史実に合わせているのはけっこうなのですが、奈緒さん以外の上記の俳優さんがたは役に対しておおむね若いと思います。晴明と博雅に関しては「もうだいぶいい歳なのにゴロゴロしてる」というヤバさが足りないような気がしますし、貞文と義輔についても「今やらなきゃ死んじゃうよう!!」という焦りが足りないと思うんですよね。なんだかんだ言って安藤政信さんも小林薫さんも若いしカッコいいからなぁ!
 また、本作である種の悪役ともいえる珍しい立場にいた村上天皇も、もうちょっと権力に倦んだだるさも持つ帝王でいて欲しかったのですが、ピッチピチのリヒトくんだと女好きっぽい悪さが少ないような気がするんですよね。徽子女王が嫌悪する生ぐささが今一つないというか。

 ただ、奈緒さんも他の方々も、演技の面ではもう文句のつけようのない方ばかりだったと思います! 染谷将太さんの博雅は、かつて伊藤英明さんが自然体で演じていた「愛すべき能天気さ」を計算されつくしたプランでみごとに体現していましたし、キャラクターが強すぎるがために演者の個性が出しにくい晴明という難役を、主演の山崎くんも悠々と演じきってくれたと思います。基本的には鉄面皮でクールな人物なのですが、後半にいくにつれて徐々に感情を開いてエピローグではおなじみの晴明&博雅タッグができあがるという丁寧な演技は非常に高度だったと思います。
 あれですね、山崎くんはひたすら非現実的な美青年のようでいて、左まゆ毛がマンガみたいに半円カーブを描いているギャップがあるのがチャーミングですね! 冷徹そうでいて実はかわいくもあるという……ずるい!

2、陰陽師という職掌に関する解釈のバランス感覚がよろしい
 本作で重要なのは、「安倍晴明=陰陽師」という構図ではなく、晴明はあくまでも異端な存在であって、陰陽師という職業自体は非常にお堅い宮仕え(文字通り!)の国家公務員であるという点を、冒頭からバッチリ提示していることです。
 萬斎晴明の前作を観てもわかるように、陰陽寮という官庁に務めているモブの陰陽師もいるにはいるんだけど、晴明ほどの一流の陰陽師は昼は寝床でグーグーグー、夜に本領を発揮するか式神にお酌をさせて縁側で酒を吞んでいるものですというイメージを押していたのが過去作品の定型だったのではないかと思います。まぁ、誰も見ていない所で書物を読みふけって勉強したり反閇ステップを踏んで都の地霊を抑えたりはしているのでしょうが、そういう地味な部分は意図的に省略している演出が多かったんですよね。

 余談ですが、前回にも資料であげた過去の晴明関連映像作品のうち、ほんとのほんとに史実の晴明や陰陽師のお仕事をエンタメ要素ほぼゼロのガチンコで描写した作品は、NHK BSプレミアムの科学番組で特別編として再現されたドラマ『いにしえの天文学者 安倍晴明』(2020年11月)一作のみです。キャーゴローさん!!
 これはすごいですよ~。実は呪術者でも予言者でもなく「天体観測士で気象予報士」だったという陰陽師と、彼らの地位向上に生涯をささげた晴明の真実をちゃんとまとめていてすばらしいです。お堅いNHK さまの本領発揮。検索すればまだ、どうにかして動画が観られるはず!
 蛇足ですが、『陰陽師0』のテーマソングをかのバンドが手がけているのは、たぶん「天体観測」つながりなんじゃないっすかね……♪視えないものを視ようとしてェ~ 渾天儀(こんてんぎ)ィをのぞきこんだァ~ら凶兆星がみえちゃった☆
 実はこれ、その展開がとっくに終わっちゃったから今さらではあるのですが、現在絶賛放送中の2024年度大河ドラマ『光る君へ』でも劇的に描かれた花山天皇強制丸ボウズクーデター「寛和の変」を非常に分かりやすく晴明の視点から説明してくれているガイド篇なんですよね。大人気の藤原道兼さんは出てこないけど……晴明を精神的支柱にして政権掌握の賭けに出る右大臣兼家と、なんだかんだ言っても強固な権勢をよりどころとしたい下級貴族(当時)晴明とのダークな共依存関係がよくわかります。もはや松本清張の世界!

 それに対して本作『陰陽師0』はと言いますと、晴明がまだ正規採用の陰陽師にもなっていない学生時代というオリジナリティを最大限に利用して、律令制国家の中での必要不可欠な特殊技能を持った職掌集団としての陰陽寮のシステムをまず描き、それに対して非凡の「呪力=人心掌握術」をすでに会得しているがゆえに、「人をだまくらかす仕事なんてやりたくねぇ~。」と、はたから見れば怠惰にしか見えない生活を送るヤング晴明の鬱屈を浮き彫りにしているのです。天才であるがゆえに、努力したところで先が知れている「ギリ平安貴族になれない底辺官僚」としての陰陽師業界に、入る前からすでに嫌気がさしてしまっているんですね。これは、真面目に陰陽五行説や太陰暦の研究をしている陰陽博士の皆さんからは嫌われるわ……比叡山か高野山いけ!!

3、舞台となる平安時代初期の建築物や衣装に関するデザインの冒険がよろしい
 こういうあらすじだけを見ると、なんだか本作は晴明の頭を抑えつける要素しか周囲になくて非常に重だるい雰囲気のような感じがするのですが、そこらへんを陰陽寮の内装や徽子女王、村上帝あたりの皇族達の邸宅のデザインで非常にファンタジックかつ美麗にディティールアップしているのが本作の実に巧妙でしたたかなところだと思います。やっぱりキャリアの初期から国籍を超えた活躍をしている佐藤嗣麻子監督ならではのセンスと言いますか、私達がなんとなくひな祭りの雛人形や十二単みたいなイメージしか持っていない平安時代の貴族階級の風俗に対して、本作は「それよりちょっと昔」の10世紀前半の物語になるので、かなり自由に大陸文化を取り入れた美術になっているんですよね。そこらへんが、古いのに新鮮で綺麗なんだよなぁ。
 陰陽寮がなんとなくハリー・ポッターシリーズっぽいのはご愛敬ですが、徽子女王が十二単とは程遠い艶っぽくもある「うすぎぬ」主体の装束だったり、「掃除する女房のことも考えろ!」と思わざるを得ない散らかしっぷりで部屋中に花をちりばめていたりする「映画スクリーンの幅を考えた広い空間美術」になっているのは、もう観ているだけで幸せでしたね。なるほど、髪が異様に長いお姫様はああやって寝るんだ……寝相よすぎ!!

4、シリーズものの「0」としての分のわきまえ方がちゃんとしていて素晴らしい
 本作は、制作スタッフがまるまる総とっかえなので佐藤嗣麻子監督がどこまで意識しているのかはわからないのですが、いちおう萬斎晴明の『陰陽師』2部作のシリーズ作品であるはずです。
 それでなのかどうか、本作は作品のスケールが萬斎晴明以上に大きくならないようにきれいにまとまっています。「平安のシャーロック=ホームズ」としての晴明のキャラクターが完成し、名ワトスン役としての博雅との信頼関係もスタート、華と闇の村上朝もいよいよこれから始まるぞという期待感に包まれて物語は終幕するわけです。決して、萬斎晴明のように清涼殿付近で建物や石畳がぶっ壊れるテロ行為が行われたり、コントみたいな肉じゅばんを着た祟り神が日本列島の崩壊を狙うような、現実世界に侵食する異常事態は発生しないわけなのですね。

 それでも、本作も立派なエンタメ作品である以上、お客さんがガッカリしないようなアクションや CGスペクタクルは必要なわけなのですが、そこで佐藤嗣麻子監督が採ったのが、

「作中の破壊描写はすべて呪(しゅ)です。実際の建物や動物(かえるちゃん)に危害は加えられていません。」

 という妙手なわけなのでした。うまいね~。
 これによって、徽子女王や彼女の琴にまとわりつく黄金の龍の怪異や、晴明の術によってはじけ飛ぶかえるちゃんといった不思議現象がすべからく観る者、体験する者の主観による「真実」であって客観的な「事実」ではないことを、わかりやすい種明かしも含めて丁寧に説明しており、後半における羽生結弦くんチックな晴明独特の無重力なアクションも、原生林のような鬱蒼とした森のビジュアルで展開される敵の張った「八門遁甲の陣」も、すべては現実にあらわれるものではなく、術にかかった人たちの心の中で構築されるイマジネーションの共有世界なのだというルールが徹底されているのです。つまり、わんさと押し寄せる下っぱ戦闘員(同期の学生諸君)を踏み台にして陰陽寮狭しとピョンピョン飛び跳ねている時点で、晴明は自分自身が敵の術者のつくった「夢の中」にいる状況を冷徹に看破しているのです。「夢なんだからコレやっても文句はねぇだろ!」みたいな開き直り無敵キラキラスターマリオの境地にいるのですから、もはや手のつけようがありません。さすがは晴明!

 なるほど、集合的無意識の世界なのね~。昔っから『宇宙刑事ギャバン』の「マクー空間」に代表される「特撮もののクライマックスでヒーローと敵が必ず行くよくわかんない場所(たいてい採石場)」って一体なんなんだろうって思ってたんだけど、正義の味方と悪者が仲良くグースカ眠っていっしょに見ている夢の世界なのかも知れませんね。なかよし!!

 「葉っぱでつぶれるかえるちゃん」や「無からネズミを生む術」、「八門遁甲の陣」など、多くの有名な呪術エピソードを、心理トリックを利用した催眠マジックとして見事に再解釈した本作なのですが、私は特に「蟲毒の術」を人間社会に応用した理論がリアルで怖いなと感じました。
 なるほど、今までさんざんフィクション世界で使われてきて非現実的、非科学的なまじないの代表みたいなイメージをかぶっていた蟲毒も、こういう解釈で見ると、21世紀現代のブラック企業の中で誰かが仕掛けていても全く無理のない呪いなのですね。自由で実力主義な競争社会のようでいて、実は……というイヤ~な恐怖ですね。

 ……とまぁこんな感じで、本作『陰陽師0』はいろいろと設定や美術世界がかなり用意周到に計算された非常にウェルメイドな作品で、見た目こそハデではあったものの、いかにも大作映画らしい粗もほうぼうに見られた萬斎晴明2部作とは似ても似つかない「年の離れた兄貴2人を反面教師にして理知的に育った末っ子長女」みたいな秀作になっています。要するにあれです、『陰陽師0』はキュアフィナーレなんです! 髪の毛にこんぺいとうがくっついてるのにクールにすましてるんです! 本当なんです信じてください!!

 なので、ともかく面白かったよ~、観た方がいいよ!でおしまいにしても全然かまわないのですが、そこはそれ、ここは我が『長岡京エイリアン』の領域展開結界ですので、いつもの流れにのっとりまして、「ここ、もうちょっとこうして欲しかったな~」みたいな点をつぶやいてみたいと思います。いや、不満なんて一つくらいしかないんですけどね。


 そこはどうなのよ!? と感じた点
●賀茂忠行の嫡男で晴明の兄弟子にあたる賀茂保憲が陰陽寮のどこにもいない
 はいこれ! これは、これだけはいただけませんな!! 佐藤嗣麻子監督の作品であるからこそ、このポイントからは逃げないで真正面から取り組んでいただきたかった。

 賀茂保憲! 賀茂保憲ですよ!! このお人が、本作の舞台となった時期に陰陽寮にいないはずがないんですよ。
 晴明の師匠・賀茂忠行の嫡男で晴明の兄弟子という、おいしいにも程のあるポジションにある彼はれっきとした歴史上の実在人物(917~77年)で、生没年のわからない忠行が何歳の時にもうけた子なのかは不明なのですが、晴明の4歳年上になる陰陽師の先輩であり、『陰陽師0』の物語時期(天暦二年=西暦948年)では数え年32歳のはずです。
 このお方が本作に全く出てこないのが不思議……ではあるのですが、よくよく見てみると逆に「出てこないのも無理ないか」と感じてしまうのが、陰陽師業界では異常ともいえる保憲の出世スピードの速さで、948年の時点で彼は陰陽寮の暦博士と陰陽博士を兼任しており当時の宮廷の暦(今でいうカレンダーだが生活・政治上の重要度が段違いに高い)の制定の責任者を担当。官位にいたっては作中の陰陽頭・藤原義輔とおんなじ「従五位下」に叙せられているのです。映画の作中で村上帝をはじめとする皇族や大臣たち上級貴族「公卿(くぎょう)」と同列にいられずに、宮廷庭の玉砂利にじかに座っていた哀愁漂う背中が印象的な義輔でしたが、同じ時期の保憲は同じ官位でも宮廷にのぼることが許される「殿上人(てんじょうびと)」クラスにいたらしいので(のぼれない従五位下は「諸大夫」と呼ばれる)、ともすれば陰陽寮の上司であるはずの陰陽頭でさえも頭の上がらない出世を保憲はとげていたということになります。え? お父さんの忠行? 当然のごとく、保憲はこの時点で父・忠行の官位(正六位上)を軽く超えています。嗚呼、オヤジの威厳よ、いずこ……

 そんな実在したスーパーマン賀茂保憲が当ったり前のように陰陽寮のトップたる陰陽頭に就任するのは、『陰陽師0』の時代の約10年後となる天徳元(957年)年のことなのですが、それにしたって41歳なので、史実では陰陽頭どころか陰陽博士にすらならず、51歳の時に天文博士に就任したのがキャリアのピークという晴明に比べても、「陰陽師ものの主人公にするんならフツー保憲さんじゃないの?」と頭をひねってしまう出世の差が開いてしまっているのです。
 ただし、ここで晴明さんの名誉のために断っておきますと、当時の平安朝における「キャリア(肩書き)」と「官位」とは全く別のものでして、確かに肩書きの上では保憲と晴明との差は歴然としているものの、実際の貴族社会における待遇や権威・権力を左右するのは官位の方であり、その点では保憲が「従四位上」で晴明が「従四位下」ということで肉薄、しかも保憲の従四位上は晩年近くの功労昇進なので、無冠であっても晴明のステータスと知名度、信頼度は保憲と双璧をなすものであったはずです。でも晴明が保憲にずっと頭が上がらなかったのは事実のようで、『光る君へ』のように晴明が宮廷社会の闇の相談役として活躍するのはすべて、保憲の没後(970年代後半以降)の話となります。兄弟子は強し!

 さぁ、こんな晴明以上に常識はずれな活躍をしていた保憲を、この『陰陽師0』に出すのは果たしてどうなのよ!?と脚本を担当した佐藤嗣麻子監督が大いに頭を悩ませたことは想像に難くありません。ましてや、あの加門七海先生が監修を務めているのですから、まかり間違っても「出すの忘れちゃった☆」といううっかりミスはありえないでしょう。
 948年時点での賀茂保憲が陰陽寮で博士としてバリバリ働いていたことは歴史的事実なので、そんな彼ががっつり陰陽寮を舞台とした『陰陽師0』に出てこないわけがないのです。私、最後の最後までいつ出てくるのかと思ってワクワクしてたんだけど、ついに出てこなくってズッコケちゃいましたよ! そんな馬鹿な!! そんなもん、『ドラゴンボールZ 』にベジータが出てこないようなもんよ!? 無印じゃなくてZ によ!?

 もったいないにも程のあるカットなのですが……佐藤嗣麻子監督の立場になってみると、本作は明らかに「ガチガチの身分制社会の中で思うようにならず年齢ばかり重ねていき、鬱積してゆく生者たちの怨念」という、21世紀現代日本でも世の中の至る所に観られる大問題をテーマにすえています。そうである以上、その強固なはずの身分制社会をひょひょいのひょいっと乗り越えちゃっている保憲アニィを「ハーイみんなぁ☆」みたいな感じで作中に登場させるわけにはいかなかったのでしょう。そんな保憲が出てきちゃったら、義輔も忠行も是邦も貞文も、どんな顔して迎えたらよいのやら……陰陽師ものフィクションとしてはかなり異例なことに、この『陰陽師0』って、「死んだ怨霊がつけ入るスキ間がないくらいに生者のルサンチマンが粉塵爆発寸前レベルで充満している世界」なんですよね。ホラーじゃなくて純然たるミステリ世界。ほんと、いまの日本に瓜二つ……

 でもさぁ、存在まるごと消すっていうのは、どうなのかね。まぁ、確か萬斎晴明にも保憲は出てこなかったかと思うのでギリギリOK かとは思うのですが、夢枕獏の原作小説でもちゃんと出てくるし岡野玲子のマンガ版でもいい味を出していたので、そんな好キャラ保憲を出さないっていうのは……守りに入ってるというか、創作の姿勢としてカッコよくはありませんよね。物語の面白さよりも結構の美しさを取ったということか。う~ん。

 映画館で観ている最中から思っていたのですが、本作って、人知を超えた非凡な才能を持つヒーローの孤独と目覚めを描くという点で、同じ佐藤嗣麻子監督の『エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS』(1995年 以下『エコⅠ』と呼びます)を彷彿とさせる「主人公 VS アウェーな環境」の物語だと感じていました。ややこしいことを言いますが、この『エコⅠ』の前日譚にあたる『エコエコアザラクⅡ』もあるのですが、『陰陽師0』での晴明は陰陽師としての能力は完全に開花させているので、あくまで『エコⅠ』のほうが『陰陽師0』に近いと思います。
 両者の相似点は多いのですが、やはり転校生の魔女・黒井ミサを「禍々しい存在」として好奇と忌避の目で取り囲むクラスメイトや教師たちの視線の中にまぎれ込む「同種の強敵」という人物配置が非常に今回の『陰陽師0』と非常によく似ていて、ネタバレになってしまうのですが、クライマックスで「最恐最凶のジョーカー」が召喚されて主人公が勝利するという流れもほぼ同じなのです。にしても、西洋の魔王ルシファにあたる存在が、あのお方とは……岡野玲子のマンガ版だとあんなにチャーミングなオヤジだったのに!!
 きっと、「若手をシコシコ呪っとるヒマがあるんなら、真っ当に勉強して出世せんかい、おおたわけ者!!」という文字通りの大カミナリが落ちたんでしょうね。ほんと、本作の真犯人の呪力って、現実逃避以外の何者でもないですもんね。

 ちなみに、さらに『エコⅠ』と『陰陽師0』とを比較していくと、「ワトスン役のはずだったこの人が、まさか!?」というどんでん返しがある点で実は『エコⅠ』のほうが面白かったりもするのですが、残念ながら本作はあくまでもシリーズもののエピソード0ですので、『エコⅠ』と同じことをやったら次に続かなくなってしまうので仕方ありませんね。でも、博雅役の染谷さんだったらウキウキ顔でラスボスになってくれそうなんだけどなぁ。『麒麟がくる』の織田信長モード召喚!!
 ところで、『エコⅠ』は言うまでもなくピッチピチした娘さんがた(と美熟女教師)がひしめく、レスボス島のかほりむせ返る紫檀色の世界だったのですが、いっぽう今回の『陰陽師0』はといいますと、眉間にシワの寄ったいぶし銀のオッサンやおじいちゃんがひしめく、加齢臭のかほりむせ返る渋茶色の世界になってしまっております……小林薫さんでしょ、國村隼さんでしょ、安藤政信さんに北村一輝さんに、挙句の果てにゃ嶋田久作さんと来たもんだ! そんなん、山崎さんと染谷さんとリヒトくんと奈緒さんまとめてぶつけても一瞬で「じゅっ。」と蒸発しちゃいますよ。オヤジパワー全開ぃ!!

 ところで、私は今作のキャスティングを観て、どうやら撮影に入るかなりギリギリの段階まで、佐藤嗣麻子監督は本作への賀茂保憲登場を選択肢に入れていたのではなかろうかと邪推しております。保憲が出る可能性はそうとう濃厚だったのではないかと。
 それは、賀茂保憲という大役を任されても十二分にその責任を果たしうる実力を兼ね備えた俳優さんが、すでに本作の撮影のために白羽の矢を立てられていたのではないかと思うからです。ただ、結局は佐藤嗣麻子監督の苦渋の判断によって「賀茂保憲の登場」は幻となってしまったため、撮影スケジュールをすでに確保してしまっていたその俳優さんは仕方なく、いてもいなくてもいいような脇役を「友情出演」のような感じる形で、本作の片隅にちょちょっと出ることになったのではないのでしょうか。


そう、幻と消えた賀茂保憲2024エディション。それを演じる予定だったのは……吹越満さん、あなただ!!


 私は夢想します。かつて大河ドラマで「鎌倉時代の宮将軍・宗尊親王」だとか「足利幕府最後の将軍・足利義昭」だとかいう、「平安貴族じゃないのに公家っぽい役」を嬉々として演じてこられた吹越さんが、満を持して晴明以上にデキる平安貴族・賀茂保憲として、平安京をカッポする、その雄姿を。
 だって、あの天下の吹越さんですよ!? おかしいじゃないですかぁ、あんな中級貴族の家の下人みたいな役ぅ! それで後半の犯人捜しにも全然からんでこないんですよ!? 最初っからこの役でキャスティングされるワケないじゃないかよう!!
 証拠なんかなんにもありませんけど、私は絶対に賀茂保憲役で吹越さんが呼ばれてたと確信してますよ。そして、今作『陰陽師0』が大ヒットとなったあかつきには、その続編『陰陽師0.5』(だって『1』もうあるし……)にて満を持して、吹越保憲が登場してくれると……私、信じてる!!
 まぁその……『陰陽師0』の時には、平将門サマの怨霊調伏かなんかで関東かどっかに出張してたってことで、いいんじゃないの。

 ただ、948年の時点では保憲さんは32歳なんでね、吹越さんだとちょっとトウがアレなんですが……ま、いっか。

 余談ですが、保憲不在の本作で、保憲と同じ陰陽寮の暦博士として登場していた架空の貴族・葛木の役を嶋田さんが演じておられるのですが、その嶋田さんが「昭和フィクション世界最恐の魔人」として演じられた『帝都物語』シリーズの超悪役の名前も「加藤保憲」でしたねぇ。魔人加藤は陰陽師の末裔なので、その名の由来も当然、賀茂保憲からです。
 いや、そりゃ演じていただけるんであれば賀茂保憲を嶋田さんが演じられるのが最高なんですが……さすがにそれは、ねぇ。血管ブチ切れて亡くなられてもこまっちゃいますし、枯れた老境の嶋田さんもステキですしね。陰陽五行、私にも教えてください先生♡

●ヒロイン徽子女王が博雅を許す経緯がいまひとつピンとこない
 もう言いたい不満点はあらかた前段で言ってしまったのですが、結局、言い出す勇気の無かった博雅がおとがめ一切なしで徽子女王に許されるという流れは、いま一つピンとこないものがありました。「離れていても想いはひとつ」という結論も、なんか今回は気を紛らわすための言い訳にしかなっていないような気がして。
 せめて、最後に博雅が村上帝にチクリと諫言するような勇気を見せてもいいかなと思ったのですが……その後の中年になった頃の博雅と徽子女王の関係も気になりますよね。

●平群貞文と惟宗是邦の扱いがかなり不憫でもったいない
 この『陰陽師0』って、大筋は「橘泰家殺人事件の犯人を追え」という謎解きが主眼だと思うのですが、それがのちに「晴明の両親殺害の真犯人」という大ネタにつながっていくので、相対的に泰家殺しの容疑者になる人物たちのスケールが小さくなっちゃうんですよね。どうあがいたって晴明の親の仇の方が悪役として大物になってしまいますから。
 なので、せっかく安藤さんや北村さんといった妖気&色気ムンムンの名優たちを起用しているのに、TV のサスペンス劇場によく出てくる「いかにも挙動の怪しい容疑者フラグ要員」にとどまってしまったような気がするのです。私も個人的には年齢も身上も安藤さんが演じる貞文に強いシンパシーを感じていたので、彼にはなんとかハッピーエンドを用意してほしかったのですが……ああ無情!

 余談ですが、今作ではなんか晴明の育ての親である賀茂忠行もなんとなく真犯人っぽい怪しい雰囲気があってなぜなんだろうと不思議に思っていたのですが、忠行を演じた國村さんって、別の晴明作品で宿敵の蘆屋道満を演じてましたね! あ~、それでなんとなく信用が置けなかったのか。勝手に納得。


 え~、ま、わたくしめの『陰陽師0』の感想は、ざっとこんな感じでございます。

 佐藤嗣麻子監督のだんなさまの『ゴジラ -1.0』は、まさに前代未聞の『 -1.0』という感じで、先達の『ゴジラ(1954)』に全くとらわれない自由な解釈が世界に受け入れられる成功要因となったのでしょうが、それよりも一歩前に進んで若き日の大陰陽師・晴明の姿を描いた本作は、まさに『0』にふさわしい、シリーズの原点としての役割を充分にになった端整な作品になっていたと思います。

 う~ん、佐藤嗣麻子監督の『陰陽師』シリーズ、この一作で終わってしまうのは、いかにももったいないですよ。
 先ほど指摘した賀茂保憲もそうですが、『0』で語られなかった重要要素としては、「狐の子と呼ばれる晴明の出生の秘密」もありますし、晴明の宿敵といわれる蘆屋道満との邂逅もあります。あと2~3作は作ってもらいたいですね! あっ、そういえば人間の姿をした式神も出てこなかったですね。引き出しはまだまだありますね~。

 次に出てくるのは『陰陽師0.5』かな?『0.75』かな? それとも『0.01』かな!? ♪きざんできざんで陰陽師レッツゴー☆
コメント (2)
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