長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

小説全部やってくれ!! ~映画『ドラキュラ デメテル号最期の航海』~

2023年10月27日 18時58分26秒 | ホラー映画関係
 みなさま、どうもこんばんは! そうだいでございます。
 いや~、今年2023年も後半戦に入りまして、ハロウィンの季節が近づいてまいりましたね。みなさまのまわりでも盛り上がってますか、ハロウィン!?
 うちの地元・山形では、ぜんぜん盛り上がってねぇず……

 確かに100円ショップや雑貨屋さんではハロウィンコーナーって毎年できてて、そこは秋の風物詩として一応定着しているようなのですが、実際に魔女やドラキュラの扮装をして外を練り歩いている子どもがいるのかっていうと、ねぇ……東北地方はもう寒ぃし。
 うちの近所の上山市という所では、秋に「かかし祭り」っていうのをやるんですよね。まぁ、そこらへんが収穫祭という意味では海外のハロウィンに近いものがあるでしょうか。でも収穫を祝うというのはわかるんですが、そこに「化け物の扮装をする」っていう要素が加わる途端に、多くの日本人にとっては「?」となっちゃうんでしょう。
 その一方で、東京やらなんやらという大都会では、ハロウィンの仮装行列って盛り上がりますよね。あれやっぱ、寒ぐねぇがらやれんだべなぁ。特に娘っこだづはバニーだナースゾンビだって薄着になっがらなぁ……山形じゃまんず無理だべね。

 秋は年末に向けてなにかといろいろ忙しくなる季節なのですが、そんな中でもヘンな扮装をして一夜の余裕を楽しむハロウィンという行事の気持ちに、あこがれはありますけどね。非日常の空気を楽しむという点で、やっぱりハロウィンは正真正銘のお祭りなんだと思います。
 ということで今回はハロウィン企画といたしまして、ちょうどこの時期に山形市の映画館でかかっていた、この季節にぴったりの映画をお題にしたいと思います。こちら!


映画『ドラキュラ デメテル号最期の航海』(2023年9月公開 119分 アメリカ)

おもなスタッフ
監督 …… アンドレ=ウーヴレダル(?歳)
原作 …… ブラム=ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』第7章『デメテル号の航海日誌』(1897年)
脚本 …… ブラギ=シャット Jr.(?歳)、ザック=オルケウィッツ(?歳)
撮影 …… トム=スターン(76歳)
音楽 …… ベアー=マクレアリー(44歳)

おもなキャスティング
クレメンス医師      …… コーリー=ホーキンズ(34歳)
アナ           …… アシュリン=フランシオーシ(30歳)
エリオット船長      …… リアム=カニンガム(62歳)
エリオットの孫トビー   …… ウディ=ノーマン(14歳)
ヴォイツェク一等航海士  …… デイヴィッド=ダスマルチャン(46歳)
オルガレン二等航海士   …… ステファン=カピチッチ(44歳)
ペトロフスキー二等航海士 …… ニコライ=ニコラエフ(41歳)
ラーセン二等航海士    …… マーティン=フルルンド(?歳)
エイブラムス二等航海士  …… クリス=ウォーリー(28歳)
調理師のジョセフ     …… ジョン・ジョン=ブリオネス(?歳)
ドラキュラ        …… ハビエル=ボテット(46歳)


 いや~、なんという好タイミング! ハロウィンといえば、やっぱりこのお方ですね! ♪どらどらきゅっきゅっ どらどら~。

 ドラキュラ、わたし大好きです!
 吸血鬼が大好きという話は、我が『長岡京エイリアン』でも過去に名優クリストファー=リーの訃報とか、小野不由美原作の本格的吸血鬼アニメ『屍鬼』についての記事とかで、すでに触れていたかと思います。そうそう、『屍鬼』の主題歌を唄ってたのが BUCK-TICKさんだったんですよねぇ。しみじみ。

 そこらへんで、具体的に吸血鬼という空想生物……というかジャンルのどこが好きかについては、あらかた語ったかと思うので繰り返しませんが、文学は無論のこととして、やっぱり吸血鬼文化の華は映画ですよね!
 吸血鬼映画なんて、もう数え上げればキリがないほど無数にありまして、私も好き好きと言っていながらも、今現在も新作がどんどん生まれているこのジャンルの作品すべてをチェックしているわけではないので大きな口は叩けないのですが、それでもあえて私の中での各部門ベストを挙げるのならば、

ビジュアル(美術)ベスト …… 『ドラキュラ』(1992年)
ドラキュラ俳優ベスト   …… 『吸血鬼ドラキュラ』(1958年)
ロマン風味ベスト     …… 『ノスフェラトゥ』(1978年)
不吉さベスト       …… 『吸血鬼』(1932年)
トラウマエロ度ベスト   …… 『処女の生血』(1974年)
日本の吸血鬼映画ベスト  …… 『呪いの館 血を吸う眼』(1971年)

 っていう感じになりますかね~。いや、ほんとに吸血鬼ってたくさんの要素が複雑にからんで成り立ってるキャラクター! 恐怖、ビジュアル、ロマン、不吉さ、そしてエロさ。
 こうして観てみると、吸血鬼っていうものはどうしたってキリスト教圏の産物ですよね。日本でももちろん吸血鬼文化は栄えてはいるのですが、先述の『屍鬼』にしろ上に挙げた『血を吸う眼』にしろ、ルーツを海外に求めないと説得力は生まれないんですよね。あとは岸田森サマとか岡田真澄さんとか、外見で強引に存在感をつけないと、日本での吸血鬼の跳梁は難しいですかね~。

 ともかく、さかのぼればなんと1913年の草創期から映画の題材になっているという吸血鬼は、1世紀を過ぎた今もなお、生ける人間たちを恐れさせ、魅了し続ける存在となっているのです。その命は、まさしく不死!
 そして、その輝かしい血みどろの歴史に、いま新たなる1ページが! というわけで、この『デメテル号最期の航海』なわけなんですが。

 この作品、いまひとつ話題にならない。

 なんでか全然わからないのですが、原作小説『ドラキュラ』(1897年)の一部をがっつり映像化している作品だというのに、Wikipedia でもドラキュラ関連の映画作品の中にまったく名前があがらないのです(2023年10月現在)。『ドラキュラ ZERO』(2014年)とか『レンフィールド』(2023年)とか、けっこう自由に『ドラキュラ』から離れている作品も名を連ねているのに、よっぽど原作に準じていると標榜している本作だけは無視されちゃっているのです。なんで真面目な子がつまはじきにされるのか……

 この映画『デメテル号最期の航海』は、何度も言うようにあまたある吸血鬼文学の中でも最も有名なキャラクター「ドラキュラ伯爵」の登場する長編怪奇小説『ドラキュラ』(作者・ブラム=ストーカー)の中の「第7章」のみをピックアップしてひとつの作品に仕上げたものです。
 ある作品の一部だけをつまみとって約2時間の映画になんて、できんの!? と思われるかもしれませんが、小説『ドラキュラ』はかなりボリュームたっぷりな一大スペクタクル長編でして、とりあえず手元にある創元推理文庫版をみてみましても、注釈ぬきの本文のみで543ページあります。なかなかのもん!

 ちなみに、今現在の日本で入手しやすいものだけでも『ドラキュラ』の訳書はかなりたくさんあり、この作品の今なお衰えぬ人気を雄弁に物語っております。以下、こんな感じ。
・創元推理文庫版『吸血鬼ドラキュラ』(1971年出版 平井呈一・訳)
・水声社版『ドラキュラ 完訳詳注版』(2000年出版 新妻昭彦&丹治愛・訳)
・角川文庫版『吸血鬼ドラキュラ』(2014年出版 田内志文・訳)
・光文社古典新訳文庫版『ドラキュラ』(2023年出版 唐戸信嘉・訳)
リライト小説
・角川文庫版『髑髏検校』(1939年出版 横溝正史・作)
・講談社版『菊地秀行の吸血鬼ドラキュラ』(1999年出版 菊地秀行・作)
・小峰書店版『ドラキュラ』(2012年出版 リュック=ルフォール・作、宮下志朗&舟橋加奈子・訳)
・集英社みらい文庫版『新訳 吸血鬼ドラキュラ・女吸血鬼カーミラ』(2014年出版 長井那智子・訳)

 どうです、よりどりみどりでしょ!
 私も全バージョンを持ってるわけじゃないんですが、やっぱり初の完訳版となった平井呈一大先生の創元推理文庫版と、フランスのバンド・デシネ作家ブリュチの雰囲気たっぷりの挿絵がすばらしい小峰書店の絵本版がイチ押しですね。絵本っていっても怖すぎて子どもに読ませられねぇ!
 あと、なにげに角川文庫版の表紙絵もいいですよね。山中ヒコさんによるイラストなのですが、一見ドラキュラらしくなくてピンと来ないのですが、小説を読んでみると、主人公のひとりジョナサン=ハーカーがロンドンのど真ん中で若返ったドラキュラ伯爵を見て心底恐怖する瞬間であることがわかるわけです。にしても、あのあっさり顔の美男子が、年とると手毛もじゃもじゃで眉毛つながりで息むちゃくちゃ臭いおじいちゃんになるんだもんね……加齢って、やーね。
 余談ですが、平井大先生が『ドラキュラ』の完訳版に先駆けて抄訳版を日本で初めて出版したのは1956年なのですが、それよりもずっと古い戦前にすでに『髑髏検校』を世に問うている横溝正史神先生は、やっぱスゲーな! あれ? 我が『長岡京エイリアン』でも、この『髑髏検校』をレビューしようとしてそのまんま塩漬けになってしまっている記事があったような……そっちの完成は、いつかな!?

 さらに余談になるのですが、今回の『デメテル号最期の航海』の日本公開に歩調を合わせたかのように、詳しい注釈のうれしい光文社古典新訳文庫版が今月出ています。思い起こせばおよそ30年前、私が思春期の頃にコッポラ監督版の『ドラキュラ』が公開された時も、確か新書版で小説『ドラキュラ』というか映画のノベライズ(竹生淑子・訳 ソニー出版)が出ておりまして、読みやすくショートカットされていることもあって、私は夢中になって読んでおりました。子どもにはちょうどいいサイズでしたよね! 文章だから、モニカ=ベルッチのエロエロ女吸血鬼とかウィノナ=ライダーの雨でネグリジェスケスケのたゆんたゆんとかいう不純な刺激もなかったし。ちきしょう!!

 とにもかくにも、一読瞭然、小説『ドラキュラ』はふつうの一人称もしくは三人称の語りによる小説ではなく、複数の登場人物の日記や手紙、当時最新技術だった蝋管式蓄音機による録音メモ、新聞記事などの断片資料が時系列順にならんで一つの物語を形成するという、かなり実験的かつアグレッシブな作品となっております。そこらへんをコッポラ版の『ドラキュラ』はなんとか映像化しようと四苦八苦していたのですが、たいていのドラキュラ映像作品は群像劇リレー形式をきれいさっぱり無視してドラキュラ本人か最初の主人公のジョナサン、もしくは後半の主要人物である吸血鬼退治の専門家ヴァン=ヘルシング教授あたりを主人公にすえたダイジェストとなっているわけです。小説全体をまるごと忠実に映像化するのは至難の業なんですな。

 そんな長大な小説『ドラキュラ』の中でも、今回スポットライトが当てられることになったエピソード「デメテル号の航海」とは、7月6日に東ヨーロッパの黒海沿岸にあるブルガリア公国(実質ロシア帝国領)の港湾都市ヴァルナから、イギリスのロンドンに向けて出港したロシア船籍のデメテル号という輸送貿易船が、8月8日から9日にかけての深夜に船長1名のみの変死体を乗せた異常な状態で、ロンドンからだいぶ北に離れたイングランドのウィトビーに座礁漂着したという事故の報を、たまたまウィトビーに来ていたメインヒロインのミナ=マリーが伝え聞くというだけの挿話です。
 こういった感じの間奏曲的なポジションで登場人物がまったくからまず、「ドラキュラがヨーロッパから海を渡ってイギリスに上陸したらしい」という情報だけがほのめかされる第7章は映像化の機会が特に少なく、有名作で言うとコッポラ版『ドラキュラ』でデメテル号の惨劇らしき映像モンタージュがトータル1分足らずセリフ無しで流れたくらいが関の山で、ヴェルナー=ヘルツォーク版『ノスフェラトゥ』では船員の死体と、ペスト菌を保有した大量のネズミを乗せたデメテル号が漂着する異様に静かなカットが印象に残るのみ。ベラ=ルゴシ主演の『魔人ドラキュラ』(1931年)やクリストファー=リーの『吸血鬼ドラキュラ』にいたっては、ドラキュラが船に乗ってイギリスにやって来るくだり自体が丸ごとカットされているしまつです。
 そんな中でも、デメテル号内での恐怖を比較的ちゃんと映像化しているのが、『ノスフェラトゥ』のリメイク元である最初期のサイレント映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922年)で、実は諸事情あってこの作品は21世紀現在、62分短縮版と94分復元版の2バージョンが存在しているのですが、どちらにしても、しっかり尺を割いてデメテル号の船内で跳梁する吸血鬼(ドラキュラじゃないけど実質ドラキュラ)と、それに恐れおののく船長と一等航海士の姿を描いています。やっぱ元祖は偉大なり!

 そして、この古典的作品『吸血鬼ノスフェラトゥ』について忘れてはならない……というか忘れたくてもインパクトがありすぎて忘れられなくなる重要ポイントが、いわゆる「ノスフェラトゥ型吸血鬼」の原点でもある、ということなのです。演じるはマックス=シュレック!
 ノスフェラトゥ型吸血鬼というのは、まさに読んで字のごとく、この『吸血鬼ノスフェラトゥ』で創始された吸血鬼のビジュアルパターンなのですが、一見してわかる通りの「禿頭」、「とがった耳」、「ネズミのように異常に長く伸びた前歯」、「死者のように真っ白い肌の色」といった外見的特徴を持った吸血鬼のことです。当然、ベラ=ルゴシやクリストファー=リーで定着した「黒マントと黒服もしくは夜会服」、「オールバックになでつけられた豊かな黒髪」、「長身で貴族的な身のこなし」、「異常に長く伸びた八重歯」といった特徴の「ダンディ紳士型吸血鬼」とは、まるで異なる系統のビジュアルなわけです。
 当然、世間で人気があるのは後者の方で、ハロウィンでド定番の扮装パターンになっているのはもちろん、コントで手っ取り早く吸血鬼が出てくるとすれば絶対に格好は黒マントに黒髪ですし、手塚治虫や藤子不二雄のマンガから今年のマクドナルドの CMにいたるまで、いつの時代でもまんべんなくお出ましになるのはカッコいい紳士タイプです。
 それに対してノスフェラトゥ型はといいますと、確かに知名度においては圧倒的に不利ですし、第一ハロウィンでわざわざハゲヅラをかぶってわしゃドラキュラじゃと言い張るような猛者も少ないと思うのですが、やはり100年前に世を驚愕させた『吸血鬼ノスフェラトゥ』のインパクトは絶大で、上述の『ノスフェラトゥ』以降も、スティーヴン=キングのホラー小説『呪われた村』(1975年)の映像化作品である『死霊伝説』(1979年)や、『吸血鬼ノスフェラトゥ』の撮影背景を大胆にアレンジした問題作『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』(2000年)などで、思い出したようにたま~に復活するのが、いかにも陰気で不気味なノスフェラトゥ型なのです。中には、さっそうとマントを翻して闊歩するダンディ紳士型のようでいて実は……?といった意外性のある、やはりスティーヴン=キング原作の『ナイトフライヤー』(1997年)のような作品もあります。全体的に「わかってる人はノスフェラトゥ型だよね!」というマニアックな人気がある感じですね。


 そんな中で、やっと本題、今回の『デメテル号最期の航海』の話になるわけなのです。長い! 前置きが長すぎるよ!! でも、この歴史の厚みこそが吸血鬼文化よ!
 そう、この作品に登場するのは、明らかにノスフェラトゥ型の最新アップデート版なのです。これはネタバレにならないでしょ。だって、ドラキュラ役が、あのハビエル=ボテットさんなんですよ!? そんなん、彼がフツーに貴族然とした紳士に落ち着くわけがないじゃないですか!

 話を戻しますが、この作品の原作は、創元推理文庫版で言うと全体で543ページある小説の中のほんの一部、たった16ページの文章だけになります。新聞『デイリーグラフ』紙の8月8・9日付記事の切り抜きと、難破したデメテル号の船内に残されていた航海日誌のうちの7月6日~8月4日の記述だけがその内容すべてなわけで、そこに登場するのは、映画の冒頭で座礁したデメテル号の事故調査にあたる港町ウィトビーの警察関係者と、デメテル号船員の「ペトロフスキー」、「エイブラムス」、「オルガレン」、「一等航海士」、そして日誌を書いてデメテル号にひとり死体となって残っていた船長のみとなります。なお、原作小説によると船長はロシア人らしく(名前は言及されず)、日誌もロシア語で書かれています。「船員5名、航海士2名、コック1名、船長」の計9名がデメテル号の乗組員だと書かれているため、上記の他に船員2名と航海士1名とコック1名がいたはずですが、彼らの名前までは語られていません。

 対して今回の『デメテル号最期の航海』での乗組員はイギリス人のエリオット船長、原作通りのヴォイツェク一等航海士、ペトロフスキー、エイブラムス、オルガレン、コックのジョセフ、その他にラーセン二等航海士、エリオット船長の孫のトビー、飛び入りで航海に参加したクレメンス医師の計9名となる……はずなのですが。

 ここからは、小説『ドラキュラ』になかった映画オリジナルの要素についての話になりますが、ふつうに小説の当該箇所を映像化するだけでは、主要登場人物が全員死亡のバッドエンドまっしぐらですし、そもそも何者に襲われているのかさえ一切わからないまま死ぬという、脇役にしてもあんまりな扱いになってしまいます。しかも、映画は冒頭の大嵐シーンでデメテル号の座礁漂着した無残な船体と生存者絶望視のありさまをがっつり描写していますので、結論がもう出ちゃってる前提で、約2時間どうやって観客の興味を持続させていくのか、そうとう巧妙な舵取りが必要となっていくわけですね! 自分で自分を追い込んでるな~!!
 そこで実にうまく本作に組み込まれたオリジナル要素こそが、「クレメンスの飛び入り乗船」と「謎の密航者アナ」のふたつだと思うのです。

 要するに、船員全員が死亡という原作の描写に矛盾することなく希望の残るラストにするために、新聞記事と航海日誌という間接的な記録資料で成り立っている原作の特質を逆手にとって、「急場のアルバイト採用だったのでクレメンスは記録されなかった」という離れ業をやってのけたわけです。なるほど~! うまくやったもんです。そして、クレメンスが誰でもいい以上、ヨーロッパに新天地を見出そうとした先進的な黒人さんであってもいいじゃないかと。作品に新風が入りましたね。
 そして、オリジナル主人公クレメンスの登場以上に重要だったのがアナという紅一点キャラの追加で、なんとドラキュラ伯爵が「長旅のおべんと」感覚で持ってきていた地元トランシルヴァニアの村娘という、クレメンス同様のウルトラC で、この物語に参加してきたわけなのです。
 このアナの存在は当然、19世紀の輸送貿易船の常識としては考えられなかった「船に女性が乗ってる!?」という状況を作り出すことで、映画としても画面にアクセントが加わりますし、吸血鬼作品らしくほのかなロマンスも生み出す効果があると思います。でも、今作の船内状況はかなり切迫して衛生的にもギリギリなものですので、それでもあえてわけわかんない病人のアナにアプローチをかけようというオットコ前な船員はおらず、一様にヒロイン扱いせずに忌み嫌っていたのが印象的でしたね。アナふんだりけったり!
 また、アナ役の女優さんが絶妙に美人すぎないのもいいんですよね。ひたすら薄気味の悪い密航者という感じです。

 ヒロインの機能が無いというのならばアナの存在意義はどこにあるのかと言いますと、それはもう、今作の中での解説者、つまりはこのデメテル号に潜む恐怖の存在が何者なのかという肝の部分を、わかりやすく船員たちと観客に伝えてくれる役割なんですよね。これは重要です!
 つまりこれ、出てくるドラキュラ伯爵が定番のダンディ紳士型だったら、いつもの調子のよさでクレメンスか船長あたりを相手にして「冥途の土産に教えてやろう! わしはこれこれこういう目的で帝都ロンドンに引っ越すのじゃ。」みたいな聞いてもいない解説を自分からとうとうと語ってくれるはずなのですが、いかんせん今作の伯爵は恐怖一辺倒で比較的寡黙なノスフェラトゥ型ですので、めんどくさいからアシスタントのアナちゃんにかわりに説明してもらいました、という事情があったのでしょう。アナちゃんは『お笑いマンガ道場』の川島なお美さんかっつうの! イエーイ、令和にこの例え☆
 冗談はさておき、アナの説明をもって今作のドラキュラがますます無口になり、それによって「話の通じない絶対的恐怖」感が増強されたことは間違いないです。ウーヴレダル監督は、とにかく神経質なほどに、ハロウィンなどでの看板キャラとなり親しみさえ湧く存在になっているドラキュラ伯爵というイメージを一掃したかったのでしょうね。怖さマシマシ!
 イメージ払拭というのならば、「十字架持ってりゃなんとかなる。」という吸血鬼対処法を気持ちいいくらいにぶっ飛ばして襲いかかる伯爵の強引さも実に印象的でしたね。これ、確かに十字架自体は好きじゃないんでしょうけど、「触んなきゃいいんだろ、触んなきゃよう!」みたいな勢いで体当たりをかまして、十字架を吹き飛ばすか人間を気絶させるかしてからゆっくり血を吸うという、今作のドラキュラさんの非常にドライな対応に、実際の私達の生活の中での「クマ対策の鈴とかラジオの音」にも通じる問題点を感じたのは、私だけではないでしょう。え、私だけ!?

 すなはち、クマが人間の出す騒音を避けるのは、「人間の弱さ」を知らないからなのです。知らないからビビるだけなのであって、人間が自分たちクマと比較して格段に弱い生物であることを知ってしまった(人を殺してしまった)クマがもしいた場合は、音を立てようが何しようが全く効果はないといいます。
 これと同様に、十字架を持っている人間が弱い、つまり吸血鬼にビビりまくっているとしたら、十字架を持っていても意味は全く無いのでしょう。吸血鬼の脅しに屈しない確固たる意志を持った人間が掲げるからこそ、十字架は吸血鬼を退ける霊験を発揮するというシステムなのではないでしょうか。だから、そこら辺に落ちてた棒っきれと棒っきれを垂直に交差させれば吸血鬼は逃げ出すよ、なんていうことはあるわけないのです。「お前なんか怖くないぞ、お前なんか神の摂理に背いてるだけの寂しい異常者なんだぞ!」と胸を張って論破できる人じゃないと吸血鬼はやっつけらんないんだろうなぁ。ですから、敬虔なる禅宗信徒である私なんかは、ヴァンパイアハンターになれる資格はありません。

 なんか、今回の記事は吸血鬼モノへの愛情のパトスがほとばしりすぎて、いつも以上に支離滅裂なものになっちゃってますね……結局、映画の感想ほとんど言ってないじゃん!

 それでも字数が相変わらずのいい加減にしなさいラインを超えようとしていますので、そろそろまとめに入ってしまうのですが、今回の映画『デメテル号最期の航海』は、非常に手堅い秀作だと思います。
 そうなんですが、どうしても「壮大な物語の中の一部分のみを映像化した」スケールの小ささが否定できず、一つの作品としての完成度は申し分ないのですが、結局は「悪者が退治されない(物語が終わらない)」という消化不良感が残ってしまう作品であると感じました。いや、そりゃドラキュラ伯爵がイギリス狭しと大暴れするのはこの映画が終わってからなんで、しょうがないんですけどね。
 ウーヴレダル監督が、今作を制作するにあたって吸血鬼映画と同様に参考にしたという、あの超名作 SFホラー映画『エイリアン』(1979年)を例に挙げるのならば、ラストであのエイリアンがのうのうと地球に行っちゃうバッドエンドになっていいんですか?それで一つのエンタメ作品のオチにしていいんですか?って話なんですよね。終われないだろ~!

 だとしたら、あなた……やっぱこのウーヴレダル監督とボテット伯爵のペアで、今作の前後の『ドラキュラ』全部を映画化するっきゃないよね~!!

 やってほしいな~。いや、たぶん今作がヒットしたら、そうする腹づもりなんじゃないの? でも、これヒットしてるかな……

 でも、今作は本当にほぼ完全再現されている実物大の帆船セットのリアル感も雰囲気満点ですし、登場する俳優さんがたもうまい人ばっかりなんで、満足度は非常に高いと思うんですよ。特に、トビー少年を演じた子役のウディくんが上手なんだよなぁ! この子は将来有望だぞ。
 あと、ちゃんとドラキュラ伯爵が怖いというのも大事ですよね。そして、怖さがパワー推し一辺倒なんじゃなくて、濃霧の中や帆船の帆の向こうでばっさばっさと羽ばたく姿がほの見えたりする幻想性をまとってるのも高ポイントですよ! そうそう、今回の伯爵って、ノスフェラトゥ型なのにネズミ系じゃなくてコウモリ系なんですよね。ネズミは序盤で船から逃げちゃうんだもんね。

 ただ、なにかと原作小説にこだわっていながらも、どうにもこの作品の煮えきらないのは、ウィトビーのどこかにいるはずの原作小説の超重要人物ミナ=マリーが映画にいっさい登場しないとか、原作通りならば座礁したデメテル号から跳び出していくはずの、犬か狼のような野獣に変身したドラキュラ伯爵の姿がまったく描写されていないとかいう、そのくらいのファンサービスはしてほしいな~というポイントを完全無視しているところなんですよね。な~んか冷たいんだよなぁ。「続き、あるかもよ!?」くらいの見栄は張ってもいいと思うんですけどね。

 これだけじゃ終わんないですよね!? 期待してますよ~、ウーヴレダル監督!


 最後に蛇足ですが、人間、あこがれてると夢はかなうんだなぁ~と私がしみじみ感じた体験を、ちょっとだけ。

 私、何度も言うように吸血鬼が大好きなんですが、今年の夏、自分の部屋で寝ていてふと目を覚ましたら、闇の眷属たるコウモリちゃんたちがキーキーパタパタ、へやじゅうを飛び回っておりました……

 私の部屋、壁に通気口があるから、日中のあまりの暑さに避難していたやつらが、そこから入ってきたみたいなのね。コウモリが飛び回る寝床って……いや~、これで吸血鬼に一歩近づいたネ! よかったよかった。

 「飛びねずみ」とはよく言ったもので、日本のコウモリってちっさくてかわいいですね。ごみ袋ぶん回して全員捕まえて外に逃がすの、大変だったよ~。素手で触るのは、危険だからやめようね!
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生ける伝説!! 岡山のプリキュアさん「キュアまこぴー」を見よ!! ~本文~

2023年10月22日 11時22分28秒 | アニメらへん
≪知る人ぞ知る伝説のプリキュア「キュアまこぴー」に関する詳細は、こちら!≫

 え~、それで本題なんですけれどもね。

 前置きはほんとに省略しちゃうんですが、まず日本の中国地方に実在するプリキュアさんの話をする前に、その前提として2004年から続く東映アニメーション、そしてテレビ朝日「ニチアサ枠」の伝統シリーズである「プリキュアシリーズ」に関する極私的なつれづれをば、ほんとにちょっとだけ。
 今さらプリキュアシリーズの説明など、我が『長岡京エイリアン』を訪れるようなもの好きな方々には不要かと思われるのですが、今年2023年はシリーズにとって特に重要なアニバーサリーイヤーに設定されているようで、今年の2月から放送されているシリーズ第20作『ひろがるスカイ!プリキュア』は「シリーズ20周年記念作品」という金看板がついており、来月9月に公開される予定の映画もまた、歴代シリーズの人気プリキュアたちが大挙して登場する『プリキュアオールスターズ』シリーズの最新作となるようです。ものすごい活況!
 ただ個人的には、2004年放送開始のシリーズの「20周年記念作品」が2023年放送開始の作品というのが、ちょっと釈然としないものがあるのですが……振り返るとプリキュアシリーズの10周年記念作品が、ふつうに2014年放送の『ハピネスチャージプリキュア!』だっただけに、なおさら気になるんですよね。なにをかさほどに急ぐことやは、ある!?
 わたくしの推測では、このプリキュアシリーズの不思議なカウントルールの変更は、おそらく同じように今年2023年が「放送開始10周年」というアニバーサリーイヤーとなる『キッチン戦隊クックルン』シリーズをつぶしにかかるための奇策かと思われるのですが……真相はよくわかりません。同じ変身ヒロイン同士、仲良くしてくだされ! 3代目クックルン、万歳!!

 また、男性である私とプリキュアシリーズとの関係の遍歴をかいつまんで語らせていただきますと(ほんと、個人ブログでしかできない愉悦……)、はっきり言いまして私が本格的に興味を持ち始めたのは、恥ずかしながらもシリーズ開始からだいぶ時間が経過した2014年の『ハピネスチャージプリキュア!』からでして、それも生活上の必要があってなんとなく勉強してみた、みたいなビジネスライクな始まり方だったのです。
 それからまぁ10年くらい時が経ちまして、さすがにシリーズ全話を毎週チェックするような時間的余裕も持ち合わせておらず、特に日曜日の朝なんかグースカ寝てるに決まってるみたいな生活サイクルにもなっていましたので、過去作品も併せて全体的になんとな~く知ってると言えるくらいの知識は持ったかな、みたいなゆるさにとどまっている状態です。
 我が『長岡京エイリアン』でも、劇場版作品の諸作をレビューする「準備だけはできている」という状態の記事がゴロゴロ塩漬けになっているていたらくなのですが、これはやっぱり、アニメ作品として非常に質の高いテーマ性が込められている意欲作が多いからなんですよね。芸能人ゲストの声優起用という「悪癖」はありながらも、基本的には実力のあるプロの声優さんがたが一堂に会するシリーズですし。
 いやほんと、これらの劇場版作品群のレビューは、いつか必ずやります! 需要があるかどうかは度外視ですが……待っておられるなんていう奇特な方、もしもいらっしゃったら、ほんとすんません!!

 まぁそんなこんなで、もはや日本人であったら聞いたことがない人はいないのではないかという一大ブランドとなったプリキュアシリーズなのですが、親御さんが安心してお子さんに見せられる子供向けアニメという性質上、守るべきルールはガッチリありながらも、例えば今年の『ひろがるスカイ!プリキュア』においては「イメージカラーが青のプリキュアが主人公」、「シングル家庭で育ったプリキュアの登場」といったように、社会情勢の変化に応じた史上初の試みがアグレッシブに取り入れられており、その中でも特に話題性が高いのが、「史上初のレギュラー男性プリキュア」というトピックなのではないでしょうか。

 女児向けのアニメ番組なのに、男のプリキュア!? 唐突に効くとビックリしてしまうような話ではあるのですが、さすがは20年の歴史を擁するシリーズといいますか、今年の男性プリキュア=キュアウイングの誕生に至るまで、シリーズでは徳川家康に匹敵する忍耐強さで製作スタッフ陣がこつこつと前提土壌を醸成してきたあゆみがありました。
 すなはち、「男性のプリキュア支援者(『フレッシュプリキュア!』など)」、「妄想の中で語られた男性プリキュアの可能性(『ハートキャッチプリキュア!』)」、「プリキュア好きが高じてプリキュアを名乗った男性芸能人(『スマイルプリキュア!』)」、「プリキュアの超能力のみを科学的分析で搭載したスーツを着装した男性(『ドキドキ!プリキュア』)」、「女性プリキュアに変身する男性悪役(『ハピネスチャージプリキュア!』)」、「きわめてプリキュアに近い超能力を有した男性(『キラキラ☆プリキュアアラモード』)」、「特例的に一度だけプリキュアになった男性(『HUGっとプリキュア!』)」、「もはや老若男女分け隔ての無い人類プリキュア補完計画(同じく『HUGっとプリキュア!』)」、そして昨年の「プリキュアとレギュラー出演的頻度で共闘する男性ヒーロー(『デリシャスパーティ♡プリキュア』)ときて、満を持しての今年のレギュラー男性プリキュアと……これまさに、石橋たたきまくりの慎重の上に慎重を期した隠忍自重の歴史!!
 しかも、よくよく観てみれば今年の男性プリキュアだって、「人類ホモサピエンスの男性プリキュア」じゃありませんからね。鳥類! 鳥類のオスのプリキュアですから。禽獣史上初のプリキュア(いわゆる禽プリ)としては画期的なのかも知れませんが、ここが完全無欠なゴールではないということで、来年以降も、「男とプリキュア」という大問題は継続して審議されてゆくことでしょう。深いな~!!

 ここでちょっとただし書きを入れておきますが、シリーズ20周年記念企画の一環として現在、シリーズ史上初の「オリジナル演劇作品」として、『 Dancing☆Star プリキュア』(2023年10・11月 東京・大阪で上演予定)というタイトルがアナウンスされており、そこに登場する新プリキュア5名が全員、人間の男子高校生らしいという驚天動地の新情報が入っております。でも、これ……いや、大いにがんばっていただきたいところなのですが、公式のお達しとはいえ、はいそうですかとすんなり受け入れる気にならないんだなぁ~、わたし! なんか釈然としないというか、プリキュアとして認識できないというか……私が男だからなのか、作品をホイホイ見に行けない地方在住だからなのか、『テニミュ』みたいなイケメンステージ文化に全く疎いからなのか。まずまず、今は静観しましょう。彼らがアニメの世界に、ゲスト扱いでも何でもいいから入ってきたら、認める!!

 でもまぁ、20年という歳月を費やしても、鳥のオスがプリキュアになれるのがやっとってんですから、人間の男性がレギュラー出演クラスのプリキュアになるのって、そんなに難しいことなんだなぁ。宇宙人とか精神体とかもののけ(人魚)だってプリキュアになれるのに! どんだけ高い未踏峰なのでありましょうか。

 されど、されど。

 日本の中国地方に、ひとり、公式プリキュアシリーズがこれほどまでに過酷なハードルと想定していた「男性」という壁を、キュアウイングをさかのぼること実に13年前、あっという間に軽々と乗り越えて変身を遂げたプリキュアが、すでにいたのだ!! 男性……? いや、性別はプリキュアです!!

 まず、これだけは声を大にして言わなければならないのですが、キュアまこぴーさんは化粧はしっかりしていても、「着ぐるみ」を着ているわけでは絶対にありません。ほぼ素顔でプリキュアに変身しているのです。
 これ、ほんとにものすごい難行ですよ……しかも、「旅の恥はかき捨て」的に、自分の実生活に関係の無い遠方に出かけて変身しているわけじゃないんです。がっつり自分が居住して仕事をしている生活圏内でほぼ定期的に変身しているんですよ!
 とてつもないことです。当然、変身を13年続けているその体力も尋常ではないのですが、まずその行動の原動力として、「自らの行いにいっさいやましい部分が無い」、つまりは何も隠す必要が無いという精神の硬度が、もう人を超えてダイヤモンド級ですよね。生きながら神話になりつつあるお方なのじゃ……
 このようなお方を、最近ちょっとニュースになりかけた性犯罪者と一緒にしちゃあ、いけませんよね。これこそが、仮装と変身の違いなんですよ。「何も隠さずにすべてをなげうつこと」こそが、真のプリキュアに変身できるようになる最低条件なのです。そういう意味で、プリキュアの変身は、昭和の仮面ライダーの変身とは微妙に違うニュアンスがあるんですよね。プリキュアはどっちかというと、人類のために命をささげる行為が認められて変身できるようになるウルトラシリーズのほうに近い自己犠牲の精神があると思います。昭和ライダーは、行き過ぎた科学の犠牲になって変身する身体になってしまったという哀しみもあるし。

 変身し続けるキュアまこぴーさんは言わずもがななんですが、周囲の倉敷市および岡山県の皆さんの中にも、その活躍を認めたり、むしろ応援したりする方が多いということにも驚きます。これが、10年以上続けるという時の重みのなせる業なんですかね……ふつうの一般市民だったら、プリキュアの応援なんかしてられずに、ほうほうのていで悪者から避難するのがやっとですよ。岡山の皆さんは応援どころか、激烈なバトルのすぐ近くで海水浴とかスキーに興じてられるんだもんね。さすがは桃太郎の故郷ですわ。

 完全に余談なのですが、私、千葉県で独り暮らしをしていた時に、松戸市の大きな公園で開催された市民フェスティバルに運営ボランティアで参加したことがあるんですよ。その時に、当時の最新プリキュアチームのコスプレをした4~5人の集まりを見かけたのですが、遠巻きに見て笑う人はいても、直接声をかけたり一緒に写真を撮ってもらおうとしたりする猛者な親子連れは、まずいなかったですよ。ご本人たちの振る舞いや意図に関わらず、やっぱりこういったコスプレ扮装って、コミケやハロウィンといったそうとう強力な「場の空気」というか、参加者全員の「そういう人たちがいてもおかしくないところ」という意識共有がちゃんとできていないと、明らかな異質感というか、「やばい人がいる……」みたいな張り詰めた緊張が走るもんなんだと思います。決して悪いことをしてるわけでもないのに、ほぼ瞬間的に「見ちゃいけないもの」に指定してしまう脳みそが確実にあるんですよね。例えが適切でないことを承知の上で言いますが、電車の中に一風変わった人がいる時って、車内の他の人達って一言も話したり目を合わせていなくても、「あの人、見ちゃだめ……」みたいな警戒アラームが気づいた全員の脳内に発信されるじゃないですか。ことの重大性が全然違いますが、コスプレしてる人って、周囲に与える影響の種類がそれに通じるところはあると思うんですよ。やっぱり見る人が無意識に身構えてしまう危険性を感じてしまうというか。こういう感覚におちいると、私達人類も今でこそ霊長類だとかなんとかデカい口をたたいてはいますが、その DNAにはいにしえのご先祖ネズミさまの危険察知本能が残っているのだなぁ、としみじみ実感いたします。インパラとかシマウマみたい。
 ともかく言いたいのは、そこが休日のイベント会場であろうと、コスプレをされている方に近づいたり話しかけたりするのは、そうとうな勇気が必要になる抵抗が発生してしまう、ということなのです。ましてや、その方が人々の認知と親しみを集めうる日常的な風景になるなど、とてもとても……
 ところが、なんとその集団意識のハードルを乗り越え、その地のゆるキャラに近い存在になりおおせているコスプレイヤー……いやいや、プリキュアがいるというのです。それこそが、かのキュアまこぴーさん、その人なのだというのですよ!!

 要するにキュアまこぴーさんは、一般市民のみなさんに浸透しているヘンな格好の人への警戒感を、休日の変身出動の愚直なまでの繰り返しと回数の積み重ねによって、「でも、けっこうよく来る人よ。」だったり「昔からいるよなぁ。」という認識を加えることで少しずつ無効化しちゃってるんですよね。この、「なにやってんだあいつ……」という冷たい視線を受けながらも、いつか来る共存共栄の日のため耐えて耐えて耐え抜く姿って、もはや聖人としか言いようのない域に達していると思います。行基上人みたいな無心無欲の草の根活動ですよね。一体なんのためにやってるんだろうって……そりゃあんた、岡山の平和を守るために決まってますよ!
 まさに雨だれ石を穿つといいますか、さざ波が海岸の巌を削っていくかのような、見返りをいっさい求めない努力の日々。この、岡山県民の心の ATフィールドをクイックルワイパーで拭い去ってゆくかのような行の日々こそが、キュアまこぴーさんの偉業の本質なのではないでしょうか。これもう、ヒロインっていうか修験者や修行僧の世界よ……

 余談ですが、そういえば岡山県倉敷市って、毎年秋に「金田一耕助1000人コスプレ大行進」みたいなイベントも自治体主催でやってらっしゃいますよね。コスプレに寛容な土地柄なのか? ちなみに、こっちのイベントは2009年から始まってるらしいですよ。なんか、2010年から始まったキュアまこぴーさんの活動と妙に歩調が合っているような……よもや両者には、なんらかの相関関係があるとでもいうのか!? きぃちがいじゃがしかたがない!!

 ここで、キュアまこぴーさんの2010~21年、計49話にいたる変身と孤独な闘いの悠久の歴史を振り返ってみたいと思います。2023年の10月時点で、2021年のキュアアース回以降、待望の最新第50話はいまだ発表されていないのですが、ご自身が全くお変わりなく元気に休日変身を続けておられるご様子は、キュアまこぴーさんの SNS日記でもうかがえます。どうやら今年の夏はキュアバタフライに変身する機会が多かったようですね。そうくると思ったよ~!
 さらに、実はつい先月の9月24日には、キュアアースとラテ様が登場する『とりあえずプリキュアに変身してアレを守ってきた』という最新エピソードが更新されているのですが、こちらは当時話題となっていた大手中古車販売業者の保険金不正請求問題をネタにした、写真画像にして7枚で終わる4コママンガ的ショートストーリーになっていますので、我が『長岡京エイリアン』としましては、こちらは話数カウントに入れないことにさせていただきます。記念すべき第50話は、いつになるかナ~!?

 先ほど、「キュアまこぴーさんが今年変身するならキュアバタフライだろう」と申しましたが、実は、キュアまこぴーさんが変身するプリキュアには、ファンならすぐにピンとくる法則性のようなものがあります。
 前回の資料編でもまとめたように、キュアまこぴーさんが『とりプリ』シリーズで変身した主人公プリキュアは、第1シーズン(全14話)の共通主人公であるキュアパッションから最新第49話のキュアアースにいたるまで21名いるわけですが、ここで、彼女たちの特徴に応じた内訳を分析してみましょう(特徴の重複は便宜上省略しています)。

〇へその出ている衣装のプリキュア …… キュアベリー、キュアメロディ、キュアサンシャイン、キュアマーメイド、キュアエール
〇 TV版の主人公プリキュア    …… キュアピーチ、キュアブロッサム、キュアハッピー、キュアハート、キュアラブリー、キュアミラクル
〇光堕ちしたプリキュア      …… キュアパッション、キュアビート
〇黄色の衣装のプリキュア     …… キュアパイン、キュアハニー
〇紫色の衣装のプリキュア     …… キュアソード、キュアアース
〇その他             …… キュアアクア(青)、キュアリズム(白)、キュアショコラ(赤)、キュアミルキー(緑)

 かなりざっくりとした分け方で恐縮なのですが、こうして見ると、キュアまこぴーさんが変身に選ぶプリキュアの条件がほの見えてくるのではないでしょうか。やっぱへそだね~!!
 すなはち、シリーズ草創期は当時すでに放送されていた『フレッシュプリキュア!』(2009年)のキュアパッションを中心にエピソードを作り(2010~11年)、その後は漸次リアルタイムで放送されていたプリキュアシリーズの主人公を主軸に置いたエピソードを制作する発展期に入っていきます(『ハートキャッチプリキュア!』~『魔法つかいプリキュア!』の2011~16年)。そして、それ以降は一般的に最も人気のある主人公プリキュアにこだわらず、ご自身の変身したいプリキュアをシリーズ作品ごとに選んでいく円熟期(2017年~)を迎えて現在に至るわけですね。なるほど、そうすると『とりプリ』は3期に分けることができるわけか! 歴史の厚みを感じます。

 これはファンにとっては周知の事実なのですが、キュアまこぴーさんは単にプリキュア愛がちょっぴり度を越しているというだけにとどまらず、『アイカツ!』や『ポケモン』といったアニメの他作品への造詣も深く、世界のボードゲームや昭和末~平成初期のパソコンゲームにも尋常ならざる情熱を注ぐ多彩な趣味人としても知られています。あと、地域の子どもの交通安全と自動車運転の法規順守にも、地元の警察署で表彰されるほどの意識の高さを見せておられますね。とにかく、社会人として模範的常識を徹頭徹尾身に着けた岡山紳士であるというわけです。
 そんなキュアまこぴーさんですから、おそらく『とりプリ』シリーズの発足当初は、当時放送終了したばかりの『フレプリ』を元にした写真投稿作品を作ってみようという程の発想で、ちょちょっと始めてみたのかもしれません。それがここまで続くとは……

 それにしても、キュアまこぴーさんが『フレプリ』の中でも、なぜに主人公のキュアピーチでなく、まずキュアパッションに変身したのかという疑問には興味があります。キュアパッションと言えば、最初はそれなりに人気もあった悪の組織の女幹部イースが、キュアピーチの不動明王のごとき愛にあふれた鉄拳によって正義の道に目覚め、いったん死亡してから転生してプリキュアの追加戦士になったという、正史プリキュア史上でも特筆すべき経歴をたどった「光堕ち」の草分け的キャラクターです。この紆余曲折の人物を最初の変身に選んだというあたり、キュアまこぴーさん自身にも、そうとうに山あり谷ありな前半生があったのではないでしょうか。そう考えてみると、キュアパッションの人となりを語る上で欠かせない口癖「精一杯がんばるわ!」にも、現在に至るまでのキュアまこぴーさんの行動原理に通じるものがあるような気がしてきます。変身すること自体は少なくなっても、キュアまこぴーさんの原点は、やっぱりキュアパッションなんですね。

 実は私にとってもキュアパッションというキャラクターは、今や80名近い大所帯になってしまったプリキュアオールスターズたちの中でもちょっと特別な存在でして、最初に申したように私自身は本格的にプリキュアシリーズへの興味を持つようになったのは『ハピネスチャージプリキュア!』からなのですが、当時私にプリキュアシリーズの面白さを教えてくれた恩人が大好きだったのがキュアパッションという縁があったのでした。その人、ことあるごとに「ぱぁ~っしょん! ぱぁ~っしょん!」って連呼してたもんね。時期的に見て、おそらくその人は『フレプリ』本放送よりもオールスターズ映画を観てキュアパッションのことが好きになったようなのですが、それにしても『フレプリ』放送終了から5年経過してもなおその人気ですから。やっぱりキュアパッションって、別格の人気キャラクターだったんですね。千葉のプリキュア師匠のあの人、元気にしてるかなぁ。

 話を本筋に戻しますが、『とりプリ』のキュアパッション編はそれほどの思い入れを持って約1年間連載されたシリーズではありましたが、いかんせんそれは『フレプリ』の放送終了後から始まった作品でありますし、それだけならば、単なるファンによる同人作品として楽しまれていたのみだったのかもしれません。しかし、そこからキュアまこぴーさんは当時放送されていたリアルタイムのプリキュアシリーズに寄り添う形で次々と変身対象を変えていき、その闘いの日々の中に「岡山の名所の四季を織り込んでいく」というオリジナリティを創出せしめたことによって、実在する日本の土地を舞台にするといってもせいぜい横浜みなとみらいどまりだった正史プリキュアシリーズとは全く別の宇宙を生み出すことに成功したわけだったのです。春は倉敷市の玉島の森公園、夏は沙美海岸、秋は玉野市おもちゃ王国、冬は鏡野町の恩原高原スキー場……キュアまこぴーさんに、闘いのない平穏の日々は訪れないのか!?

 どの地での闘いも非常に味わい深い『とりプリ』シリーズなのですが、その中でも特に私が推したいベストバウトは、やはり第2部第19話『雪上の大決戦!キュアサンシャインの孤独な戦い』(2015年2月)になります。これはすごいですよ……
 雪山よ? 一面の銀世界よ!? それなのに、よりにもよってなぜキュアサンシャインに変身すんの!? キュアサンシャインって、へそ出しはもちろんのこと、なみいるプリキュアオールスターズの中でも特に露出度が高いことで有名なんですよ!? 凍死もいとわぬ気か!?
 ましてやキュアサンシャインって、当時から見ても5年も前に放送終了した『ハートキャッチプリキュア!』のキャラクターですからね。2015年に変身する必然性が無いのに……なぜ?
 時期的に見ても、そこは行楽地と言えども厳寒の冬の雪山であることを考慮して、布の多いキュアエースあたりを変身対象に選ぶのが人の常かと思います。しかしそこを曲げて、最も困難なキュアサンシャインの道を選ぶこと。この狂気、この心意気!! これこそが、キュアまこぴーさんをキュアまこぴーさんたらしめる情熱の源泉と言いますか……変身ヒロインの業というものなのでありましょう。

 へそ、ですかね……やっぱ。
 正史プリキュアシリーズとの伴走に加えて岡山固有のプリキュアというオンリーワンな立ち位置を手にした『とりプリ』シリーズですが、確固たる地位を手にしたのちは、特に最新プリキュアシリーズの人気キャラクターにあやかろうとはせず、主に「へそが出ているかどうか」を基準にして変身対象を選んでいきます。『とりプリ』シリーズの投稿が停まっている現在でも、キュアサマーにキュアバタフライと、へそ出しへのこだわりは徹底したものがあります。あとは、キュアアースとかキュアスパイシーとか、奥ゆかしい性格のプリキュアがお好きですよね。
 いや、とにかくキュアまこぴーさんの変身にかける情熱と、それを支える肉体管理、スタイル保持の努力は並々ならぬものがありますよ。私の解釈に間違いがなければ、失礼ながらキュアまこぴーさんはご年齢、50歳を超えておられますよね。それであのへそ周りの細さと開脚の見事さ、そしてお肌のきれいさよ!? 大人も大人、オトナプリキュアを正史よりもとっくに昔からやっておられるワケよ!!
 今月10月から放送を開始して非常に好評なアニメ『キボウノチカラ オトナプリキュア`23』に出てくる彼女達だって、2006~07年のプリキュア活躍時に13~15歳だったわけですから、大人といってもせいぜいアラサーじゃないですか。キュアまこぴーさんはアラフィフなんだぜ!? 人生のレベルがまるで違います。

 こんな感じでくっちゃべっている内に、例によってこの記事の文章も1万字を超えましたので、ここらへんでお開きとしたいのですが、ともかくキュアまこぴーさんの魅力を語るには、これだけでは全く足りません。まずはともかく、ネット上への写真投稿というきわめて不安定な保存状態にある『とりプリ』シリーズを、消えないうちにちゃんと楽しんでいただくこと! そして、これはかくいう私も達成できてはいないのですが、聖地岡山に赴いてキュアまこぴーさんのご活躍を肉眼で確認すること。これに尽きると思います。精悍無比なキュアまこぴーさんだって、普段は一般人として日々、プリキュアのぬいぐるみとステッカーにいろどられたスズキ・ワゴンR で出勤する人間であります。それはもちろん、いつまでもお元気に変身し続けてはいただきたいのですが、人生にいつまでも変わらなく保証されたものなんて、ひとっつもありませんからね……だからこそ人生はすばらしいんですが。

 キュアまこぴーさんの SNS日記をのぞき見させていただくと、どうやら最近、キュアまこぴーさんはプリキュアに変身する上で非常に大切な存在であったある方とのつらい別れを経験してしまっておられるようです。人間、元気だからこそプリキュアに変身もできるわけでね。
 なので今年、映画『プリキュアオールスターズF 』や TVの『オトナプリキュア』といった記念作品を観るだに、キュアまこぴーさんは「あの人も観ることができていたら、どんなに喜んだことか……」という感慨を得ておられるようです。こういった心の痛みを乗り越えて、キュアまこぴーさんは明日からも、岡山の平和と子ども達の未来を守るために立ち上がり、変身していかれるのでしょう。ぷいきゅあ、がんばれー!!

 いちファンとして待望の第50話を気長に待ちつつ、自分自身も岡山の地におもむいて、キュアまこぴーさんのご活躍を応援しに行くチャンスを虎視眈々と狙いたいと思います。金田一耕助コスプレイベントもあるしね!

 昔はよく行ってる時期あったんだけどなー、岡山! ほんと、いい所ですよね。
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今さらですが、京極夏彦の妖怪まわりを整理してみよっか ~下~

2023年10月07日 15時38分47秒 | ゲゲゲの鬼太郎その愛
≪前回の記事は、こちら!≫


京極夏彦の妖怪小説関連の時系列

1820年代初頭、『死神』の15年前
又市、上方を出る

『死神』の14年前
九月
『寝肥』江戸・神田

『死神』の13年前
正月
『周防大蟆』江戸・本所
二月
『二口女』江戸・根津
六月
『かみなり』江戸・下谷

1820年代前半(文政年間)、『死神』の12年前
三月
『山地乳』江戸・道玄坂
十一月
『旧鼠』江戸・麹町

又市、御行振りを開始する   …… 『死神』の10~11年前

文政年間(1820年代中盤)夏、『死神』の8年前(御行の又市は20歳代)
『嗤う伊右衛門』
 ※御燈の小右衛門失踪、又市、事触れの治平と出会う

文政年間(1820年代後半)夏、『小豆洗い』の5~6年前
『覘き小平次』

文政年間(1820年代後半)春、『小豆洗い』の4~5年前
『数えずの井戸』

天保年間(1830年代前半)、又市と山岡百介が初めて出会う(御行の又市は30代前半)
初夏
『小豆洗い』越後国枝折峠
八月
『野鉄砲』武蔵国八王子

『白蔵主』甲斐国夢山
十一月
『狐者異』江戸小塚原

又市と百介が出会った翌年
五月
『飛縁魔』尾張国名古屋
初夏
『舞首』伊豆国巴ヶ淵

『芝右衛門狸』淡路国洲本
 ※『芝右衛門狸』の中で、「徳川将軍家の大御所が存命している時期」と解釈できる台詞があることから、第11代将軍・徳川家斉が次男・家慶に将軍位を譲った天保八(1837)年四月から家斉が死去する天保十二(1841)年閏一月までの期間のどこかであると推定される。
十一月
『船幽霊』阿波国川久保の里

『鍛冶が嬶』土佐国佐喜浜

又市と百介が出会って2年後
五月
『塩の長司』加賀国小塩ヶ浦
六月
『死神』若狭国北林藩

又市と百介が出会って3年後、1830年代後半(天保年間)

『柳女』武蔵国江戸・北品川宿
『桂男』摂津国大坂

『赤えいの魚』羽後国男鹿半島沖・戎島

天保八(1837)年の1~2年後、又市と百介が出会って4年後の春
二月
『遺言幽霊・水乞幽霊』摂津国大坂

『夜楽屋』摂津国大坂

『帷子辻』山城国京・帷子辻
『溝出』和泉国美曽我郷

『天火』摂津国某村
『山男』遠江国秋葉山

『野狐』摂津国閑寂野

又市と百介が出会って5年後
『手負蛇』武蔵国池袋村

又市と百介が出会って6年後、1840年前後(天保年間)
『五位の光』信濃国大石峠
 ※この物語の展開が後年の『狂骨の夢』事件の遠因となり、『陰摩羅鬼の瑕』事件の登場人物・由良昴允伯爵の曽祖父(由良公房卿)が登場する

又市と百介が出会って8年後、1840年代前半(天保年間)
六月
『老人火』若狭国北林藩

明治十(1877)年夏、山岡百介死す
『風の神』東京市赤坂
 ※『鉄鼠の檻』の登場人物・和田滋行の曽祖父の弟(和田智弁禅師)が登場する

明治二十五(1892)年5月~明治二十六(1893)年6月
『書楼弔堂 破暁』(中禅寺秋彦の祖父・中禅寺輔が登場)
 ※中禅寺輔の父で山岡百介と親交の深かった陰陽師・中禅寺洲斎(じゅうさい)は明治二十五年に死没している
 ※洲斎の活躍するドラマオリジナル作品『巷説百物語 福神ながし』の具体的な時代設定は示されていないが、山岡百介が初めて対面した時、洲斎は50代後半の初老だった

明治三十(1897)年8月~明治三十三(1900)年4月
『書楼弔堂 炎昼』
 ※大学生時代の柳田國男や福来友吉が登場する

大正十一(1922)年
11月 『襟立衣』(『鉄鼠の檻』の前章エピソード)

昭和十九(1944)年
10月 『青鷺火』(『狂骨の夢』の前章エピソード)

昭和二十一(1946)年
9月 『青女房』(『魍魎の匣』の前章エピソード)

昭和二十五(1950)年
6月 『岸崖小僧』事件(多々良先生シリーズ第1作)
10月 『目競』(榎木津礼二郎が探偵業を始めるきっかけとなったエピソード)
11月 『文車妖妃』(『姑獲鳥の夏』の前章エピソード)

昭和二十六(1951)年
2月 『泥田坊』事件
3月 『手の目』事件
10月 『古庫裏婆』事件

昭和二十七(1952)年
5月  『目目連』(『絡新婦の理』の前章エピソード)
7月  『姑獲鳥の夏』事件(中禅寺秋彦ら主要登場人物は30代中盤)
    『川赤子』(『姑獲鳥の夏』の前章エピソード)
8~10月 武蔵野連続バラバラ殺人事件(『魍魎の匣』)
8月  『小袖の手』(『魍魎の匣』と『絡新婦の理』をつなぐエピソード)
9月  『鬼一口』(『魍魎の匣』と『ルー=ガルー』をつなぐエピソード)
9~12月 『狂骨の夢』事件
12月  『倩兮女』(『絡新婦の理』の前章エピソード』)

昭和二十八(1953)年
2月  箱根山連続僧侶殺人事件(『鉄鼠の檻』)
3月  『煙々羅』(『鉄鼠の檻』の続編エピソード)
3~4月 千葉・勝浦連続目潰し魔ならびに連続絞殺魔事件(『絡新婦の理』)
    『屏風覗』(『絡新婦の理』の挿入エピソード)
    『鬼童』(『邪魅の雫』の前章エピソード)
1~6月 伊豆新興宗教騒動事件(『塗仏の宴』)
6月  『火間虫入道』(『塗仏の宴』の挿入エピソード)
7月  通産省官僚汚職脱税事件(『鳴釜』)
    長野・白樺湖畔連続新婦殺人事件(『陰摩羅鬼の瑕』)
    『大首』(『陰摩羅鬼の瑕』の続編エピソード)
8月  茶道具屋書画骨董贋作事件(『瓶長』)
    『毛倡妓』(『絡新婦の理』の続編エピソード)
8~9月 『邪魅の雫』事件
9月  『雨女』(『邪魅の雫』の挿入エピソード)
    美食倶楽部国際美術品窃盗売買事件(『山颪』)
    『墓の火』(『鵺の碑』の前章エピソード)
    渋谷・円山町歓楽街抗争殺人事件(『五徳猫』)
11月  『青行燈』(『陰摩羅鬼の瑕』の続編エピソード)
    『蛇帯』(『鵺の碑』の前章エピソード)
12月  神田小川町空きビル殺人事件(『雲外鏡』)
    怪盗猫招き連続窃盗事件(『面霊気』)

昭和二十九(1954)年
3月  駒沢七人連続通り魔殺傷事件(昭和の辻斬り事件 『鬼』)
6月  『河童』事件
9月  『天狗』事件

昭和三十六(1961)年
12月  『ぬらりひょんの褌』事件

平成十八(2006)年
12月  『ぬらりひょんの褌』事件解決、中禅寺秋彦存命?(80代後半)


京極作品に登場した妖怪たちを強引に解釈してみると……

寝肥り    …… 『寝肥』事件の被害者
周防の大蝦蟇 …… 『周防大蟆』事件に現れた妖怪、虚空太鼓、寝肥り
二口女    …… 『二口女』事件の依頼者
雷獣     …… 『神鳴り』事件に現れた妖怪
山地乳    …… 渋谷道玄坂縁切り堂黒絵馬事件に現れた妖怪、山精、山爺、野衾、さとり、狐者異
旧鼠     …… 『旧鼠』事件の登場人物

小豆あらい …… 『小豆洗い』事件の被害者
白蔵主   …… 『白蔵主』事件の被害者
舞首    …… 『舞首』事件の被害者たち
芝右衛門狸 …… 『芝右衛門狸』事件の登場人物、隠神だぬき
塩の長司  …… 『塩の長司』事件の登場人物
柳女    …… 『柳女』事件に現れた妖怪
帷子辻   …… 『帷子辻』事件の被害者

野鉄砲 …… 『野鉄砲』事件に現れた妖怪
狐者異 …… 『狐者異』事件の犯人
飛縁魔 …… 『飛縁魔』事件の犯人、縊れ鬼
船幽霊 …… 『船幽霊』事件の被害者、平家の怨霊、古杣、野鉄砲
死神  …… 『死神』事件を引き起こした元凶(ラスボス)、七人みさき、縊れ鬼、飛縁魔、平家の怨霊
老人火 …… 『老人火』事件の犯人、天狗

赤えいの魚 …… 『赤えいの魚』事件の舞台、元凶、赤面えびす
天火    …… 『天火』事件に現れた妖怪、舞首
手負蛇   …… 『手負蛇』事件に現れた妖怪
山男    …… 『山男』事件に現れた妖怪
五位の光  …… 『五位の光』事件に現れた妖怪、姑獲鳥
風の神   …… 『風の神』事件に現れた妖怪、青行燈

桂男        …… 『桂男』事件に登場する妖怪
遺言幽霊・水乞幽霊 …… 『遺言幽霊・水乞幽霊』に登場する死霊

姑獲鳥  …… 『姑獲鳥の夏』事件を引き起こした元凶

魍魎   …… 『魍魎の匣』事件を引き起こした元凶
火車   …… 魍魎のもうひとつの姿
方相氏  …… 魍魎を落とした中禅寺秋彦のこと?

狂骨   …… 『狂骨の夢』事件を引き起こした元凶
骸骨   …… 狂骨を生んださらなる元凶
返魂香  …… 骸骨のもうひとつの姿

鉄鼠   …… 登場人物のひとりに取り憑いた妖怪
野寺坊  …… 登場人物のひとりに取り憑いた妖怪
木魚達磨 …… 登場人物のひとりに取り憑いた妖怪
払子守  …… 登場人物のひとりに取り憑いた妖怪
青坊主  …… 登場人物のひとりに取り憑いた妖怪
大禿   …… 登場人物のひとりに取り憑いた妖怪(中ボス)
隠里   …… 他の妖怪たちを生み、『鉄鼠の檻』事件を引き起こした元凶(ラスボス)

蓑火   …… 登場する一族に取り憑いた妖怪
否哉   …… 登場人物のひとりに取り憑いた妖怪(中ボス)
百々目鬼 …… 登場人物のひとりに取り憑いた妖怪(中ボス)
絡新婦  …… 『絡新婦の理』事件を引き起こした元凶(ラスボス)
丑時参  …… 絡新婦のもうひとつの姿
木魅   …… 絡新婦の正体、しかし?

瀬戸大将 …… 『言霊使いの罠!』で陰陽師が使役した妖怪

ぬっぺふほふ …… 『塗仏の宴』事件の中核に存在する妖怪(ラスボス)
うわん    …… 登場人物のひとりに取り憑いた妖怪
ひょうすべ  …… 登場人物のひとりに取り憑いた妖怪
わいら    …… 登場人物のひとりに取り憑いた妖怪(中ボス)
しょうけら  …… 登場人物のひとりに取り憑いた妖怪
おとろし   …… 登場人物のひとりに取り憑いた妖怪、しかし?
塗仏     …… 『塗仏の宴』事件を引き起こした元凶(中ボス)
燭陰     …… 塗仏のもうひとつの姿
白澤     …… 全ての妖怪たちを落とした中禅寺秋彦のこと?

鳴釜 …… 中禅寺秋彦の使役する妖怪
瓶長 …… 登場人物のひとりに取り憑いた妖怪
山颪 …… 被害者たちの恨みの具現化した妖怪

陰摩羅鬼 …… 『陰摩羅鬼の瑕』事件を引き起こした元凶

邪魅  …… 『邪魅の雫』事件を引き起こした元凶
蜃気楼 …… 邪魅のもうひとつの姿

五徳猫 …… 登場人物のひとりに取り憑いた妖怪
雲外鏡 …… 登場人物のひとりの持っていた道具
面霊気 …… 事件の中で登場する道具

鬼  …… 『鬼』事件の凶器に憑りつく元凶
河童 …… 『河童』事件の状況から連想させる妖怪
天狗 …… 『河童』事件の状況から連想させる妖怪

ぬうりひょん ……『ぬらりひょんの褌』事件を引き起こした元凶


映像作で京極作品の登場キャラクターを演じた主な俳優(アニメ・ラジオドラマ作品を除く)
※俳優の年齢は演じた当時のもの

中禅寺 秋彦  …… 堤 真一(41歳 映画『姑獲鳥の夏』など)
榎木津 礼二郎 …… 阿部 寛(41歳 映画『姑獲鳥の夏』など)
関口 巽    …… 永瀬 正敏(39歳 映画『姑獲鳥の夏』)、椎名 桔平(43歳 映画『魍魎の匣』)
木場 修太郎  …… 宮迫 博之(35歳 映画『姑獲鳥の夏』など)
青木 文蔵   …… 堀部 圭亮(39歳 映画『姑獲鳥の夏』など)
鳥口 守彦   …… マギー(33歳 映画『姑獲鳥の夏』など)
中禅寺 敦子  …… 田中 麗奈(25歳 映画『姑獲鳥の夏』など)
安和 寅吉   …… 荒川 良々(31歳 映画『姑獲鳥の夏』など)
里村 紘市   …… 阿部 能丸(45歳 映画『姑獲鳥の夏』)
竹宮 潤子   …… 鈴木 砂羽(32歳 映画『姑獲鳥の夏』)
増岡 則之   …… 大沢 樹生(38歳 映画『魍魎の匣)
久遠寺 嘉親  …… すま けい(69歳 映画『姑獲鳥の夏』 2013年没)
降旗 弘    …… 下條 アトム(51歳 ドラマ『目目連』)
中禅寺 千鶴子 …… 清水 美砂(34歳 映画『姑獲鳥の夏』など)
関口 雪絵   …… 篠原 涼子(31歳 映画『姑獲鳥の夏』など)
山嵜 孝鷹   …… 小松 和重(39歳 映画『魍魎の匣』)
妹尾 友典   …… 田村 泰二郎(56歳 映画『姑獲鳥の夏』など)
菅野 博行   …… 堀内 正美(55歳 映画『姑獲鳥の夏』)
久保 竣公   …… 宮藤 官九郎(37歳 映画『魍魎の匣』)
平野 祐吉   …… 白井 晃(40歳 ドラマ『目目連』)
呉 美由紀   …… 今田 美桜(22歳 文庫版『今昔百鬼拾遺』3部作のカバー写真モデル)

御行の又市    …… 田辺 誠一(30歳 ドラマ『怪』)、香川 照之(38歳 映画『嗤う伊右衛門』)、渡部 篤郎(36歳 ドラマ『W』)、中尾 隆聖(52歳 アニメ)
山猫廻しのおぎん …… 遠山 景織子(24歳 ドラマ『怪』)、小池 栄子(24歳 ドラマ『W』)、小林 沙苗(23歳 アニメ)
山岡 百介    …… 佐野 史郎(44歳 ドラマ『怪』)、吹越 満(40歳 ドラマ『W』)、関 俊彦(41歳 アニメ)
事触れの治平   …… 谷 啓(67歳 ドラマ『怪』 2010年没)、大杉 漣(53歳 ドラマ『W』)
算盤の徳次郎   …… 火野 正平(51歳 ドラマ『怪』)
中禅寺 洲斎   …… 近藤 正臣(58歳 ドラマ『怪』)


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今さらですが、京極夏彦の妖怪まわりを整理してみよっか ~上~

2023年10月06日 21時19分39秒 | ゲゲゲの鬼太郎その愛
『画図百鬼夜行』(がずひゃっきやこう)とは……
 安永五(1776)年に刊行された浮世絵師・鳥山石燕(1712~88年)の妖怪画集。
 『今昔画図続百鬼』(1779年)、『今昔百鬼拾遺』(1780年)、『百器徒然袋』(1784年)とある石燕の妖怪画集の中でも最初に刊行されたものであり、現代ではこの4作を総称して「画図百鬼夜行シリーズ」などとも呼ばれる。
 「前篇・陰」「前篇・陽」「前篇・風」の3部構成となっている。各部を「前篇」と題しているものの後篇は存在せず、この後に刊行された『今昔画図続百鬼』が後篇に相当する。
 本書は妖怪画1点ごとに名称を添えて紹介しており、妖怪図鑑のようなスタイルとなっている。後の石燕の画集と比較すると天狗や河童といった、日本の妖怪の中でも比較的有名なものが多い。
 石燕自身が巻末で「詩(うた)は人心の物に感じて声を発するところ、画(え)はまた無声の詩とかや」と述べている通り、画賛を廃しており、『今昔画図続百鬼』以降に見られるような解説文はないものが多く、あっても文章はかなり短い。

前篇・陰
木魅(こだま)  ……『絡新婦の理』(1996年)第五長編
天狗(てんぐ)  ……『今昔百鬼拾遺 天狗』(2018年)第三中編
幽谷響(やまびこ)
山姥(やまうば)
山童(やまわろ)
犬神(いぬがみ)
白児(しらちご)
猫また(ねこまた)
河童(かっぱ)  ……『今昔百鬼拾遺 河童』(2018年)第二中編
獺(かわうそ)
垢嘗(あかなめ)

窮奇(かまいたち)
網剪(あみきり)
狐火(きつねび)

前篇・陽
絡新婦(じょろうぐも)……『絡新婦の理』第五長編
鼬(てん)
叢原火(そうげんび)
釣瓶火(つるべび)
ふらり火(ふらりび)
姥が火(うばがび)
火車(かしゃ)    ……『魍魎の匣』(1995年)第二長編
鳴屋(やなり)
姑獲鳥(うぶめ)   ……『姑獲鳥の夏』(1994年)第一長編
海座頭(うみざとう)
野寺坊(のでらぼう) ……『鉄鼠の檻』(1996年)第四長編
高女(たかおんな)
手の目(てのめ)   ……『今昔続百鬼 雲』(2001年 第二中編集)第三話
鉄鼠(てっそ)    ……『鉄鼠の檻』第四長編
黒塚(くろづか)
飛頭蛮(ろくろくび)
逆柱(さかばしら)
反枕(まくらがえし)
雪女
生霊(いきりょう)
死霊(しりょう)
幽霊         ……『書楼弔堂・破暁 方便』(2012年)

前篇・風
見越(みこし)
しょうけら         ……『塗仏の宴』第六長編
ひょうすべ         ……『塗仏の宴』第六長編
わいら           ……『塗仏の宴』第六長編
おとろし          ……『塗仏の宴』第六長編
塗仏(ぬりぼとけ)     ……『塗仏の宴』第六長編
濡女(ぬれおんな)
ぬうりひょん(ぬらりひょん)……『ぬらりひょんの褌』(2006年)マンガ『こち亀』トリビュート短編
元興寺(がごぜ)
苧うに(おうに)
青坊主(あおぼうず)    ……『鉄鼠の檻』第四長編
赤舌(あかした)
ぬっぺふほふ        ……『塗仏の宴』第六長編
牛鬼(うしおに)
うわん           ……『塗仏の宴』第六長編


『今昔画図続百鬼』(こんじゃくがずぞくひゃっき)とは……
 安永八(1779)年に刊行された鳥山石燕の妖怪画集。『画図百鬼夜行』の続編。
 「雨」「晦(かい or つごもり 暗い天候のこと)」「明」の三部構成となっている。『画図百鬼夜行』はほぼ絵画のみであったが、本作は解説文が添えられている。


逢魔時(おうまがとき)
鬼            ……『今昔百鬼拾遺 鬼』第一中編
山精(さんせい)
魃(ひでりがみ)
水虎(すいこ)
覚(さとり)
酒顛童子(しゅてんどうじ)
橋姫(はしひめ)
般若(はんにゃ)
寺つつき(てらつつき)
入内雀(にゅうないすずめ)
玉藻前(たまものまえ)
長壁(おさかべ)
丑時参(うしのときまいり)……『絡新婦の理』第五長編


不知火(しらぬい)
古戦場火(こせんじょうひ)
青鷺火(あおさぎび)  ……『百鬼夜行 陽』(2012年 第二短編集)第五話
提灯火(ちょうちんのひ)
墓の火(はかのひ)   ……『百鬼夜行 陽』第六話
火消婆(ひけしばば)
油赤子(あぶらあかご)
片輪車(かたわぐるま)
輪入道(わにゅうどう)
陰摩羅鬼(おんもらき) ……『陰摩羅鬼の瑕』(2003年)第七長編
皿かぞえ(さらかぞえ)
人魂(ひとだま)
船幽霊(ふなゆうれい)
川赤子(かわあかご)  ……『百鬼夜行 陰』(1999年 第一短編集)第十話
古山茶の霊(ふるつばきのれい)
加牟波理入道(がんばりにゅうどう)
雨降小僧(あめふりこぞう)
日和坊(ひよりぼう)
青女房(あおにょうぼう)……『百鬼夜行 陽』第七話
毛倡妓(けじょうろう) ……『百鬼夜行 陰』第九話
骨女(ほねおんな)


鵼(ぬえ)     ……『鵼の碑』(2023年)第九長編
以津真天(いつまで)
邪魅(じゃみ)   ……『邪魅の雫』(2006年)第八長編
魍魎(もうりょう) ……『魍魎の匣』第二長編
狢(むじな)
野衾(のぶすま)
野槌(のづち)
土蜘蛛(つちぐも)
比々(ひひ)
百々目鬼(どどめき)……『絡新婦の理』第五長編
震々(ぶるぶる)
骸骨        ……『狂骨の夢』(1995年)第三長編
天井下(てんじょうくだり)
大禿(おおかぶろ) ……『鉄鼠の檻』第四長編
大首(おおくび)  ……『百鬼夜行 陽』第二話
百々爺(ももんじい)
金霊(かねだま)
天逆毎(あまのざこ)
日の出(ひので)


『今昔百鬼拾遺』(こんじゃくひゃっきしゅうい)とは……
 安永十(1780)年に刊行された鳥山石燕の妖怪画集。
 「雲」「霧」「雨」の三部構成となっている。本作で描かれている妖怪には、実際の伝承にあるものではなく、石燕が創作したものも多く含まれている。また石燕の「画図百鬼夜行シリーズ」の中で唯一、本作は彩色版があったとの説もある。


蜃気楼(しんきろう)  ……『邪魅の雫』第八長編
燭陰(しょくいん)   ……『塗仏の宴』第六長編
人面樹(にんめんじゅ)
人魚
返魂香(はんごんこう) ……『狂骨の夢』第三長編
彭侯(ほうこう)
天狗礫(てんぐつぶて)
道成寺鐘(どうじょうじのかね)
燈台鬼(とうだいき)
泥田坊(どろたぼう)  ……『今昔続百鬼 雲』第二話
古庫裏婆(こくりばば) ……『今昔続百鬼 雲』第四話
白粉婆(おしろいばば)
蛇骨婆(じゃこつばば)
影女(かげおんな)
倩兮女(けらけらおんな)……『百鬼夜行 陰』第六話
煙々羅(えんえんら)  ……『百鬼夜行 陰』第五話


紅葉狩(もみじがり)
朧車(おぼろぐるま)
火前坊(かぜんぼう)
蓑火(みのび)         ……『絡新婦の理』第五長編
青行燈(あおあんどん)     ……『百鬼夜行 陽』第一話
雨女(あめおんな)       ……『百鬼夜行 陽』第八話
小雨坊(こさめぼう)
岸涯小僧(がんぎこぞう)    ……『今昔続百鬼 雲』第一話
あやかし
鬼童(きどう)         ……『百鬼夜行 陽』第四話
鬼一口(おにひとくち)     ……『百鬼夜行 陰』第四話
蛇帯(じゃたい)        ……『百鬼夜行 陽』第九話
小袖の手(こそでのて)     ……『百鬼夜行 陰』第一話
機尋(はたひろ)
大座頭(おおざとう)
火間蟲入道(ひまむしにゅうどう)……『百鬼夜行 陰』第七話
殺生石(せっしょうせき)
風狸(ふうり)
茂林寺釜(もりんじのかま)


羅城門鬼(らじょうもんおに)
夜啼石(よなきのいし)
芭蕉精(ばしょうのせい)
硯の魂(すずりのたましい)
屏風覗(びょうぶのぞき)……『百鬼夜行 陽』第三話
毛羽毛現(けうけげん)
目目蓮(もくもくれん) ……『百鬼夜行 陰』第三話
狂骨(きょうこつ)   ……『狂骨の夢』第三長編
目競(めくらべ)    ……『百鬼夜行 陽』第十話
後神(うしろがみ)
否哉(いやや)     ……『絡新婦の理』第五長編
方相氏(ほうそうし)  ……『魍魎の匣』第二長編
滝霊王(たきれいおう)
白澤(はくたく)    ……『塗仏の宴』第六長編
隠里(かくれざと)   ……『鉄鼠の檻』第四長編


『百器徒然袋』(ひゃっきつれづれぶくろ)とは……
 天明四(1784)年に刊行された鳥山石燕の妖怪画集。石燕の「画図百鬼夜行シリーズ」の中でも最後に刊行されたもの。
 「上」「中」「下」の三部構成となっており、器物が変化して生まれたとされる妖怪・付喪神が多く描かれている。画像は過去の百鬼夜行絵巻に登場する妖怪に類似するものが多く、それらに『徒然草』や多くの漢籍からヒントを得て石燕が創作したものである。


宝船(たからぶね)
塵塚怪王(ちりづかかいおう)
文車妖妃(ふぐるまようひ)……『百鬼夜行 陰』第二話
長冠(おさこうぶり)
沓頬(くつつら)
ばけの皮衣(ばけのかわごろも)
絹狸(きぬたぬき)
古籠火(ころうか)
天井嘗(てんじょうなめ)
白容裔(しろうねり)
骨傘(ほねからかさ)
鉦五郎(しょうごろう)
払子守(ほっすもり)   ……『鉄鼠の檻』第四長編
栄螺鬼(さざえおに)


槍毛長(やりけちょう)
虎隱良(こいんりょう)
禅釜尚(ぜんふしょう)
鞍野郎(くらやろう)
鐙口(あぶみくち)
松明丸(たいまつまる)
不々落々(ぶらぶら)
貝児(かいちご)
髪鬼(かみおに)
角盥漱(つのはんぞう)
袋狢(ふくろむじな)
琴古主(ことふるぬし)
琵琶牧々(びわぼくぼく)
三味長老(しゃみちょうろう)
襟立衣(えりたてごろも) ……『百鬼夜行 陰』第八話
経凛々(きょうりんりん)
乳鉢坊(にゅうばちぼう)
瓢箪小僧(ひょうたんこぞう)
木魚達磨(もくぎょだるま)……『鉄鼠の檻』第四長編
如意自在(にょいじざい)
暮露々々団(ぼろぼろとん)
箒神(ほうきがみ)
蓑草鞋(みのわらじ)


面霊気(めんれいき)   ……『百器徒然袋 風』(2004年 第三中編集)第三話
幣六(へいろく)
雲外鏡(うんがいきょう) ……『百器徒然袋 風』第二話
鈴彦姫(すずひこひめ)
古空穂(ふるうつぼ)
無垢行騰(むくむかばき)
猪口暮露(ちょくぼろん)
瀬戸大将(せとだいしょう)……アニメ版『ゲゲゲの鬼太郎』第4シリーズ第101話『言霊使いの罠!』(1997年)脚本
五徳猫(ごとくねこ)   ……『百器徒然袋 風』第一話
鳴釜(なりがま)     ……『百器徒然袋 雨』(1999年 第一中編集)第一話
山颪(やまおろし)    ……『百器徒然袋 雨』第三話
瓶長(かめおさ)     ……『百器徒然袋 雨』第二話
宝船


『絵本百物語』(えほんひゃくものがたり)とは……

 天保十二(1841)年に刊行された日本の奇談画集。
 近年では『桃山人夜話』(とうさんじんやわ)の副題で知られているが、実際には副題は存在しない。
 著者は桃山人(詳細不詳)、挿絵の画師は浮世絵師の竹原春泉(生没年不詳)。
 題名に「百物語」と銘打ってあるように、江戸時代に流行した百物語怪談本の一種といえるが、話ごとに物語の名称ではなく妖怪の名称を掲げた上に妖怪の挿絵をつけており、怪談集と画集とを融合させた作品ともいえる。本書と同じく江戸時代の妖怪画集として知られる鳥山石燕の「画図百鬼夜行シリーズ」と並び賞されることが多いが、どちらかといえば記号的といえる石燕の画に対し、春泉による妖怪画は躍動感や臨場感があるのが特徴と評価されている。石燕の画と違って本書は多色刷りであることも大きな特徴である。
 なお、近年は『絵本百物語』の初版刊行が天保十二年よりも前である可能性も示唆されている。

第一巻
白蔵主(はくぞうす)      ……『巷説百物語』(1999年 シリーズ第一作)第二話(マンガ化2回、アニメ化1回)
飛縁魔(ひのえんま)      ……『続巷説百物語』(2001年 シリーズ第二作)第三話(マンガ化1回、アニメ化1回、ドラマ化1回)
狐者異(こわい)        ……『続巷説百物語』第二話(マンガ化1回、アニメ化1回、ドラマ化1回)
塩の長司(しおのちょうじ)   ……『巷説百物語』第五話(マンガ化1回、アニメ化1回)
磯撫(いそなで)
死神              ……『続巷説百物語』第五話(マンガ化1回、アニメ化1回、ドラマ化1回)
野宿火(のじゅくび)
寝肥(ねぶとり)        ……『前巷説百物語』(2007年 シリーズ第四作)第一話
周防の大蝦蟇(すおうのおおがま)……『前巷説百物語』第二話

第二巻
豆狸(まめだぬき)   ……『西巷説百物語』(2010年 シリーズ第五作)第六話
山地乳(やまちち)   ……『前巷説百物語』第五話
柳女(やなぎおんな)  ……『巷説百物語』第六話(マンガ化1回、アニメ化1回)
老人火(ろうじんび)  ……『続巷説百物語』第六話(マンガ化1回、アニメ化1回)
手洗鬼(てあらいおに)
出世螺(しゅっせぼら)
旧鼠(きゅうそ)    ……『前巷説百物語』第六話
二口女(ふたくちおんな)……『前巷説百物語』第三話
溝出(みぞいだし)   ……『西巷説百物語』第五話

第三巻
葛の葉(くずのは)
芝右衛門狸(しばえもんだぬき)……『巷説百物語』第四話(マンガ化1回、アニメ化1回、ドラマ化1回)
波山(ばさん)
帷子辻(かたびらがつじ)   ……『巷説百物語』第七話(マンガ化1回、アニメ化1回)
歯黒べったり(はぐろべったり)
赤えいの魚(あかえいのうお) ……『後巷説百物語』(2003年 シリーズ第三作)第一話(マンガ化1回、ドラマ化1回)
船幽霊(ふなゆうれい)    ……『続巷説百物語』第四話(マンガ化1回、アニメ化1回)
遺言幽霊(ゆいごんゆうれい) ……『西巷説百物語』第二話
水乞幽霊(みずこいゆうれい) ……『西巷説百物語』第二話

第四巻
手負蛇(ておいへび)  ……『後巷説百物語』第三話(マンガ化1回)
五位の光(ごいのひかり)……『後巷説百物語』第五話
累(かさね)
於菊虫(おきくむし)
野鉄砲(のでっぽう)  ……『続巷説百物語』第一話(マンガ化1回、アニメ化1回)
天火(てんか)     ……『後巷説百物語』第二話(マンガ化1回)
野狐(のぎつね、やこ) ……『西巷説百物語』第七話
鬼熊(おにぐま)
かみなり        ……『前巷説百物語』第四話

第五巻
小豆あらい(あずきあらい)……『巷説百物語』第一話(マンガ化2回、アニメ化1回)
山男           ……『後巷説百物語』第四話
恙虫(つつがむし)
風の神          ……『後巷説百物語』第六話
鍛冶が嬶(かじがかか)  ……『西巷説百物語』第三話
柳婆(やなぎばば)
桂男(かつらおとこ)   ……『西巷説百物語』第一話
夜の楽屋(よるのがくや) ……『西巷説百物語』第四話
舞首(まいくび)     ……『巷説百物語』第三話(マンガ化1回、アニメ化1回)


京極夏彦の主要著作の執筆順一覧
1994年9月
長編小説『姑獲鳥の夏』(「百鬼夜行」シリーズ第1作)
1995年1月
長編小説『魍魎の匣』(「百鬼夜行」シリーズ第2作、第49回日本推理作家協会賞長編部門受賞)
1995年5月
長編小説『狂骨の夢』(「百鬼夜行」シリーズ第3作)
1995年8月~97年7月
短編小説集『百鬼夜行 陰』
1996年1月
長編小説『鉄鼠の檻』(「百鬼夜行」シリーズ第4作)
1996年11月
長編小説『絡新婦の理』(「百鬼夜行」シリーズ第5作)
1997年6月
長編怪談小説『嗤う伊右衛門』(「江戸怪談」シリーズ第1作、第25回泉鏡花文学賞受賞)
1997年8月~98年3月
長編小説『塗仏の宴 宴の支度』(「百鬼夜行」シリーズ第6作の前編)
1997年10月~99年8月
連作小説集『巷説百物語』(『巷説百物語』シリーズ第1作)
1997年12月
アニメ『ゲゲゲの鬼太郎(第4期)』第101話『言霊使いの罠!』
1998年9月
長編小説『塗仏の宴 宴の始末』(「百鬼夜行」シリーズ第6作の後編)
1998年11月~99年8月
中編小説集『百器徒然袋 雨』
1999年1月~2009年5月
連作小説集『厭な小説』
1999年12月~2000年11月
中編小説集『今昔続百鬼 雲』
2000年1~9月
連続 TVドラマ
『巷説百物語 七人みさき』(1月放送)……『続巷説百物語 死神』の原作
『巷説百物語 隠神だぬき』(3月放送)……『巷説百物語 芝右衛門狸』のドラマ化
『巷説百物語 赤面ゑびす』(7月放送)……『後巷説百物語 赤えいの魚』の原作
『巷説百物語 福神ながし』(9月放送)……ドラマオリジナル作品
2000~11年
パロディ連作小説集『南極夏彦』シリーズ
2001年4月~2004年4月
中編小説集『百鬼徒然袋 風』
2001年5月
連作小説集『続巷説百物語』(『巷説百物語』シリーズ第2作)
2001~11年
SF 小説『ルー=ガルー』シリーズ
2002年9月
長編怪談小説『覘き小平次』(「江戸怪談」シリーズ第2作、第16回山本周五郎賞受賞)
2003年4月~12年3月
短編小説集『百鬼夜行 陽』
2003年8月
長編小説『陰摩羅鬼の瑕』(「百鬼夜行」シリーズ第7作)
2003年11月
連作小説集『後巷説百物語』(『巷説百物語』シリーズ第3作、第130回直木三十五賞受賞)
2003~11年
妖怪小説『豆腐小僧』シリーズ
2003年4月~12年3月
短編小説集『百鬼夜行 陽』
2006年9月
長編小説『邪魅の雫』(「百鬼夜行」シリーズ第8作)
2006年12月
トリビュート短編小説『ぬらりひょんの褌』
2007年4月
連作小説集『前巷説百物語』(『巷説百物語』シリーズ第4作)
2008年
短編小説集『幽談』
2010年
長編怪談小説『数えずの井戸』(「江戸怪談」シリーズ第3作)
連作小説集 『西巷説百物語』(『巷説百物語』シリーズ第5作、第24回柴田錬三郎賞受賞)
連作小説  『死ねばいいのに』
短編小説集 『冥談』
2012年4月~13年7月
連作小説『書楼弔堂 破暁』
2012年
短編小説集『眩談』
2014年8月~16年5月
連作小説『書楼弔堂 炎昼』
2015年4月
短編小説集『鬼談』
2018年2~11月
中編小説『今昔百鬼拾遺 鬼』
短編小説集『虚談』
2018年5~11月
中編小説『今昔百鬼拾遺 河童』
2018年9月~19年2月
中編小説『今昔百鬼拾遺 天狗』
2023年9月
長編小説『鵼の碑』(「百鬼夜行」シリーズ第9作)


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