長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

やっつけ仕事と侮るなかれ! ヒッチコックみ濃厚なスペクタクル時代劇 ~映画『巌窟の野獣』~

2024年07月28日 21時27分44秒 | ふつうじゃない映画
映画『巌窟の野獣』(1939年5月公開 94分 イギリス)
 『巌窟の野獣(がんくつのやじゅう 原題: Jamaica Inn)』は、アルフレッド=ヒッチコック監督によるイギリスの冒険スリラー映画である。原作はイギリスの小説家ダフニ=デュ・モーリエ(1907~89年)の小説『原野の館』(1936年発表)。本作はヒッチコックが映画化したデュ・モーリエの3作品のうちの1作目である(他は『レベッカ』と『鳥』)。アイルランド出身の国際女優モーリン=オハラにとっては初の映画出演作であった。
 本作は、ヒッチコックがアメリカ合衆国に移住する前に作った最後のイギリス映画となった。

おもなスタッフ
監督 …… アルフレッド=ヒッチコック(39歳)
脚本 …… シドニー=ギリアット(31歳)、ジョーン・ハリソン(31歳)、アルマ=レヴィル(39歳)、ジョン・ボイントン=プリーストリー(44歳)
製作 …… エーリッヒ=ポマー(49歳)、チャールズ=ロートン(39歳)
音楽 …… エリック=フェンビー(33歳)
撮影 …… バーナード=ノウルズ(39歳)、ハリー=ストラドリング(37歳)
制作・配給 …… メイフラワー・プロダクションズ

おもなキャスティング
ハンフリー=ペンガラン侯爵 …… チャールズ=ロートン(39歳)
メアリー=イエレン     …… モーリン=オハラ(18歳)
ジェイム=トレハン     …… ロバート=ニュートン(33歳)
ジョシュ=マーリン     …… レスリー=バンクス(48歳)
ペイシェンス=マーリン   …… マリー=ネイ(43歳)
行商のハリー        …… エムリン=ウィリアムズ(33歳)
執事のチャドウィック    …… ホレイス=ホッジス(75歳)
側近のデイヴィス      …… フレデリック=パイパー(36歳)
馬丁のサム         …… ヘイ=ペトリー(43歳)
マーレイ船長        …… ジョージ=カーゾン(40歳)
ジョージ卿         …… ベイジル=ラドフォード(41歳)
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怪獣不在の怪獣映画って、こういうことだろ! ~映画『生きものの記録』~

2024年07月10日 23時08分47秒 | ふつうじゃない映画
 ハイど~もみなさま、こんばんは! そうだいでございまする。
 最近は、山形もやっと梅雨らしくなり雨が降る日も増えてきまして、今日もだいぶ過ごしやすい気温の一日となったのですが、雨が降ればジメジメがすさまじいし、降らなきゃ降らないで気温がガン上がりだしで、なかなかいい感じの日がございません。でも、なんだかんだ言っても私の住む山形市は、朝と夜はちゃんと涼しいし今のところ34℃を超える日もありませんので、このくらいでウダウダ言ってる場合じゃないんですよね……夏本番はこれからだぜ! 熱帯夜やだ~!!

 さてさて今回は、そんなじめっとした季節に観るのにもってこいな名作映画についてのあれこれをば。
 この監督さんの撮る「雨」って、現実の雨以上に重たく見えるんですよね~! 特にモノクロ作品は。墨汁で雨を着色したっていう撮影逸話も有名なんですが、本作でもまた、雨……というか、雨の「気配」が重要なキーワードになっているような気がします。


映画『生きものの記録』(1955年11月公開 103分モノクロ 東宝)

 『生きものの記録』は、アメリカとソ連の核軍備競争やビキニ環礁での第五福竜丸被爆事件(1954年3月1日発生)などで加熱した反核世相に触発されて、原水爆の恐怖を真正面から取り上げた社会派ドラマ映画である。原子爆弾の恐怖に取り付かれる60歳の老人を演じた三船敏郎は当時35歳だった。作曲家の早坂文雄の最後の映画音楽作である。
 本作の構想は、前作『七人の侍』(1954年)の撮影中に黒澤明が友人の早坂文雄宅を訪れたときに、ビキニ環礁の水爆実験のニュースを聞いた早坂が「こう生命をおびやかされちゃ、本腰を入れて仕事は出来ないね。」と言い出したことがきっかけとなった。当初は『死の灰』と名付けられたこの企画は小國英雄と橋本忍との共同脚本で、1955年1月に静岡県今井浜の旅館「舞子園」に投宿して執筆作業を開始し、3月初旬に『生きものの記録』と改題した決定稿が完成した。
 1955年の5月中旬に撮影準備に取りかかり、8月1日に東宝撮影所内のセットで撮影開始した。10月11日に台風25号の被害で工場のオープンセットがほぼ壊滅し、作り直すために撮影中断したが、10月31日にクランクアップした。

 本作では、『七人の侍』で採用した複数のカメラで同時に撮影する「マルチカム撮影法」を本格的に導入しており、3台のカメラを別々の角度から同時に撮影することで、カメラを意識しない俳優の自然な演技を引き出している。主人公の放火で焼け落ちた工場のセットは東宝撮影所内の新築されたばかりの第8スタジオの前に組まれ、新築のスタジオの壁面を焼け跡に見立てて塗装したため東宝に怒られたという。また、都電大塚駅のセットは電車の先頭部分を含めて、本物そっくりに作られた。
 音楽は早坂文雄が担当したが、撮影中の10月15日に結核で亡くなった。親友だった黒澤はそのショックで演出に力が出ず、黒澤自身も「力不足だった」と述べている。早坂はタイトル曲などのスケッチを残しており、弟子の佐藤勝がそれを元に全体の音楽をまとめて完成させた。

 本作は興行的に失敗し、黒澤自身も「自身の映画の中で唯一赤字だった」と語っており、その理由について「日本人が現実を直視出来なかったからではないか」と分析している。第29回キネマ旬報ベスト・テンでは4位にランクされ、第9回カンヌ国際映画祭ではコンペティション部門に出品された。大島渚は鉄棒で頭を殴られたような衝撃を受けたとしており、徳川夢声は「この映画を撮ったんだから、君はもういつ死んでもいいよ」と激賞したという。佐藤忠男は「黒澤作品の中でも問題作」と述べている。


あらすじ
 歯科医の原田は、家庭裁判所の調停委員をしている。彼はある日、家族から出された中島喜一への準禁治産者申し立ての裁判を担当することになった。鋳物工場を経営する喜一は、原水爆の恐怖から逃れるためと称してブラジル移住を計画し、そのために全財産を投げ打とうとしていた。家族は、喜一の放射能に対する被害妄想を強く訴え、喜一を準禁治産者にしなければ生活が崩壊すると主張する。しかし、喜一は裁判を無視してブラジル移住を性急に進め、ブラジル移民の老人を連れて来て、家族の前で現地のフィルムを見せて唖然とさせる。

おもなスタッフ
監督 …… 黒澤 明(45歳)
製作 …… 本木 荘二郎(41歳)
脚本 …… 橋本 忍(37歳)、小国 英雄(51歳)、黒澤明
撮影 …… 中井 朝一(54歳)
美術 …… 村木 与四郎(31歳)
録音 …… 矢野口 文雄(38歳)
照明 …… 岸田 九一郎(48歳)
音楽 …… 早坂 文雄(41歳 本作の制作中に死去)、佐藤 勝(27歳)、松井 八郎(36歳)
記録 …… 野上 照代(28歳)
音響効果  …… 三縄 一郎(37歳)
制作・配給 …… 東宝

おもなキャスティング
中島 喜一    …… 三船 敏郎(35歳)
原田       …… 志村 喬(50歳)
原田の息子・進  …… 加藤 和夫(27歳)
中島 とよ    …… 三好 栄子(61歳)
中島 一郎    …… 佐田 豊(44歳)
中島 二郎    …… 千秋 実(38歳)
山崎 隆雄    …… 清水 将夫(47歳)
山崎 よし    …… 東郷 晴子(35歳)
中島 すえ    …… 青山 京子(20歳)
中島 君江    …… 千石 規子(33歳)
須山 良一    …… 太刀川 洋一(24歳)
喜一の愛人・里子 …… 水の也 清美(39歳)
栗林 朝子    …… 根岸 明美(21歳)
朝子の父     …… 上田 吉二郎(51歳)
堀弁護士     …… 小川 虎之助(57歳)
荒木判事     …… 三津田 健(53歳)
ブラジルの老人  …… 東野 英治郎(48歳)
岡本       …… 藤原 釜足(50歳)
石田       …… 渡辺 篤(57歳)
地主       …… 左 卜全(61歳)
鋳造所職長    …… 清水 元(48歳)
留置人A     …… 谷 晃(45歳)
留置人B     …… 大村 千吉(33歳)
精神科医     …… 中村 伸郎(47歳)


 これはもうね、文句なしの歴史的名作でございます。いまさらこんな超零細ブログで語るまでもないことでありますが。

 話は脱線するのですが、昨今、日本の本家東宝でのシリーズ最新作『ゴジラ -1.0』がアメリカのアカデミー賞・視覚効果賞を受賞し、そのアメリカでもハリウッド版ゴジラシリーズ(モンスターヴァース内)が最新作『ゴジラ×コング 新たなる帝国』まで4作も制作されるという活況を呈しており、さらには CGアニメシリーズという形ではあるのですが、あの『ガメラ』も最新作が制作されるなど、令和になって地味~に特撮・怪獣のジャンルが盛り上がってきております。あの~、ちょっと各作品の展開がバラバラなので「ブーム」とまでは言えないかも知れないのですが、円谷プロの「ウルトラシリーズ」もコンスタントに新作が制作される状況が定着していますし、もはや特撮・怪獣の何かしらの新作が常に楽しめる現状は、ブーム以上に喜ぶべきジャンル全体の底上げを意味しているのではないでしょうか。
 うれしいですね……実に嬉しいです。わたくし、生まれも育ちも1980年代の人間ですもので、何年かに一作品がポツ、ポツ……と慈雨のように続くばかりだった特撮冬の時代の厳しさを経験した身としては、今、幼少年期を過ごしている少年たちはもう、心の底からうらやましくてたまりません。『ウルトラマン80』、『ゴジラ1984』、『仮面ライダー BRACK』2部作、『仮面ノリダー』あたりで約10年間枯渇をしのいでいたわけでして、それ以外はもっぱらレンタルビデオで昭和時代の旧作を観て素養をみがいておりました。平成の到来とともに『ゴジラ VS ビオランテ』(1989年)から始まった「 VSシリーズ」、そして「平成ガメラシリーズ」の、なんと神々しかったことか……あと、映画『ウルトラQ 星の伝説』(1990年)もネ。

 そういった感じで、いつでもどこかに「怪獣がいて当たり前」という幸せな時代が只今到来しているわけなのでありますが、このようにポンポンと怪獣が世に出てきますと、そもそも人間の想像上の存在であるはずの「怪獣」って、なんなの?というところに興味がわく話にもなってくるかと思います。

 日本で、そして今や世界で最も有名な怪獣は何かといえば、それはもうほぼ満場一致で「水爆大怪獣ゴジラ」ということになるかと思われるのですが、そのゴジラの解釈も作品ごとに大きな違いがあり、1954年に産声をあげたシリーズ第1作『ゴジラ』や最新作『ゴジラ -1.0』におけるゴジラは、人類文明の身勝手な核開発競争が生んだ異形の被害者にして、核・放射能の恐怖の象徴ですし、ハリウッドのモンスターヴァースシリーズのゴジラは、人類文明の繁栄によって衰亡の危機に瀕しつつある地球を回復させる「バランサー」という、きわめて「神に近い存在」となっているのです。おんなじゴジラでもこんなに違う! 確かによく見りゃハリウッド版のゴジラの表皮には、日本産ゴジラのトレードマークともいえる「ケロイド状のザラザラ」なんてどこにもないんですよね。余談ですが、『ゴジラ -1.0』のゴジラは厳密には時間軸的に水爆大怪獣ではないそうです。

 行き過ぎた人類文明に警鐘を与える「超越者」、人智を超えた力を持つ「自然災害のメタファー」、はたまた、人類が滅ぼしてしまった、もしくはないがしろにしてきた「過去の遺物の怨念」……さまざまな作品に登場する怪獣たちは、各種各様の背景を秘めた存在となっています。もちろん、単純に子どもが大好きになる「強くてカッコいいキャラ」だったり、「宇宙人の差し向けた生物兵器」として暴れまくるだけなのもいいと思います。円谷プロのウルトラ怪獣みたいにデフォルメされて人気を集めるポケモン的な展開もひとつの定番ですよね!

 そして、こんな風に怪獣の出るフィクション作品が量産されてきますと、そういった怪獣ものの逆張りとして、「怪獣が出てこない怪獣映画」というキワモノも出てきます。ほら、サメ映画だって最近、「サメが出てこないサメ映画」が出たっていうじゃないですか。いくとこまでいったな~!!
 でもこれ、かなり重要な話のような気がするんですよね。

 要するに、怪獣のように「巨大で恐ろしい何か」を表現するのに、怪獣そのものが必ずしも登場する必要はないんじゃないかという問題なのです。
 確かにそういわれれば、映像作品の中に怪獣が登場する時、絶対に無くてはならないのは、「怪獣に出くわして恐れおののく人間のリアクション」だと思います。そして、その反応の演技がヘタだったりすると、たちまち出現した怪獣もまた、チープで安っぽい作り物になってしまうのです。
 思い出してみてください、あの『ゴジラ』(1954年)での、大戸島の山上に初めてゴジラが首をもたげた時の村人たちの悲鳴、そして、ゴジラの咆哮を聴いた時のヒロイン・山根恵美子(演・河内桃子)の絶叫! 実のところ、ここで画面に出てくるゴジラそのものはハンドパペット式のギニョール人形なのでやや頭でっかちで、怖いというよりもむしろちょっとかわいいくらいなのですが、それを観た人々の反応があまりにもリアルで恐怖に満ちたものなので、それによってゴジラも実物以上に禍々しくおぞましい存在になりえているのです。
 つまり、ギニョール人形だったり着ぐるみだったり CGだったりして、そもそも作り物である怪獣を「現実にあるもの」に変換するために、周囲の現実にいる人間の反応は必要な儀式装置なのでしょう。怪獣は造形物のみによって命を得るものなのではなく(もちろんパーセンテージは大きいと思いますが)、それに反応し対峙する人間たちのリアクションを含めた作品全体によって完全な姿を得るものなのでしょう。

 だとするのならば、「おそれる人たち」の演技を最高品質のものとすれば、極端な話、怪獣そのものが出てこなくとも怪獣レベルに人類文明をおびやかす脅威の存在を実感させうる作品はできるのではないか?
 この問いに正面から向き合った空前絶後、唯一無二の映画作品こそが、この『生きものの記録』なのではないでしょうか。まさにこれは、「ひたすら恐怖する人」としての「生きもの=中島喜一老人」の記録のみに特化した作品であるわけです。

 私がつらつら思い起こす限り、いわゆる「怪獣の出てこない怪獣映画」は世の中に何作かありますが、それは「予算の都合で怪獣がちょっとの時間しか出てこない」とか「怪獣の死体しか出てこない」とか、結局はひよった中途半端な姿勢に終わってしまうものが多く、だいたい見えない怪獣の存在に命を吹き込めるほどスタッフや演者の皆さんが魂を込めて仕事をしていないので映画としても実につまらない作品になってしまっている、というものがほとんどだと思います。やっぱり、いない怪獣を相手にして90分も2時間も話をもたせるって、それこそ本作レベルにそうとうな覚悟と技量を持って臨まないと、なかなかできることじゃないのよね……ただその点、『ウルトラセブン』(1967~68年放送)での、怪獣や特殊造形の宇宙人がまるっきり出てこない数エピソードとか、その正統な続編である『ウルトラセブンX 』(2007年放送)などのように、20~30分の物語世界で後世に語り継がれるべき傑作が生まれる例は多いような気はします。そこらへんはもう特撮というよりも SFの世界ですからね。実相寺昭雄ワールド~♡ でも、ここにいくとゴダールの『アルファヴィル』(1965年)とか、かの聖タルコフスキー監督の諸作のほうに話がいってしまいますので、脱線はここまでにしておきましょう。

 それでこの『生きものの記録』なのですが、この作品って、明らかに前年に公開された『ゴジラ』(1954年)の精神的な双子みたいな作品だと思うんですよね、同じ現実世界の「第五福竜丸事件」を親とした。
 本作と『ゴジラ』との時間的関係を見てみますと、両者の間には1955年4月に公開された『ゴジラの逆襲』という作品があります。これも私、ゴジラシリーズの中で一、二を争うくらいに大好きな作品!

 言うまでもなく、『ゴジラの逆襲』は前年の『ゴジラ』の正統の続編にして、「ゴジラ対別の怪獣」という王道パターンの開祖となった記念碑的作品です。そして何よりも、出てくるゴジラ(2代目)が怖い、怖い!! 現代定着したポップな怪獣というイメージからは程遠い荒々しさとケダモノっぽさがあって、撮影ミスで新怪獣アンギラスとの戦闘シーンが異様にスピーディになっているのもリアルな猛獣同士の殺し合いという雰囲気が出ているし、牙も犬歯が吸血鬼みたいに長くて真っ直ぐ前をにらんでいる目つきも生々しく、なんか妖怪のような不気味があるんですよね。
 ただし言わずもがな、『ゴジラの逆襲』の世界における日本人は、かつて東京に上陸して大暴れしたゴジラという驚異をすでに「知っている」のです。そのため、そのゴジラの2頭目が今度は大阪に上陸するかも知れないという話になってくると、民間人はそそくさと避難して市街地はほぼ無人となり、撃退するために自衛隊とその最大兵力が待ち構えるだけという万全の対策を迅速にとるわけです。万全っていってもまぁ、てんで役に立たないんですけどね☆

 つまり、怪獣というジャンルを創始した当のゴジラシリーズは、その第2作から早々に「核・放射能の脅威=怪獣」という図式を取っ払ってしまい、「努力次第で人類でもなんとかできてしまう巨大害獣」にスケールダウンさせてしまっているのです。でも、これは起承転結のある娯楽作品としてシリーズ化させるためには仕方のない舵取りでしょう。そんな、毎回毎回オキシジェン・デストロイヤーみたいなデウス・エクス・マキナをひねり出すわけにもいきませんからね。

 その一方で、ゴジラシリーズが、少なくともそれ以降の昭和作品では捨ててしまった「核や放射能の恐ろしさ」をかなり高い純度で継承……というか、初代『ゴジラ』と分かち合った作品こそが、この『生きものの記録』だと思うんですよ。

 映画『生きものの記録』に、当然ながら怪獣そのものはまるっきり登場しません。しかし、それとほぼ同じくらいに正体不明で曖昧模糊とした「いつか来るかもしれない核戦争や放射能汚染の脅威」を本気で感じ取り、恐れおののく人間として登場する中島喜一老人の存在感と振る舞いが十二分すぎる程に切迫感溢れるものとなっているために、画面に全然出てこなくとも、「ひたすら恐ろしい、逃れられないなにか」がひたひたと近づいてくる不安感が迫ってくる作品になり得ているのです。そのために、当時30歳代の三船敏郎をわざわざ老人役にすえなければならないほどのエネルギーを、黒澤監督は求めたのではないでしょうか。
 ただし、若い俳優に老人を演じさせたからと言って、黒澤監督は安易に中島老人にパワフルな演技をさせたり、実際の60歳の人間にはできないような芸当をさせるようなことはしていません。当然、演じているのがあの三船さんなのでどんな狂態も問題なく演じられたはずなのですが、あくまでも「何の変哲もない老人」という範囲の中で、ただひたすらに「おびえ、おそれる」演技を100% 全力で演じることを要求しているだけなのです。
 たとえば、本作のクライマックスで中島老人はついに、自身の家族のブラジル移住を推し進めようと焦った挙句、現在の一家の生活の基盤となっている、自分自身が創業したはずの鋳物工場に放火をして全焼させてしまうという最終手段に出てしまいます。
 ここのくだり、なんせ前作が『七人の侍』(1954年)という全盛期真っ最中の黒澤監督なんですから、炎上する工場のスペクタクルを撮影するなんてお手の物かと思うのですが、本作ではそんな場面はきれいさっぱりはしょられており、いきなり黒焦げの焼け跡となった工場の残骸が映し出される展開となっており、そこから愕然とする一家の混乱の果てに、中島老人の告白がしめやかに語られる展開となっています。
 この、映画としては本作中最も派手な事件といってもよい工場炎上が全く描写されないのは、おそらく、観客が中島老人のおそれる恐怖の正体を工場炎上のスペクタクルと混同したり、もしくはおそれる中島老人自身が結局は周囲の人間にとっての災害(=怪獣)になっちゃいましたとさ、みたいにオチだと解釈したりして、安易に作中に怪獣を顕現されないようにするための予防策だったのではないでしょうか。この作品において、あくまでも怪獣は全く映画に登場しない存在でなくてはならず、いかなエネルギッシュな三船さんであれども、怪獣を想起させかねない方向にいくことは厳に許されないタブーだったのでしょう。

 ここで重要なのが、全く出てこない怪獣(核や放射能)に代わって、作中で中島老人を直接的に恐怖させる存在なのですが、これは具体的には2つありまして、ひとつは「雷鳴と驟雨」で、もうひとつは「中島老人の愛人の一人・朝子の親父(演・上田吉二郎)」です。ヤ~なおとっつぁんなんだ、この朝子のオヤジっていうのが!

 雷鳴と驟雨というのはもうそのまんまで、作中ことあるごとに夕立のような遠雷と風、そしていきなりの大雨がやってくるタイミングがあるのですが、それにいちいち中島老人が過剰に反応しておびえる、という描写があるのです。
 これは、別に中島老人がカミナリ嫌いだというわけではなく、雨雲に乗って太平洋上空に残留する放射能が日本列島に上陸し、あの原子爆弾の炸裂直後に降ったという「黒い雨」がまた降り注ぐのではないかという不安を中島老人が強くいだいているということの暗示に相違ありません。
 こういう放射能と雨との関連づけって、広島・長崎の原子爆弾投下以降、世代が代わるたびにどんどん薄れていくものかと思っていたのですが、まことに不幸なことに、2020年代現在を生きる私達日本人の多くは、2011年3月に「放射能を含んだ雨」の不安を現実にいだく経験をしてしまいました。デマとわかっていながらも、実際にメールで不気味な警告メールを受け取った方も多いのではないでしょうか。それを即座に笑い飛ばせた人は、果たしてどのくらいいたでしょう。

 もうひとつの中島老人をおびえさせた存在として挙げた朝子のおとっつぁんなのですが、この人はもう本当にどうしようもない、自分の娘の愛人(中島老人)の財力に頼らないと何もできないようなダメおやじです。しかしながら自分の感情に素直に生きようとする生命力だけは非常に貪欲で、作中では中島老人の一家と共に自分達父娘をもブラジルに移住させようとする老人の決断に強い反感を抱きながらも、直接老人に反抗するようなそぶりは隠しておいて、素知らぬ顔で娘を通して老人に金をせびりながら、裏で老人の家族にまわってブラジル移住を破談に追い込もうとする包囲網も形成させていくという狡猾さを持った人物なのです。
 ここ! このおとっつぁん(名前すらない!)の、『ゲゲゲの鬼太郎』のねずみ男みたいなトリックスターっぷりが、怪獣もスペクタクルもない本作を非常に起伏豊かなものにしてくれるのです。長期的な人生のプランはないが、ともかく今日を生きたいというエネルギーだけはものすごいんですね。この生き方を笑える人が、果たしてこの世にどのくらいいるでしょうか。

 このおとっつぁんが、作中で一度だけ中島老人に残酷な牙をむくシーンがありまして、それが、夕立ちの降りそうな昼下がりに、縁側で世間話をするかのように老人に「放射能汚染の恐怖」を聞いたふうに吹聴するところです。被爆した人間がどうなるのか、子ども達の世代の未来はどうなってしまうのか、みたいな話を他人事のように話すわけなのですが、それを聞いた中島老人は不安にかられ、憔悴しきった表情になってしまいます。
 ここの局面で、おとっつぁんが中島老人をおびえさせて具体的にどうしたかったのかは、まるでわかりません! 特におとっつぁんにメリットのあることでもないように見えるのですが、彼に何かしらの策があったというよりも、「今まで偉そうにしてた奴がなんか弱ってるから、もっと怖がらせてやれ。」みたいな、なんのひねりもない子どもみたいな感情がふっと湧いてきて話し出したように見えるんですよね。そして、そういったなんでもないようないたずらがめぐりめぐって、中島老人と一家の崩壊を招いてしまうのですから、このおとっつぁんの、ある意味で「邪気の無い」悪意が、この映画でいちばん怖いものだったのではないでしょうか。
 また、この場面での、おとっつぁん役の上田吉二郎さんの語りがめっちゃくちゃ上手いんですよね! ほんと、基本的にだるんだるんのランニング姿でだらしないオヤジなのですが、ここで薄暗い縁側に座って語るときだけ、稲川淳二もビックリな超一流の怪談師みたいなオーラを身にまとうんですよ。やっぱり腕のある俳優さんは違うなぁ!!


 いろいろくっちゃべってまいりましたが、本作『生きものの記録』は、「怖いものを見せずにその恐ろしさを伝える映画」の究極だと思います。その決意のほどは相当なもので、核や放射能に関する情報を映像で見せることは一切なく、ひたすらそれを「怖がる人」しか映し出していない徹底ぶりは空前絶後の完璧さです。
 実は、つい最近にこの『生きものの記録』と精神的にかなり近いと思われるアプローチの映画として、あの魁!!クリストファー=ノーラン番長の『オッペンハイマー』があったわけなのですが、主人公がしっかり「怪獣級の天才」として描かれる部分があり、しかもかなりギリギリまでがんばったものの、ほんの一瞬とは言え直接に原子爆弾の悲惨な事実を(幻影としながらも)描いてしまったという点で、やはり『生きものの記録』のほうが数段、目指す志と完成度が上ではないかと確信しています。原爆の惨禍を全く描かないという選択肢が非常に難しいものであることは、『オッペンハイマー』をめぐる日本公開までの議論をみても明らかでしょう。ノーラン監督はかなりがんばったけど、やっぱり最後に「ある異常天才の半生記」に落ち着けるという安易な手を選んでしまったのです。キビシ~ッ!!

 先ほども申しましたが、本作で主演を務める三船敏郎は、これはもうまごことなき「怪獣レベル」の存在感とスター性を持った名優です。それこそ、ゴジラ級の破壊力と輝きを持った才能! それはもう、黒澤監督の前作『七人の侍』でも証明されていることですし、三船さんも初代ゴジラも対する相手が同じ志村喬さんだという事実もそれを裏付けるものでしょう。
 それなのに、本作で黒澤監督は三船敏郎35歳のエネルギッシュなパワーを炸裂させることは一瞬間も許さず、ただひたすらに彼の演じる中島老人を孤立させ、憔悴させることによって、「経営も発展させて愛人を何人も囲うような大人物が、どうしてそこまで……」と思わせることに成功しているのです。そこまで彼を追い詰める核・放射能とは一体なんなのか? そして、そんな人がいるのに、その一方でどうして同じ日本列島に住む我々日本人は、特に不安に思うこともなくのうのうと暮らし続けていられるのか……

 本作において黒澤監督は、中島老人を徹底的に「孤立した人間」に描いてはいるのですが、結末こそ精神病院送りにはなっているものの、老人を「核・放射能を並外れて怖がる異常な人」だったり、「不安になるあまりに家庭を崩壊させてしまう危険な人物」に見せるような演出はかなり神経質に避けているように思えます。老人も、世間体を考えて怖い怖いと本音を言うことは控える自意識は持っていますし、工場に放火するという非常手段も、結局は繊細な自身の心を壊してしまう諸刃の剣となってしまうのでした。
 よくよく考えてみると、中島老人のブラジル移住計画も、さんざん老人が危険だ危険だと思い込んでいる日本に「喜んで帰国したい」と申し出ているブラジルの農園主(演・東野英治郎)がいるから進んでいる話なので、中島老人の「日本から逃げよう」という主張に賛同している人なんて、作中に一人もいないんですよね。作中唯一の清涼剤ともいえる末娘のすえ(ネーミングセンス……)だって、哀れな父の姿に同情こそすれ、父の恐怖までをも共有しているとは思えません。中島老人の孤立はあくまでも彼自身の「おそれ」に起因するものなのであって、老人のカリスマ性やエネルギーによるものではないのです。

 中島老人を特殊なキャラクターにしないというこの頑なな決意は、すなはち「この物語を特異なケースにさせない」という黒澤監督の思いの表れなのだと思います。怪獣不在の怪獣映画とは、「いつ怪獣が出てくるかわからない」という状態を、この映画を観た後も観客に継続させようとする、一種の「呪い」なのではないでしょうか。
 つまり、映画を観終わった後に「放射能を怖がり過ぎるおじいさんが出てくるヘンな話だったね。」では絶対に済まさず、「放射能が怖いのはよくわかってる。じゃあ、そんな放射能がすぐそばにあるこの世界にいて、なんの不安も抱かない私達は、果たして正常なのかな?」と考えさせることこそが、この映画が生まれた意味なのではないでしょうか。
 怪獣が出てこないことによって、永遠に終わらない映画、そして問題。この『生きものの記録』は、そんなとんでもなくヘビーなテーマを、そのわりには非常に見やすく提示してくれる作品なのです。キャスト表見てみてよ~、もう全盛期の黒澤組ができあがりつつあるよ!!

 あの三船敏郎を擁しといて、こんなに贅沢な使い方を確信的にできる黒澤監督の剛腕もものすごいのですが、文字通りの「大スター怪獣ミフネトシロウ」の大暴れは、この後の黒澤映画諸作でもうイヤンとなるほど楽しめますからね! その振れ幅の大きさもまた、黒澤映画の魅力の一つですよね~。

 それにしても、Wikipedia にあった「この映画撮ったんだから、君いつ死んでもいいよ。」という言葉は、最大限の賞賛であるのはよくわかるのですが……なんかイヤ~!! 言う人も言われる人も、ものすごいよね。
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これぞ21世紀の耳嚢!? YouTubeの『都市伝説考察チャンネル THE つぶろ』 ~雑文まとめ~

2024年07月07日 18時50分17秒 | ミステリーまわり
 さーさーのーはーさーらさらー!! みなさま、どうもこんばんは。そうだいでございます。
 今年もすでに7月ということで、あっという間に後半戦となってしまいました。まったく早いなぁオイ!
 本日は七夕の日ですが、こちら山形は見事なまでのオールグレイ曇天となっております……宇宙リア充あはれなりィイ。

 7月と言えば、私は丸一年前に山梨県へと片道500km の往復ドライブ旅を決行しておりました。1泊3日の年甲斐もない強行軍でしたが、んまぁ~ものすんごく楽しかったですね。源泉水温20℃の洞窟温泉「増富ラジウム温泉」でのひとときは忘れませんよ……

 そんでま、今年の7月もどっか行きたいなということで、この週末に私は山形県米沢市の白布(しらぶ)温泉の西屋旅館さんに泊まってまいりました。ずっと行きたかったんですよ、ここ! これで白布温泉伝統の「中屋(別館)」、「東屋」に続いて御三家コンプリートや!!
 白布温泉は日本全国で秘湯と呼ばれる種類の温泉地の中では比較的有名な場所かと思うのですが、それでも最寄りの都市である米沢市から車で約30分強続く田園~山道の寂しさはものすごいもので、特に今回は仕事の都合で完全に陽が落ちてからのドライブとなり、しかも漆黒の山影がたまに不気味な雷光で照らされるというムード満点なシチュエーションで宿に向かうこととなりました。映画『ルパン VS 複製人間』のオープニングか!
 そして、よせばよいのに以前から何度か白布温泉に通っていた私は、かねてからそこに行くまでに必ず通る県道2号線の途中で「船坂峠(ふなさかとうげ)」という廃道が脇でぽっかり口を開けているのが気になっていまして、そこはいつも車止めやテープが張ってあって閉鎖されていたのですが、今回に限ってテープがちぎれて中に入れる……ような気がしたので、ついつい夜道にもかかわらずそこに潜入してしまいました。
 いや~……夜の山は怖いですね! 以前調べたところ、かなり曲がりくねった廃道ではあっても、そこはもともと片側一車線のアスファルトが敷かれていたちゃんとした道路であることは知っていたので大丈夫かなと高をくくって挑んだのですが、道は予想以上のスピードで自然に侵食されており、冗談抜きに道路の見える部分が幅50cm くらいという『千と千尋の神隠し』ライクな枝まみれツタまみれの惨状に。要所要所で道路がまるまる見えている場所もあったので、おそらく不定期に地元の方か私のような物好きが通っている人跡を感じてその点は安心だったのですが、倒木や落石を踏んで車が立ち往生して、そこにツキノワグマでも出てきようものなら……という恐怖にかられる時間でした。結局、やっと峠道を抜けたと思ったら、そこから現道に出るゴール地点に廃タイヤが並んで閉鎖されていたので、泣く泣く来た道を戻ってちゃんとした正規ルートをたどり直し申した。テンションに駆られてアホなことはするなかれという教訓!! ほんと、何事もなく生還できてよかった……日頃お参りしてる薬師如来さまのおかげだべ。

 山形は先月から、雨が降らなければムシムシの炎天にみまわれる酷暑が続いているのですが、さすが白布は米沢藩上杉家の奥座敷というだけあり、湿気と虫には目をつむるとしても暑さ知らずの快適な夜を過ごすことができました。江戸時代から設計が変わっていないという石造りの瀧風呂も大迫力で素晴らしかった! 梅雨のせいか湯の温度がぬるめだったのも逆に良かったですね。宿泊客の場合は大きな内湯の貸し切り風呂も入れるのですが、そちらで深夜に窓の外から聞こえてくるカジカガエルの美声も最高でしたよ。瀧風呂は瀑布の爆音としぶきでそれどころじゃないから。
 宿への到着が夜9時近くという、翌日の朝食のみで半日ちょっとのせわしない旅となってしまいましたが、主目的は温泉なので、十二分に楽しめるひとときを味わえましたね。西屋さんは古い旅館の常として、外観から受ける印象以上に内部の構造が入り組んで廊下と階段の組み合わせが迷路のようになっていて、迷子になったふりをしてだぁれもいない奥の棟を覗き見る楽しみもしっかりできました。お化けには流石に会えないんだけど、真っ暗な無人の廊下で誰かを待っているかのように佇んでいる日本人形や掛け軸を見ると、ゾックゾクしますよねぇ! あっ、お邪魔しました……みたいな。
 白布温泉以外にも、まだ私が行っていない米沢の秘湯はまだまだあります! 次はどこに行こうかしら。


 ……とまぁこんな具合で前置きが長くなってしまいましたが、要するに私はかくのごとく、ちょっぴりアブない冒険やオカルトじみた謎が大好きな人間なのであります。そんな私が、『THE つぶろチャンネル』みたいな不思議まみれ謎まみれのパラダイスに食指が動かないはずがないんですねェ!!
 やや気づくのが遅れてはしまいましたが、ゴールデンウィーク後のまるまる2ヶ月を使って、1500本以上の動画とサブチャンネル『THE つぶろ調査隊』の全動画を楽しませていただきました。いや~、おもしろかったぁ。

 Youtube にて2019年1月に開設された『THE つぶろ』は、青森県出身の2名の男性がネット上で語られている都市伝説を掘り下げて紹介していく動画チャンネルなのですが、その真摯な調査スタイルはそんじょそこらの「ネット上の出展不詳の噂を面白い奴から拾って羅列しました~。」みたいな無責任な動画チャンネルとは一線も二線も画しまくった綿密かつ細心なもので、お題に選んだ謎に一瞬でも実在の住所や企業でも出て来ようものならば、光の速さで役所に急行すれば登記簿を、図書館に馳せ参じれば過去の地方新聞の記事をチェックして、そこから得た信頼できうる人々や土地の履歴をもとに推理を展開するという、昭和の刑事みたいな地に足の着きまくった調査を得意としているのです。松本清張イズム!
 また、そういった実在の事件や場所に基づいた噂を調査するほかにも、このチャンネルではあの「かわいくさせて」や「ジェフ・ザ・キラー」に代表される、ネットサーフィン(化石語)したことのある人ならば必ず出くわしたことのあるビックリ系恐怖画像の由来や起源を探る企画も多いのですが、そういう時は日本国内でよく利用される検索サイトにとどまらず中国やロシアといったサイトでの画像検索も活用して画像の遍歴をたどり、現在閉鎖してしているサイトであっても、ちょっと私はよくわかんないのだけど「インターネットアーカイブ」やら「ウェイバックマシン」といった外法を駆使してサイトの亡霊を召喚してそこにわずかに残るいにしえの情報を復活させる、まさに青森出身らしい「電脳いたこ術」もお手のものというオールマイティぶりを発揮しているのです。
 刑事にして陰陽師。現実でも非現実でも彼らの前に出て、その謎を暴かれずに済んでいる都市伝説はほぼないと言って差支えは無いでしょう。それだけに、そんなTHE つぶろさんの捜査の過酷な洗礼を受けているにもかかわらず未だに解明されない謎でい続けている「ドラえもんのマーライオン前集合画像」や「ポルターガイストくん」の深淵のドス黒さがさらに磨きをかけているという、この理想的なライバル関係……大好き♡

 数回にわたって紹介してきたこの記事のタイトルをご覧いただいて分かるように、私はこのチャンネルの都市伝説、恐怖画像、心霊写真、実録犯罪、SNSの闇、テレビ番組、コマーシャル映像、音楽、ゲーム、廃墟探訪、民俗風習などなどといった無尽蔵なまでの守備範囲の広さに、江戸時代の南町奉行・根岸肥前守鎮衛(しずもり)が当時の世間に流れていた巷説をノンジャンルで聞けるだけ聞き集めた採話集『耳嚢(みみぶくろ)』(1780年代~1814年 全10巻)の再来をおぼえずにはいられません。あの、平成時代に流行った実録怪談集『新耳袋』とはぜんっぜん無関係ですからね!? あれはあれでいいんですが、なんであのシリーズを『耳嚢』にあやかったタイトルにしたのかがまるで理解できません。おかげで「百物語=耳嚢」みたいなおかしなイメージが付いちゃったじゃねぇか! 『耳嚢』は確かに怪談も扱ってはいますが、それだけにとどまらない世間のどうでもいいうわさ話までをも包括するふところの広さが魅力なんでい! それを怪談集みたいな狭い認識に貶めやがって……お奉行様に謝れい!!
 ただ、本家の『耳嚢』は多少お奉行の考察が入る部分はあるにしても、どちらかというと「うわさをうわさのまま採集する」という民俗学的というか考現学的なスタイルが特徴だと思います。ま、無節操に拾い集め過ぎという見方もあるかも知れませんが。
 それに対してこのTHE つぶろチャンネルはと言いますと、取り上げた話題は謎のままにせず、可能な限りその発祥の状態にまで解体・還元することを旨としているところがあり、その解明に懸ける情熱と執念の密度は、のんきなお奉行というよりも、「無批判に守られ続ける因習や説明不可能とされる怪異を徹底的に解体することによって日本人の真の近代化を目指した」明治時代のあの妖怪ハンター・井上円了博士のストロングスタイルを彷彿とさせるものがあります。

 確かにそう思えば、THE つぶろさんのネットリテラシーの啓蒙に懸ける姿勢は大いに見習うべきものでありますし、だいたいチャンネル名の「つぶろ」だって、漢字にすれば「円」ですもんね! なるほど~、そういう志の高さでしたか、お2人!! 「雑文ブログ」だなんて謙遜しちゃってぇ~、このこの!

 ただ、開設されて5年たったこのチャンネルの最大の特徴にして最強の武器と言えるのは、やはりこの2人を助けて長年の謎を解かんとする無数の視聴者の提供する情報の確かさと範囲の広さだと思います。ここ1~2年の謎の解決に、この名もなき声が貢献している例は枚挙にいとまがないでしょう。「集合知」というもののすごさを、ここまで実感できる場は他にないのではないでしょうか。
 ほんと、昭和末期のテレビ番組やらコマーシャルとか、一瞬だけ Youtubeで見た動画だとか、そんなのわかるわけないだろという映像の由来が、ある日突然ポツリとつぶやかれたコメントによって解き明かされる化学反応は、人と人との出逢いがまさに奇跡であることをまざまざと思い知らされるドラマチックなものだと思います。私も少年時代、気になったテレビ番組を苦心して容量120分の VHSテープいっぱいギッチギチに録画した思い出のある人間なのでよくわかるのですが、放送の合間に流れるコマーシャルなんて真っ先にカットしちゃうもんね! それが2020年代の今に残ってるなんて、そうとうな確率の低さよ。それに再会できる喜びといったら……
 ただ、最近の視聴者コメントによって謎が解決する展開の多さをもって、THE つぶろのお2人の活躍度が低下していると見る向きもあるかも知れませんが、私はそうは思いません。チャンネルが有名になるにつれて、おそらく受け付ける情報も膨大になるでしょうし、それによって誤情報が入る確率も高くなると思うのですが、そこを精査するのはやはりお2人の手腕でしょうし、「THE つぶろだから、この情報を提供したい。」という求心力を築き上げてきたのは、まごうことなきお2人の魅力のなせるわざなのです。

 とまぁ、そんな感じで面白さをしゃべりはじめたらキリがないこのチャンネルなのですが、やはりこれは「百聞は一見に如かず」ということで、どの動画でもいいので、気になった動画をちゃちゃっとご覧いただくのが一番かと思います。このチャンネルは「理想の動画分数は8分」というポリシーを順守されていますので、相当に重い内容の動画も見事にコンパクトで分かりやすいサイズに収めてくださっています。通勤中でも晩酌がてらでも難なく楽しめるお手軽さ!

 今回、我が『長岡京エイリアン』でこのチャンネルを取り上げさせていただくにあたり、1500本以上ある動画の中で私が個人的にグッときた回を3回にわたってざっとリストアップしたのですが、この中からさらに、私が特に面白いと感じたものベスト10を挙げさせていただきたいと思います。
 言うまでもなく、面白いか面白くないかは個人的感性に基づくものですので、他の方から見て同意しかねるランキングになるかも知れませんが、そこは個人ブログなので勘弁してつかぁさい。特に私は、ゲーム関連が非常にうといので……


≪プロの作るテレビ番組そっちのけに面白かった動画回ベスト10≫
 ※2024年6月配信回までの範囲

第1位 情報が一切存在しない奇妙な「生首の看板」(2024年5月)
第2位 詳細不明な謎の番組「緑色の液体に浸かる水着の女性」(2022年11月)
第3位 ネット上で流布している恐怖画像『かわいくさせて』の起源(2024年6月)
第4位 コラ画像と言われていた人身事故の心霊写真だが、実は(2023年11月)
第5位 YouTubeにアップされている「不倫女性焼身自殺録音テープ」は本物か(2023年10月)
第6位 視聴者が選ぶガチでヤバい心霊映像『Acceed ホモビデオのポルターガイストくん』(2022年9月)
第7位 ネットに存在する恐怖画像『長州力の背後の観客』(2021年11月)
第8位 アニメ『ドラえもん』出所不明のイラスト(2022年4月)
第9位 ≪調査隊≫哀愁のある有名なコピペ『飯盒炊爨AV 』の由来となったAV とは(2024年1月)
第10位 心霊写真『園児とデカすぎる先生の集合写真』(2022年12月)


 こんな感じになりますかね。いや~錚々たるメンツ!!

 第1・3・9位の動画は、このチャンネルで完膚なきまでにその噂の所在が白日の下に曝された大変な労作だと思います。何回かの調査動画の末に解決したものも多いので、その歴史を最初からたどっていくと、その功績の大きさもより身に迫ってくることでしょう。
 そもそも、なんでまた、そんなよくわかんない画像やらコピペ文章の由来という、わかろうがわかるまいが実生活に何ら影響しなさそうな謎を追い求めるのでしょうか。それは、「知的欲求」という人類にしか味わえない快楽をかなりの純度で満たす贅沢きわまりない娯楽だから、のような気がします。
 別にそれがわかったところでお金がもらえるわけでもなければ頭がよくなるわけでもない、視聴率が取れるわけでもない。そんな感じに文明社会の暗部に打ち捨てられている問題に、徹底的に向かい合って解決する。これを高等的な探偵と呼ばずして何と呼びましょうか。こんなことしてる人、小説の中だけじゃなくて現実にほんとにいるんだ……
 あと、人類にとっての「謎を解決する」という行為は、知的欲求を満たすという他にも、「理解をもって相手を制する」という抵抗手段でもあるような気がします。もちろん、その理解が「ほんとうの理解」なのかどうかはこの際問題ではなく、理解することで「安心できるかどうか」が重要な話です。
 つまり、あの時見てビクッとなった恐怖画像を理解し、元画像へと還元してしまうことによって「おめぇなんて怖くねぇぞコノヤロー!!」という最大限の抵抗として、このチャンネルでの「かわいくさせて」や「生首の看板」への執拗な追究を解釈することもできるのではないでしょうか。どんなにおどろおどろしい看板が暗い山道に立ててあっても、それが子ども向けの肝試しの道案内表示だとわかれば怖くはなくなりますよね……と思ったけど、やっぱあの看板はこえぇ!!

 第2・6・8位は、2024年7月現在でも解決していない謎についての動画なのですが、その中でも特に私が「水槽の中の水着女性」を推すのは、動画の中の女性が、ちょっとテレビで本当に放送していたのかと疑わしくなるくらいに心底不安そうな表情で緑色の液体に浸かっているからです。あれは絶対に演技じゃないし、なんなら撮影スタッフに殴りかかるんじゃないかというくらいに猜疑の目を周囲に投げかけているんですよね。あんな実験映像、なかなかないと思いますよ……できればモデルを務めた女性のプロフィールも含めて、解決してほしい謎の番組映像です。

 第4・5位は、動画を観ていて心底戦慄した内容のもので、第10位は心底笑ってしまったものです。第4位は、線路上にとんでもないモノが無造作に転がっていて、それなのに近くに停車している電車の車体がまるで無傷ということで長らくコラではないかと疑われていた画像だったのですが、画像に散りばめられていた不可解な点が一つ一つ丁寧に解決されていって、その末にたどり着いた結論が「本物です……」という最も恐ろしいものになってしまうという、まるでかの名探偵シャーロック=ホームズの至言を地で行くような理路整然とした動画になっていたのが衝撃的でした。
 「どんなにありそうになくても、全ての不可能な要素を排除して最後に残った結論が真実だ。」
 第5位のおぞましい音声資料は、実は私も中高生時代に見たテレビの実録犯罪番組のオープニングで唐突に聴かせられて以来トラウマになっていたものだったんですよ。それが今回、晴れて「ほんとに録音したやつです。」という、一番そうであってほしくない答えを得ました……そんなの放送せんといてやぁ!!
 第10位もまた、恐怖を「理解」や「笑い」で無効化しようという人類ならではの対抗の恒例だと思います。にしても、あれがテレビの映像だとよくわかりましたね……とにもかくにも、昭和の心霊写真はカメラの性能に起因するやつ多すぎ! そういえば、「写ルンです」を最後に使ったのはいつだったかな……

 最後に残った第7位の動画なのですが、これはある意味でTHE つぶろチャンネル最大の異色作と言ってもよろしいのではないでしょうか。
 ただ、この動画に関してはこうして話題にすること自体が私自身も好むところでないので、あまりピックアップはしたくないのですが、「人の容姿をどうこう言う権利が自分にあるのか」という問題に気づかせてくれる非常に大事な動画になっていると感じたので、ランクインさせていただきました。これ、かなり深い話だと思います。それは、珍しく賛否両論がはっきり分かれたこの回のコメント欄を見ても一目瞭然かと思うのですが、私は、ここで採り上げられた画像をもって「何の問題もない普通の画像」と断じたTHE つぶろさんの勇気ある結論に賛意を表したいと思います。
 実は私自身も個人的な体験として、大学生時代に千葉のコンビニで働いていた時に、お店の常連さんの中にそういった方がいらっしゃったのですが、おそらく通勤の途中でお店に来ているその方を奇異の目で見る地元の人は老若男女含めて一人もいないのに、ご本人はいつも肩を丸めて周囲の視線を気にして、申し訳なさそうな表情を浮かべて買い物をそそくさと済ませて出ていく様子が、なんだかものすごく印象的だった思い出があります。これはTHE つぶろさんも取り上げていた『探偵!ナイトスクープ』の「謎のテープ紐」のお話とも通じるかと思うのですが、世間という共同体には「馴れる」というある種の癒し効果(双方にとっての)があると思います。でも、なんでも明示し平均化するネット社会はもはや集団とはくくれない程異様に肥大化した乱気流のような状態になっていて、ある異分子に対しては常に初見の膨大な視線が叩きつけられてしまい、「怖い!」とか「キモい!」とかいう無責任な俎上に載せられてしまう悲劇が生まれてしまうのではないでしょうか。
 この件に限らず、障害というものは実際にその身になってみることが難しい隔絶がある問題だと思うのですが、それを認める、受け入れることと現在のネット社会とは、決定的に相いれないものがあるとしみじみ感じ入る動画でありました。かといって、江戸時代以前の「神子筋」や「おっとい嫁女」がはびこる文明に戻っていいわけがなく……難題ですね。

 まぁまぁ、そんな風にある意味でテレビ番組以上の鋭さをもって心に刺さる動画も提供してくれる、しかも毎日!!というTHE つぶろチャンネルさん、今後もお2人のお身体やチャンネル自体を壊さない範囲でがんばっていただきたいと思います。
 でも、ほんとにこのチャンネルのおかげで解決したネット上の謎は多く、これから果たして今まで以上におもしろい話題はコンスタントに出てくるのかなという不安もちょっぴりあるのですが、ま、ネットは広大ですから! そうそうスフィンクスのように簡単におっ死ぬこともないでしょうし、このチャンネルがその役目を終える時は来ないのでしょう。

 余談ですが、私、数年前にも Youtubeでめっちゃくちゃ面白いと思って毎回視聴していたチャンネルがあったのですが、ある日突然に投稿主様の個人的な都合か何かで、チャンネルごと全動画がまるっと削除されて見返せなくなってしまったという残念な思い出がありました。『遭難や漂流について』というチャンネルでしたが、淡々とした語り口で時々ギャグを織り込みつつも、ちょっとした判断ミスで後戻りできなくなる自然の猛威と死の恐ろしさをじわじわ染み込ませてくる構成が本当に見事で。でも、今はもう一切視聴不可能になってるんですよね。最近アホみたいに粗製乱造されてるなんちゃって遭難啓発系動画なんぞ、まったく足元にも及びません。全部おすすめ拒否!!
 そうそう、そこはプロのテレビ局じゃなくて個人チャンネルなので、著作権やらなにやらの事情でそういうことがあっても文句は言えないのよねぇ。THE つぶろさんに限ってはそのようなミスは犯さないでしょうが、いつまでもお元気で動画を作っていってくださいね!!

 だいたい、ここまでで私の言いたいことはあらかた終わったのですが、文字通りの蛇足として、私が「真相、知ってるかも!?」とピンときたネタなんかをぶつくさつぶやいて終えたいと思います。1500本も観れば、たま~にそんなのもありますわな。


〇≪調査隊≫千葉県佐倉城址公園の「呪いの13階段」(2024年5月)
 これ、もしかしたらこのブログの最初期につづってたかもしれないと思って調べてみたら、ほんとにやってたわ、佐倉城探訪のおまけに実際に観たのよ、そのトマソン階段!
 いや~、なつかし~……何事も記録に残してみるもんですね。もうあれ、13年前のことになんのかぁ。

〇福島の妖怪「マンモガイガイ」とは?(2023年6月)
 私は山形県民なので福島のことはよくわからないのですが、柳田国男の著作でそこらへんの正体不明なお化け全般を「あんもけっけ」とか「ももんがぁ」とか「もくりこくり」とかいうよくわかんない言葉で表現することは知ってたんですよ。
 んで、昨今は山形弁もテレビの影響で世代を追うごとに確実に消失しつつあって、じいちゃんばあちゃんが使う地元言葉を2~3歳の幼児が継承するっていうことも、少なくとも私の住む山形市ではほぼ無くなってしまっている現状を実感しているのですが、そういう方言うんぬん関係なく、口まわりがまだ成長しきっていない幼児って、「コワイ」を「ガイ」と発音することがよくあるんですよね。
 なので、「けっけ」を「ガイガイ」にというよりは、「怖い怖い」を「ガイガイ」と聞き間違えたと見るほうが近いような気がするんだよなぁ。どうざんしょ?

〇呪文を詠唱する時だけ怖い顔になる Eテレの魔法少女のアニメ(2023年4月)
 これね、私、聞いた瞬間に「『ゴー!ゴー!キッチン戦隊クックルン』の魔法少女マジカル☆クリーミーだ!!」と確信してたんですよ。
 実際それじゃないかと指摘するコメントもあったようなのですが、真相は Eテレではなく BSプレミアムで放送されていた子ども向けバラエティ番組『ワラッチャオ!』(2013~17年放送)内のアニメ『黒魔法少女ワリー』だったとのことでした。
 それはそれとしても、この謎に関しては他にも『シャキーン!』(2008~22年放送)内のアニメコーナー『ノロイちゃん』や、『天才ビットくん』内のアニメ『魔法少女隊アルス』(2004~05年放送)ではないかというコメントも乱立していたようで、それにマジカル☆クリーミーまで参戦するとなると、Eテレはどんだけ怖い顔の魔法少女を増産しているのだと天を仰いでしまいます。あんたが率先してトラウマメイカーになってどうすんの!?
 私が推していたマジカル☆クリーミーは、キッチン戦隊クックルンに襲いくる怪人の中でもかなりの異彩を放つキャラクターで、2代目、3代目、4代目と2年単位で交代していたクックルンにたびたび挑戦する人気を誇っていました。魔法を詠唱する時というよりは、魔法と称して全て怪力でなんとかしようとするマジカル☆クリーミーが、ふだんはアニメチックな美少女なのに急に鬼の形相と化してクリームをひり出しているさまを見てオンエア当初は私も爆笑したものだったのですが、2016~21年に散発的に都合4度登場していたものの、その声を熱演されていた声優の新田早規さんが2022年に惜しくも急逝されてしまったこともあり、現在はアーカイブ放送を視聴することもできない幻の魔法少女となっているのが非常に残念ですね。
 ま、確かにマジカル☆クリーミーが出てる時は絶対に相手のクックルンもいたはずなので、それを見といて「何のアニメだかわかんない」と質問者の方が思うわけがないよね……なんとか、マジカル☆クリーミーの勇姿をちょびっとだけでも未来に残す手立てはありませんかねぇ、NHKさん!?

〇テレビ放映された黒澤明監督の白黒映画で突然流れた「しばらくお待ちください」画像(2022年6月)
 これは真相、わかります! 私も当時オンエアを見ていてビックリしたんだもの。
 質問者の方は「25年ほど前、黒澤明が亡くなった時の追悼番組として地上波テレビで放映されていた白黒映画」と記憶しておられるようですが、その放送中に急に目のようなマークの画像が数秒映り込んでから「しばらくお待ちください」テロップに切り替わり、その後また映像本編が再開されたという不思議な出来事の真相を知りたい、とのことでした。
 これ、情報提供を求める動画が投稿された当時からコメント欄で様々な説が提供されており、その結果として後に出た真相編において、目のように見えたものは日本テレビのネットマークで、同局の『金曜ロードショー』で流れた『用心棒』の放送中に起きたトラブルの可能性が高いものの、その放送日は1997年12月26日ということで、翌98年9月に亡くなられた黒澤明監督の追悼番組であるはずもなく釈然としない部分がありながらも解決という流れとなっていました。他に、黒澤明監督の『八月の狂詩曲』の中の巨大な目のイメージ映像のことではないかという説もありましたね。
 このお話はですね、やっぱり金曜ロードショーの『用心棒』のクライマックス部分で起きた放送中断のトラブルで間違いないと思います。
 じゃ、当時存命のはずの黒澤明監督の追悼番組という矛盾はなぜなんだと申しますと、この放送は確か、そのたった2日前の1997年12月24日に亡くなられた、主演の三船敏郎さんの追悼番組だったんですね! だから『用心棒』だったんですよ。黒澤監督の前年に奇しくも三船さんが旅立っておられていたのでした。なんという奇縁!
 それで、問題の放送中断のトラブルについてなのですが、当時視聴していた高校生のそうだい少年は、以前にレンタルビデオで『用心棒』を何度も観ていたので、推測ながらも容易にその理由を思い当たることができました。
「あぁ、これ、狂った名主の多左衛門を演じる藤原鎌足さんのき〇がい演技が迫真すぎるので、その彼が殺人を犯す描写を放送できないと慌てたテレビ局が土壇場でストップをかけたのだろうな」と!!
 たぶん、九分九厘、放送中断の理由はこれなんじゃなかろうか。だって、放送が再開されても、中断したシーンは途切れた部分からは再開されなかったでしょ? きれいに鎌足さんが演じる多左衛門の凶行はカットされちゃってたもんね。狂った彼がお題目の太鼓を叩いてたっていうのも、一部の方々にはそうとう癇に障ったのかも!?

 真相はこうなのだー!と、声を大にして叫ばせていただきたい。叫ばせてくださいお願いします!! 私にも探偵の真似事させてくれたっていいじゃねぇかケチー!!
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よみがえれ平成うさんくさいロマン!! 飛鳥昭雄の UMA大百科

2024年07月02日 22時01分10秒 | 愛すべきおっさんがた
参考資料;飛鳥昭雄『超保存版 UMA完全ファイル』(2012年6月刊 ヒカルランド)

565年~2000年代 伝説の水馬ネッシー(イギリス・スコットランド北部ネス湖)
 体長15m。巨大無脊椎軟体動物タリモンストゥルム説あり
1997年 第2ネッシー(イギリス・スコットランド北部ネス湖)
 体長3m。古代硬骨魚の生き残りか

1609年~2000年代 伝説の怪物チャンプ(アメリカ東海岸北部シャンプレーン湖)
 体長20m。スコットランドのネッシーと同種の巨大無脊椎軟体動物タリモンストゥルム説あり

1735年~2000年代 悪魔ジャージーデビル(アメリカ・ニュージャージー州)
 体長1.8m。翼竜アンハングエラ説あり

1776年~2000年代 虹の怪物モケーレ・ムベンベ(アフリカ・コンゴ共和国テレ湖)
 体長10m。絶滅した巨大哺乳類の生き残り説

1800~2000年代 巨大腸蟲モンゴリアン・デスワーム(モンゴル北部の砂漠地帯)
 体長6m、揮発性の猛毒液、放電攻撃。未発見の新種生物か

1840~2000年代 超巨大ミミズ・ミニョコン(南米奥地ネグロ川流域)
 体長50m。火星の超巨大チューブ型生物「サンドワーム」と同種の新種生物か

1850~2000年代 巨大鳥サンダーバード(アメリカ西部)
 体長5m、プラズマによる火球攻撃。翼竜プテラノドン説、絶滅した巨大鳥説あり

1852~1983年 伝説の水馬モラーグ(イギリス・スコットランド北部モラー湖)
 体長10m。同地方のネッシーと同じく巨大無脊椎軟体動物タリモンストゥルム説あり

1856年 氷漬け翼竜ディモルフォドン(フランス北東部サンディジェ地下トンネル)
 体長50cm。2055年までフランス政府が遺骸を封印保管

1872年~2000年代 巨大水棲怪物オゴポゴ(カナダ・ブリティッシュコロンビア州オカナガン湖)
 体長10m。古代水棲哺乳類バシロサウルス説、古代水棲爬虫類モササウルス説あり

1897年~2000年代 伝説の怪物ナウエリート(南米アルゼンチン南部リオネグロ州ナウエルウピア湖)
 体長20m。首長竜プレシオサウルス説、巨大オオウナギ説、古代水棲哺乳類バシロサウルス説あり

20世紀初頭~1998年 伝説の怪物サーポパード(アフリカ・ケニア)
 体長5m。竜脚類ティタノサウルス説あり

1919年~1940年代 大型恐竜エメラ・ントゥカ(アフリカ・コンゴ共和国リクアラ湿地帯)
 体長8m。一角恐竜モノクロニウス説あり

1923~98年 怪鳥コンガマトー(アフリカ南部ザンベジ川流域)
 翼長4m。翼竜プテロダクティルス説あり

1936年~2000年代 伝説の怪物マニポゴ(カナダ・マニトバ州マニトバ湖)
 体長10m。オオウナギ説、巨大ヘビ説、巨大水棲哺乳類説あり

1942~96年 巨大水棲生物イッシー(鹿児島県薩摩半島南東部・池田湖)
 体長20m。巨大オオウナギ説、超巨大ヒル説あり

1953~64年 巨大怪物シベリア・ドラゴン(シベリア・サハ共和国ハイール湖、ボロータ湖、レナ川流域)
 体長30m。魚竜イクチオサウルス説、未発見の巨大水棲哺乳類説あり

1953年~2000年代 水棲妖怪・河童(日本列島全国)
 体高70cm。中国の河伯や北海道のコロボックル、沖縄のキジムナーや中米のチュパカブラと同種の、未発見のヒト型両生類動物か

1957年~2000年代 宇宙生物クリッター(成層圏以上の宇宙空間)
 全長100m。プラズマ生命体説あり

1960~2000年代 伝説の怪物テンシー(中国・北朝鮮国境長白山カルデラ湖天池)
 体長8m。火口のマグマ活動による水柱説、未発見の巨大水棲哺乳類説、古代水棲哺乳類バシロサウルス説、首長竜プレシオサウルス説あり

1966年11月~67年12月 蛾人間モスマン(アメリカ・ウエストヴァージニア州オハイオ渓谷ポイントプレザント)
 体長2m、最高時速400km で空を飛ぶ。エイリアンアニマル説、翼竜説あり

1969年 巨大水棲怪物シーサーペント(アメリカ・カリフォルニア州サンクレメンテ島沖)
 体長8m。手足の退化した未発見の巨大水棲哺乳類

1970年 伝説の怪物メコン・ナーガ(東南アジア・メコン川流域)
 体長10m。リュウグウノツカイ説、巨大オオウナギ説、古代水棲哺乳類バシロサウルス説あり

1972年~2000年代 巨大怪物クッシー(北海道北東部・屈斜路湖)
 体長20m。スコットランドのネッシーと同種の巨大無脊椎軟体動物タリモンストゥルム説あり

1972年~2000年代 伝説の怪物ミゴー(南西太平洋パプアニューギニア・ニューブリテン島ダカタウア湖)
 体長10m。未発見の巨大水棲哺乳類説あり

1974年 幻の怪蛇ツチノコ(日本列島本州)
 当時輸入されたアオジタトカゲ説、ヘビの変種説、手脚の無い新種のトカゲ説あり

1976~85年 宇宙生物スペースキャタピラー(東京上空や成層圏)
 全長100m。妖怪のびあがりやスカイフィッシュと同種のプラズマ生命体か

1977年 謎の腐乱死体ニューネッシー(ニュージーランド・クライストチャーチ沖50km海中
 体長10m、重量1.8トン。ウバザメ説、首長竜に近い特徴を持つ新種の哺乳類説あり

1977年 中国の水棲妖怪・河伯(中国・青海省の黄河源流域)
 体高1m、プラズマによる狐火現象。沖縄の妖怪キジムナーと同種の、未発見のヒト型両生類動物か

1980年代 伝説の怪物キルギスドン(中央アジア・キルギス共和国イシククル湖)
 体長10m。首長竜プレシオサウルス説、巨大水棲哺乳類説あり

1980年~2000年代 吸血怪物チュパカブラ・グレイタイプ(カリブ海プエルトリコ)
 体長90cm。未発見の新種動物説あり
1990年~2000年代 吸血怪物チュパカブラ・翼竜タイプ(カリブ海プエルトリコ)
 体長90cm。翼竜プテロダクティルス説あり

1985年~2000年代 巨大翼竜ローペン(南西太平洋ニューギニア島)
 翼長6m、プラズマによる火球攻撃。未発見の大型翼竜説、巨大コウモリ説あり

1990年 大型恐竜コッコーリ(中央アジア・カザフスタン共和国コッコーリ湖)
 体長20m。竜脚類サルタサウルス説あり

1990年~2000年代 宇宙クラゲ(空中から成層圏内)
 全長?~100m。クリッターと同種のプラズマ生命体か

1990年代~2000年代 謎の怪物ニンゲン(南氷洋などの世界の海)
 全長20m。未発見の海棲哺乳類説、海棲軟体動物説、日本の妖怪・海坊主と同種説あり

1993~98年 水棲怪物ホラディラ(南米アマゾン川流域)
 体長3m。ワニの変種説、魚竜の生き残り説あり

1994年~2000年代 空飛ぶ怪生物スカイフィッシュ(世界中の空中や海中)
 全長?~100m。エイリアンアニマル説、進化したアノマロカリス説、カメラのブレによる虫の錯覚説、プラズマ生命体クリッター説など

1996年 ジェリー生命体(地中海、カリブ海バハマ諸島沖)
 体長300m。未発見のクラゲ状生物か

1997年~2000年代 伝説の怪物ジャノ(西アジア・トルコ共和国東部ヴァン湖)
 体長15m。古代水棲哺乳類バシロサウルス説、首長竜マクロプラタ説あり

1998年~2000年代 フライングヒューマノイド(アメリカやメキシコ、日本など)
 体高不明。日本の妖怪・天狗や中米のチュパカブラと同種の、未発見のヒト型両生類動物か

1999年 フライング・ニンゲン(南極大陸)
 プラズマ効果を利用して飛行する。ニンゲンと同じく未発見の海棲哺乳類説、海棲軟体動物説、日本の妖怪・海坊主と同種説あり

2004年 有翼人オランバッチ(インドネシア・マルク諸島セラム島)
 翼竜ランフォリンクス説あり

2004年 カンガルー恐竜ゲクフ(南米チリ北部)
 体高2m

2007年 バイオクローン・ティラノサウルス(アメリカ軍極秘研究施設)
 グリズリーの卵子と母胎を利用して誕生させ育成・研究中

2007年 ヒト型海棲甲殻生物パタゴン(南米アルゼンチン南部ティエラデルフエゴ州フエゴ島)
 人間大。未発見の生物か

2008年 甲冑魚の死骸(マレーシア首都クアラルンプール近郊のジャングル)
 体長45cm。古代甲冑魚ボトリオレピスの生き残りか

2010年 三葉虫(ブラジル・アマゾナス州ネグロ川流域)
 体長50cm。古代水棲生物の生き残りか
コメント (2)
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