長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

ぎぼあいこんをそうてんしたらかてるとおもった。(小並感)  ~映画『貞子 vs 伽椰子』~

2016年06月25日 14時37分03秒 | ホラー映画関係
 どうもどうも、大変ご無沙汰しております、そうだいでございます。

 もう、いそがs……って言ってるのも飽きてきちゃいました。いちおう身体も元気そのものだし、休みの日にゃ蔵王温泉に通って硫黄くさいリフレッシュをしてきてるんですが、平日が始まるとまぁ~相も変わらず戦争の日々ですよね。来週こそは平和に過ぎゆきてほしいと、切に願います……

 あぁ、「総選挙」? そんなんもあったんでしたっけね……ついに記事にする気力もなくなってしまいました。そちらのグループどころか、宗旨のハロプロさんのこともすっかり疎くなってしまったし……
 これはあくまでも私だけの主観なんですが、指原さんが1位って聞かされると、妥当だとかおかしいとか感じる以前に、ものすごく興味と体温が下がる「脱力感」に襲われるんですよね。
 この例えで伝わるかどうか甚だ心もとないのですが、「お菓子の中でいちばんおいしいのはどれ?」という話題になってみんなで「たけのこの里!」とか「ポッキー!」とか盛り上がってたら、偉い人が「ちまき。」って言うみたいな残念感というか、「はい、その話題終了~」な終末観にさいなまれるものがあるというか。 

 指原さんが特別嫌いというわけでもないんですが、彼女が1位だっていうグループとか、それがいちばん金回りのいいトップ集団になってる業界とか……もうどうでもいいって感じになっちゃって。あんなに熱を上げて日本武道館に行ってた日々が懐かしいです……


 まぁ、そんな日々の合間をぬいまして、久しぶりに映画を観に行ってまいりました。

 映画のタイトルを見て、「おい、お前そんなに忙しい忙しいって言ってるのに、そんな中で選ぶのがそれなのかよ……」と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、それはあぁた、ジャンル差別ってものでござんすよ。
 これはもう、歴史に残るお祭りですからね、あるジャンルの。しかも主演する2大巨頭のメンツがメンツですからね! なつかしい……実はこのお2人、確か5年くらい前の我が『長岡京エイリアン』にもゲスト出演して対決していただいてたんでしたっけ。あの時はタイマンじゃなくて「4つ巴」だったんですけどね。



映画『貞子 vs 伽椰子』(2016年6月18日公開 99分 角川映画)

 『貞子 vs 伽椰子』(さだこバーサスかやこ)は、『リング』シリーズの「山村貞子」と『呪怨』シリーズの「佐伯伽椰子」というジャパニーズ・ホラーを代表する2大キャラクターが共演したクロスオーバー映画作品。

 『死霊のはらわた』(1985年)のようなアメリカのホラー映画を好み日本のホラー映画はあまり見ないという監督の白石は、歴代の『リング』シリーズと『呪怨』シリーズを「日本産のホラーとしてどのように作られているのか」という視点から見た上で、本作を制作するにあたり貞子と伽椰子の基本設定から余計な情報を省いて整合させたり、時代設定としてはすでに過去の物となった VHSビデオテープを「リサイクルショップに眠っている古いビデオデッキの中に入っていたもの」として復活させている。また、外見が似ている貞子と伽椰子のキャラクターとしての差別化を明確にしたほか、伽椰子には俊雄が付いているので、貞子1人を相手にしてバランスが崩れないように注意したという。
 本作の裏テーマとして「Jホラーをぶっ壊す」があり、娯楽映画を作りたいという白石は、日本のホラー映画の潮流を変えたいと思いながら制作した。ただし、白石がホラー映画ではなくなっていると語る過去の映画『フレディ VS ジェイソン』(2003年)については、反面教師にしたという。


あらすじ
 女子大生の有里の親友の夏美は、その映像を見ると貞子という幽霊から電話がかかってきて2日後に必ず死んでしまうという「呪いのビデオ」を見てしまう。
 一方、入ったら行方不明になるという「呪いの家」の向かいに引っ越してきた女子高生の鈴花はある夜、行方不明になった小学生をその家の中で目撃し、呪いの家に足を踏み入れて怨霊・伽椰子の標的となってしまう。
 有里と鈴花の2人をそれぞれの呪いから解き放つため、異端の霊能者・常盤は、貞子と伽椰子を激突させて消滅させるという驚くべき除霊計画を立てるが……


主なキャスティング
倉橋 有里  …… 山本 美月(24歳)
高木 鈴花  …… 玉城 ティナ(18歳)
上野 夏美  …… 佐津川 愛美(27歳)
森繁 新一  …… 甲本 雅裕(50歳)
高木 史子  …… 田中 美里(39歳)
常盤 経蔵  …… 安藤 政信(41歳)
珠緒     …… 菊地 麻衣(10歳)
法柳     …… 堂免 一るこ(58歳)
山村 貞子  …… 七海 エリー(29歳)
佐伯 伽椰子 …… 遠藤 留奈(34歳)
佐伯 俊雄  …… 芝本 麟太郎(12歳)


主なスタッフ
脚本・監督 …… 白石 晃士(43歳)
音楽    …… 遠藤 浩二(52歳)
撮影    …… 四宮 秀俊(38歳)
美術    …… 安宅 紀史(45歳)
特殊造形  …… 百武 朋(?歳)



 いやぁ、ついに公式に実現してしまいました、日本ホラー映画界の龍虎対決! ゴジラ対ガメラ! 座頭市と用心棒!! 私はキングギドラと九頭竜派です。

 さぁ、『リング』シリーズと『呪怨』シリーズの悪夢のコラボレーションというわけなのですが、これをコラボレーションじゃなくて「合体」って表現しちゃいけないのよね。なんでかっていうと……まぁ、そういうことなんですわ。

 私がこれらのシリーズを最後に観たのは、確か……『リング』シリーズがハリウッド版の『ザ・リング2』(2005年)以来で、『呪怨』シリーズはこれまたハリウッド版の『ザ・グラッジ3』(2009年)以来ですかね。
 つまり、その後の『貞子3D』2部作(2012~13年)とか『呪怨 白黒番外編』(2009年)とか『呪怨 ザ・ファイナル』2部作(2014~15年)はまるで観ていないという不勉強っぷりなわけですが……なんか、評判を見てみると「チェックしなくても、いっか。」っていう気になっちゃうんですよね。橋本愛さんの貞子さんは見てみたい気もするんですが、なんかちょっと違いますよね。健康的だし生命力ありそうだし。

 昔の我が『長岡京エイリアン』にもお出ましいただいた、「日本ホラー映画界のアイドル・ビッグ4」ともいうべき方々のうち、2010年代半ばの今でもなおその名を一般に轟かせているのは、確かに貞子さんと伽椰子さんということになるでしょうし、だとすれば、やはりこれは日本ホラー映画界全体から見ても文句のつけようのない「頂上対決」ということになるでしょう。

 ただ……う~ん……そりゃまぁ確かに他の川上富江さん(最後の作品は2011年)や黒井ミサさん(同じく最後の作品は2011年)に比べれば、まだまだ「生きている(死んでるけど)コンテンツ」なんでしょうけれども、どちらも本流の『3D』2部作と『ザ・ファイナル』2部作の評判が評判なだけに、「余裕のある出張アルバイト」のようには見えません。どう考えても「起死回生を賭けたガチンコ対決」ですよね。必死だなぁ!

 だいたい、白石監督が上記のように意気込んでわざわざ登板しなくても、「Jホラー」なんかとっくの昔にぶっ壊れてますよね。私はそれを『クソガキ団地』でしみじみ実感しました。それももう3年前の作品になりますか。いや、それもずいぶんと甘く見た解釈であって、「活きのいい日本製のホラー映画」が観られたのは、せいぜい貞子さんと伽椰子さんが海を渡った2000年代前半くらいまでだったのではないでしょうか。

 冗談じゃなく、今回の企画が映画として実現したのは、『3D』2部作と『ザ・ファイナル』2部作の内容とか興行成績じゃなくて、プロ野球の始球式でホラー女王のプライドをかなぐり捨ててまでして何度も力投した貞子さん(と子貞子さん)のおかげですよね。今回のプロモーションで初参加した佐伯母子もよかったけど。やっぱりね、プライド捨てなきゃチャンスは巡ってきやしませんよ。


 そんでまぁ、本題の『貞子 vs 伽椰子』の中身なのでありまするが。


おもしろかったが、おもしろくない!!


 ……と、またわけのわからぬことを言っております。
 いや、つまりこれはですね、「お話を見てものすごく脳みそを刺激されたのでおもしろかった」のではありますが、「展開や結末で個人的にはおもしろくない部分がけっこうあった」ということなのであります。え……いや、いいじゃないですか、私だってなけなしのサイフはたいてチケット代をちゃんと払って観たんですから、そのくらいのワガママ言ったっていいじゃねぇかよう!

 私自身、映画を観ながらカリカリ鉛筆でメモを取っていたわけでもないので、細かい部分はうろ覚えなわけですが、思い出せる限り物語の中で気になったポイントを挙げてみますと、

1、「貞子の呪い」が「7日後に死ぬ」から「2日後に死ぬ」に短縮されている。
2、「貞子の呪い」による死因に「原因不明の心臓発作」だけではなく、「自殺と取れなくもない突発的な事故死」も加わっている。
3、貞子の意思によって、「貞子の呪い」は呪いのビデオを見ていない人間(劇中の霊能者3名)にも直ちに及ぶようになっている。
4、呪いのビデオの映像内容が原作小説や過去のシリーズ作品とまるで違う。
5、伽椰子の呪いの家の外観や立地条件が過去のシリーズ作品とまるで違う。
6、俊雄の外見がちょっと成長している(小学校高学年くらい)。
7、「伽椰子の呪い」は過去のシリーズのように呪いの家の外では行使されず、家の中に入った時だけ適用される。
8、伽椰子の髪型がロングからセミロングくらいに短くなっている。


 こんなところが特徴的だったでしょうか。

 1、の過去シリーズとの差別化は……こりゃもう、原作小説の発表から実に四半世紀という歳月を経て、それだけ世間がせっかちになっちゃったってことなんでしょうかねぇ!? 猶予期間が3分の1以下に短縮されちゃったよ! 夏休みが1週間になっちゃうみたいなもんなんだぜ!? これはキビシイなぁ~。
 そりゃまぁ、アメリカさんのホラー映画が好きだっておっしゃる白石監督なんですからさもありなんなんですが……ふぜいがないよねぇ!
 風情がないといえば、5、のことなんですが、「伽椰子の花道」ともいうべき旧佐伯邸の階段が「曲がり角のあるタイプ」じゃなくて「2階から1階まで一直線のタイプ」になってるのも、いかにも無粋ですよねぇ! 最初っから顔を出すんじゃないよ! 半分まで声と音だけでもたせろ、もたせろ~。お母さん、もっと自分に自信を持って!

 3、もいかにもスピード重視な反則行為ですよねぇ。いや、それをやっちゃおしまいだろ……貞子さんのパワーが限定解除されてるじゃないの! それで7、じゃあなんだか伽椰子サイドが営業縮小みたいな感じにされてるんですから、先輩重視の接待ゴルフもいいとこだよ! それじゃあ貞子さんだって喜ばねぇよ。
 それに、言うまでもなく8、は貞子さんとのカブりに配慮した結果、ここは自分がと身を引いて久しぶりに魔界の美容院に行ってきちゃった、という伽椰子さんの実につつましい思いやりのあらわれですもんね。伽椰子さん、エラい! 髪の毛にからんだ武器はぜんぶ先輩に譲って封印ですよ。これは勝負として不公平すぎるわ!


 ところで、この3、のヒドさが爆発する霊能者・法柳さんの除霊式での惨劇シーンに関しては、実はもっと重大な貞子さんの反則行為疑惑が隠されているような気がしてなりません。

 すなはち物語の流れを見ていきますと、法柳さんとそのお弟子さん2名は、除霊の儀式をもって夏美にかかった貞子の呪いを強制的に解除しようとしたがために貞子の怒りを買い、ビデオを見るまでもなく直接貞子に意思を乗っ取られ、物理的に肉体を損傷させられて死亡しています。
 ところが、まさしくそのどさくさに巻き込まれる形で、これ以前のシーンでどうやら「除霊以外の貞子の呪いの解き方」を解明していたらしい会心の笑みを浮かべていた森繁さんまでもが、強烈な「呪いのヘッドバット」を食らって強制退場させられていたのでした。

 いやいや、森繁さんは殺しちゃいけないでしょ!! 森繁さんはあさって死ぬんじゃないの!? それともあの乱闘の時、森繁さん自殺しようとしてたのか? それはないでしょうよ!
 つまり、この乱闘の時の森繁さんの哀れすぎる死は、この作品に登場する貞子さんが、「ビデオを見た人を呪う」という特徴も「呪っても一定の猶予期間を与える」という特徴も、どっちも自分の都合によって軽く踏みつぶしてしまうアンフェアきわまりない「ニセ貞子」であることを雄弁に物語っているのです! こいつ、にせもんだ!!

 森繁さん、あなたの死は無駄ではなかった……そして、そんな卑怯な手を使ってまでニセ貞子があなたを殺したということは、あなたが見つけた「呪いを解く方法」は、霊能者の除霊以上に効果のあるものだったのだ! でも、やっと見つけたと思った永遠の恋人・貞子がニセモノだったとは……悲しき片想いよのう!! ビデオを見た後に鳴る電話の前に立つ演技、完全に青春男子だったもんなぁ。50歳になってもニキビと詰め襟ガクランの似合いそうな名優・甲本雅裕の真骨頂ですね。

 にせもんだ、にせもん! そういえば4、の通り、呪いのビデオもまるで別もんだし。貞子が映ってるんだったら、あれを撮影してるのは誰なんだって話ですよ。扉があいてるのにドンガドンガ爆音がするのも変な感じですし。いや、そういう矛盾を狙ったと言われればそこまでなわけですが、今までの作品にあった「呪いのビデオから謎解きができる」ミステリーな要素がきれいさっぱりありませんもんね。やっぱりここでも、遊びの余裕がないんだよなぁ。
 今回の作品に出てくる「呪いのビデオ」の、「矛盾してる部分がむき出しになったまま」からくる生理的な恐怖って、『リング』シリーズじゃなくて完全に後発の『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズでやたらと強調された恐怖演出ですよね。粗い映像の中で暴力的な雑音がして奥の扉がゆっくり開く……って、それ、もう見たことあるから!

 わかったぞ、この作品に出てきた貞子さんは伊豆出身の「山村貞子」じゃなかったんだ! 本物の貞子さんにあこがれてマネをしてみた、レンタルショップあがりの「安あがりなニセ貞子」だったんだ! アレだアレ、アメリカの超有名なホラー映画シリーズの何作か目とおんなじパターンですよ! いや、タイトル言おうと思えば言えるんですけどそこはぼやかしときますよ!!
 あっ、そういえば、今回の貞子さんは両手のツメはがれてなかったよ! 心憎い演出だなぁ、白石監督も。それならそうと、終盤で清水アキラさんの後ろからニコニコ顔で出てくる谷村新司さんみたいに「ご本人登場」やればよかったのにさぁ!!

 ニセモノというのならば、一方の伽椰子さんサイドも5、の点がかなり気になりますよね。まさか、伽椰子さんのほうも……?
 だいたい、なんでも噂によれば伽椰子さんの前作にあたる『呪怨 ザ・ファイナル』で、問題の旧佐伯邸は取り壊されて更地になっちゃったらしいっていう重大きわまりない情報も得ております。それ、根本的な問題すぎやしないか!? 「パラレルワールド」って、使い勝手が良すぎる言葉ですよね。

 そういえば素朴に思ったんですけど、今回、佐伯母子の毒牙にかかって行方不明扱いになっちゃった小学生4人って、旧佐伯邸に行ったって確証のないままかなりの短時間のうちに襲われましたよね。つまりこれって、「呪いの家に行ったから殺された」って認識されない原因不明の失踪になりやしないか。実際に近所の鈴花の両親はそう解釈していましたよね。
 呪いの家の PRにまったくならない殺人って、佐伯母子ってこれまで、やってたっけ……? ちょっとした疑問にとどまるので、これをもって今回の脚本がおかしいとまでは言いませんが、振り返れば、過去の『呪怨』シリーズでの無数の被害者たちって、同じ原因不明の失踪にしても、どこかに呪いの家との関連をにおわせる「糸口」を残していて、それが次の被害者を生んでるんですよね。やっぱり、歴史に残る傑作は脚本の力が大きいんだなぁ。無駄死にのようで無駄死にではないという。そう見ると……鈴花を呪いの家に呼び出す役割のいじめられっ子はいいとして、いじめっ子のズッコケ3人組は正真正銘の「上映時間かせぎでしかない無駄死に」ですよね。ズコー!!


 結局のところ、私が不思議でしょうがないのは、白石監督がいったい『フレディ VS ジェイソン』のどこを反面教師にしたのかってことなんですね。かろうじて中盤までは『リング』『呪怨』両シリーズの作風を継承しながら徐々に雰囲気を盛り上げていく演出が良かったにしても、あのバイオレンスきわまりない除霊シーンあたりからアクション一辺倒な感じになりますよね? それ……おんなじじゃない?

 それに、世の中のホラーファンの方々の多くは、作品の中に「ラヴクラフトっぽいなんか」がにおわされると喜ばれるかもしれないんですが、私はそれ、あんまり好きじゃないんですよ。それって安易すぎる味付けというか……外国の作家さんの世界観に、なんでこっちから頭下げてコビ売らなきゃなんないの?みたいな。
 それ、クライマックスで出てきたクリーチャーがタコっぽかったってだけでしょ? 映画『リング』みたいな「解釈によっては、そうかな。」みたいな奥ゆかしさがないんですよね。物語全体にしみわたってる「夜の海の不気味さ」とかがあったらいいんだけど、最後にタコやらダンウィッチ系のやつ出してみました、だけじゃぁさぁ。ここらへんも、実に本物の山村貞子らしくないんだよなぁ。海のにおいが全然しない貞子さんなんですよ。


 あと、今回いちばん強く思ったのは、この作品、全編にわたってエンタテイメントらしい

「愛さえあれば、オールオッケー♡ 」

 が全くないんですよね! 登場人物が全員そろってカッサカサの東京砂漠!! いや、もしかしたら、あの経蔵&珠緒ペアには明らかに本編中の残酷描写以上に映像化できなさそうなデンジャラスな関係があるのかもしれませんが、みーんなドライな「生きるか死ぬか!?」のつながりしかないんですよね。夏美じゃない誰かとLINE のやりとりをする有里ってくらいしか、人間関係の余裕が感じられないのよ! もう、ぎっすぎす。

 原作小説の『リング』シリーズだってそうだし、昔だったらたとえば『帝都物語』みたいに、関東最大の御霊・平将門公だろうが魔人・加藤保憲だろうが「観音力」という名の大きな愛で包み込んでクリーニングしましょう! というビックリするような超絶論理に押し切られて、「恐怖と憎しみの物語」は映画らしい大団円をむかえていたじゃないですか。正義のヒーローのわけのわかんない必殺技とおんなじで、そういう「デウス・エクス・マキナ」って、なんだかんだ言っても必要なんだと思うんですよ。

 それがどうよ、「バケモノにはバケモノをぶつけるんだよ!」ってだけで、ギャラリーのみなさんは高みの見物ですか? 東京もんは薄情だねぇ! もっと、みんなでグッチャグチャにぶつかりあって語りあいましょうよ。いや、結局は映画の皆さんもそうなっちゃったけどさ。

 そんな、身を切らずに除霊なんてできるわけがないんですよ……経蔵&珠緒ペアはブラックジャックだなんて白石監督は語ってらっしゃるそうですけど、経蔵にはブラックジャックの苦悩がないような気がします。クールなスタイルだけでしょ、あんなの! 印の切り方も実にテキトーだし。

 だから、私はこのブログのタイトルを、声を大にして叫びたいんですよね。宜保さんですよ、宜保愛子さんの「愛」があれば、貞子さんも伽椰子さんも宜保さんの顔を立てて「今日はこのくらいにしといたるわ……」って自重してくれたはずなんだ! 映画『妖怪大戦争』(2005年のほう)の水木センセイくらいの絶大的な効果はあったはず!! けんかはよせ、腹がへるぞ!!


 まぁ……そんな感じでいろいろナンクセ言わせていただきましたけど、でもホントにこの作品は実現して良かったと思いますし(ちょっと旬は過ぎてたにしても)、やっぱりこういう「ある人の作り方」があるからこそ、自分が『リング』やら『呪怨』の「どこが好きだったのか」っていうことを対比して考えることができるんですよね。映画館に観に行って、実によかった! 久しぶりにあのころ夢中になった「彼女たち」の魅力を思い出すきっかけになりました。

 ただ……この作品、ホラー映画の業界の方以外に、ソフト化したものをもう一度見たいっていう人って、果たしているんだろうか。
 一回見たらもういいんだよなぁ……ホラー映画って、いつの間にこんなに遊園地のアトラクション傾向が強くなっちゃったんだろうか。白石監督の作風なだけなのかもしれませんが、何度見ても新しい発見があるようには、とても思えない……


 「するめ」が食べたいねぇ、あたしゃ! 「うまい棒」は、そんなにいらない! 駄菓子じゃないホラー映画、カムバ~ック。
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これから読もうと思ってんだけどさぁ12  ~前勉強をつらつら~

2016年06月17日 23時11分12秒 | すきな小説
『終わりのクロニクル 第2巻(上・下)』(2003年10・11月刊)

 『終わりのクロニクル(おわりのクロニクル)』は、川上稔のライトノベル。イラストはさとやす。電撃文庫(メディアワークス)より2003年6月~2005年12月に刊行された。単行本全14巻。
 川上稔による架空の世界観「都市世界」における「AHEAD」時代を取り扱った作品。総じてページ数が多く、最終巻は1000ページを超えて当時の電撃文庫における最厚記録を樹立した。


あらすじ
 マイナス概念による世界の崩壊を防ぐため、全竜交渉部隊「チームレヴァイアサン」の長となった佐山御言が次に相対することになったのは、「2nd-G」と呼ばれる、日本神話の炎竜「八叉(やまた)」を概念核に持つ世界だった。
 2nd-G は、60年前の概念戦争ですでに滅び、現在は Low-G、しかも佐山と同じ UCATに帰属しており、交渉は簡単に成立するかに思われた。しかし、過去の遺恨を残した彼らとの交渉は難航し、新たな戦闘へと発展していく。
 選ばなければならない未来への2つの道。果たして、2nd-G の人々が、そして佐山が、新庄が選んだ答えとは……


2nd-G
主要概念 …… 名前の意味が力を持つ概念
対応神話 …… 日本神話(『古事記』・『日本書紀』)
対応地域 …… 日本 / 伊豆七島

2nd-G の世界観
 何もない空間に地中・地表・空のみで構成される一種の筒状構造であり、天体に関しては明確にされていない。2nd-G の人類は概念核を自然制御装置として地中に置き、2nd-Gを巨大なバイオスフィア(密閉型の人工生態系)として改造した。人種は Low-Gの日本人とほぼ同様である。概念柄、世襲制が中心となり、皇族を中心にして統治されていた。名が一生ついて回る以上、多少の変更は効くものの姓名の意味と能力は一生付き合わなければならない。

2nd-G の概念戦争
 戦争に向けた準備は行われたが、炎竜八叉となった概念核の暴走で危機に瀕したため、最も早く Low-Gに恭順した。助力を求められた大城・宏昌の対処も間に合わず2nd-G は焼き尽くされ、Low-G に亡命した2nd-G人類を追って八叉も2nd-G を去ったために2nd-G は滅びた。その後、宏昌は2nd-G の技術者たちと協同して超巨大人型機械「荒王」と概念核兵器「十拳」を開発。荒王の溶解と自らの死を代償にして十拳に八叉を封印した。


作中の専門用語
十拳(とつか)
 通称「神剣」。2nd-G の概念核兵器。
 2nd-G と Low-Gが共同開発した長剣型の機殻剣(カウリングソード)で、2nd-G の全姓名(八百万種)を打ち込んだ鉄片を束ねて造られた。2nd-G の概念核である炎竜八叉を封印しており、概念戦争後は荒王の艦橋部分に放置されていた。

フツノ
 2nd-G 概念対応の Low-G製機殻剣。
 かつて鹿島・昭緒が技術の粋を賭けて製造したもので、「断ち切る音」を示す名前に由来し、あらゆる物質を切断する。試験運行で過剰な攻撃力を発揮し、鹿島・奈津(当時は高木姓)を巻き込む崩落事故を起こした。その後は壊れたまま封印されていたが、鹿島の手で修復され全竜交渉に用いられる。

火迦具土(ひのかぐつち)/ 武雷剣(たけみかづちのつるぎ)/ 阿武さん
 2nd-G 概念対応の Low-G製機殻剣。2nd-G 概念下ではそれぞれ炎・雷・水を放つ。

クサナギ
 鹿島・昭緒が造った2nd-G 概念対応の Low-G製機殻剣。熱田・雪人の後期専用武装。
 所有者が存在を明確にすることで、視界にある空間そのものを切断できる。強大な攻撃力を持ち、熱田も両手を用いなければ使用できない。当初は使用回数に制限のある試作品が登場したが、後に制限のない完成品ができた。

機殻弓(カウリングアロー)
 弓の形態をとる概念兵器の総称。これに分類されるのは月天弓のみである。

月天弓(げってんきゅう)
 2nd-G 皇族専用武装。月読・史弦が使う。
 2メートルを超える長大な弓。月読の姓により月光を光の矢に収束して射撃する。弦を引き続けることで溜め撃ちが可能。概念戦争で用いられる予定だったが、実際に使われることはなかった。先代所有者は月読・有人。

荒王(すさおう)
 2nd-G 概念対応の Low-G製超巨大人型機械。炎竜八又封印専用の兵器であり、行動力は著しく低い。飛場・美影を反射機構の中核として搭載していた。炎竜八又の封印時に艦橋部が焼滅している。

UCAT空白期
 日本UCAT内における、1985~95年の従業員に関する資料が大量消失している事実と該当時期のこと。空白期の後に幹部陣の大刷新が行われており、その時期が日本UCATの旧体制と現体制を分ける分岐点となっている。

関西大震災
 1995年12月25日に大阪で突如発生した大規模地震。その禍根は10年が経過した本作においても色濃く残っている。主要人物の親の多くは救助隊として現地に向かい、そこで死亡した。

五大頂(ごだいちょう)
 UCAT空白期に旧・日本UCAT に存在していた5名の総称。実際には最前線に立って戦い現場の指揮をとる臨時のチームであった。それぞれが機竜と正面から戦って打ち勝てる程の実力者だったが、関西大震災でディアナ=ゾーンブルクを除く全員が死亡した。該当メンバーは佐山・浅犠、飛場・竜一、ジェイムズ・=サンダーソン、アルベルト=ノースウィンド、ディアナ=ゾーンブルク。

八百万の神々
 2nd-G に存在していた姓の総称。多種多様な能力と役目を持っており、その全てを記録あるいは書き込んだ物は強い力を持てる。文字通り八百万種存在する。

軍神
 2nd-G において戦闘を司る姓の総称で、武器は戦いの道具であることから転じて剣工の力を持つ。鹿島はその最高位に位置する。いかなる刃にも傷付けられず、自在に使いこなすことができるが、剣で戦うという点に関しては剣神に劣る。

剣神
 剣を扱う能力を示す姓の総称で、熱田はその最高位に位置する。姓名が宿す力の度合いにもよるが、剣で戦うことに関しては軍神を上回る能力を持つ。剣でこそ最大の力を発揮するが、メスのような小型の刃物でもかなりの能力を発揮できる。

炎竜八叉
 2nd-G の概念核の化身。2nd-G の概念核が自身の抱える世界管理システムの過負荷によって暴走したことで変貌した姿。己の本来の名を失ってしまった八叉は怒り狂って2nd-G を焼き尽くし、Low-Gに出現した際に十拳に封印された。


主な登場キャラクター
佐山・御言
新庄・運
出雲・覚
風見・千里
大城・一夫
大城・至
Sf(エスエフ)
リール=大樹
シビュレ
ロベルト=ボルドマン
ジークフリート=ゾーンブルク
ハジ
戸田・命刻
田宮・詩乃
田宮・遼子
田宮・孝司

飛場・竜徹(ひば・りゅうてつ)
 飛場道場の道場主。かつて3rd-G を滅ぼした八大竜王。1919年生まれの86歳。
 赤い右目をした小柄な老人。佐山・御言や孫である飛場・竜司に飛場流格闘術を教えた。しかし竜徹本人は全竜交渉には一切参戦しない。

大城・宏昌(おおしろ・ひろまさ)
 1906~45年。かつて2nd-G を担当した八大竜王。炎竜八叉の封印時に死去している。
 大城・一夫の父で、優秀な技術者だった男。2nd-G の滅亡を太平洋戦争時の東京大空襲に重ね、後に Low-Gに出現するであろう八叉に対抗するべく、荒王や十拳を開発した。鹿島昭緒の祖父とは犬猿の仲として知られていた。東京大空襲の影響で視力を落としていた。

ディアナ=ゾーンブルク
 全竜交渉のドイツUCAT 監査。生存する唯一人の五大頂。「母猫」の異名を持つ。
 ジークフリート=ゾーンブルクの姪にあたる灰色の髪の女性。不老技術を受けているが延命処置はしていない。現存最高と謳われる女性術式使い(魔女)。ブレンヒルト=シルトとは仲が悪い。大城・至とは旧知の関係である。

ブレンヒルト=シルト
 ディアナ=ゾーンブルクと事あるごとに衝突する。

鹿島・昭緒(かしま・あきお)
 日本UCAT 開発部主任。タケミカヅチを意味する2nd-G 最高の軍神。
 過去に未完成の機殻剣フツノの試作実験で事故を起こし、鹿島・奈津(当時は高木姓)の心身に重傷を負わせた。以降は自分の力を厭い、概念兵器のアドバイザーや出力調整に徹する。責任をとるために事情を知らない奈津を娶った。極度の愛妻家で家族を撮影するのが趣味。

月読・史弦(つくよみ・しづる)
 日本UCAT 開発部部長。2nd-G 皇族。
 亡父である月読・有人の調査を条件に日本UCAT に所属したため、高齢だが UCAT空白期を知らない。ツクヨミの姓により月光を操り、月天弓と併用して戦う2nd-G の最大戦力。

熱田・雪人(あつた・ゆきひと)
 日本UCAT 開発部所属。スサノオを意味する2nd-G 最高の剣神。鹿島・昭緒の旧友。
 並外れた戦闘力を持つ機殻剣使いで、複数の相手に対しても「歩法」を発動できる。田宮・遼子の同窓で、彼女を慕うが一向に気付いてもらえない。荒い言動と奇特な歌のセンスから、UCATではある種の禁忌扱いをされている。

鹿島・奈津(かしま・なつ)
 鹿島・昭緒の妻で、鹿島・晴美の母。
 他ギアの存在すら知らない Low-Gの一般人。過去に昭緒の起こした事故に巻き込まれて左の薬指と小指を失い、重度の降雨恐怖症となっている。良妻賢母を絵に描いたような人物だが、昭緒に対して負目を感じている。父親は日本神話専攻の学者で絵本を出版している。

鹿島・昭緒の両親
 いずれも2nd-G人。刀工の道を捨て農業で生活している。鹿島・奈津を「なっちゃん」と呼び溺愛している。飛場・竜徹とは農業仲間。

鹿島・昭緒の祖父
 大城・宏昌とは犬猿の仲とされる。2nd-G の滅亡後もLow-G に馴染むことを嫌い、生涯名前に漢字を当てることはなかった。孫の昭緒が学生だった時代に死去している。

長田・竜美(ながた・たつみ)
 「軍」の主力。戸田・命刻に戦闘技術を教え、また迷いの多い彼女を諭す。ハジの養女たちの中で年長者的な性格だが、エロに対する免疫が低い。
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これから読もうと思ってんだけどさぁ11  ~前勉強をつらつら~

2016年06月06日 22時20分07秒 | すきな小説
『終わりのクロニクル 第1巻(上・下)』(2003年6・7月刊)

 『終わりのクロニクル(おわりのクロニクル)』は、川上稔のライトノベル。イラストはさとやす。電撃文庫(メディアワークス)より2003年6月~2005年12月に刊行された。単行本全14巻。
 川上稔による架空の世界観「都市世界」における「AHEAD」時代を取り扱った作品。総じてページ数が多く、最終巻は1000ページを超えて当時の電撃文庫における最厚記録を樹立した。


あらすじ
 第2次世界大戦(1939~45年)という歴史の裏側にもうひとつ、決して表に出ることのない戦争があった。平行して存在し干渉しあう性質を歯車に例えて「ギア(G)」と呼ばれる11の世界が生き残りをかけて戦ったその戦争は、全ての物事の究極の理由「概念」を奪い合い滅ぼすことから「概念戦争」と呼ばれた。そして概念戦争に勝利したこの世界「Low-G」に全てが隠蔽されてから60年後、ある問題が発生した。
 Low-Gのみが所持する「マイナス概念」の活性化。それにより、今や唯一のギアとなった Low-Gは再び滅びの道を歩み始めた。滅びを回避するためには、かつて滅ぼした10のギアの概念の力が必要だった。概念戦争を知り、10のギアを滅ぼした組織「UCAT」は、各異世界の生き残り勢力との交渉のための専門部隊である全竜交渉部隊「チームレヴァイアサン」を編成する。
 そこで、ひとりの少年が祖父からその代表たる役目と権利を譲られ、「自分が本気になるために」交渉役を引き受ける。自ら悪役を名乗る少年、その名を佐山・御言。全ての遺恨を収め世界を救うための交渉、全竜交渉(レヴァイアサンロード)が、彼の言葉「佐山の姓は悪役を任ずる」とともに始まる。


ギアと概念戦争
 ギア(G)とは、Low-Gと10の異世界の総称。10の異世界は独自の物理法則「概念」とそれに由来する文化・技術を持ち、一定周期で Low-Gに接近することで Low-Gの文化などに影響を与えた。 各ギアとの接点は地球上の特定の地域に多く、そのため各ギアは Low-Gの世界各地における神話の原型であるとされている。 また、地脈の流れから見た世界と日本列島が相似で互いに影響を与えうるとする説「神州世界対応論」により、日本に各ギアへの接点が作られることになる。
 後に Low-Gの西暦1999年12月25日に全ギアの周期が重なり、その時最も多くの概念を持つギア以外の全ギアが滅びることが判明する。それによって各ギアが概念核の略奪のために他ギアに侵攻する戦争、「概念戦争」が勃発した。


1st-G(ファースト・ギア)
主要概念 …… 文字が力を持つ概念
対応神話 …… ニーベルンゲンの災い(西暦5~6世紀に Low-Gに伝来?)
対応地域 …… ドイツ / 日本の近畿地方

 テーブル型の大地をドーム状の空が覆う内向型構造で、星はドーム内面に張り付き、太陽は地下道を通って周回する。昼夜は太陽の出没で区別し、月は存在しない。大気には1st-Gにとっての文字の役割を担う精霊が存在し、1st-G住人は説得によって自然を操作できた。生物は文字という力が進化と突然変異を繰り返した末に誕生した。そのため1st-G生物は体内に遺伝子として文字があり、多様な能力を持つ反面で1st-G外での生存能力を著しく欠く。
 文化はヴォータンという王国が周辺の集落や街を統治する体制をとっていた。土地は狭かったが文字と対話によって事象を操り、不便は少なかった。しかし文字を書くとそれが現実化してしまう危険があったために、筆記系の文化は王族や専門職にのみ与えられ発達しなかった。

1st-Gの概念戦争
 元来戦闘力が低い1st-Gは、種族の戦闘力強化や5th-Gの機竜を解析して自前の機竜を開発して抗った。しかし戦争中に王妃を失った1st-G王は世界の「門」を封鎖して概念戦争から離脱し、衝突時間ギリギリで生き残った他ギアに亡命する処置を定めた。しかし、第一王女グートルーネや王弟レギンの庇護を受けていたジークフリート=ゾーンブルクがグラムを強奪、ハーゲンを除く王族とファブニールを殺して概念核の半分を持ち去った。それによって衝突時間以前に1st-Gは滅びたとされている。


Low-G(ロウ・ギア)
主要概念 …… 矛盾許容概念
対応神話 …… 聖書
対応地域 …… 現在の世界全体

 本シリーズの舞台となる世界。マイナス概念を有するためにいかなる長所も持たない「最低の世界」。『聖書』の原型とされ、各ギアを神話や伝説として現在に伝えている。
 各ギアの負荷を抱え込んだ「吹き溜まり」で最弱と蔑まれたが、概念戦争に勝利して現存唯一のギアとなった。各ギアの亡命者が多数存在しているが、その全てが UCATに恭順しているわけではない。現在はマイナス概念の活性化による自滅の危機に瀕し、全竜交渉によるプラス概念の全解放で危機を脱しようとしている。

Low-Gの概念戦争
 元来、他ギアの概念すら知らなかった Low-Gは衣笠・天恭の「神州世界対応論」により地脈という形で他ギアと接触し、そして機竜と武神の残骸を見たことで概念戦争の存在に気付いた。大日本帝国の出雲社護国課は第2次世界大戦終結後に日本UCATとなり、8人の異G調査員が集めた技術、恭順した他ギアの勢力や亡命者らと協力して戦力を整え、調査員たちが概念核を奪うことによって全ての他ギアを滅ぼした。その戦争の影響によって日本では関西大震災が発生した。


作中の専門用語
概念
 あらゆる事象の原因にある「それはそういうものだから」と言わざるを得ない、物理法則のようなもの。

自弦振動
 概念の力を示す可変一定周期の震動波。大きく分けて「母体自弦振動」と「子体自弦振動」の2つが存在し、あらゆる存在はこの2種を有している。

母体自弦振動
 保有している存在がどのギアに所属しているのかを示す自弦振動。人名における「姓」のようなもの。

子体自弦振動
 保有している存在の個性を示す自弦振動。人名における「名」のようなもの。

存在率 / 崩壊率
 自弦振動は物体の存在を支えるものであり、一定量以上破壊されると物体は存在できなくなりなんらかの形で崩壊する。その破壊の程度を表した用語が存在率と崩壊率であり、5割以上の存在率が失われると崩壊が起きる。
 概念空間は周囲の物体の存在率の一部を取り込んでいるため、概念空間内の物体が破壊されると物体の存在率が欠けていき、何度も繰り返すと本体も崩壊してしまう。このルールはギア自体にも適用され、半分以上の概念核が奪取・破壊されるとそのギアは崩壊することとなる。

概念核(がいねんかく)
 大規模な概念の塊。基本的にギアを形成する概念の半分以上を占める塊であるため、ギアそのものともいえる重要な存在。Low-Gで用いられる概念は、基本的に他の各ギアの概念核から抽出された劣化複製である。概念戦争を経て、各ギアの概念核は竜または武器(概念核兵器)に封じられている。

マイナス概念
 Low-Gの中核を成す概念。プラス概念の負荷として発生し、一切の特性を持たず万物を害する力である。Low-Gには他ギアのマイナス概念も落とし込まれており、概念核の対となるように10個存在している。2005年12月25日に活性化し、Low-Gを内側から滅ぼすことが予測されている。

概念空間(がいねんくうかん)
 概念を空間に付加して生まれる擬似的な異世界。空間の母体自弦振動の一部を書き換えることで、存在の一部を異世界側へと分化させて作成される空間であり、残りの母体自弦振動によって現実ともつながっているため、作成するのも戻すのも比較的簡単である。
 物体も存在の一部だけを送り込むことはできるが、その際に劣化してしまうため動くたびに徐々に崩壊していってしまう。そのため人間など中で活動する物体は自弦振動を100% 送りこまねばならない。

概念条文(がいねんじょうぶん)
 概念空間に入った生物の脳裏に聞こえる概念の効果内容。声は聞き手本人と同じ声として聞こえる。聞こえるものは概念空間内で特に強い概念のものであり、条文として聞こえないだけで実際は他にも微細な概念が大量に存在している。

概念兵器
 概念を内蔵する武器の総称。主に「機殻(カウル)」の名を冠するタイプとそうでないタイプがあり、概念核を収めたものは「概念核兵器」と称される場合が多い。「概念を内封した戦闘用機械」と定義すれば、機竜・武神・戦闘用自動人形も概念兵器に含まれる。

機殻武器
 戦闘目的で運用するために武器の形状を取るタイプ。機殻は内蔵した概念に対する耐久力であると同時に、機能の方向性を定めるために付けられている。作中では「機殻剣(カウリングソード)」、「機殻杖(カウリングストック)」、「機殻槍(カウリングランス)」、「機殻鉄鎚(カウリングハンマー)」、「機殻弓(カウリングアロー)」、「機殻銃(読み不明)」の6種類の機殻武器が登場する。

機殻剣(カウリングソード)
 剣の形態をとる概念兵器の総称。登場する中では最も該当する概念兵器が多い。

V-Sw(ヴィズィ)
 自意識を持つ6th-Gの概念核兵器で、出雲・覚の専用武装。
 6th-Gを維持するために造られた6th-G製機殻剣「ヴァジュラ」に、6th-G概念核「ヴリトラ」を納めたもので、普段は身の丈程もある白い大剣の形態をとる。性格はマイペースでのんびり屋。

聖剣グラム
 1st-Gの概念核兵器。
 長大な剣であり、また自意識を持つ。概念戦争時代にファブニールの原動力に使われていた概念核の半分を収め、全竜交渉ではファブニール改から残り半分を回収した。性格は人格者。

機殻槍(カウリングランス)
 槍の形態をとる概念兵器の総称。登場する物は少ないがいずれも強大な性能を秘めている。

G-Sp2(ガスプツー)
 通称「神槍」。自意識を持つ10th-G概念核兵器。風見・千里の専用武装。
 普段は身の丈程もある長大な白い槍の形態をとる。性格は従順なペット気質。元々は10th-Gの内乱鎮圧用機殻鉄槌「雷神鉄槌」が、10th-G概念核の保存器兼武器として機殻槍「G-Sp(ガスプ)」に改造さたものだったが、全竜交渉で千里に合わせて改修を受けてG-Sp2となった。

機殻杖(カウリングストック)
 杖の形態をした概念兵器の総称。その機能は杖というよりも火器のバズーカ砲に近い。

Ex-St(エグジスト)
 Low-G製概念兵器。新庄・運の専用武装。
 砲塔の交換によって砲撃の種類を変更し、あらゆる概念下での運用が可能。運の要望により、出力は所有者の意思で調整される。トリガーがボタン型であるため、使い方次第で高速連射が可能であり、ある程度の追尾機能や余剰出力による溜め打ち機能も持つ。

機殻銃
 銃の形態をとる概念兵器の総称。特筆するべき高性能の物はないが、平均的な武装として広く使われている。1st-Gの王城派も武装しており、その機構は1st-G概念に基づいたもので、装填した書物に込められた熱意を弾丸として放つ。

ゲオルギウス
 詳細不明のグローブ型概念兵器。佐山家・新庄家の専用武装。
 プラスのメダルを嵌める左手用と、マイナスのメダルを嵌める右手用の一対で、メダルは脱着が可能。右手用が紛失し、全竜交渉で大城・至からもうひとつを探すように佐山・御言へ左手用のみが託された。概念の増幅や効果を逆転させる機能を持つ。

X-Wi(エクシヴィ)
 2nd-G概念対応の飛行用概念兵器。風見・千里が使用。バックパック型。光に力を与える概念を内蔵し、自力で概念空間を展開出来る稀少な機体。

鎮魂の曲刃(レークイヴェム・ゼンゼ)
 1st-G冥府管理長の専用概念兵器。大鎌型。冥府と現世の境を切り開いて死者と対話する機能を持ち、時には戦闘力として召喚することもできる。元々はハーゲンが持っていたが、ハーゲンがファブニール改と合一したためブレンヒルト=シルトに預けられた。

賢石
 概念を封印した結晶体の総称。所有者の母体自弦振動を変えることなく、概念空間を作らずとも概念を使用することができる。概念兵器の燃料にも用いられる。

機竜
 概念戦争時代、単体では最強の戦闘力を誇った竜型の機械。強大な戦闘能力を有しているが、合一搭乗すると搭乗者は二度と分離できない欠陥があり、Low-Gの機竜は通常の搭乗手段を採用している。1st-G、5th-G、Low-Gなどのギアで開発されているが、本家は5th-Gでありその他の機竜は5th-Gの技術の模倣か複製である。

ファブニール / ファブニール改
 5th-G機竜の残骸を研究して開発された1st-G製の機竜で、それぞれ出力炉に1st-G概念核の半分を搭載する。陸上戦闘用であり、射撃や高速機動ではなく格闘による戦闘を行う。ファブニールは出力炉が1基しかなく、概念戦争時に出力炉を破壊されて機動停止した。ファブニール改は複製概念を積んだ2つ目の出力炉を搭載し、どちらかが壊れだけでは停止しない構造になっている。


 自分の母体自弦振動を変化させ、異なる母体自弦振動のギアにも移動できるようにする機能を有した空間の穴で、異なるギアや概念空間への入り口。概念戦争の時代は巨大な装置が必要であったが、現代では人間ほどの大きさなら腕時計型の小型装置で開けるようになっている。

概念符
 身体強化系の概念が封じられた符で、札型の賢石ともいうべき物。1st-Gの文字に寄る能力付加などで造られている。

全竜交渉(レヴァイアサン・ロード)
 来たる2005年12月25日のマイナス概念活性化に向け、異ギアの生き残り勢力から概念核の使用権を得るために行われる交渉。佐山・薫によって提案され、その交渉役には彼の孫である佐山・御言が推薦されている。

全竜交渉部隊(チーム・レヴァイアサン)
 全竜交渉を遂行するために設立された特設部隊。選りすぐりの優秀な課員のみが所属される。監督には大城・至、交渉役は佐山・御言が務める。

UCAT(ユーシーエーティー)
 正式名称は「Universal Counter Attack Team」。世界各地に出現する未確認生物(実際は他ギアの生物である)に対応するために設立された世界規模の機密組織。表面上は別の組織を名乗っており、日本では総合企業「IAI」がそれに該当するが、それ以外では各国軍の名を使っている。自国に対応するギアがある UCATは発言力が強いらしく、中でもドイツUCAT、アメリカUCAT、中国UCAT、日本UCATの発言力が特に強い。

日本UCAT
 かつての出雲社護国課を前身とする、概念戦争を終結に導いた UCAT。装甲服のカラーリングは白と黒。日本各地に基地が確認されている。所属する者たちは方向性こそ違うものの、全てハイレベルな変態である。日本は神州世界対応論によって最も他ギアの概念に触れたため、概念戦争に深く関わった。

ドイツUCAT
 1st-G概念を元にした「術式」の技術に優れた UCAT。魔女が多く所属しているため、装甲服は魔女の服を模している。自動人形の開発にも長けており、Sfを開発したのもドイツUCATである。概念戦争時代はジークフリート=ゾーンブルクが護国課顧問を勤めていた。

尊秋多学院(たかあきたがくいん)
 東京都秋川市(現在のあきる野市)にある私立高等学校。佐山・御言を始めとする全竜交渉部隊メンバーが通い、他にもブレンヒルト=シルトやジークフリート=ゾーンブルクなど日本UCAT関係者も多く所属している。過去には佐山の両親や新庄の母親も在籍していた。学生寮を備え、マラソン用トラックもあるなど設備が整っている。JR五日市線秋川駅に近い。

衣笠書庫(きぬがさしょこ)
 尊秋多学院内にある図書室。創立者は衣笠・天恭で、現在はジークフリート=ゾーンブルクが司書を勤めている。非常に大規模で、尊秋多学院2年次普通校舎1階の8教室分と更にその廊下、地階にも広がっている。

IAI(アイエーアイ)
 日本UCATが表向きに掲げている総合企業。出雲社の出雲航空技研が前身となっており、元々は航空技術を専門とする企業だった。だが神州世界対応論遂行のために設立された護国課が概念戦争に関わったために他Gの技術を触れ、密かにそれを解析して製品に用いて数々の成果を上げ、世界有数の大企業にのし上がった。
 手掛ける事業は幅広く、航空旅客事業から自動車・家電製品等の製造、清涼飲料水販売まで取り扱っている。現社長は出雲・烈。息子である覚が次期社長候補である。

護国課(ごこくか)
 第2次世界大戦直後、衣笠・天恭が提唱した神州世界対応論を遂行するために出雲社(後の IAI)に設立された部署。衣笠・天恭を中心にして佐山・薫、新庄・要、出雲・全、大城・宏昌、飛場・竜徹が所属し、ドイツから来たジークフリート=ゾーンブルクが顧問を勤めた。神州世界対応論によって世界中の地脈に干渉したことで概念に対する知識と技術を早い段階から取得していた。
 後に UCATに吸収されるという名目で協力し、日本UCATに発展したが、衣笠・天恭と新庄・要は日本UCATには所属しなかった。

神州世界対応論(しんしゅうせかいたいおうろん)
 衣笠・天恭が提唱した理論。その内容は「日本は世界の地形と対応する、世界全体の地脈の中心である。各国の地脈をそれと対応した日本の地脈と接続、そして日本側の地脈を活性化させれば接続先の国の地脈の活性化につながり、世界全体の情勢を左右出来る。」とするものである。実際にその接続が成功したために、日本は世界全体の情勢管理を担い、他ギアの災厄を一身に背負うことで第2次世界大戦後の占領を免れたとされている。
 日本列島を世界大陸に当てはめており、この論によると東北沿岸部は中国大陸からロシアの東側沿岸、東京湾は黄海、伊豆半島はタイ、静岡はインド、伊勢湾はペルシャ湾、紀伊半島はアラビア半島。琵琶湖はカスピ海、大阪湾は黒海、児島半島はギリシャ、呉周辺がイタリア、対馬はイギリス、島根半島はノルウェー、四国がオーストラリア大陸、九州はアフリカ大陸、佐渡が北極の島々となる。北海道については、渡島半島がアラスカ、中部が北米、根室・北方領土が南米となる。この理論における日本は伊豆七島に、富士山はエベレストに相当する。
 この理論は他ギアの Low-Gにおける勢力図にも関わっており、他ギアは神州世界対応論で自らの世界に対応した国か地域に門を開いて亡命し、居留地や UCATに従わない残党の拠点の位置もこれに寄る。

八大竜王(はちだいりゅうおう)
 概念戦争において10のギアを滅ぼした8名の総称で、護国課の中心人物5名と、後の日本UCAT発足時に他国の UCATから編入して来た3名のことを言う。元々は他ギアの調査員だったが、紆余曲折の果てに担当したギアの崩壊に携わることとなる。佐山・薫と出雲・全がそれぞれ2つのギアを担当したため、ギアの総数と同数ではない。

佐山・薫(護国課特殊技術部長、中尉 4th-Gと8th-Gを担当)1917年生まれ、本作開始前に死亡
出雲・全(護国課大代表、中尉 6th-Gと10th-Gを担当)1915年生まれ、本作開始前に死亡
大城・宏昌(護国課技術部長、中尉 2nd-Gを担当)1906年生まれ、概念戦争時代に死亡
飛場・竜徹(護国課警備部長、曹長 3rd-Gを担当)1919年生まれ、現在も生存
ジークフリート=ゾーンブルク(護国課顧問 1st-Gを担当)1915年生まれ、現在も生存
趙・晴(中国UCAT 7th-Gを担当)生存
リチャード=サンダーソン(アメリカUCAT 5th-Gを担当)未登場
アブラム=メサム(中東UCAT 9th-Gを担当)未登場

関西大震災(かんさいだいしんさい)
 1995年12月25日に大阪府で突如発生した大規模地震。その禍根は10年が経過した本作においても色濃く残っている。主要人物の親の多くは救助隊として向かい、そこで死亡した。

Tes.(テス / テスタメント)
 各国UCAT共通の言葉で、返事や同意の意味で用いられる。聖書における「契約」を意味する。

バベル
 近畿地方のどこかに聳えるとされる巨大な塔型施設。内部にはマイナス概念が収められており、関西大震災の震源地となったとされる。侵入者を拒むが、衣笠・天恭らは内部に入り、中から概念関係の技術を持ち出したとされている。

半竜(はんりゅう)
 竜の容姿と人間の形態を併せ持った1st-Gの異種族の一種。1st-G概念を宿した概念空間の中でしか生きることができない。非常に長命で記憶力もあり、文字関係の文化が発展しなかった1st-Gでは語り部の役に就くことが多かった。全身が鱗で覆われた頑丈な体とそれを支える強靭な身体能力を有している。「闇渡り」の能力を持つ半竜もいる。

冥界
 1st-Gにおける死後の世界。空想上のものではなく、実際に肉体を失った魂が移送される概念空間である。冥界管理長という役職が存在し、長に与えられる概念兵器「鎮魂の曲刃」は冥界を一時的に開いて冥界の死者と対話することができる。

和平派
 概念戦争終結後に3分した1st-G残党のひとつ。ファーゾルトを長として UCATに恭順した集団で、普段は居住区内で自給自足の生活を送っている。1st-Gから脱出する際、王城側と市街側に発生した門の内、王城側の門から脱出した者たちで構成されている。基本的に争いを好まない性格だが、攻撃的な者たちは王城派に分裂し、ファーフナーが市街派に所属している。

市街派
 概念戦争終結後に3分した1st-G残党のひとつ。ファブニール改ことハーゲンを長に据え、若手リーダーのファーフナーと王族の庇護者ブレンヒルトを中心とする過激派で、概念核を保有するがゆえに強い影響力を持つ。「軍」の協力によって資材や拠点を確保した。派名の由来は1st-Gから脱出する際、王城側と市街側に発生した門の内、市街側の門から脱出したことに由来する。

王城派
 概念戦争終結後に3分した1st-G残党のひとつ。和平派から概念空間技術を持って分離した武闘派。戦闘意欲と意思は強いが、これといった特徴を持たず勢力は弱い。王城側の門から脱出した和平派から分離したが、しかし和平を望まないためこれを名乗る。

軍(ぐん)
 9th-Gの残党を中心とし、各ギアの UCATに反発する者たちによって構成された、どのギアにも属さない謎の集団。元9th-Gの大将軍ハジをリーダーとし、戸田・命刻、田宮・詩乃らが主力となっている。日本UCATのみを敵と定め、その最終目的はそれを壊滅させることとしている。


主な登場キャラクター
※担当声優は、文化放送『電撃大賞』で2005年11月に放送されたラジオドラマ版(第1巻の内容のみ 全4話)でのキャスティング

佐山・御言(さやま・みこと)…… 平川 大輔(32歳)
 全竜交渉部隊交渉役兼リーダー格。尊秋多学院生徒会副会長。2年生。貘を連れている。佐山・薫の義理の孫で、「悪役」になる事を望む少年。現在は天涯孤独で、田宮家の世話になっている。
 母・愉命と共に死に瀕した過去から、両親に関わることを考えると狭心症を起こす。薫と飛場・竜徹の教育により文武両道だが、中学時代の空手全国大会決勝で左手を砕き、幻痛を起こす後遺症を持っている。

新庄・運(しんじょう・さだめ)…… 釘宮 理恵(26歳)
 全竜交渉部隊メンバーで、前衛援護担当。幼少期から記憶喪失で UCATで育てられた。双子の弟と名乗る「切(せつ)」が尊秋多学院2年生として編入し、御言の男子寮のルームメイトとなるが……?
 奥多摩の山奥で育てられたためか、常識感覚が現代より10~20年ほど遅れている。

出雲・覚(いずも・かく)…… 谷山 紀章(30歳)
 全竜交渉部隊主力メンバーで、前衛担当。尊秋多学院生徒会会長。現在は留年して3年生。Low-Gと10th-G神族のハーフを父に、10th-G神族を母に持つ青年。幼少時は10th-G居留地で暮らしていた。両親譲りの非常に頑強な肉体を持ち、そのため風見の腕力にも耐えることができる。父親のことを好いておらず、言及されることを嫌う。

風見・千里(かざみ・ちさと)…… 前田 愛(30歳)
 全竜交渉部隊主力メンバーで、前衛担当。尊秋多学院生徒会会計。3年生。Low-G出身の一般人だが、6th-Gと10th-Gの全竜交渉に居合わせたことで UCATに所属する。常識を超える腕力を持つ。父親は TVディレクター、母親はマイナーながら根強い人気を持つ歌手で、自身も学校でバンドのボーカルを勤める。元なぎなた部所属。

日本UCAT
全竜交渉部隊
大城・一夫(おおしろ・かずお)…… 丸山 詠二(75歳 2015年没)
 IAI局長兼日本UCAT全部長。佐山・御言とも付き合いのある丸眼鏡の老人。かつては概念戦争において殲滅戦も実行した厳格で冷酷な人物だったらしいが、現在はその片鱗も見せない。シングルファーザー。

大城・至(おおしろ・いたる)…… 中井 和哉(38歳)
 全竜交渉部隊監督。大城・一夫の息子。Sfを侍女として帯同する。痩せぎすな初老の男。旧日本UCATから残る唯一の人物で、多くの秘密を知っている。1995年の関西大震災で足に後遺症を負い、鉄製の杖を使う。同時にマイナス概念による不治の病も患っている。不平屋。

Sf(エスエフ)…… 鹿野 優以(21歳)
 大城・至専属の侍女。ドイツUCAT製の自動人形。名前はドイツ語の「在るべき婦人(ザインフラウ)」の略。感情を持たない。重力制御で分解した重火器類をスカートの中に隠しており、必要時には即座に組み上げて用いる。

リール=大樹(リール・おおき)
 尊秋多学院の英語教師で生徒会顧問、佐山・御言や新庄・運の在籍するクラスの担任。極度の天然ボケで、遅刻や物忘れは日常茶飯事、日本語はおろか英語も読めない問題教師。だがそれが反面教師となってか、担当するクラスの生徒は自主性に富んでいる。

シビュレ
 全竜交渉部隊の整備・通信管理担当。長い金髪の少女。

ロベルト=ボルドマン
 6th-G人代表。全竜交渉の通常課連携役を担う。
 元は帰化したアメリカ軍少佐だったが、母親から6th-G指導者の血筋であることを知らされ、6th-G残党に合流した。その後10th-Gと協力して UCATを襲撃するが、出雲・覚や風見・千里との戦いを経て UCATに恭順した。禿頭を何かとネタにされる。

出雲社護国課
衣笠・天恭(きぬがさ・てんきょう)
 神州対応論を提唱した護国課の設立者。八大竜王の長。一切の過去が謎に包まれた隻腕の老人。第2次世界大戦を予言して出雲航空技研や大日本帝国政府に神州対応論を認めさせ、それを通して他ギアの存在を知らしめた。1878年生まれ。故人。

佐山・薫(さやま・かおる)
 総会屋の大物。4th-Gと8th-G担当の八大竜王。本作の始まる少し前に死去している(享年88歳)。佐山・浅犠の養父で、祖父として佐山・御言を育てた人物。御言に勝るとも劣らない変人であり、珍奇な技術も含め、多岐に渡る英才教育を施した。

ジークフリート=ゾーンブルク …… 銀河 万丈(57歳)
 尊秋多学院にある衣笠書庫の司書。元護国課顧問兼1st-G担当の八大竜王。禿頭で長身の老いたドイツ人。かつては「魔法使い」と謳われた術式使い。実年齢は90歳だが長命化手術を受けている。ブレンヒルト=シルトとは1st-G滅亡に関して遺恨がある。

趙・晴(ちょう・せい)
 日本UCAT医療班長。7th-G担当の八大竜王で技術の後継者。少女の外見は延命技術と不老技術によるものであり、実際はかなりの高齢者。

1st-G
ブレンヒルト=シルト …… 豊嶋 真千子(33歳)
 尊秋多学院3年生。美術部部長。1st-Gの魔女。「鎮魂の曲刃」を使う。現存唯一の1st-G長寿族の少女。黒猫と小鳥を連れている。市街派に属し、ジークフリート=ゾーンブルクの監視役として尊秋多学院に入学していた。幼年期はナインという名前でグートルーネやレギン、ジークフリートと共に暮らしていた。

黒猫 …… 野田 順子(34歳)
 ブレンヒルト=シルトの使い魔。Low-G生まれの猫。一言多いところがあり、よくブレンヒルトに折檻される。思考が硬直しがちなブレンヒルトを導くことが多い。

ハーゲン …… 阪 脩(75歳)
 市街派の長。ファブニール改と合一している。1st-G王の弟でレギンの兄。元1st-G冥界管理長で、「鎮魂の曲刃」の本来の持主だった。Low-Gで市街派を維持するためにファブニール改と合一した。
 機体とのズレで意識の寿命が近付いている。ブレンヒルト=シルトの過去を知る数少ない人物。長く非戦路線を取っていたが、日本UCATの聖剣グラム運搬を機として全軍を率いて奪取に向かった。

ファーゾルト
 1st-Gの半竜で居留地の長。語り部。1st-Gの全竜交渉における事前交渉の相手となる。恭順の証として両翼を自ら断っている。ファーフナーや一部の生き残りには「保身を望んだ軟弱者」とされるが、本人は1st-Gの誇りを見失っていない。長命で幼い頃の大城・一夫や新庄・運を知っている。

ファーフナー …… 竹本 英史(32歳)
 市街派の主力で若手のリーダー格。ファーゾルトの息子にあたる半竜。闇渡りの半竜であり、意思の届く範囲ならば影の中を移動することができる。父に反して苛烈な性格であり、1st-G種族である事を誇りつつも帰化2世であるために故郷を知らず、そのことに憤り市街派に属した。

グートルーネ …… 小山 裕香(47歳)
 ヴォータン王国の第一王女。故人。概念戦争で傷心した1st-G王に遠ざけられ、レギンの元で暮らしていた。後にブレンヒルト=シルトやジークフリート=ゾーンブルクを保護し、一時期は4人で家族同様に生活していた。暴走したファブニールによって致命傷を負い、残った民を Low-Gへ避難させて死去。

レギン
 賢者と称えられる人物。1st-G王の弟。故人。グートルーネ王女やブレンヒルト=シルト、ジークフリート=ゾーンブルクの身元を引き受けた。かつては侵略者であるジークフリートを疑ったが、後に家族同然の関係を築く。しかし裏切ったジークフリートから概念核を護ろうとファブニールに搭乗、交戦するが殺されて概念核を奪われたとされている。

9th-G
ハジ
 「軍」の長。元9th-G大将軍。命刻と詩乃の養父。隻眼で巨躯の老人。

戸田・命刻(とだ・みこく)
 「軍」主力。黒髪を後ろで結った長身の少女。黒いサマーコートに茶色のスラックスといった姿。

田宮・詩乃(たみや・しの)
 「軍」に所属する少女。命刻の義理の妹。ロングヘアの少女。黒いストールに黒いロングスカートといった姿。

Low-G
田宮・遼子(たみや・りょうこ)
 田宮家家長。警備会社の経営者。かなりの天然ボケだが、締めるときはそれなりに締める和服の女性。母に無理心中に迫られたと傷心した若い頃の佐山・御言を抱いたことがある。

田宮・孝司(たみや・こうじ)
 田宮・遼子の弟。実質的な田宮家のまとめ役。遼子ともども、佐山・御言を「若」と呼ぶ。非常にしっかりした性格で、姉へのツッコミと尻拭いが主な仕事。遼子の破天荒な振る舞いに毎回引っ掻き回される苦労人。包丁さばきが優れている。
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