長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

全国城めぐり宣言 第2回「下総国 小弓城 その二」

2010年10月31日 22時58分43秒 | 全国城めぐり宣言
《これは、前回に同じく2008年3月にそうだいが体験した記録の続きです》

 さて、目指す小弓城のある南生実町は、千葉県の千葉市内。私の住んでいる町からも地図で見ると10キロ圏内の距離ということで、のっほほ~んと2~3時間くらい自転車に乗っていればたどり着けるだろう、と完全にナメてかかって出発したのですが……この油断が大きな間違いだったことに気づくまでにそれほどはかかりませんでした。出かけた時間は、よく晴れたぽかぽか陽気のお昼過ぎ。
 出発してから30分ほどがたち、JR千葉駅などのある千葉市の市街地から離れていくにつれて、だんだん道の起伏がはげしく上下するようになり始めてきたのです。
 坂道をのぼって、そのあとにくだったと思ったら次の坂道。それをまたのぼったら、ちょっとおりてまた坂道!
 春の陽気にたいする想いが「あたたかいなぁ。」から「あっついよコンチクショーイ!」に変貌をとげていくのを肌で感じながら、自転車全力立ちこぎでの坂のぼりを、映画『耳をすませば』のクライマックスを頭にうかべつつ4~5回くりかえしました。なのに、自転車のうしろには誰も乗っていないさみしさよ……
 さみしいといえば、道沿いの風景もみるみるうちに民家が減っていき、気がつけば、山と林だけがひたすら続くカントリーロードになっていたのですが、そんな山道を、人とも車とも滅多にすれ違うことのないまま1時間ほど行くと、今度は最近にできたばかりのような雰囲気の、閑静な住宅地がたちならぶ地域にたどり着きました。
 それが、目的地である小弓城のある南生実町だったのです。ここまで自転車汗だくで4時間かかりました。たいして道に迷うようなロスもなかったはずなんですが、まさかこんなにかかるとは……
 しかし! ここからも肝心カナメの小弓城にたどり着くまでに、町の人に道をたずねるなど少々の手間を要したのですが、日が暮れる前についに! ついに到着いたしました、戦国時代の関東地方を駆け抜けた風雲児・小弓公方の本拠地、小弓城!

 いまは……自治体のつくった解説ボードが1つ。墓地の前に。

 小弓城は標高20メートル、広さ500メートル四方の小高い丘の上に築かれていたということで、その丘そのものは現在も残っているのですが、城があった敷地は墓地、畑、神社、なんかの工場などと非常に有効に再利用されており、そこにお城があったということは、わずかに千葉の史跡指定の解説ボードだけが語るのみでした。

 まさか……まさか、そんなはずは! あの小田原城の北条家に対抗した男の中の男・足利義明の本拠地が、このようにこぢんまりとした丘であったとは……あまりに小規模! あまりに脆弱!!
 いや、待てよ……ハタと思い当たることがありました。
 この足利義明は、小弓城の主となってから20年後に、北条家との合戦に敗れて討ち死にしてしまうのですが、その合戦のあった場所はここ小弓城ではなく、同じ千葉県でもかなり北にいったところにある、市川市の国府台(こうのだい)だったのです。そのため、義明さんが敗れたこの合戦のことは「第1次国府台合戦」(1538年10月)と呼ばれています。ちなみに、「第2次国府台合戦」はそのおよそ20年後に起きた北条家と里見家との合戦で、これら2つの「国府台合戦」に勝利した北条家は、関東地方での覇権を揺るぎないものとしました。

「う~ん。この城じゃ勝てないよなぁ、やっぱ。」

 かつて、強大な敵に勇気をもって挑んだ男の、ナマのボヤきを耳にしたような気がした私は、不思議な満足感を胸にいだいてこの小弓城(だったところ)をあとにしました。
 余談ですが、畑のど真ん中にあった伊藤園の自販機でジュースを買おうと思って近づいたら、畑のはしっこで作業をしていた農家のおじさんから、

「うおぉ~いぃ、それ、うごいてねぇよ~い。」

 と、あたたかいお声をかけていただきました。そんなに日常的に壊れてんだ……なんとかしてよ伊藤園さん。

 そのあと私は、小弓城の北1キロほどの場所にあった「生実城」の城跡もたずねてみました。小弓城と生実城。読み方はどっちもおんなじ「おゆみじょう」。この2つの違いは?
 かつての解釈では、戦国時代前期にあったお城が「小弓城」のほうで、足利義明の死後にこの地を占領した原家(当時、千葉県北部に勢力を持っていた千葉家の親族)が新たに「生実城」を築城してそこに移り住んだとされていました。
 ところが、21世紀に入ってからの発掘調査の結果、「生実城」からも戦国時代前期の遺物が大量に出土したことから、現在では「小弓城」と「生実城」は同時に存在していて、義明さんも原一族も、周囲の街道の監視用と住居用など、それぞれの使い道でどちらも利用していたのではないか?という説が有力になってきています。
 地理的な関係上、小弓城を「南おゆみ城」とするならば「北おゆみ城」とも呼ぶことのできる「生実城」は、南おゆみ城以上に平たい丘を敷地としたお城でした。
 城を守る要害は沼地と空堀くらいしかなく、はっきりいって戦争にはまるっきり不向きなようにも感じられる北おゆみ城なのですが、街道や町の中心地に近かったため、江戸時代に入ってからも、この地をおさめた生実藩主・森川家の代々の陣屋(小さな城のこと)として長らく使われていきました。ちなみに、南おゆみ城のほうは、平和な時代になってからはじょじょに使用されなくなっていったようです。町からもちょっと遠いしねぇ。
 丘のような土地の形状は今も残っている南おゆみ城なんですが、北おゆみ城のほうは町に近かったせいもあり、住宅地化のあおりをもろにくらってほとんど城跡らしいものはありませんでした。
 ただし、こういう時にありがたいのは、敷地内に藩主・森川家の信仰していた神社や森川家代々の菩提寺が残っていることで、こういう伝統を重んずる施設の中には、お城の形跡を残しているものが残っている可能性が非常に高い!
 案の定、神社の裏手には、幅10メートル、深さ5~6メートルはあろうかという空堀がほぼそのままの形で残っていました。これはいいねぇ!
 興奮して堀の底まで降りてみようとしたのですが、日が暮れかけて薄暗くなっていた上にけたたましく警報ベルが鳴ってしまったので、やむなく断念しました。でも、逆にお城の説明を聞き出そうかと思って、ベルが鳴ったあとに人が来るのを待ってみたんですが、結局10分たってもだぁれも来なかった……自分の中にあった「セキュリティシステム」というものへのイメージに大きな疑問符を投げかけられた気分になりました。
 あと、お城には直接の関係はないのですが、森川家の菩提寺である重俊院というお寺の敷地に、森川家が建てたという山門(仁王様が2人立っていたりする、2階建ての正門)が保存されていたのですが、今にもちょっとした衝撃で『8時だヨ!全員集合』的に倒壊しそうな雰囲気が、それだけの歴史の重みを感じさせてくれてとても素晴らしかったです。またこの山門、私が「山門」と聞いて想像したサイズのちょうど2分の1なのね! それでも充分に立派なものなんですが、その軽くめまいをおぼえるパースペクティヴの狂いも最高でした。

 はい~、こんな感じで、記念すべき「全国402城探訪計画」の第1弾は無事に終了いたしました。
 総じて良かったね! 肝心のお城自体はあとかたもなかったんですが、そのあとのかおりみたいなものは充分に味わえました。それだけでけっこう! ま、ちゃんとしたお城も見たいですが、それはまた、いつかということで。
 2つのおゆみ城、良かったですよ。南おゆみ城ちかくの郷土資料館さん、道を教えていただきありがとうございました! いただいた南生実町の史跡マップ資料もとっても役に立ちました。

 いやぁ、帰り道にコンビニで買って食べたロシアパン(でっかいコッペパンに砂糖ペーストをのっけただけのやつ)がうまかったうまかった!!
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全国城めぐり宣言 第1回「下総国 小弓(おゆみ)城 その一」

2010年10月30日 23時24分28秒 | 全国城めぐり宣言
 こんばんは~。そうだいです。いやぁ~、今日は天気わるかったですね、うちの町は! 完全に台風14号の影響でございます。もう朝から日が暮れるまで、雨と風がビュンビュン!
 でもなんか、もう台風じゃなくなっちゃったんですかね? 日がかわる直前の今ごろ、外はかなり静かになっています。明日は晴れるといいなぁ。

 わたくしごとですが、最近、休日の過ごし方をどうしようかと考えています。
 先日にも言ったのですが、大学を卒業して以来ず~っと続けていた劇団の役者をやめて、私の生活サイクルはけっこう変わりました。今まで稽古に使われていた時間が基本的にあいたんですね。
 実は今日の30日が、役者としての最後の舞台が終わって以来初めての、働いていたり用事があったりすることの全然ない丸1日オフの日でした。24時間、いったいなにすればいいんだ!?
 さっきから言っているように今日は絵に描いたような台風日だったため、特に外出してどこかに行くという選択肢はなかったんですが、私はオフの時間には、どこかに行きたくなるんだよなぁ! 家にいてもTVさえねぇし。
 ただ、今は私の財政事情が未曾有のすかんぴんwalk状態になっておりまして……とにかく今は、来月の給料日までは死ねないという執念で生きております。かせげかせげ~!

 さて、時間と経済状況に余裕ができた時にどこに行くんだ?という話になってくるんですが、私には大いなる野望があるんですよ、野望が!

 突然ながらわたくしそうだいは、「いつかは必ず行ってみたい!」と思っている日本国内の城(か城跡)が、全部で402ヶ所あります。
 これは私が、戦国時代に限定してなんらかの重大事件にかかわったという条件でリストアップしたお城の総数です。ある説によると、最盛期には全国あわせておよそ5万あったともいわれる城のうちの402ヶ所なんですから、これは厳選に厳選をかさねた上でのラインナップですよ!
 私はこれまで、この『長岡京エイリアン』でやたら世界史(のごくせまいところ)のことばかり語ってきたのですが、ほんっとに私が好きなのは日本史なんです! ほんと大好き。
 日本の歴史ならどの時代でも好きなんですが、私が特に好き時代は室町時代です。あの、はっきりした「英雄」みたいな存在があんまりなく、でも変革するエネルギーだけはグツグツ沸騰していたという感じが最高ですね。
 ただ、小説やドラマなどのフィクションが山ほど出ているということもあって、やっぱり戦国時代と江戸時代の幕末はハズせませんやね!
 幕末の話はまた次回にすることにして、今回にもからんでくる戦国時代に私が本格的に興味を持ち始めたきっかけは、はずかしながらTVゲームの『信長の野望』シリーズでした。ベタでしょ~!?

 私が『信長の野望』にハマったのは大学時代の2000年前後のことです。ああ、もう15年前のことになるんだ……
 その時、所属していた演劇サークルの部室にファミコンがあって、実家でもあんまりゲームをやったことのなかった私は、そこではじめてファミコンの楽しさを知ることとなったのです。他の人に迷惑がかからなかったら、徹夜でやりこむこともできたんだから。もう夢の空間ですよ。
 そうしてハマったのが『仮面ライダー倶楽部』(いつかじっくり語りたい!)と『信長の野望 武将風雲録』だったわけなんですが、プレイしてはじめて全国統一を果たした時の感動といったら……!
 私は足利義昭で全国統一したのですが、夜明けの部室の中で、室町幕府の再建という偉業を成し遂げた感動にうちふるえていました。そしてコンビニの早朝アルバイトに行くという日常にもどるわけです。
 ともあれ、それ以来、パソコン用ソフトで発売されている歴代『信長の野望』を買いあさって、今に至るまでいくどとなくさまざまな武将で天下統一を果たしてきたんですが、そうやっているうちに、ゲームの中に出てくる登場人物や合戦の舞台となるお城に興味がわいてくるのも自然ななりゆきってやつですよね。
 気がついたら、ゲームを楽しむことと同じかそれ以上に、大学や町の図書館に通いつめて戦国時代の歴史を調べていくことに没頭するようになっていたのです。普通の大学の勉強は?
 そうした自分の中での行き場のない勉学の末に、めでたく2~3年前に完成したのが「全国の行きたい城リスト402」だったわけなんです。よかったよかった。

 これですよ! こつこつためたお金と時間ができた時にやることは。ゲームや再現ドラマでは味わえない感動が、戦国時代からおよそ4~500年たった今でも現地には残っているはずなんだ、たぶん!
 という決意をあらためて心にきざんだ次第なんですが、まぁ……今のところは、資金をちゃんとためなきゃね、資金を。

 ところで、実は今の時点で、402ヶ所のうち2~3すでに探訪を終えているお城(跡)があるんです。
 今回はその中から、2年前の春先に行った、そうだい402城制覇プロジェクトの記念すべき第1弾のリポートを復活させていただきたいと思います。これは当時、劇団のホームページ内の劇団員ブログでも語ったことのある内容なんですが、もろもろ補足などもあわせて、あらためて完全版としてお送りします。
 時は、2008年3月。


 先日、時間があいて天気も良かったので、身近に自転車で気軽に行けるお城はないものかとリストを眺めてみたところ、なかなかいい物件があったのでさっそく行ってみることにしました。
 その名は、「小弓(おゆみ)城」! ご存じですか!? ご存じない!
 場所は千葉県千葉市中央区南生実(みなみおゆみ)町。千葉県の内陸北部、千葉市の南端に位置する土地です。千葉市の地図を見てみると、JR千葉駅からは南へ5~6キロといったところ。
「行ったことはないけど、2~3時間もあれば自転車でラクにたどりつけるんじゃないの?」
 果たして、現在でも良好な状態で城跡が残っているのかどうかというところが不安でしたが、春の陽気もあってか私の心ははじめての探訪プロジェクト決行に躍っていました。
 その小弓城というお城は、少なくとも戦国時代前半のある時期には、関東地方における激しい戦乱の中心となる重要なポイントになっていました。
 小弓城を拠点として、足利義明(よしあき 1480年代?~1538年)という人物が小弓公方(くぼう)と自称して活躍していた時期がそれにあたります。
 この足利義明は、織田信長などをあつかった大河ドラマによく出てくる、室町幕府最後の将軍・足利義昭(竹中直人が主演の『秀吉』での玉置浩二さんが演じた足利義昭は最高でした)とは、まったくの別人です。
 血のつながりも京都の足利将軍家からかなり遠く離れていた義明さんだったのですが、地理的にも遠く離れた関東地方・下総国の小弓城で、「わしは小弓公方だ。」と近隣諸国に号令していたのです。
 「公方」とは、時代は違いますが江戸時代の将軍・徳川綱吉のことを当時の人々が「犬公方」とかげでののしっていた例でもわかるように、だいたい「将軍」と同じ意味の言葉です。まがりなりにもまだ京に将軍がいた時代に、なぜ関東にも「将軍」が?
 日本史の授業で勉強したことをおぼえている人もいるかと思いますが、室町幕府という政治組織は、京の将軍とは別に、鎌倉時代の昔から「武家発祥の地」として大切な地域だとされていた関東地方を支配する関東公方(別名・鎌倉公方)というポストをもうけていました。
 簡単に言えば、室町時代とは、関東をおさめる関東公方と、それ以外の全国をおさめる京の将軍の、2人の将軍が常に並立した時代だったのです。基本的に仲は良くありません。
 そして話を戦国時代前期の関東にもどすと、かろうじて関東公方の家名は残っていたものの、肝心の権力は、その公方様をお守りするという名目で強引に自分の領内に軟禁していた関東の覇者、北条家のものとなってしまっていたのです。う~ん、まさに下克上の戦国時代! 
 「関東公方様の命令なんで、攻めさせていただきます。」という大義により、着々と関東地方の制覇を進めていく北条家。このままでは房総半島も風前のともしびだ!
 そんな時に、対北条家の最前線たる下総国(現在の千葉県北部)で堂々と反旗をかかげたのが、誰あろう、「小弓公方」こと足利義明だったのです。彼は、その時期に北条家の勢力下で名前だけの関東公方(当時の別名は古河公方)におさまっていた人物の叔父でした。
 いや~、こりゃスゴい。たいした勇気だわ。
 なんてったってあの、天下にその名をとどろかす名城・小田原城にケンカを売ったお方の居城なんですから! そりゃ期待に胸もふくらみますよね!
 さぁ、その小弓城にレッツラゴー!! ということだったのですが…… (続いてしまいます。)
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かたきはとる! 第5使徒ラミエル怒りの鉄槌 フルCG転生編

2010年10月29日 15時33分36秒 | エヴァンゲリオン使徒大行進
 こんにちは~、そうだいです。なーんだか今日も、雨こそ降ってはいないんですが風の強い寒々しい空気に包まれております。台風14号が来てるんだって?
 私の町では、近くにある大学で来週の月曜日から大学祭があるということで、なんとなくその準備でざわざわした雰囲気になっています。私も、大学時代には大学祭でいろんなことをやったなぁ……今にもましてバカだったねぇ~。

 さて、前回までやっていた『新世紀エヴァンゲリオン』の第5使徒ラミエル検証だったのですが、それ自体は終わったものの、まだちょっと言い足りないことがある!
 1995年から翌96年にかけて半年間放映されたTVアニメシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』と、その完結編に当たる1997年公開の2本の映画。私が大好きな「使徒」のみなさんが続々と登場する物語は、これらの作品をもって終結しました。
 ところが、そんな原典の衝撃から10年の月日がたった2007年、突如として「エヴァンゲリオン」シリーズの生みの親である庵野秀明監督おんみずからの手による新作映画『エヴァンゲリオン新劇場版・序』が公開! そして2009年には新作第2弾となる『新劇場版・破』があとに続いたわけなんです。
 『序』が公開されると聞いた時には、私はそりゃまぁビックラこきました。
「え! 庵野監督がまたエヴァンゲリオンをつくるの? ほんと~? ウソじゃないの?」
 これは、旧シリーズの完結編にあたる劇場版第2作『THE END OF EVANGELION』を観た人なら誰もがそう思ったことでしょう。そこには、エヴァンゲリオンとは「訣別する」という主人公、つまりは庵野監督本人の強い意志が映し出されていました。
 そんな庵野監督が、21世紀になってから改めて「エヴァンゲリオン」を手がける! いったいどんな新作なんだ?
 事前情報でもささやかれていたように、満を持して公開された『新劇場版・序』は、全26話あるTVシリーズのうちの第1~6話にあたる部分をリメイクした内容となっていました。つまりは、今まで検証したサキエル・シャムシエル・ラミエルの登場する部分です。もちろん、クライマックスはヤシマ作戦!

 つうことは要するに、アニメ映画の長年の伝統でもあるTV版を多少豪華にした総集編みたいなもんかと、たかをくくって観に行った私だったんですが、まぁ~感動しましたね!
 物語の後半にさしかかるまでは、潤沢な予算と最新CG技術の投入された「絵のキレイさ」には感心しましたが、やはり想像の範囲内という印象でのんびり観ていました。サキエルにあたる「第4の使徒」の活躍もだいたいおんなじだったし、シャムシエルにあたる「第5の使徒」も胸の触手のワシャワシャ感アップくらいの進化にとどまっていました。
 ところが! ところが後半! ラミエルと同じ形状の「第6の使徒」が登場してエヴァンゲリオン初号機に1発目の加粒子砲をブッ放した時に、私は思わず映画館の椅子から腰を浮かしてしまいました。
 フルCG大活躍! ただの正8面体だったはずの形状がガッチャンガッチャン変形する変形する! 口で表現できないのがもどかしいんですが、加粒子砲を撃つたんびに4次元変化としか言いようのないカタチに変わるスタイルは最期までつらぬかれ、おかげで私はず~っと空気イス状態でスクリーンに魅入ってしまっていました。それでこそ21世紀リメイク版! よくやった「第6の使徒」。最後はやっぱり死んじゃったけど、アンタはエラい!!
 まぁそんなゴージャス感満載の「第6の使徒」によるハチャメチャアクションだったわけなんですが、結果、同じブルーの正8面体ではあるものの、ラミエルと「第6の使徒」には質感の面で大きな違いが発生することとなりました。
 ラミエルはずっと正8面体のまんま、死亡後も遺体に変化は見られません。もう1つの特徴であるドリルシールドも、削った土をどけるような部位のついた、人類が見ても「ドリル?」と理解できる形をしていました。つまり、ラミエルはそういう形状をした「機械兵器」ともとれる使徒だったんですね。
 ところが、「第6の使徒」はもう、瞬間瞬間でバラバラになるはでっかいウニみたいなトゲトゲになるは。ドリルも身体の下の部分がへにょ~んと伸びて不思議な光を発しながら掘り進んでいくというもの。しまいには死亡後、ドリルもふくめた身体ぜんぶが赤い血のような液体に変わってジオフロントのネルフ本部に降り注ぐというスプラッタなおまけつき。つまり『序』の「第6の使徒」は、どんな形状がほんとの正体なのかまったくつかめない変幻自在の「何か」だったということで、結局ラミエルとはまったく違う印象になっていたんです。
 そして、ここで見逃してならないのが、ラミエルにはなかった特性を「第6の使徒」が持っていたことなのです。それこそがダミーコア(デコイ)でした!

 ダミーコア。要するにニセのコア。『序』のヤシマ作戦でネルフは、TVシリーズと違ってふんだんにおとりのミサイル砲撃を雨あられと使徒に撃ち込み、スキができたところをねらって初号機によるポジトロンスナイパーライフルの第1射をはなち、見事に使徒の中心にあった赤い球体「コア」らしきものを撃ち抜きます。(TV版では、第1射は同時に放ったラミエルの加粒子砲と相撃ちになってはずれる。)くだけるコア、動きをピタッと止める使徒。だがしかし崩壊するはことなく、すかさず体勢をとりなおして再び加粒子砲を撃って反撃します。そしてその中心には、何事もなかったかのように本物のコアが!
 ただツメが甘いことに、「第6の使徒」のダミーコアは1コしかなかったらしく、ポジトロン砲の第2射によってまたコアを撃ち抜かれた使徒は、今度こそおっ死んでしまいます。
 ともあれ、ラミエルにはなかったダミーコアという進化をとげていた「第6の使徒」。TV版の時点で前の2体の失敗からの学習をにおわせる改良はあったのですが、さらにそれに「敵は自分の弱点をねらってくるから気をつけろ!」というポイントがついてきていたのです! すごいや使徒、日々成長だぜ!

 さて、今回のラミエルもしくは「第6の使徒」の活躍によって、使徒に関する新たな情報がわかってきました。その事実とは……
 すなはち、使徒はボ~ンヤリとしか自分たちの狙う目標の位置をつかんでいない!
 何回も言ってきたことですが、使徒はどうやら、第3新東京市の地下にあるネルフ本部を狙っていて、ネタばらしをすると、その目的地はネルフ本部のさらに地下7キロに位置する「ターミナルドグマ」という場所です。
 地下に目をやる余裕もないまま天に召されたシャムシエルは問題外として、サキエルはビームで地下に穴をあけて行こうとし、ラミエルはドリルシールドで地下を目指しました。
 ところが! 使徒の行きたい場所は1~2キロ下にあるジオフロントにはありませんでした。だったら、手っ取り早く加粒子砲で地面から400メートルある特殊装甲板を吹っ飛ばしてさっさとジオフロントに降りてきて、そこからドリル掘削を始めていけばいいわけなんです。
 つまり、ラミエルまでの使徒は、第3新東京市の地下に探している「モノ」があることは知っているんですが、それがどのくらい下にあるのか、さらには地下の構造がどんな感じになっているのかをまったく把握していなかったということになります。まさにさぐりさぐり!
 いろいろな点から、ある使徒の時にでた反省点が次の使徒で改善されていることが多い以上、ラミエルがつかんだ「第3新東京市の地下には空間がある!」という情報は、必ずや次なる使徒に受け継がれていくはずなのです。ラミエルの死もムダじゃあなかったんだ!

 ラミエルと「第6の使徒」に関する話はここまでにしておいて、TVシリーズと『新劇場版』シリーズとの関係は、『序』までは元版とリメイクという感じだったんですが、みなさんもご存じの通りにそのあと『破』が公開されたあたりから、
「あ、あれ……だいぶ話の流れが違うぞ?」
 という感じになってきました。デザインの細かい点からキャラクター造形などの大きな点まで、ちょっと同じ作品を元にしているとはいいがたい展開です。
 ここにきて、TV版と『新劇場版』の関係って、実は×××××んじゃないの? などといろんな憶測が流れているんですが……答えはまぁ、いつか公開される新作続編『Q』を待つことにしましょ!

 最後に、だいたいはTVシリーズに沿った内容だった『序』なんですが、気になる変更点はやっぱりチラホラありました。
 前回にも言ったかと思うんですが、TVシリーズ版では、使徒が狙っているものがなんなのかということを知っている人間はごく上層部の数人をのぞいてほとんどいません。ネルフ本部でエヴァンゲリオン作戦の指揮をとっている幹部さえ知らない状況だったんですから。ネルフに勤務する職員のみなさんの多くは、
「使徒がネルフ本部に到達したら、なんだかよくわかんないけど人類は滅亡するらしいよ。」
 といった程度の情報しか持っていません。使徒が狙うものの正体とは? この辺のサスペンスも、TVシリーズの重要な謎の1つとなっていました。

 でも、『序』はここが違う! 最初っから、使徒が狙っているものがネルフ本部の地下7キロの最深部で封印されている「第2の使徒リリス」であるということが明らかになっています。どのくらいの人までに公開されている情報なのかははっきりしていないのですが、少なくとも、TV版では最後までその事実を知らされることのなかった作戦指揮官は知っているし、初号機パイロットも早々にこの秘密を教えられます。第2の使徒リリス……全身真っ白だし、仮面はかぶってるし、下半身はないし、胸に深々となんか槍みたいなものは刺さってるし。なんなんだこいつは!?

 TV版と『序』との違いで大きなものはこれなんですが、あと小さなものとしては、ネルフの作戦指揮官(28歳 独身女性)がエラくなっています。
 TVシリーズでは一尉(大尉)から三佐(少佐)に昇進しているんですが、『新劇場版』では二佐(中佐)から一佐(大佐)に昇進しています。この違いはいったい……? 少なくとも、生活環境などに見た目の違いはありません。 

 いやぁ、謎が謎よぶエヴァンゲリオン!
 まぁ、物語自体のサスペンスはおいといて、わたくしそうだいは使徒のみなさんを全力で応援します!! さぁ、お次の使徒はどんなかな~?
 
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かたきはとる! 第5使徒ラミエル怒りの鉄槌 射的編

2010年10月28日 16時00分08秒 | エヴァンゲリオン使徒大行進
《前回までのあらすじ》
 特務機関ネルフが守る第3新東京市に現れた3体目の使徒・ラミエル。今までの2体とは違い、破壊と目的遂行をしっかりと分けて行動する現実指向タイプ。
 強力なATフィールドと加粒子砲を駆使して鉄壁の守備を誇るラミエルに対して、人類にうつ手はあるのかしら~?

 ネルフ本部の分析により、ラミエルのエッチラオッチラ掘り進めるドリルシールドのジオフロント到達が10時間後であることが判明し、ネルフはそのタイムリミットまでにラミエルをほふる作戦を決行する必要性に迫られます。
 あと10時間でなんとかしなきゃ! 単純に使徒のネルフ本部攻撃を最悪の事態と考えている作戦指揮官(28歳 女性)は頭をヒネくりまわしますが、前回に説明したようなネルフの「最高機密」を知っている主要幹部(画面に登場している人物は3名)は、
「どうせラミエルが行きたいトコは、さらに7キロ下にあるからなぁ……」
 と、どことなく涼しい顔をしています。そのうちの1人である、指揮官の学生時代の親友でもあるエヴァンゲリオン計画の技術主任(29歳 金髪染めの女性)も、そのへんのことはおくびにも出さずに深刻顔。

「決めたっ。作戦内容は、使徒の攻撃範囲外からのエヴァー(指揮官の言い方です)による超長距離攻撃。射撃地点は使徒から6キロ離れた下二子山山頂。決行時間は翌日0時0分!」
 早いな~、決断が! さすがはネルフの作戦指揮官。人類の未来を託されているだけのことはあります。でも作戦のためには、6キロも離れた距離の場所から、ラミエルのATフィールドとコアの両方をブチ抜くような大出力を持つ陽電子砲(ビーム・要するにラミエルの加粒子砲といっしょ)が必要になります。そんなの、どこにあんの!?
 でも、彼女には奥の手があった。時間はない! さっそく茨城県つくば市の戦略自衛隊技術研究所に向かい、ネルフの特務権限と彼女自身が持っていた日本国との「外交カード」を利用して、そこで開発されていた衛星軌道攻撃用の陽電子砲(宇宙空間の人工衛星を撃てる!)を徴発します。 やっるぅ~!
 ネルフ技術部はチャッチャとこの陽電子砲を改造して、エヴァンゲリオンがトリガーを引くことによって射撃される、巨大なライフル銃のようなポジトロンスナイパーライフルを急造します。
 このくだりについて、よく「別にエヴァンゲリオンがいなくても、陽電子砲だけあればいいんじゃない?」という疑問がうんぬんされますが、エヴァンゲリオンは必要ですよ!
 なぜなら、万が一この作戦を察知したラミエルからのビーム攻撃があった場合、それをふせぎながらポジトロン砲の照準を修正することのできる「安全な銃座」が必要だからなんですね。人間による遠隔操作だけでは、ポジトロン砲がズレた時になおせなくなっちゃう!
 エヴァンゲリオンのエントリープラグはとにかく安全です。しかしラミエルの加粒子砲は攻撃力絶大! 6キロ離れた地点とはいえ、くらったら今度こそやばいかも……
 そこで提案されたのが、エヴァンゲリオン初号機のポジトロン砲射撃を、エヴァンゲリオン0号機が手持ちの大型シールドを持ちながら前に立ってサポートするという陣形でした。

 おぉ~、エヴァンゲリオン0号機! いたいた、黄色い1ツ目のやつ! ついに0号機が実戦に投入される時がきた!(作品本編では、0号機は「零号機」と表記されているのですが、めんどくさいのでわが『長岡京エイリアン』では0号機と表記させていただきます。のちに登場するエヴァンゲリオン「弐号機」以下も、おなじく2号機、3号機……としていきます。)
 エヴァンゲリオン0号機は、ネルフ本部でかなり初期から開発されていた汎用人型決戦兵器シリーズのプロトタイプです。さすがに性能面では後継の初号機におとるものの、実戦でも充分に使えるものとして、その活躍が期待されていました。
 んが! くしくもあのサキエルが日本に上陸した日の数時間前、本部内で行われていた0号機の機動実験が失敗し、専属パイロットの中学生女子は即入院ものの大ケガをするは、それをムリヤリ助けようとした怪しい総司令は手にヤケドするはの大惨事。
 そんな中で急遽代わりにサキエルと戦うことになったのが、その日に来たばっかりの初号機パイロットだったわけなんです。しっかし、今はラミエルにのっけからドツかれたせいで意識不明になってるし、つくづく運の悪い中学生男子よ……!
 とにかく、それ以来およそ1ヶ月にわたってブルペン落ちを余儀なくされていた0号機が、守備担当とはいえ、使徒相手の実戦に登板することに。大丈夫か!?
 大丈夫か心配になるのは初号機のほうも同様で、急ごしらえで胸の装甲版は補修したものの、パイロットは夕方にやっと意識が回復した状態。まぁ、カラダはピンピンしてるんですけど……また乗るの!?
  
 作戦決行まであと5~6時間。バタバタではあるものの、すべてがひとそろえ集まってきました。作戦名、「ヤシマ作戦」!
 「ヤシマ」とはよく言ったもので、今回は「ヤシマ」という古名を持つ日本列島をあげての大作戦となりました。要するに、ポジトロンスナイパーライフルを射撃するためには日本全国の電力が必要なんです。
 さぁ、そうこうしているうちに夜もふけ、日がかわった直後にヤシマ作戦決行とあいなったわけだったんですが……

 まぁ……ね。具体的なヤシマ作戦の推移と結果は、私がつたない言葉をつらつら重ねていくよりも、手っ取り早くTVシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』の第6話か映画の『新劇場版・序』を観ていただくのが最善かと。
 いいですねぇ! ハチャメチャな部分もあるものの、ほころびを感じさせない見事なスピード感とヴィジュアルのカッコ良さ。まさに前半戦最大の名場面です。まだ観てない人は幸せモンだよ、これからその感動を味わう楽しみが残ってるんだから!

 ともあれ、ネルフが読んだ通りに見事、ジオフロントにドリルを到達させるところまではいったラミエルなんですが、TVシリーズ版ではポジトロン砲の1射目を加粒子砲の相撃ちでふせいだものの、続けてくり出した加粒子砲の2射目を0号機の大型シールドで受け止めながらのポジトロン砲2射目にコアを撃ち抜かれてしまいます。
「え~!! 1対2なんて卑怯じゃない! し、しかもイチャイチャしてる男子と女子が手を取り合って……これが愛というものの力だとでもいうの? わ、わたしもこれからは、恋にがんばってみよう、か、な……」

 ズゴォオ~ン!! ラミエル轟沈! 掘削ドリルもあえなくその回転を止めました。

 TV版では、死亡したラミエルの残骸は、先日のシャムシエルと同じくネルフによって回収・研究されることとなりますが、地下約1キロを掘り進んだドリル部分も含めたラミエルの解体はやたらと時間がかかり、シャムシエル戦までは極秘のこととされていた「使徒」とそれを撃退する秘密兵器「エヴァンゲリオン」の存在も、広く第3新東京市の市民に伝わることとなります。まぁ、パイロットの通う中学校の同級生などの間ではうすうす知られていたことでしたし、毎回毎回シェルターに避難させられていたわけなんですから、「なんか変な街だなぁ。」とはみなさん思ってはいたんでしょうが。
 のちのことになりますが、市街地でのラミエル回収作業はおよそ1ヶ月かかることとなり、結果そのあいだの市街戦は困難となったため、第7使徒との戦闘は海岸線で行うこととなりました。

 惜しいなぁ~! サキエルやシャムシエルに比べると格段に成長していたんですけどねぇ。でも今回は初号機と0号機、そして新兵器ポジトロンスナイパーライフルの連携なくしては人類側の勝利はなかったわけなんですから、ラミエルが強敵だったことに間違いはありません。ラミエル、グッドジョブ! 初号機パイロットと0号機パイロットの距離も縮まったし。

 さて、いつもならここで第5使徒ラミエルの検証は終わりなんですが、ご存じの通り、TV版のラミエルと『新劇場版・序』の「第6の使徒」とは、わかりやすいアクションなども含めて、似ているようでビミョ~に違うポイントがけっこうあります。
 次回は、他のもろもろ出てきた疑問点もあわせて、『新劇場版・序』における「第6の使徒」を中心に検証してみたいと思います。
 しつこいでしょ~!? でも、使徒を愛しているのならば、ここまでやらねばならんのであります。ゆがみまくりの愛に、果たして明日はあるのか? ねぇか、やっぱ。 
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かたきはとる! 第5使徒ラミエル怒りの鉄槌 掘削編

2010年10月27日 15時08分14秒 | エヴァンゲリオン使徒大行進
 おこんにちは。そうだいです。
 今日は晴れましたね~。でも、気温はもうすっかり秋です。身につきささるような寒ささえ感じられる季節になってきました。こりゃもう、年の瀬も早いね!

 さぁ、今日のこの、秋の日の澄んだ青空のように冷徹な雰囲気をおびて突如出現した第5使徒ラミエル! その攻撃の初手とは?

 いつものように地下のジオフロントから射出され、地上の第3新東京市に出てきたエヴァンゲリオン初号機。街中でラミエルと初号機が対峙します。
 体高300メートルということですから、初号機の5倍以上の大きさのあるラミエル。その巨体の、面と面の合わせ目に不気味な光の粒子が集束されていきます。
「危ない!」
 ネルフ本部が危険を察知しますが、気づくのが遅い! ラミエルの身体から、ものすごい勢いの光のビームが初号機に放たれた!
 初号機の胸に直撃し、みるみるうちに装甲板を熱で溶かしていくビーム攻撃。
「ぐぎゃぁああ~!!」
 絶叫する初号機パイロット。ネルフの擁する汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンの機体に対する衝撃は、そのまんま操縦しているパイロットの脳を通してパイロット本人の痛覚に伝わります。
 でも、パイロットの搭乗している、他の兵器でいうコックピットにあたるエントリープラグ内はLCL溶液(人間の体液に近い、酸素を供給してくれる夢の液体)に満たされているので、エヴァンゲリオンがどんなにギッタンギッタンに破壊されても、近くで核爆弾がドカンといったとしても、本人の「身体」自体はどこにも傷が付くことはありません。ただ、痛みが伝わってくるだけのはずなんです。だけのはずなのに、あの子はなぜ……その話はまた後で。
 とにかく、1発目からとてつもなく重いボディをくらった初号機。ネルフはあわてて初号機をジオフロントに戻しますが、初号機の胸部の装甲版は破壊され、パイロットの中学生は意識不明の状態におちいります。

「口ほどにもない男子ね。じゃあこっちは、さっそく仕事に入らせてもらうから。」
 初号機の撤退後、浮かんでいるラミエルの身体の下部から、おもむろに直径17.5メートルの掘削用のドリルシールドが延びてきて地面に突き刺さります。
 なるほど。ラミエルはどうやら、サキエルのように地面を破壊してジオフロントに侵入するのではなく、ドリルで掘削していって地下を目指すつもりのようです。効率的~! おそらく、ネルフ本部の「目標地点」に達した時点で、ドリルを通してラミエルの「本体」が地下に移動するという作戦なのでしょう。う~ん、まるでNHKのドキュメンタリーのような堅実なやりかた。さすがは生徒会長。
「サキエルくん、シャムシエルくん。かたきはちゃんと討つからね……!」

 さて、このようにしてラミエルがエーンヤコーラと掘削していく第3新東京市の地下。具体的にはどんな構造になっているのでしょうか?
 まずは地表からジオフロントの地下空間まで、22層の特殊装甲が仕込まれています。この部分の具体的な深さは明らかにはなっていないのですが、映像からの印象や、曲がりなりにも立派な大都市である第3新東京市をささえている性質上、少なくとも400メートルの厚さはあるのではないでしょうか?
 そしてその特殊装甲の下に、ピラミッドのような形をしたネルフ本部ビルを中央においたジオフロントがあるわけなんですが、ここは直径6キロの底面の円形ドーム上の空間になっていて、天井(つまりは22層ある特殊装甲のうちの最後の1層)までの高さは900メートルあります。

 んで、ここからは、TVシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』の中では特務機関ネルフのごく上層の幹部しか知らなかった秘密の情報になるんですが(『新劇場版』では、ネルフの職員なら誰でも知っていることになっています)、使徒のみなさんが行こうとしている地点「ターミナルドグマ」は、そのネルフ本部のさらに地下7キロの場所にあるんです。
 7キロ! つまり、第3新東京市から見ると8~9キロいったところを目指してラミエルはがんばってるんです! ちょっと遠くね!?

 初号機回収の数時間後、ネルフ本部はおとり兵器を使った調査などによりラミエルの行動や特性を分析します。
 それによると、ラミエルは自分の半径5キロ圏内からの攻撃は強力なATフィールドを展開してはじき返し、唯一の武器である加粒子砲(例の強力ビーム)をぶっぱなして反撃します。その威力は通常の装甲では耐え切れません。
 かつ、ジオフロント目指して突き進んでいるドリルシールドは、あと10時間で22層の特殊装甲すべてを貫通する速度で進んでいます。うむむ、400メートル進むのに10時間以上かかっている(ネルフが調べる数時間前からラミエルの掘削は始まっている)ということは、8~9キロ下の場所を目指してるんだから……ラミエル、計画的なのもいいけど、なるべく急いだほうがいいよ~!!

 ともあれ、この強力な「空中要塞」第5使徒ラミエルを、ネルフはどうやって撃退するのか?
 こうしていよいよ、『新世紀エヴァンゲリオン』前半最大のヤマ場となる「ヤシマ作戦」の決行とあいなるわけなんですねぇ。盛り上がってまいりました!
 続きは次回、「射的編」で~!!
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