弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事?】「知的財産政策に関する意見」by 日本商工会議所

2018年03月16日 08時19分54秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
春の嵐を予感させる強風が吹く今朝の湘南地方です。

さて、今日は日本商工会議所のHPより。
「知的財産政策に関する意見」がリリースされています。

知財に対する関心の高まりを示す一例、と捉えてよいのかなぁとは思います。
内容的には「?」なものもちらほらありますが(損害賠償額の是正の点とか、「特許権の安定性を高める確実な審査」とか、申請手続きの簡素化とか)、
イノベーション促進の基本フレームとして知財制度の活用が中小企業団体の視野に入っていることは良いことかな、と。

以下、私見。

「中小企業の知財権取得を後押しする施策を」という点自体は、もっと声高に言っても良いかなと思う。
ただ、単純に補助金ありきだと、費用対効果、或いはリスクとリターンの時点間差の問題はいつまでたっても解消されない。
本来両者は切り離した施策をより強く推し進めるべきで、
権利取得時の本人負担を減らす選択肢を用意しつつ、補助を受けた部分については収益償還を原則とする仕組みにすることが
目的との関係では整合的かと。出しっぱなしの単なるバラマキではモラルハザードが生じる。

競争上優位にある主体にとっての知財と、競争上劣位にある主体にとっての知財とは、その役割・意味が違うケースが多い。
前者は自分の陣地を守りより採算性を高めるための手段として知財を活用する。
後者は当該事業分野への「参加券」的意味合いとして知財を取得する(新規分野で1件特許を取っただけで当該市場を独占できる、というお花畑なお話は、基本ありえない)。
中小企業が新規に知財活動に取り組む場合、往々にして後者の立ち位置なわけで、その段階でのコストはなるべく下げた方が競争の活性化につながる。

収益償還についても、収益に対して知財がどの程度寄与したか、についての測定手段を確立することも必要。
間接的に「知財の価値」がここで観念されるようになる。「知財金融」という、知財の換価を前提とした議論は難しいと思う。
「中国の知財金融を研究」すること自体は悪くはないが、そのまま日本で適用できるとは思わない。

「経営と知財の両面の知識を持ち、戦略を立案・推進することができる企業人材の育成」
これは大事ですね。知財だけがガラパゴスな状況というのはいい加減払拭しないと。

何にしても、こういう意見発信をこのような機関が公式に行ってくれることは、
議論を巻き起こすことにもなってありがたいことです。

コメント
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