弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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流行語大賞で学ぶ商標(第3回)

2015年11月13日 06時58分17秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます。
雲の多い湘南地方です。

さて、「流行語大賞で学ぶ商標」第3回。
今日はスポーツネタ2件。

(3)苗字は登録になる/ならない? (「五郎丸ポーズ」)

 法外ともとれるディナーショーの料金が話題ですね、五郎丸歩選手。
 本人主催ではないそうなので当人としても困ったところでしょう。

 さて、この「五郎丸」という苗字、かなり珍しいですよね。
 Wikipedia情報では全国におよそ990人いらっしゃるようです。

 ところで、商標法上、
 「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」
 は登録をうけることができません(商標法第3条第1項第4号)。

 この「ありふれた」って、どの辺なのでしょう?
 この点「商標審査基準」ではこのように説明されています。

 「「ありふれた氏又は名称」とは、原則として、同種のものが多数存在するものをいうが、
  例えば、「50音別電話帳(日本電信電話株式会社発行)」等においてかなりの数を発見することができるものをいう。 」 

 「かなりの数」…うーん、ますますあいまい。。。
  そもそも電話帳って最近掲載拒否する人も多いようだし。。。

 過去の審決例では、「里見」の姓が全国に約10,000人程度だから
 “ありふれた苗字とは言えない”という判断がされています(不服2012-21211)。
 この辺りが一つの目安でしょうかね。
 ちなみにこんなサイトを業務上参考にすることもあります。

 そうした観点から、「五郎丸」は当然にこの拒絶理由には該当しないことになりそうです。
 実際、「手動工具」や「カレーを中心とする飲食物の提供」において「五郎丸」「Goroumaru」が登録になっています
 (第3082575号、第5678451号)。


(4)うーん、そう読む? (「トリプルスリー」)

 今シーズンはセ・パ両リーグで出ましたね、トリプルスリー
 ※野球に詳しくない人のために。
  「トリプルスリー」とは「打率3割以上」「30本塁打以上」「30盗塁以上」を1シーズンで達成すること。
  一つずつでもなかなか難しいのに3つともなんて、、、
  日本のプロ野球史上でもこれまで8人しか達成していなかった。


 …さて、商標の話に戻ります。
 称呼[トリプルスリー]で検索したところ、下記がヒットしました。



 上のマークは、かなりロゴ化された「3」と思われる図形が3つ。
 下のマークは、上段に「3」を3つ、下段にそのふりがな的に「サンサンサン」
 いずれにも「称呼(参考情報)」のところにいろいろな称呼(=読み)が記載されており、
 その中に[トリプルスリー]の文字が。

 こういうとき、お客様からこんな質問を頂くことがあります。

 “JPlatpatで調べたらぁ、称呼のところに[トリプルスリー]ってあるから、
  同じ商品で「トリプルスリー」っていうカタカナの商標を出願してもダメ、ってことですよね”


 こういう質問に対してはこうお答えしています。

 “いやいや、この一覧の「称呼」は飽くまで「参考情報」だから、
  商標の類否判断のときに必ずこの称呼で対比するわけじゃないですよ。
  このケースだと大丈夫(非類似)じゃないですかね”


 そうなんです。JPlatpatという特許情報開放サービスは特許庁自体ではなくINPIT(工業所有権情報・研修館)が
 提供しているもの。そのデータの処理も当然審査を反映してやっているものではなく、
 INPITで検索の用に供するために称呼も付与している。
 称呼が検索のキーになるから、データ上は結構保守的に付与されている。
 なので[トリプルスリー]で検索したときにこういう登録情報も上がってくる、というわけです。

 だいたい、上のマークはそもそも「3」なのかどうなのか、というのも微妙だし。
 下のマークにいたっては自分で「サンサンサン」というふりがなを振っているのだから
 称呼も原則これに限定されることになります。
 そんな場合でも、検索データベースとしては万一情報として漏れが生じたらマズいから
 ありえるかもしれない読みは全て打ち込んでいる、ということです。


さて、今日はこのあたりで。 

  
コメント
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