弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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知財分野におけるTPP協定の概要(第13回特許制度小委員会参考資料より)

2015年10月29日 08時01分58秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
だいぶ空気が乾燥している湘南地方です。

さて、先週末に産業構造審議会 特許制度小委員会(第13回)が開催され
職務発明制度(特許法第35条第6項)の指針について議論が深められたようです。
年内にはパブコメに付されるようですね。

ところで、配布資料の中に
「環太平洋パートナーシップ協定の概要(抜粋)」
なる資料があったのでちょっと取り上げます。

もともと、懲罰的賠償制度や著作権保護期間の延長の“ゴリ押し”と見る向きもあったところですが、
以下のような項目が紹介されています。

1.医薬品の知的財産保護を強化する制度の導入
 …あんまり議論に深入りするとヤケドしそうなのですが、
  ジェネリック医薬品の承認にあたって先行特許を考慮することを審査当局に義務付けることになるようです。
  権利者保護に厚くなる反面、ジェネリック医薬品の普及の抑制や薬価上昇の原因となる可能性も指摘されています。

2.商標関係の条約(マドプロ又はシンガポール商標法条約のいずれか)の締結「義務付け」
 …この点は日本は現状影響は無いようです。

3.商標の不正使用について法定損害賠償制度又は追加的損害賠償制度を設ける
 …現状損害賠償の算定にあたっては推定規定が設けられているのみで、ミニマム或いは追加的賠償制度はありません。
  制度変更に伴って権利取得のモチベーション、コンプライアンス意識が高まる、でしょうか?

4.特許期間延長制度の「義務付け」及び新規性喪失の例外規定の「義務付け」
 …ここも、日本は既に導入済み

5.オンラインの著作権侵害の防止
 …権利者からの通報に基づいてプロバイダがコンテンツ削除などの対応を行うことで賠償免責を得る制度の導入
  日本は「プロバイダ責任制限法」で対応済(と理解して良いと思います)。

6.WTO・TRIPS・ACTAと同等又はそれを上回る規範の導入
 …この点も、日本では不正競争某防止法、著作権法の改正により、現状の要求水準については対応済と思われます。

7.著作権法:
(1)保護期間が「50年」➡「70年」に(著作権、著作隣接権)
(2)故意の商業的規模の違法複製の非親告罪化
(3)著作権侵害について法定損害賠償制度又は追加的損害賠償制度を設ける
 …このあたりは事前にリークされていた内容とほぼ同じですね。
  「故意の商業的規模の」複製が、実態的にはどのあたりまでなのか(例えばコミケでの二次的著作物販売はセーフなのか)
  について見守る必要があります。

8.地理的表示保護手続にあたって過度の負担となる手続を課さない など

協定の性質上当たり前ではあるのですが、「義務付け」という表現が目立ちますね。
ただこのペーパーを見る限りでは、「1.」を除いては既に先回りして導入済、
或いは世論形成済み(あーどうせ“あのネズミ”的な理由で70年なんでしょ、というあきらめ)で、
大きな混乱は生じないように思います。
TPP交渉の影の本丸、と言われていた割には…? という印象ですが、
さてさて、今後更に詳細が明らかになると印象も変わってくるのでしょうか。
引き続き注視したいです。

コメント
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