ニワカが見た「鬼滅の刃」の映画。
公開2週目となる先週の土曜日に見に行ったので感想を残す。
主人公をはじめとする鬼殺隊の面々が、「夢」を操る鬼と戦う話。原作漫画を追っている20代の同僚に聞けば、原作で描かれている内容だが、アニメ化までには至らなかったエピソードらしい。スラムダンクでいう山王戦をアニメ化したようなものだろうか。「コナン」のように、オリジナルの脚本で映画化されるものと思っていたから意外だった。人気絶頂のうちに原作は終わったばかり、ロスが抜けないファンをターゲットに劇場版を用意する、ビジネスモデルとして実に正しい。
「鬼滅の刃」はネトフリのアニメで7話までしか見ていないニワカ中のニワカである。アニメが配信された直後から見ているが、途中で脱落した少数派だ。なので、当初見る予定はなかったものの、1週目で見たフォロワーの人たちの絶賛ぶりが凄かったことと、8時の早い時間にやっていたので見ることにした。なお、その早朝にも席はパンパンに埋まっていた。端の席で良かった。
とても面白かった。幼児までがハマっているアニメとして侮っていたが、なかなか刺激的な内容で攻めてくる。何といってもバトルアクションが秀逸。ケレン味をしっかり利かせ、ダイナミックにフレームを使う。音響も素晴らしい。日本のアニメはアクションが強いのに、実写になると弱くなるのはなぜだろうといつも思ってしまう。R12指定も見て納得。結構、生理的に気持ち悪かったり、血みどろになるシーンも多く、小さい女の子にも受け入れられるのが不思議だ。
セリフによる説明過多(感情の吐露)はアニメ版で感じたまま。「そこまで言わないほうがいいのに」というシーンがちらほらで、その都度、高まった感情をクールダウンさせてくれる。禰󠄀豆子の、鬼にならずに便利な立ち位置に留まっているのもやはり気になる。漫画のギャグ(?)シーンをそのままスクリーンで見せられると寒くなる確率も高い。などなど、テレビアニメ版でハマらなかった理由は劇場版にもあてはまった。
しかし、それを補って余りあるのは、本作の実質的主人公である「煉獄」の生き様だろうか。列車内での登場シーン、目がバッキバキでやばいクスリでもやっているんじゃないかとニヤニヤしながら、「この人がみんなを騒がせているキャラクターか」とその動きに注目する。そして見終わった頃には自分もすっかり魅了されてしまった。
炭治郎たちの「師」ではなく、頼れる「先輩」として登場。先輩を羨望し、後輩を想う、この相思相愛の関係性が現代的で面白い。「柱」という初めて聞いたワードも、「鬼滅~」の世界に縦の広がりがあること、強さの階級があることを認識させ、ジャンプ黄金世代を知る人間をワクワクさせる。「練り上げられた闘気」をまとい、ぶっちぎりに強い煉獄が未曾有に危機に瀕し、己の信念が試される。
「強き者は、弱き者を助けるさだめがある」、彼が命を賭けて戦う理由はシンプルだ。そして、それはとても難しいことでもある。このメッセージが効いた。彼が全うする信念の背景にある、母親との思い出にまんまとウルウル来てしまう。とても明確で力強い正義の形。これは子供への道徳的教材として見せるに相応しい作品だ。壮絶なクライマックスは血沸き肉躍るとともに、感情のボルテージも最高潮に達する。胸アツになっているところ、炭治郎の「逃げるなー俺たちは~」みたいな説明が余分で惜しい。
ニワカの自分も、本作で「鬼滅の刃」の魅力の一端を知ったわけだが、俯瞰してみると「ジャンプ」らしい漫画だなーと思った。友情・努力・勝利が詰まっている。ドラゴンボール、ジョジョ、幽遊白書、男塾、といった歴代漫画の系譜も感じてしまう。中二精神が抜けない自分は、「柱」を見終わってすぐにググり「誰が強いんだ」と調べてしまった。。。
本作の大ヒットは公開前から予想されていたこと。外的要因と内的要因が見事に合致した本作のような映画の成功は後にも先にも出てこないだろう。おそらく、今後も興行収入は伸び続け、歴代記録を塗り替えるのも時間の問題。日本の映画興行会社は、本作の成功で大きなキラーコンテンツを得たことになるが、洋画を中心とした大作が息を吹き返したあと、今回のような番組編成で、他の作品の公開規模を絞るのはご遠慮いただきたい。
【70点】
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