から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

ミッドナイトスワン 【感想】

2020-10-03 08:41:42 | 映画


バレエってこんなに美しいパフォーマンスなんだな、と初めて感じた。同時に、本物のバレエを魅せることがこの映画には不可欠だったんだなと感じた。主人公が守りたかったものが輝き羽ばたく光景に心を強く揺さぶられる。
トランスジェンダーと、育児放棄された女子の疑似親子愛を描く。芽生える母性と、美しいものへの主人公の羨望。
本作でのトランスジェンダーの描き方は切実なもので、社会の不寛容さを浮き彫りにする。彼女たちが実社会で生きる術、過酷な治療、周りから注がれる好奇の目、居場所なき孤独。「今、流行ってるでしょ、LGBTって」という多様性を言葉だけで捉えているセリフが鋭い。ただ、トランスジェンダーであることの悲哀ばかりに焦点を置くことより、本来の自分で生きることの喜びみたいなものも描いたほうが、よりドラマが際立ったと思う。
ストーリーの流れは最後までほぼ想定内だが、途中で差し込まれる非現実的な展開に、本作を現代の寓話として受け取った。一方で、それにしても過剰と感じる描写もあり、作り手の想いが先行して「感動してほしい」という顔が見えてしまった。主人公の凪沙と一果、一果と親友になるりんの関係性、距離に縮め方はとても良かっただけに惜しい。
主人公演じた草なぎ剛は憑依系の俳優なんだな。初登場の一発目のショットから、よく知っている彼の気配は全くなく、そこにいたのは凪沙という女性だった。役柄を演じるというより、凪沙という人格が彼の肉体を借りているようだった。その姿に圧倒された。一果を演じた服部樹咲は鮮烈なデビュー、バレエシーンを含め、彼女の演技に終始引き込まれる。また、りんを演じた上野鈴華も素晴らしかった。
【65点】
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