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アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅 【感想】

2016-07-08 08:00:00 | 映画


前作に強い思い入れのない自分は、個性豊かなキャラクタとの再会だけでは楽しめない。「不思議な世界」のビジュアルはスクリーンに鮮やかに映えるものの、その中身は前作以上にフラットで粗い作りだ。アリスが1人で起こした騒動に周りが巻き込まれてしまう(苦笑)。悪者がいない仲良しこよしな顛末はスパイスの効いていないカレーみたいな味だ。もはや原作を完全に無視したストーリーは許容できたとしても、原作にも通じる毒っ気が前作から完全に抜けてしまったのが気に入らない。「時間」をテーマに選んだのは悪くなかったと思うが、もう少し何とかならなかったか。。。

前作での結末とおり、貿易会社で船長となったアリスがワンダーランドに戻り、かつての旧友「マッドハッター」のために過去にタイムスリップするという話。

3年という長い航海から戻ったアリスは「時間は泥棒」と、過ぎ去った時間を嫌悪する。ワンダーランドでハッターと再会したアリスは、ハッターに今は亡き家族がいたことを知る。ハッターの苦悩に手をさしのべるべく、過去に戻る方法を知ったアリスはハッターの家族が亡くなった時間に戻り、ハッターの家族を救おうとする。しかし、それはワンダーランド全体の時間を狂わす大きなリスクを孕んでいた。

今回新たに登場するキャラである「タイム」は本作のヒールではない。タイムはすべてに平等に与えられる時間を正確に進むように管理しているだけだ。本作のヒールはアリスだろうか。ハッターとの友情のためだけに、時間を動かす核「クロノスフィア」をタイムの元から盗みだし、周りの迷惑を省みずにひたすら突っ走る。タイムがアリスを猛追し捕らえようする様子は、悪者からアリスが逃げるように見えるが、実は追っかけているほうのタイムが被害者だ。タイムが気の毒に見えてしまう。

時間に対する嫌悪が、彼女の驕りに繋がっているとも考えられる。結果、「時間は変えられないもの」と彼女は自分の過ちに気づく。そこまでは良いが、以降の展開が彼女が犯した失態の後始末で終わっているのがつまらない。3Dや4D上映を意識したアトラクション感の強い描写が目立つが、結局、その「追いかけっこ」アクションを見せたかっただけなのだろうか。アリスが起こした騒動に、観ているこっちも付き合わされた感が強い。途中、アリスがわざわざ一回、現実世界に戻った意味もよくわからない。アリスは前作から成長した姿を見せるべきなのに、発揮されたのは船の運転技術だけという切なさ。

また、せっかく個性豊かなキャラクターがいるにも関わらず、それを活かさないのが勿体ない。前作ではそれぞれの個性が異なる局面で躍動し、アリスの活躍の後押しをしていたが、本作では彼らが一か所にまとまり、声を合わせて「アリス、がんばれ!」と言っているだけのようだ。動きのあるアクションはアリス1人に集約され、本作の最大のチャームと思われるマッドハッターにもほとんどアクションの機会が与えられない。

本作で新たに明らかになるのがハッターに家族がいたことと、赤の女王に知られざる悲しい過去があったことだ。ハッターは孤高だからこそ、あのクセのあるキャラが活きるし、赤の女王は悪い奴だからこそ物語のアクセントになる。2人の子ども時代を演じた子役たちが非常に可愛く、その過去を描くこと自体は良いけれど、その過去がダイレクトに現在へと影響し、2人の個性(見え方)を変えててしまったのが問題だ。「みんな良い人で、みんなでハッピー♪」な結末が、こんなにも収まりが悪いとは。。。。

前作に続き、ミア・ワシコウスカがアリスを演じる。前作がフィットしなかった自分は、ティム・バートンが描く映像世界の玩具にしか見えず一発屋で終わると思っていた。しかし、以降の現在に至るまでの彼女の活躍を、誰がここまで予想できただろう。「キッズ・オールライト」以降の絵に描いたようなキャリアアップに、成長した彼女の存在感が本作で示されるべきだったが、演じたアリスの魅力が乏しいために、前作の彼女と何ら変わらなかった。残念。

【55点】
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