goo blog サービス終了のお知らせ 

から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

ロスト・バケーション 【感想】

2016-07-30 09:48:14 | 映画


予想外の面白さ。ワンシチュエーションスリラーの新たな秀作。
小さな岩礁に取り残された女子と、海中からその肉体を喰らおうとする巨大サメ。物語はサバイバルからバトルへ。散りばめられたプロットがことごとく展開の歯車に変化。シンプルな話をよくぞここまで面白い映画にできたもの。スリルとワクワクで90分間を突っ走る。「海」×「ホラー」、まさに夏にうってつけの逸品。主演のブレイク・ライヴリーがめちゃくちゃいい。旦那のライアン・レイノルズ、羨ましいぞ(笑)。

メキシコの名もなきビーチを訪れた女子が、サーフィンをしている最中にサメに襲われ、浜辺からわずか200メートルの場所にある岩礁に取り残されるという話。

まず舞台となるビー チの美しさに目を奪われる。白い浜辺に透明度の高いエメラルドグリーンの海がスクリーンいっぱいに広がる。観光客には全く知られていないような秘境にあり、そのビーチを訪れる人は地元民だけで、ほとんど貸切状態だ。美しさと解放感を兼ね備えた光景は眼福感タップリだ。

主人公にとってその場所は穴場というだけではなく特別な場所であり、病気によって亡くなったばかりの主人公の母が、自分をお腹に宿していたときに訪れていた場所でもあった。主人公の女子は医学生であるが、母の死をきっかけにその道をあきらめたばかりで、亡き母の思い出と対峙し、これからの自分の人生を見つめ直すタイミングでもあった。過去の回想シーンはなく、現在進行形の主人公の視点からでしか描かれないが、主人公の人物像がくっきりと浮かび上がる。

メインの登場人物が主人公1人に集約されるので、丹念に主人公のリアクションを追うことが可能になる。メキシコには友人たちとバケーションで来たようだが、友人の二日酔いによって急遽1人でビーチに訪れることになった。若く美しい女性の1人旅だ。しかも場所は英語ではなくスペイン語圏。いろんなところに危険が散らばっている。訪れたビーチの先客であった2人の若い地元サーファーとのやりとりが生々しくて秀逸。一見、友好的なコミュニケーションが交わされるものの、誰もいないビーチで、強い「男」と弱い「女」の危うい構図がチラつく。主人公のリアルな警戒心の揺らぎを見事に捉える演出が素晴らしい。

主人公は美女である。演じるブレイク・ライヴリーが一児の母とは思えぬほどパーフェクトなプロポーションを惜しげもなく披露する。スレンダーとグラマラスの中間で、異性からも同性からも羨まれるであろうシルエットだ。金髪に小麦色の肌、よく引き締まったお尻。「夏!!」「海!!」全開な彼女の見事なビキニ姿が眩しい。その肉体が透明度激高の海中に滑り込むシーンの美しきこと。そんな彼女の姿を大スクリーンで拝むだけでも映画館で観る価値があるというものだ。

先客の男子2人がサーフィンを終えたのち、彼らの誘いを断り、最後にもう一度だけサーフィンを楽しもうとする。たったひとりになった海上で、周りを見渡すと異様な光景に気づく。大きな鯨の死体が近くに浮いているのだ。しかも何かに食いちぎられた跡が残っている。イヤな予感がする。そして予感は的中。透明なエメラルドグリーンの海が真っ赤に染まっていく。

原題は「Shallows(浅瀬)」だ。巨大なサメに狙われる主人公のサバイバルは浜辺からすぐの場所で起きている。目の前に希望があるにも関わらず、その希望を掴めない絶望感が本作の引力だ。しかも、そのサバイバルのスタートは主人公がサメに襲われ脚部に重傷を負ったところから始まる。何とかしてたどり着いた岩礁は、潮の満ち引きによって姿を消すリスクがある。失われる体力と海上でのタイムリミット。絶望の状況下でいかにして主人公は生還するのか。。。。

そして、生死の土壇場に立たされた主人公のサバイバル能力が覚醒する。これが非常に面白い。脚本がとても良く出来ている。

医学生である主人公、身に付けていたペンダン トとピアス、腕につけたデジタルウォッチ、ビキニの上に着ていたサーフスーツ、近くに浮かぶ鯨の死体、近くに浮かぶ鉄骨のブイ、先客の男たちが撮影に使っていたヘルメットカメラ、そのヘルメットに食い込んでいたサメの刃歯、予想外の「味方」。。。何気なくプロットされていた状況やアイテムが次々と主人公の武器になっていく。誰かに救助されるか、自らの力で浜辺に逃れるか、生還の手段はその2択かと思いきや、主人公は第3の道を選ぶことになる。まさかの展開にくぎ付けになる。そして痛快。クライマックスの迫力に圧倒される。

ユーモアを排除し、シリアスに徹したドラマにしたのも正解だ。主人公に降りかかる不幸は完全にフィクションであるが、彼女が身を寄せる岩礁の居心地の悪さや 、素足で踏みつけるサンゴの凶器っぷりなど、海であるあるな描写をリアリティたっぷりに描いている。傷だらけとなった主人公の痛みが、実感として観る側に伝わってくるのも本作の特徴だ。恐怖と痛みによって距離を置いて本作を観ることができなくなる。そして命懸けのサバイバルのなか、孤独な戦いを強いられる彼女の傍らにいる、飛べなくなったカモメとの友情が物語を味わい深いものにする。ラストも収まりも良かった。

主演のブレイク・ライヴリーの熱演が光る。絶望に瀕した人間の恐怖と孤独が身に沁みて伝わってくる。そのプロポーションもさることながら、180センチ近い長身がとても効いていて、サメの迫力に引けを取らないのがよい。彼女の存在感が本作のすべてといっても良いかもしれない。

サメを一方的な悪者にするスタンスに違和感がないわけではないが、その古典的なアプローチを用いて、全く新しい「サメ映画」が誕生した。B級感まるだしな邦題からは想像できないほど完成度の高いスリラー映画だった。とても満足。

【70点】

最新の画像もっと見る

コメントを投稿