から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

生きてるだけで、愛。 【感想】

2018-11-24 13:00:00 | 映画


快い余韻が残る秀作。キャラクターの心情を嘘なく丁寧にすくいあげた脚本に引き込まれ、物語に包容する映像に魅せられた。
生きづらさに苦悩するキャラクターたち。見えてくるのは、社会に出てまもなく、自身も経験したことのある孤独や疎外感みたいなもの。仕事上、理解できない理不尽さを飲み込んだとき、周りから一瞬取り残されたような感覚になった。これは本作の特異な主人公からも感じ取れること。
主人公はいわゆる「こじらせ女子」で、去年の「勝手にふるえてろ」と重なるキャラだが、こっちはもっと重度。無職、引きこもり、過眠症、自称うつ。ただ、ガチの病気ではなく自身の心の問題のようだ。主人公の身に起こった経緯は全く説明されないものの、社会での人間関係に疲れ、距離を置いたうちに戻れなくなったと想像する。自身に向かうべき不満と怒りを、同棲する心優しい彼氏にぶつける日々。なんでこんな女と付き合っているのか、その答えは結末へ。
そんな彼氏の元恋人という「ストーカー」(笑)が登場。主人公の恋敵という位置づけであるが、周り回って主人公の社会復帰の手助けをするのが可笑しい。主人公が働くことになった職場はこの上ないリハビリの場となる。寛容さと良心を持った人たちが主人公を家族のように迎え入れるのだ。このまま、心温まる再生ドラマに流れると思いきや、主人公を突き放す。確かに思えた繋がりが途切れてしまう瞬間の恐ろしさ、自身の愚かさを隠していても「見つかってしまう」残酷さ。主人公よりもずっと自分は器用に社会と付き合っているけれど、主人公の絶望に強く共感できた。
主人公ヤスコを演じた趣里の女優魂をぶつけた熱演が素晴らしい。全身全霊でヤスコを生きた姿は衝撃的なほどだ。彼女の受け側に回った菅田将暉や、主人公よりもある意味病的な役を演じた仲里依も見事。
それでも人とのつながりによって生きていける。2人の屋上での抱擁に確かな体温を感じ、冷えた心に明かりが灯された。
【75点】
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