から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

海街diary 【感想】

2015-06-14 13:29:58 | 映画


その日を境に、可愛い妹ができた。優しいお姉ちゃんができた。「そして父になる」の次は「そして家族になる」。

待望の是枝監督の新作は、親と子という家族の原点から遠ざかり、自活する女子たちで形成された家族の姿を描く。

かつて家族を捨てた父親。母親とも別れ、残された3人姉妹。彼女たちは社会人となり、仕事に恋に大忙しの女盛りを迎えている。そんなある日、父親の死をきっかけに腹違いの妹と出会う。彼女たちは4人姉妹として新しい家族になることを決める。腹違いの妹はいわば「家族を壊した愛人の子」。しかし、健気で思いやりのある腹違いの妹を見て、3人姉妹は迷わずその子を引き取りたいと思う。中学生という多感な時期に取り残された妹を、不憫に思う同情心があっただろう。しかし、それ以上に、父親から同じ血をひいた「妹」(家族)と感じたからではないか。「よく見れば私たちと似ているじゃない」。ロクでなしの父親は宝物を残してくれた。愛おしい家族が増えた喜びは、鎌倉の美しい四季のなかで日々増していく。

映画を観ている最中に何度も思う、「女の子って可愛いなー」と。悲観よりも楽観することを本能的に選ぶ。何でも楽しむことが好きなのだ。姉妹が密着すると、何かにつけじゃれ合う。本作ではアドリブによって、こうした女子の明るさが巧く表現されている。友情にも似た姉妹の関係性が観ていて何とも清々しい。すべての女性や姉妹が、本作のような姉妹像に当てはめることはできないのはわかっている。本作の姉妹関係は、大きな衝突、亀裂を生むこともなく、展開の変化すら望まない。4人姉妹のそれぞれの個性とその人生を丁寧に描きつつ、喜びがあれば姉妹で共有し、悩みがあれば互いに寄り添い前に進む。その繰り返しにより、家族として醸成していく姿を追っていく。

是枝映画としては久々の原作あっての脚本。もしかすると原作の世界観に起因する部分なのかもしれないが、穏やかすぎる内容に「もう少し何かほしい」と物足りなさを感じてしまった。期待が大き過ぎたのかも。
しかし、やっぱり是枝演出が大好きだ。思い描いた役柄の個性に俳優をはめ込んでいく作業ではなく、俳優の個性に役柄の個性を寄せていくのだ。天然キャラと言われる綾瀬はるかの、シッカリ者の長女役もミスマッチだとは思わない。是枝監督の確信犯的なキャスティングとみる。

本作の見所は何といっても、4姉妹を演じる女優陣のキャスティングと、彼女たちのアンサンブル劇にある。主要人物が全員女性であっても、是枝演出は抜群の相性を見せる。4人が生み出す空気感から、彼女たちが辿ってきた過去の記憶や、家族の未来予想図というのが鮮やかに浮かび上がってくる。要は、疑うことなく本物の姉妹のように見えたということだ。

豪華キャスト陣のなかで、最も印象的だったのは、腹違いの妹で4人姉妹の末っ子となる「すず」を演じた広瀬すずだ。CMを初め、メディア露出が昨今多いので、事務所のゴリ押しを勝手な先入観として持っていたのだが、演者としてかなりの大器と思われる。「すず」の強さと脆さを秘めた複雑な個性を確実に表現したことで、「見守っていたい」と観客を共感させることに成功した。また、彼女の最大の武器はその「声」にあると思われる。耳に心地よく残る、よく通る声であり、意志や感情が乗りやすい声色である。来月公開される「バケモノの子」でも主要キャラの声優を担当するということで、間違いなく良い仕事をしてくれるだろう(さすが細田守のキャスティング!)。あと、彼女のサッカーシーンにおける、ドリブルが巧過ぎてびっくりした。経験者?役作り!?いずれにせよ、今後要注目だ。

【65点】
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