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猿の惑星: 聖戦記 【感想】

2017-10-25 08:00:00 | 映画


まさに有終の美。しかし、想定外の渋さ。エイプたちの救世主であり、シリーズを牽引してきた「シーザー」の生き様に重点を置いた完結編。エイプたちと人間たちの対立を通して、現代社会の縮図を照らす作風は本作でさらに濃密になった。人類の排他性と残虐性は、あらゆる異種との共生を阻む。CGによって生み出されたエイプたちの描写は驚くほどリアルな仕上がりで、そのビジュアルは勿論のこと、動物らしい硬質な表情のなかにも感情が掬い取れる表現力に恐れ入った。北米での絶賛ぶりも納得の完成度であるが、過去2作の新シリーズファンとしては物足りなさも残った。

前作で、シーザーの腹心であったコパの反乱により、人間との対立が避けられなくなった状況下で、シーザー率いるエイプたちに新たな人間たちの脅威が襲い掛かる。

シーザーは人間たちとの共存を望む。侵略せず、侵略されない関係だ。ところが人間は違う。「猿ウィルス」の発生から始まり、前作の事件でエイプたちへの排斥の気運が高まり、軍隊を動員した駆逐攻撃が収まらなくなる。理解を得ようとするシーザーであるが、その思いによって下した判断が、回りまわって、大きな悲劇への引き金となる。これまでエイプたちを守るために自制してきたシーザーが初めて、人間への復讐心に駆られるのも納得である。かつて、幼い頃、人間との絆を知るシーザーを思い出すとあまりにも切ない。

人間たちがエイプたちに牙を剥くのは、人類の存亡に関わる脅威とみなしているからだ。退化する人類と、進化するエイプの構図が本作でいよいよ鮮明になり、オリジナルシリーズに繋がる背景が明らかになっていく。

過去作以上に「シーザー」というキャラクターに焦点が当たっている。指導者としての風格と凄みを増してきたシーザーの登場シーンに引き寄せられる。その後のシーザーに待ち受けるのは苦難の旅路だ。エイプはエイプを殺さないという掟を破ったシーザーは、その罪悪感からコパの亡霊に追われる。そして、自らが招いた仲間たちの危機に際し、その無力さに打ちひしがれる。あくまで主人公は「猿」であるが、リアルな人間と変わらぬほどに、そのキャラクター像が掘り下げられていく。シーザー演じるアンディ・サーキスが名演が本作でも素晴らしい。シーザーだけでなく、その他、無表情なエイプたちの情感表現にも驚かされる。それらがCGを通して描かれるだのから大変な離れ業だ。

邦題の「猿の惑星: 聖戦記」、原題の「War for the Planet of the Apes」とあるように、予想していたのは、エイプたちが人間たちとの戦いを経て、オリジナルに繋がる勝利を掴み取る姿だ。それも、とびきりド派手なバトルをイメージしていた。前作までの「創世記」「新世紀」が優れたドラマ映画であった一方、アクション映画としてエンタメ度が高かったことも特筆すべき点であった。その流れの完結編としては、尻すぼみ感が否めないほど地味だった。クライマックスはエイプたちの脱出劇であり、前作と比較するとどうにも映像のスケールに欠ける。本作のヒールである将軍を一方的な「悪」として描いていないことからも、前作までの方向性と違うことはわかるけど、新シリーズファンとしては最後に大きな花火を打ち上げてほしかった。

オリジナルは人間と猿の立場が逆転した世界であり、猿たちは人間を道具として利用する。本作で描かれる人間とエイプたちの関係はその逆の状況にある。人間たちがエイプたちを侮蔑し虐げる様子は、戦時中のナチスを彷彿とさせ、残酷な描写として印象付ける。この状況がどのように逆転するのか、道のりはまだまだ遠いようで、観る者の想像に委ねるだけでは勿体ない気もする。宣伝文句に引っ張られたのが悪いが「鍵を握る少女~」みたいに紹介されていた、シーザーたちと同行する人間の少女ノバは、エイプたちの手助けをするだけの存在だ。後でオリジナルシリーズに繋がる名前であることを知ったが、「エイプに守られる人間」という特異な関係性なのだから、もっと特別な意味があると面白かった。

人間ではなく、猿を主人公とした本シリーズで、物語を牽引してきたシーザーだ。「神話」へと昇華した、その生き様を描いた本作らしいラストといえる。最後までシーザーを、カッコイイキャラとして描いてくれたことに感謝。但し、完結編として期待値は超えられなかったのは残念。シリーズの最高傑作はやはり前作の「新世紀」。再び、「創世記」から見たくなった。人間の愛によって育てられたシーザーが、まさか、こんな大変な目に遭うなんて。。。見返したら泣いてしまうかも。

【65点】
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