から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

リメンバー・ミー 【感想】

2018-03-24 09:53:43 | 映画


一面に広がるマリーゴールドのオレンジ色、カラフルな照明光が紺碧の闇夜に輝く。死者の国はまさに天国だった。宝石箱のようなビジュアルに目を奪われっぱなしだ。亡くなった家族との絆は永遠に残り、彼らを想い続けることで魂は生き続ける。今ここにある人生はご先祖様から与えられことを実感。さながら「ファミリーヒストリー」のようで墓参りに行きたくなる。世界共通&普遍的なメッセージを謳い、「死者の日」というメキシコの記念日に着目するなど、絶好調のピクサーを予感させたが、脚本の粗さは否めず、やや期待し過ぎてしまったか。とはいえ、ラストは普通に泣かされたけど。

死者の国へ迷い込んでしまった少年ミゲルが、現世に戻るために自身のご先祖様に会いにいくという話。

ピクサー映画としては、初のヒスパニック系の人たちをキャラクターに据えたアニメ。先日の「ブラック・パンサー」といい、昨今のアメリカ映画の潮流だが、多様性を受け入れることで新たな可能性がどんどん広がっていく。本作の舞台はメキシコで、陽気な空気と人間の気質が心地よく、快活な主人公ミゲルの姿も可愛らしくて魅力的だ。

そこに水を差すのが、ミゲル少年の家族の掟だ。音楽を奏でるも聴くのもご法度。音楽のために家族を捨てた曽曽お爺ちゃんへの恨みが、音楽に転嫁されてしまったようで「音楽は悪くないのに」と違和感を持つ。その後、愛する孫が大切にしていたギターをお婆ちゃんが粉砕するシーンでいよいよ引いてしまった。後半への「フリ」であることは承知のうえだが、この序盤のシークエンスに限らず、どうにも描こうとするメッセージが先行している気がする。ストーリーがおざなりになっていて、らしくない。

主人公が迷い込む「死者の国」の作りこみは、さすがのピクサー、想像力に溢れて面白い。鮮やかな色彩で覆われた世界に、アトラクション感の強い仕掛けが次々と現れワクワクする。そこに暮らす死者たちが、現世の家族に会うことのできる「死者の日」。存命の家族がその故人(死者)の写真を飾っていないと現世に戻る「通行許可」が下りないというシステム。写真が飾られている=家族に想われている、という解釈で、家族に忘れられている死者は現世に戻ることができない。明るく楽しい画のなかに、グサリと響くメッセージが潜む。

死者の世界で唯一「生きた人間」である主人公は、現世に戻るために自分のご先祖を探す。その道のりでピクサーやディズニーアニメには欠かせない相棒が本作にも登場する。現世に戻ることのできないワケあり男であり、本作のテーマを膨らませる役割と予想するが、それに以上にもっと大きな役割を担うことになる。惜しいのは、その展開が中盤のうちの予想できてしまい、明らかになる終盤でサプライズをもって感動に浸ることができない。ピクサーにしては詰めが甘くて、これもらしくない。相棒のヘクターを演じた藤木直人の声優起用はハマっていた。

ほかにも、あんなに虐げられた音楽がラストで都合よく使われてしまうなど、いまいちノリ切れない部分もあるが、エモーショナルな映画であることは間違いなく、「coco」の原題にも通じる、愛の代弁者となったミゲルの歌声にすっかり泣かされてしまった。ご先祖が育んできた家族への愛が、今の自分が生まれたことに繋がっているという事実。死者に訪れる2回目の死が本当の死であり、先人への敬意を自戒をもって受け止める。主題歌の「リメンバー・ミー」も素晴らしく、「This Is Me」を抑えてオスカーを獲得したのも納得できる。そして、何よりメキシコへの愛を全面に押し出したのが本作の最大の魅力だ。ますますメキシコへ行きたくなった。

【65点】
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