から揚げが好きだ。

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アナイアレイション -全滅領域- 【感想】

2018-03-17 08:00:00 | 映画


注目監督によるNETFLIX映画の新作2本目。前作「エクス・マキナ」で鮮烈デビューを飾ったアレックス・ガーランドの新作。これは面白い。
ある日、宇宙から降ってきた光のベールに包まれ、隔離されたエリアに足を踏み入れる探検家5人の行く末を描く。物語の発端は消息を絶ったはずの主人公の夫が、1年ぶりに出征先から謎の帰還を果たしたことによる。別人のように変わった夫が、その後、謎の発作を起こしたことで、主人公がエリアの存在を知り、夫の謎を解き明かすために探検隊に加わることになる。
主人公は女性の生物学者で細胞や遺伝子の研究をしている。「老化は細胞活動の欠陥」というセリフのとおり、生命活動のすべては細胞によってなされており、この生物学的な視点が本作において重要な意味を持つ。エリアの中で起きていたのは人知では計り知れない生態系の変化で、いったい何が起きていて、それが何に起因しているのか、謎が深まるとともに、観ているこっちは答えを欲するようになる。因果関係という言葉のとおり、物事には必ず何かしらの原因があるものだ。ところが本作を見て感じたのは、「その概念すら地球人にしか持っていないのでは?」という仮説だ。最近だと去年の「メッセージ」を思い浮かべる。言葉の通じないエイリアンから地球に来た目的を探ろうとする様子が描かれており、目的たる「メッセージ」はある程度、観客側の想像に委ねる設計になっていた。これも前提として、原因が何かしらある話だ。
ところが本作については、その答えを見つけることが無意味に感じる。不思議な生態系の変化を、人間側は「破壊」と受け止める。実際、人間の命がエリアのなかで絶たれているからだ。ところが、エイリアンの視点からすれば、彼らが生きるための活動の一部であり、それは「創造」的行為ともいえそうだ。
「観客がいかようにでも感じてください」という映画がすこぶる苦手であるが、本作は別だ。理由が見当たらない世界を、人間の尺度で結論づけようとする思考が強引にすら感じてしまう。この不思議な感覚は、AIを描いた「エクス・マキナ」に通じるものがあって、アレックス・ガーランドが原作に魅せられ、脚本から担当していることに必然性を感じる。どこかで観たことがあるようで、見たことのない、不気味で美しいSFのビジュアルは独創的であり、好奇心と行き場のない浮遊感を増幅させる。ラストも締め方も好きだ。劇場鑑賞にも十分に堪えうるハイクオリティな映画だった。
【65点】
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