最高を超える言葉があれば、この映画に捧げたい。映画の原点であり究極系といえる1本。テクニックではなく、今のハリウッドで本作のような映画を作る勇気はないだろう。映画は夢の世界だ。そのフィクションのなかで、どれだけのことを描いて、どれだけ観客を楽しませることができるか。その志向に全フリした、ハイパー超絶娯楽作。「社会的メッセージ」とか、二の次で良いんだよ。あまりにも面白くて楽しくて涙が出た。
3時間という長尺。ほぼすべてがクライマックスという超ハイカロリー(笑)。打楽器を打ち鳴らすスコア、躍動する筋肉、それを猛追するカメラ、多用されるスローモーションのキメキメのショット。「肩車」も大いに上等。荒唐無稽を突き抜け、想像の斜め上を行くアクション演出の連打は圧巻だ。計算しつくされたケレン味はもはやアートの域。これまで「色モノ」として見ていたインド映画に対する常識はもはや遺物で、マーベル映画も真っ青ではないか(ギャグではなく)。「ケガの回復が早い」とか、序盤ツッコんでいた自分が途中から馬鹿らしくなる。映画はコレでよいのだ。
運命あるいは宿命に導かれし2人の男の友情の物語。そして、その2人によるインド解放の物語を壮大に豪快に描く。中盤の山場は「ナートゥ」である。インドの文化を愚弄する西欧人にブチかます、強烈なダンスアクション。静かな映画館に、熱狂が渦巻いているのがわかった。筋肉マッチョな2人が、サスペンダーパンツルックで高速シンクロダンスをキメる。そのダイナミックな描写にエネルギーがスクリーンからほとばしる。イギリスの貴婦人たちもそのエネルギーにほだされ、砂煙を挙げてダンスに加勢する。もう絶叫したいほどの興奮を必至に抑える。あぁ、神様、私に「ナートゥ」を全力全霊で踊り切るだけの、センスと筋肉と体力を今すぐ下さい。
主人公の2人は、インドの独立運動で活躍した歴史上の人物だという。実際にこの2人は出会っているわけではないし、本作で描かれているような屈強な男でもない。インドの独立には多くの血が流れた。過去のイギリスが大英帝国という名で残酷の限りを尽くしてきた過去は事実。インド人の処刑にために「弾丸を使うのは勿体ないから棒で殺せ」という逸話は、インド人の感情に深く刻まれているだろう。その「お返し」といわんばかりに、本作では大英帝国の存在が、どこまでも憎たらしい残虐非道な英国人キャラに踏襲され、痛快な勧善懲悪劇に仕立てられている。エンタメのための歴史改編。「返り血」のショットも痛烈であり、今のイギリス人が本作を見ても素直に楽しんでほしいと思った。
エンドロールのダンスシーンも多幸感にあふれ、「こんなに面白い映画を作ってくれてありがとう!」って喝采したくなる。
ロングラン希望。また元気をもらいに映画館に行きます。
【95点】
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