アルジェリアを理解しましょう(10) 私たちは分かり合える


 アルジェリアを理解しましょうのシリーズ(ツイッター、フェイスブック、ミクシィに連動させました)は一応このエントリーで終わりにします。
 しかし22日、23日のネッダール先生とのやり取りはわたしにとって感銘深いもので、きっと日本の一般の方にも意義深いものを持っていると思いますので、続けてお伝えします。ぜひご覧になってください。
 もとより「アルジェリアを理解する」ためには数回のブログのエントリーで済む訳はないので、ずっとずーっと長い付き合いを続けていくこと、相手を理解しよう、そしてもしそういう気持ちが芽生えるなら、愛そうという姿勢(愛は強制できませんから)をもつことが不可欠だと思います。

 ということで最後は「われわれ、日本人とアルジェリア人は分かり合えるはず」というお話で締めます。


 「ばかな。イスラム原理主義なんて分からないし、だいたいイスラム教というのが分からない。分かりたくもない。アルジェリアなんかわかるわけがない。天然ガスや石油が出るから、プラントを発注してくれるから付き合っているのであって、なにも出ない国なら付き合いなどもちたくない。現地で働かなければならない日本人はかわいそうなものだ。うちの子供を送るなんて、とんでもない」

というようなことを心の中で思っている方は日本には多いように思います。いかがでしょうか?

 それ、アルジェリア人には見透かされてますよ。心あるアルジェリア人には。
 うわっつらのジャパニーズ・スマイルなんか、効き目無いです。


 いま、どうも日本のマスコミの方々は「アルジェリアって、分からない!」っていうので弱っているらしいです。
 それ、無理もないです。今の日本の人には特に難しいということもありますが、たぶんアルジェリアの人たちにだって分からない。

 とくに「どこに権力の中枢があるのか」「統治の体系はどうなっているのか」分からないと思います。日本政府が情勢分析するのに、マスコミが読者に状況を説明するのに、どこがどうなっているのかわからないのではどうしようもない。
 
 だけど個人としては、権力のあり方が分からなければ、本当にダメでしょうか?
 マスコミは報道できなくって困るだろうけど、人と人とのレベルだったら、困ることはない。人間の付き合いをすればいいのです。
 
 おとといネッダール先生のお話を聞いていて思いました。
 これは、このテロ事件の背景とかアルジェリアの政治のあり方とかを近視眼的に探ってもかえって埒があかない。
 この国の歴史や、人をじっくり知ることから始めないと。

 人間として接すれば、この国のひとたちが実に魅力あふれる人たちであることが、本当によくわかると思います。

 わたしがこの国にのめり込んだのは、愛したのは、この国のアーチストたちが実に日本のわれわれと同じようなところを走っている!と本能的に感じたからです。

 なんども同じことをあちこちで書いてますが、もう一度書きます。

 ジャメル・ベンイェレスによるシェブ=カデールの曲のベースラインを聞いたとき、わたしは直感的に思ったのです:

 「この音を作れて、享受できるんなら、この人たちはぜったいに野蛮人ではない!」

って。

 この直感は間違ってませんでした。
 わたしにひとつ誇りがあるとすれば、それは「わたしの耳に狂いはない!」という自負です。文学では判断間違えるかもしれないけど、音楽ではわたしは過たないです。
 
 アルジェリア人と日本人が分かり合えるなんて到底思えないという方は「アルジェリア人を知らないだけです」。
 とにかく彼らの音楽を聞いてみてください。

 『アラブ・ミュージック』に載せたわたしの推薦盤からでも。KhaledのKutche、Souad MassiのRaoui、IdirのIdentites、Cheb MamiのMeli meli(かSaida, Let me raiどれでもいい)、Rachid TahaのDiwan、1,2,3 Soleils、Cheikha RimittiのEnta Doudami。今だったら当然Amazigh KatebのMarchez noirを入れます。

 ぜひ聞いてみてください。
 そして、わたしたちの子供たち、若者たちが未知の国の未知の人々を知ろうと、また愛そうと突進するのを見守ってあげてください。その突進が危ないものにならないように、わたしたち教員が精一杯頑張りますから。

 最後に、昨年若くして亡くなられた東京堂出版の渡部俊一さんの霊が安らかに憩わんことを祈りたいと思います。
 『アラブ・ミュージック』の出版、伝播に本当にご尽力くださいました。
 渡部さんの真摯な思いも、わたしは繋げていきたいと思います。

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