鈴木昭一郎先生(6)


 鈴木先生の御業績はあげだすとキリがないのですが、わたしが一番すごいと思うのがこれ。

 『スタンダール研究 付年譜・書誌』(白水社、1986年)。

 桑原武夫・鈴木昭一郎編となってますが、これはほぼ鈴木先生のお仕事です。

 これがどれだけ凄いかというと、最初の論文集のところはともかく、「年譜」のところが、スタンダールが生まれてから死ぬまで何年何月何日にどこにいて何をしていたかという居場所・行動が判明している限り「全部」書いてあってその居場所・行動特定の「出典」も全部書いてある!(「出典(つまり情報ソースですね)が書いてない情報は、何も意味がないんだよ」というのも鈴木先生のお言葉でした)し、「書誌」のところ(こっちは栗須公正先生担当でした)では世界と日本の膨大なスタンダール作品・翻訳・研究書・論文が作品別、テーマ別に分類して全部網羅してある!、というとんでもないシロモノなんですね。しかもこれだけの本(もちろんフランス語が大量に出てきますし、年号とか日付とかページ数とか、数字がものすごく大量に出てきます)に間違い・誤植というものが全く見当たらない!(これがいかにも鈴木先生らしい)
 後からくる研究者にとっては便利この上ないものですが、これをつくるために鈴木先生がどれだけ仕事をされたことか。どれだけ緻密な精神を集中されたことか。想像するだに怖ろしい。

 ずいぶんチマチマした仕事であるとも言えますが、鈴木先生はぜんぜんチマチマしたところのない人なんですよね。

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