2012年6月10日の日経 1


 今日、2012年6月10日の日経は、非常に趣深くて、凄かったです。考えるヒントみたいなものがいっぱい詰まっていて、つまり示唆に富んでいて。
 こういうことがあるから、紙媒体の新聞ってやめられませんね。
 学生さんたちにも勧めてます。つまらない、しかし殺し文句でもある「就活にも役に立つし」とひとこと言い添えて。

 木田元先生の「『故郷』をめぐって」は、これは深い。めったなことでは口をはさむなど、恐れ多くてできません。・・・ただこのエッセーさえ最後が「ナチス」で締めくくられることが、象徴的です。

 そこから、円城塔さんのピンチョン『LAヴァイス』書評へと考えの糸が確かにつながっていくのが感じられます。この小説は存命のアメリカ最大の作家、世界で最重要の作家のひとりと言っていいピンチョンの最新作(原著は2009年刊)。これまで難解で有名だったこの作家(わたしはとてもまともに読めないことを白状します)が、かなり読みやすいミステリー仕立ての小説を書いてきました。でも、ピンチョンに疲れ、衰えがあるわけではなく、本質はまったく変わっていないとする円城さんは、この作の「わかりやすさ」をこう評しておられます:

 隠れたものを描くには全てを描いてしまうしかない。結果がわかりやすく見えるのは、隠れる方でもよりうまく隠れるすべを学んだからだ。

『LAヴァイス』、わたしはまだ読んではおりませんが、円城さんの言葉は間違いなく本質を突いているはず。

(つづく)
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