ルイジアナのフランコフォン文化


(前のエントリーから続きます)

 このあたりほんとにいろいろ分からないことがあります。

 クリフトンの先祖はハイティから来たんじゃないでしょうか?

 クリフトンの話している言葉、歌っている言葉は、結局なんなんでしょうね?

 このあたり、確かなところを調べようと思っても、日本には調べる材料がほとんど見当たらないです。現地に行ってみたら、すこしは資料とかあるんでしょうか・・・

 このルイジアナの黒人フランコフォン・マイノリティのフランス語は、なかなか存続が難しくなっていると思います。
 すでにクリフトン自身英語で歌うことが多かったです。また彼のあとを継いだ息子のC.Jはお母さんが英語系のようだし、クリフトンは彼をずっとほったらかしてたらしいし、フランス語で歌うことはないようです。
 でも、この文化は消えずにいてほしいです。

 あえて言いますが21世紀において「教養」というのは、スタンダールの作品の綿密な研究もさることながら、アフリカからハイティへ、ハイティからルイジアナへ流れてここに定住した人たちの思い、記憶を大事にすることでもある、と思うのです。
 
 上の写真のビデオは1973年に撮影されたもの。

 クリフトンの108歳(ほんと?)になるおばあちゃん――『うる星やつら』の錯乱坊チェリーみたいな顔です――が出てきて、クリフトンたちが「おばあちゃんの若いころはどんなだったの?」とフランス語で必死に話しかけるんですが、おばあちゃん耳が遠くてほとんど通じない。
 ほんとに、この人の若いころのルイジアナって、どんなだったんでしょうね。

 クリフトンが歌うバックに、ルイジアナ特有の沼沢地バイユーbayouとそこに浮かぶ流木が夕日に映えて赤々と燃える映像が入ります。
 いいなあ、こういうの・・・

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クリフトンのBon ton roulet !


 クリフトン・シェニエのBon ton roulet !(このへん、当然ながら正式の綴りというのはありません)、ひっぱりだしてみました。

 ほんとに、ほんとに、ごきげんなブルーズです。

 クリフトンのアコーディオンが冴えわたってる。

 1966年5月10日、カリフォルニア録音というクレジットがありますね。

 さてこのCDにはChris Smithという人によるクリフトンの歌の転写がついてまして、一番はこうなってます。(ご覧のとおり一応スタンダードなフランス語として綴ってあります)

 Hey, tu, coquin, on va amuser,
Tu juste vives une fois, et quand tu es mort tu es gone ;
Laissez les bon temps rouler,
Laissez les bon temps rouler,
Well, tu peux etre mort si tu es vieux ou jeune
Ca fait 'a quitter les bon temps rouler.

(わたしの試訳)
    おい、このろくでなし、楽しもうじゃないか
    人生は一度、死んでしまえばそれまでさ
    いい時間が流れるに任せようじゃないか
    いい時間が流れるに任せようじゃないか
    年寄りでも若くても、死ぬのはいつかわからないよ
    そしたら、いい時間ともお別れさ

 でも、この機会によーく聴いてみると、わたしの耳にはだいたいこんな風に聞こえることが分かりました(これが標準フランス語の文法、語彙知識をあてはめてどこまで正確に理解できるか、なんの保証もないのですが、一応ここでも標準フランス語綴りを導入します):

 Hey tu coquine, on a amuse'
 Tu jus' vis une fois et quand tu meurs tu es gone
Quitter les bons temps rouler
Quitter les bons temps rouler
Wa tu meurs si t'es vieux ou jeune
Ca fait a quitter les bon temps rouler.

 "coquine"のところはかなり重要です。
 スミスの転写だと語りかけている相手は男のはずですが(coquin, mort, vieux は男性形です)、わたしの転写だと、vieuxを除けば、標準フランス語として理解しても、相手は女性であっておかしくないことになります。それにvieuxのところは実に曖昧で、なんと言っているかあんまりよく分かんないのです。それに、わたしは知らないですがクリフトンの話している「フランス語」ではvieuxに似た音の言葉が「年をとった」の女性形なのかもしれないのです。
 実は最終節のリフレインは:

 Waa tu peux [mourir?] si tu es vieille ou jeune 'tite fille

と聞こえるんです。
 ここはかなりvieilleに近い音が聞こえるような気がします。それになにより相手がはっきり"jeune 'tite fille"「若い娘っ子」にたとえられているのです。

 仮にこれが女性相手の歌だったとしたら・・・これはロンサールが歌い、与謝野晶子が歌ったのと同じように、女性を愛に誘う歌ということではないですか。
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