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預言者伝13

2010年10月26日 | 預言者伝関連

بسم الله الرحمن الرحيم
39.ターイフへの進出とそこで出遭った数々の災難:
  おじのアブー・ターリブが亡くなると、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)はクライシュからさらなる迫害を受けるようになります。その迫害は、おじの生前には行われなかったような苛酷なもので、クライシュの愚者までもが、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の頭上に土を振りかけていくといった有様でした。
  クライシュによる、迫害とイスラームへの離反への固執が激化すると、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は、サキーフ族の援助を得、彼らにイスラームを受け入れてもらおうと、ターイフという町に出かけます。預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)が、ターイフの人たちに望みを持ったのは、ターイフに近いサアド家(彼(平安と祝福あれ)に授乳していた家族)の存在がありました。
  預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は召命を受けて10年目のシャウワール月にターイフに向けて出発しました。イブン・サアド、イブン・アル=アティールなどによると、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)はターイフへの旅に、奴隷のザイド・イブン・ハーリサを連れて行ったと言われています。

40.ターイフにて:
  ターイフはマッカに次いで重要な町でした。建物は広大で、住民は贅沢な生活を送っていました。
  崇めるために巡礼客が集まるアッ=ラート神がそこに祀られており、その点においては、“フバル”というクライシュの最大の偶像が祀られていたマッカと類似しています。
  預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)はターイフに着くと、まずサキーフ族の貴族の許に向かいました。彼らの傍に座り、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は彼らをアッラーへと誘いました。しかし彼らの態度はひどいものでした。預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)を嘲笑し、彼らの中の低俗な者や奴隷たちが、彼に不意に襲いかかるほどでした。人々は皆で預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)を罵倒し、大声を出し、石を投げつけたのでした。そんな中、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は命からがらヤシの木の陰に逃げ、その災難の疲れからそこに座り込みました。ターイフで受けた暴動は、それまで多神教徒たちから受けたものよりも激しいものでした。それでもまだターイフの人たちは二列になって預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)が行く道に座り込むと、彼(平安と祝福あれ)が歩くために足を上げる度に石を投げつけ、その激しい勢いで出血してしまうほどでした。預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の両足から血が流れます。思わず、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の心から、そして口からも、ご自身の力の無さ、無策、人々の侮辱をアッラーに嘆く言葉と祈りの言葉が溢れ出しました。そして預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は、次の言葉で、アッラーに御加護を求め、またアッラーの御助力と御協力を求めたのでした。


  「アッラーよ…私は自分の無力、無策、人々の蔑視をあなたに嘆きます。最も慈悲深い御方よ!あなたこそは、迫害される者たちの主、そして私の主です。誰に私を委ね給うのですか?私に眉をひそめる者にでしょうか?それとも私のことを手に握らせた敵にでしょうか?あなたが私に御怒りでないのであれば私は何も気にはしません。あなたの御赦しこそは私にとって寛大なものであります。あなたの御怒りを被るか、あなたの不満を受けることから、全ての闇を照らし現世と来世の諸事を正すあなたの御顔の光に、助けを請います。どうか、満足し給うまで私を御叱りください。どのような権能も力もあなたにより他はありません。」

  すると、アッラーは山の天使を預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に送り給いました。二つの山でかの人々を挟み潰すことを彼に尋ねるためにです。しかし預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は、天使に次のように言いました:「いや、彼らの子の中から、同位者を置かず、アッラーおひとりのみを崇拝する者が輩出されることを望みます。」
  この話はムスリム正伝集に収録されている通りです。


  このような状態にあった預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)を見たウトゥバ・イブン・ラビーアとシャイバ・イブン・ラビーアの心は、正義心で揺り動かされ、アッダースと呼ばれていたキリスト教徒の奴隷に、「ブドウ一房をこの皿にのせてあの男のところに持って行き、食べるように言いなさい。」と言付けました。アッダースは、言われたとおりに行き、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)とのやり取りにより、彼から聞いた言葉や彼の振る舞いを知ると、イスラームに改宗したのでした。
  預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)はターイフを後にし、マッカに戻ります。しかし彼の民は相変わらず激しく敵意を剥き出しては彼を罵倒し、嘲笑して来るのでした。
  
(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P141~147
②「預言者ムハンマドの足跡を辿って(前編)」、アブー・ハキーム・前野直樹編訳、ムスリム新聞社発行、P120~121)

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