ピカビア通信

アート、食べ物、音楽、映画、写真などについての雑記。

不思議な客

2010年09月11日 | Weblog


先日、松本の「クチーナにし村」に行った時の話。カウンターに40代と思しき男性と、70前後という男性の二人組の客が入ってきた。まずこの組み合わせが、この手の店では珍しい。東京であればそんなこともないだろうが、地方では、年寄りはあまりイタリアンなどに行かないし、この年代の男二人という組み合わせはかなり珍しいのだ。入ってくると迷わず座ったところを見ると、初めてではないかも知れない。そして本当に不思議だったのはこの後の二人の態度だった。

まず、注文はする、そこまではいいが問題はその後だ。二人は真っ直ぐ正面を向き、一切会話することなくじっとしているだけ。異様な空間がそこに形成された。そして料理が運ばれてくると、それを(パスタランチのパンチェッタを使ったもの)ただひたすら黙々と食べ、食べ終わると音もなく立ち上がり、年配の男性の方がレジに行き支払いを済ます。店のマダムがありがとうございましたと言う、が、一切それに反応することなく店を出て行った。能か?と突っ込みたくなるような一連の動作。結局、言葉を発したのは注文するときの「パスタ二つ」という一言だけであった。

あまりに変なので、会計の時にマダムに聞いてしまった。すると意外な答えが帰ってきた。二人は親子で、よく来る常連でしかも仲が良いらしく、決して危ない(どういう意味だ)わけではないということだった。こちらは、「へえーそうなんだ」と返すしかなかった。まあ斯様に、一人で行くと暇なものだから、こんな人間ウォッチングが楽しみだったりする。ということは、いい題材を提供してくれたわけだからこの親子には感謝しないといけない。見たところ、特に父親のほうが職人っぽかったから、今度その辺のところをマダムに聞いてみよう。寡黙な職人親子、しかし好きですなあ。
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